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よそはよそ、うちはうち 〜自分のものさしで、好きにエンジニアやる〜(全2記事)

GitHubのエンジニアが獲得した「他人の常識」に縛られない人生

2019月10月14日、テクノロジーカンファレンス「DevFest Women Tokyo 2019」が開催されました。Diversity(多様性)とInclusion(認知と尊重)をテーマとしたカンファレンスで、IT業界で活躍している女性やLGBTQたちが自らのキャリアを通して得た知見を共有します。「よそはよそ、うちはうち 〜自分のものさしで、好きにエンジニアやる〜 」に登壇したのはGitHub/Enterprise Support Engineerの鈴木順子氏。講演資料はこちら

多様なバックグラウンドを持つ同僚のおかげで幅が広がる

鈴木順子氏:GitHubの話についてはここまで紹介したんですが、ここからは私自身、約10年間エンジニアをやってきて、自分自身のキャリアに対してどう考えてきたかについて話をします。冒頭でも述べましたが、とくに大それたものはなにもなく、これまでいかになにもこだわらず、好き勝手にやってきたかについて話をします。

まずは、私が目指すところとしては、「気が済むまではエンジニアをやっていたい」と考えています。エンジニアといっても、例えばサーバーサイドエンジニアもそうですし、インフラエンジニアとかフロントエンジニアであったり、エンジニアのマネージャーとかいろいろありますが、実は私はどれかにこだわっていることは全くありません。

エンジニアという軸で、そのとき興味が沸いたものだったり、そのとき必要なスキルを身に付けられそうであったり、なんか必要だからマネージャーやったほうが、今自分がやりたいことがあるから「マネージャーやったほうが得だな」って思ったときだったりとか(笑)。そういったことで選択していこうと、わりと気楽に考えています。

またエンジニアとして一番大切なのは、アウトプットを継続していくことだと考えているので、どういうスタイルのエンジニアであっても、日々の生活の中でバランスを取りながら、いかに良いアウトプットをエンジニアとして出し続けていけるっていうのが一番大事だと考えています。

よく「近くに女性のエンジニアがいない」という問題……問題なのか、まぁそういうことに対する不安を耳にすることはあるんですが、私個人としては実はあまり、その部分に問題意識を持ったことがないです。

実際ギットハブ・ジャパンに、私以外の女性エンジニアは1人もいません。ですが、近くに女性エンジニアがいることよりも、国籍や性別に関係なく、もちろん女性エンジニアでもいいんですが、物理的な場所でもなく、すぐにディスカッションできるところに刺激的なおもしろいエンジニアがいる方が、私はうれしいなと考えています。

エンジニアに限らず、自分と似た属性の人よりもいろんなバックグラウンドでいろんな考え方を持った人が近くにいた方が、自分のエンジニアとしての幅が広がるんじゃないかと私は考えています。そういう意味ではGitHubは、私にとって今とても良い環境だと思っています。

「初」や「唯一」であることのプレッシャー

ただし、日本にいる以上は、女性のエンジニアはどうしてもマイノリティになってしまっています。また日本の昔からの古いカルチャーのせいで、自分がこれまでキャリアを築いていく中で、面倒くさいことも実はいくつかあって、そういう場面でどういうふうに自分の中で消化していったかについて、簡単に紹介します。

まずは、「初」や「唯一」であることのプレッシャー。今はそんなことないですけど、エンジニアになって3年目ぐらいに、当時在籍していた会社で初の女性のエンジニアマネージャーになったことがありました。

それ以外でも、女性のエンジニア自体がもうマイノリティなので、「初の」とか「唯一の女性」みたいな状況になったことが多々ありました。現在はもう本当にそんなことぜんぜんプレッシャーに感じることはないんですが、当時若かったこともあり、不要なプレッシャーをかなり感じていました。

とくに自分がなにか失敗したり、うまく成果出せなかったときに、「このあとに続く女性のエンジニアの人に迷惑をかけるんじゃないか」とか。自分の発言次第で「やっぱり女の人、ダメだね」って言われてしまうんじゃないか、とか。そういうプレッシャーを感じて、とても気を張っていたというか、肩に力を張っていたことがありました。

ただ、そういう状況をしばらく続けていたんですが、いつ頃かどんなにプレッシャーを感じても、自分から出るものは変わらないですから、気負う必要がまったくないなと気付いて、「初」とか「唯一」とか気にせずに、目の前の課題に対して必要な判断と必要な行動をするだけだな、と思えるようになりました。

あとこれは、今もうぜんぜん気にしてないんですけど、若き日は(笑)。あったんです、若き日。

(会場笑)

若き日は、なんでもかんでも「女性であること」を理由にされるというのに、一種の不快感を感じていた時期がありました。例えば私がマネージャーに選ばれたときも、「君が選ばれたのは、女性だから」だったりとか、偉い人が意見を聞いてくれたときに「君の意見をあの人が聞いたのは、あなたが女性だからだよ」って。

もうちょっと別な話をすると、私はめったに体を壊さないんですけど、体を壊したら「女性だから、やっぱ女性は体壊すよね」って言われてしまう。良いことがあっても悪いことがあっても、全部「女性だもんね」って言われてしまうというのに、とても不快感を感じていた時期がありました(笑)。

ただこれも結局、気にすることはないという結論に至りました。まずは、そんなことをわざわざ言ってくる人にロクな人いないんですよ。

(会場笑)

でしょ?(笑)。あ、動画を撮ってるからその先は言わないです。

(会場笑)

実際に女性だから得たチャンスもたくさんありました。それを不公平だって言う人もいましたが、それでも選ばれたのは自分だし、選ばれたからにはそんなことは気にせずに、自分の成し遂げるべきことを成し遂げる、ということに集中するのが一番大切だと思います。

実際、女性だから得することありますよね。こういう機会に私が話せてるのも、女性だから話せたのかもしれないですし。損することもあります。なんでもかんでも「女性だから」って、なにかミーティングに呼ばれないとかいうこともありました。

どちらのほうが多いかは測ることはできないですけど、私はエンジニアですので、どんな状況においてもエンジニアとして、自分が出せる成果をしっかり出していくということが大事だと思います。

家事については「適材適所」

次にこれはライフステージに関わる話ですが、結婚した際に日本では「家事は女性がやる」という考えがまだまだあるんじゃないかなと思います。ご飯作ったり、掃除・洗濯、名前を付けづらい家事がめっちゃあるんですけども。そういう細かな家事も多くあると思います。

そういうときにストレスを感じたときは、私はただ漠然とストレスを溜めるんじゃなくて、一度冷静になって自分の状況を見直すように心掛けています。家事については「適材適所」と基本的には考えて、家事を私がやらなきゃいけないわけじゃないし、やっちゃいけないわけでもないと。家族のメンバーのスキルセットから役割を決めるようにしています。

あとは自分たちで解決しなくても、便利な道具を取り入れたり、アウトソーシングもしたりしています。我が家では、家事は基本的には私。で、お金の管理や調査が多く必要なものはパートナーがするようにしています。ただし今妊娠中で、体力的に厳しいこともあるので、パートナーにも家事をいくつか引き継ぎました。

何においてもそうなんですが、「状況が変われば対応も変える」ということを忘れずに、状況の変化に応じてタスクの割り当てを見直すことが大切だと思います。

妊娠の局面でも押しつけられた他人の常識

次に、とてもタイムリーなんですけども、今ちょうど妊娠中で、今日から産休なんですけど、妊娠中には自分がエンジニアとして仕事をしていく中で、どこまでチャレンジしていいのかという問題がありました。仕事をどれだけしていいのか、出張していいのか。こんな登壇してもいいのかな。例えば旅行に行っていいのかとか、些細なことで言うと食べ物・飲み物まで。

何をしても、とくに日本では、何人かは「え、それダメでしょ」って言ってきます。仕事で言うと私はちょうど1ヶ月前から産休に入ったんですが、それを遅いと言う人もいますし、安定期には出張に行きましたが、それをすごく批判する人もいました。

今回のイベントに関してはDiversity, Inclusion & Belongingsをテーマにしていることもあって、とてもみなさん理解があったんですけれども。私あの、妊娠4ヶ月か5ヶ月ぐらい前だったと思うんですけど、登壇してたんですけど、そのときはとくに誰にも言わずに、勝手に登壇してました。なので私が妊娠していることに気付かずにいた人がほとんどだったと思います。

さらに安定期の旅行についても非難する人はいましたし、食べ物・飲み物一つとっても「あれはいい」「これはダメ」って、たくさんの意見をもらいました。

こういうリアクションに対して私はどうしていったかというと、まずは事実確認するようにしていました。自分で調べたり、必要に応じてお医者さんに相談したりとか。これがめっちゃ大事かと思います。なぜなら、けっこう批判的な意見のもとを調べると、情報元不明の伝聞だったり、あとは古い情報であることがかなりあります。

あとは当たり前ですが、私の場合とその人の場合には状況が異なることもあります。なので自分の状況からどういうリスクがあるのかを洗い出して、必要に応じて事前の対策をするのが大事です。その上でリスクがあるのか、いけるのかを判断するのは自分自身かなと思います。

「こうあるべき」も「こうあらざるべき」もない

好意的な意見であっても批判的な意見であっても、その背景が善意であっても悪意であっても、鵜吞みにしないということが大切だと思います。また妊娠に関しては、他人の常識と事実が異なることが多くあります。例えば私は安定期に出張に行きました。海外出張です。実際に出張の機会は2回あって、1つは自分の体調や状況から行かないと判断して、もう1つは行くと判断しました。

出張に行くと決めたときも、とくに不安は抱いてなかったんですけど、それはなぜかというと、過去に自分の海外から来る同僚とか友人が、お腹が大きい状態でふつうに来ていたからです。それでも出張に行くと決めたあとは、とくに日本人の人の一部からはかなり批判的な意見をもらいました。

そうするといろいろ自分は調べたし、担当のお医者さんにも相談した結果を決めたんですが、あまりに批判的な意見をもらったので海外の同僚とか友人に相談したら、逆に「えっ、なにかダメなの? どっか悪いの?」って。「大丈夫? 行けないってどういうこと?」ってなる。

何が言いたいかというと、国が違えば常識がこんなに違ったんですよ。なので、常識はとても曖昧なものなので、自分でちゃんと事実を調べて、何が問題なのか、どう対策をとればいいのか、まったくとれないのかを、ちゃんと確認することが大事だと思います。その上で対策をとるべきものはとればいいし、無視してよいものは無視する、と考えるようにしています。

キャリアについてもそうですし、結婚とか家事や妊娠に関しても、何事に関しても、人から言われる情報を鵜吞みにしたり、またそれに翻弄されたりせずに、冷静になって自分のものさしで測り直すのがとても大切だと思っています。

何事においても、状況や人が違えば行動も結果も違います。「こうあるべき」も「こうあらざるべき」もないと私は思っています。

もっと雑に言えば、これ無理やり閉じてるんですけど(笑)。他人になんと言われようと他人だと思おうと、どうあろうと自分の人生ですので、自分勝手に、好き勝手に、私はこれからも自分のやりたいようにしかエンジニアを楽しまないです。必ず自分がやりたいようにエンジニアを楽しんでいこう、と考えています。

以上です、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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