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座談会(全1記事)

ヘルステックスタートアップのエンジニアたちが語る、ベンチャーの醍醐味と医療・健康領域において大変なこと

2019年7月24日、AWS Loft Tokyoにて「注目ヘルステック・スタートアップとのエンジニア向けミートアップ」が開催されました。医療・ヘルスケア領域に積極的にテクノロジーが用いられる様になって久しい昨今、日本のスタートアップの世界においても、さまざまな企業が注目を集め始めている。今回は、CureApp、ジェネシスヘルスケア、トリプル・ダブリュー・ジャパン、MICINの4社が一堂に会し、最新の技術動向やキャリアについて語りました。座談会では、登壇した4名がヘルステックスタートアップに入社した理由や、スタートアップに入社して想定外だったことなど、ベンチャーならではの裏側について語りました。

ヘルステックスタートアップに入社した理由

司会者:ヘルスケアとテクノロジーの最新動向は各社の講演で話して、スタートアップ自体については、井上さんが話してくださいましたが、改めて「スタートアップに入るってどんな感じなんだろう」とか「入ってからどんなことが起こるんだろう」というのがわかるといいなと。例えば、直接行かなくても、スタートアップの人と大きな会社が組むときに、どういうところに気を使ったらいいんだろうとか、わかったりすることもあると思います。

ですので、ざっと簡単に話して、あとはそれをネタに懇親会で講師の方や、講師の会社の方と話していただけたらと思います。ちなみに私自身も、新卒は大きな会社に行ったのですがその後スタートアップで2社ぐらい行って、「お金がなくなるとやだなぁ」ということを経験したり、転職でCTOとして入ったら、テックリードが次の週にいきなり辞めるということがあったりしました。スタートアップあるあるなので、そういうような話が出てきたらいいなと思います。

事前に質問を2つ投げていたので、順番にいきましょうか。

1つ目の質問は、入るきっかけです。「どんなきっかけで、なんでヘルステックのスタートアップに入ったのか?」。これは村木さんや井上さんがちょっと講演で話されていたんですけど、改めてどんなきっかけだったのか、あるいは「なんでヘルステックだったんだろう」とか。では、村木さんからご意見もらってもいいですか?

村木洋介氏(以下、村木):そうですね。ヘルステックというより、どちらかというとウェアラブルを経験しておくか的なことはありましたね。

井上真吾氏(以下、井上):きっかけは、実は前職時代にbuildersconという大きなカンファレンスがあって、それの初期メンバーをやっていまして。そこでトークセッションの30分を計るためのタイマーを作りたいという話になり、それを一緒に作っていたのがCureAppの人でした。有志で集まったエンジニアたちがイベントを作っていく過程で、一緒にコードを書いた経験があったんです。

ですので、この人たちがどういうコードを書くのか知っていたし、向こうとしても僕がどんなコードを書くかというのも知っているので、技術的なマッチをした上で「入ります」というのがあったかなと。これはさっきの講演では話していないところですね。以上です。

司会者:ありがとうございます。宮原さんはどんな感じで……。

宮原武尊 氏(以下、宮原):そのときは、たぶん従業員が渋谷のほうに10人ぐらいいたんですけど、前の会社の後輩が「助けてください!」と言って僕のところに来たんです。

そのとき僕はソーシャルゲームの会社にいて、「どうしたの?」と言ったら、「古株のエンジニアが4人ぐらいいたんですけど、全員辞めちゃったんです」って……。

(会場笑)

それで「すごいね。おもしろそうだね」と言って行ったんです。1人で全部やったりするのって、学生の頃から印刷会社さんとかのテック部門を1人でやっていたから、慣れていたんですよね。だからおもしろそうだなと思って、しかもヘルスケアだしかっこいいじゃんと思って、それがきっかけでした。だから会社の規模とかは気にせずに、「おもしろそうだな」という感じで飛び込みました。

司会者:ありがとうございます。誰一人ヘルスケアとは関係ないという(笑)。

(一同笑)

巣籠悠輔氏(以下、巣籠):ちょっとだけ関係しているところで言いますと、もともと医療分野って、ソフトウェアの文脈では「あまりIT化が進んでいないな」という印象があったんですね。

そんなときに、たまたま今代表をやっている医師の原と出会って、「じゃあ医療分野をやりますか!」となって創業したという感じです。

司会者:唯一ヘルスケア的な……。

(一同笑)

スタートアップの醍醐味と想定外だったこと

司会者:2つ目の質問は、「スタートアップに入ってから想定外だったこと」に関しまして。みなさんや私が聞きたいと思うのは、だいたい入ると想定外のことしか起こらないというところ。そういうときに、ポジティブな意味で思っていたのと違ったということと、ネガティブに思っていたのと違ったということ、それぞれ話していただけると、より「スタートアップってめちゃめちゃやなぁ」という感じが……。

そこが「おもしろそうだな」と思う人でないと、正直あまり向いてないと思うんですね。ですので、そんな話をしていただければと……。

村木:そうですね。ポジティブなほうは、昔のスタートアップはどんな感じだったかって、実は私もあまりわかってないんですけど、最近は本当に良い人材が来るんですよね。そこらへんは人材の採用が大変なのかなと思っていたんですけど、良いエンジニアさんが来てくれて、まとめている人たちの姿を見ていても、そこそこのものづくりの会社とほとんど変わらないというのはあります。

だから新しく入って来た人たちも、ベテランの人たちに聞いたりとか、そういうことをしてお互い切磋琢磨しているのかなという感じがします。

ネガティブに想定外だったことは、引っ越しが多いなぁと……。

(会場笑)

村木:まず渋谷の駅前のビルが壊されるので引っ越ししまして。今、山手線の駅から見ると工事中でもう跡形もないんですけど。今は日比谷にいるんですけど、実は今年に壊されちゃうんですね。

(会場笑)

村木:あまりこういうことは言わないほうがいいのかもしれないんですが、次に行くところも今度壊されちゃうんですね。

(会場笑)

村木:ヤドカリのような感じで、毎回名刺を変える……。スタートアップだからこそ、そういう感じでなるべく家賃を抑えてというところでがんばっています。

専門性の高いメンバーに刺激を受ける

司会者:井上さんはどうですか? ポジティブとネガティブについて。

井上:はい。まずポジティブだったのはCureAppに入ってみたら、医者が4人いて、あとは経理の方が公認会計士でみたいな……いちいち突き抜けて専門性が高いなというのがありました。

「どうしてこの人たちはCureAppに入ってくれたんだろう」と思うこともけっこうあるんですけど、そんな人たちと一緒に仕事ができるというのは、仕事としても人間としても刺激を受けることが多いなと思っています。エンジニアのレベルが上がっていくと入ってくるエンジニアもだんだん優秀になってくるので、「やばいな。どんどん抜かれていくな」みたいな焦りを感じることもできるかなと思っています。

というわけで、専門性がとても高く濃縮されているところが良いところかなと思っています。ネガティブだったところは、誘ってくれた人、さきほど一緒にものを作ってたと言っていた人が元CTOだったんですけど、辞めちゃいまして(笑)。

(一同笑)

井上:その人が入社した唯一の理由ではなかったんですけど、ただ、かなり信頼していた人だったので、辞めてしまって「おお、まじか」みたいなのをくらいました。あとは同期で入った方も辞めましたし、もともといた方の半分ぐらいは辞めていって、人の流動性は大企業などに比べて高いと思います。

あとはさっきの引っ越し話じゃないんですけど、1人あたりの分担の量が大きいので、ある日突然誰かが体調不良とかになると、いきなりカバーしないといけないということが多いです。

メンバーが体調不良になってしまい、オフィスの引っ越し業者の選定のMTGとか、なぜ僕が出るのか、みたいなMTGに出席することもあったり。スタートアップって、コードだけ書いていれば済む問題は少なくて、いろんなところをみんなでカバーしなければいけません。だからこそいろいろな経験もできるんですけど。というわけで、そんな経験がいろいろあったなと思いました。

司会者:ありがとうございます。

「電気を使うこと」は全部エンジニアの仕事に

宮原:僕のほうはだいたい想定外なことって、ネガティブなことしかない気がしているんです。

(一同笑)

小さい会社なので、情報がすごく入ってくるんですよね。要はこうやって部署部署で話しても声が入ってくる。それで誰が何をやっているかというのを全部把握して、それ前提で会話が始まるので早いというのがすごくあります。その情報の流れの中心にいられるので、入力がすごく多いから、そのぶん学ぶこともすごく多くて、「これはこうやってるんだね」というのを知って。そういう意味では力がついたなというところがあります。

逆に想定外だったのは、先ほども言いましたが、エンジニアが4人全員辞めちゃってから入ったのですが、電気を使う仕事は、全部エンジニアの仕事みたいな感じになっていて。「電源コードがどう」とか、「コピー機がどう」とか、FAXとか、大塚商会にコピー機が……みたいな話も僕がやって。本当に想定外で、これはこれで勉強になったんですけど、悪い意味でいえば集中できないんですよね。

テック部分に集中したいんだけど、こういういろんなことをやらないといけないから、テックのところがほとんどできないとか。その中でどうやってチームの人たちに実装してもらえる環境を作るかが最初のテーマでしたね。

司会者:ありがとうございます。

巣籠:そうですね。ポジティブとネガティブなことについてはみなさんがおっしゃっていたことと近いのですが、MICINでネガティブだったのは、オンライン診療関連の制度に関してです。オンライン診療は2015年に規制が緩和されて、全国でできるようになったのですが、とはいえ、まだまだけっこう規制が強くて。創業当時は「3年ぐらいするとなんでもOKになってるでしょ!」というつもりでいたのですが、まだまだ規制が強くて、予想よりもかなり規制緩和に時間がかかるんだな、というのはネガティブなところです。

逆に言うと、規制が強いからこそMICIN含め、いくつかオンライン診療をやっているプレイヤーで、政府に働きかけたりもしています。それができるのはスタートアップならではなのかな、とは思っています。国に突っ込むというのは、無邪気なスタートアップでしかできないことかなと。これは私自身がやっていることではありませんが、横で見ていて楽しそうだなと思っています。

あとは、ベータ版を無邪気にいっぱい作るのが、けっこう楽しいですかね。

司会者:ありがとうございます。だいぶ雰囲気が似ているかもしれないですね。思ったよりも専門性の高い人が集まるというのが良くて、ネガティブはいろいろあって建物がなくなるとか、人がいなくなるとかがスタートアップあるあるなのかなと思います。ありがとうございます。

治療アプリ®︎のバージョンアップをどうするか?

司会者:ではQ&Aに入りたいと思います。今自分の手元でどんなQがあがっているかがわかるので、1人1問ずつぐらい回答してもらって、クロージングに入ろうと思います。「資料ほしいです」については考えます。CureAppさんの場合は上げてもらえるという話だったので、公開してもらえると思います。

CureAppさん向けの質問ですと、「治療アプリ®︎で薬事を通ったあとのバージョンアップは大変な気がしますが、そのへんはいかがでしょうか?」と。さっき途中で作り変え自体も大変という話をされたからかと思います。

井上:そうですね。そこに関しては、承認する機関があるのですが、そちらとしても前例がないのでお互いにどうしたらいいのかわからない状態で、けっこう手探りをしているんです。なので、そこで一切アップデートができないとなってしまうと、バグすら直せないことになってしまうので、現実的かつ、やった臨床試験が意味をなすようなかたちで、うまいことできたらなと模索しています。なので「今こうできます」というのはお答えできないです。

司会者:逆にトップランナーだからこそ、そこをうまく抜けていけると、ある程度先行者のノウハウや利益になりそうなのでいいですね。ありがとうございます。

「DFree」の検知能力について

司会者:村木さんへの質問で「『DFree』の検知能力に個人差はないのでしょうか? 肥満の人でも正しく検知できるのでしょうか?」

村木:これはありますね。お腹に当てる超音波の周波数というのは数メガヘルツになるんですけど、その周波数の高さでお腹の深さのどこまで浸透するのかが決まるんですね。ですので、なるべく深くいこうと思ったら周波数を落とし気味で、エネルギーを高くするというやり方で奥深く見る必要があるので。肥満の人はエコーで撮っても、どうしてもかすみがかったような画像になります。

これは物理的に仕方ないのですが、そういった意味では将来的には、周波数をもうちょっと選べるようなデバイス作りとかをしていかないといけないのかとは思っています。

司会者:ありがとうございます。最後に巣籠さんに、1人「めっちゃ著作読んでます。ありがとうございます」という……。

巣籠:ありがとうございます。

司会者:質問ですと、「機械学習のソフトウェアはテストとか運用が難しい気がするのですが、どのように品質保証をしていますか?」。

巣籠:そうですね。アプリと同様で、テストコードを書くということはやりますね。とはいえ、そのへんはまだ世の中的にもベストプラクティスがない気がしていて、MICINでも手探りでいろいろナレッジを溜めていっているところです。1個あるとしたら何かな。「何をテストすればいいのか」を設計時に考えるというのは、意識しているポイントですかね。あまり良い答えじゃないかもしれないですけど……。

司会者:でも、たぶん興味あるのは別の質問であった「チーム自体をどう編成しているの?」とか、そういうまわりのことで、マシーンラーニングとかディープラーニングのところを実際プロダクションでするときはどう運用していくのかな? みたいなところに興味があると思いました。

また聞かれたい方は、懇親会のときの時間で聞いていただければと思います。それではこの前段を終わりにしようと思います。改めて講師をしてくださった4社のみなさん、4名の方に盛大な拍手をお願いします。

(会場拍手)

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