ボッシュに向いている人物像

司会者:次の質問です。「どんな人に入ってきてほしいか」、佐藤さんからお願いします。

佐藤氏(以下、佐藤):みなさん自己分析をもうされているか、今後していくと思います。

本などで自己分析をやっていくと、大きな目標や、「何がしたい・どういうことがしたいから、この会社に行く」というところは分析すると思いますが、それだけではなく、自分の小さな目標というか、些細なことでも、好きなことや得意なこともちゃんと考えてほしいなと思っています。

私の場合、大きなところで言うと生産技術なので、自分で考えて「どうやって作ろう?」と技術的に粋を凝らして作った設備が出来上がったとします。完成した設備の能力が高いと、充実感はすごく得られます。ですが、そういう大きな達成感だけじゃなく、日頃仕事をしていく上で、設備には何かしら不具合が出てきてしまいます。

その時に、なぜ不具合が起きたか・どこが悪いのかを考えて、他の人がわからない状況の中、自分だけがその問題を解決できると、「よし!」「どや?」みたいな(笑)、喜びがありました。

そういった喜びを得るためにも、自分がどういうところが得意か・どういうことが好きかをちゃんと考えて入ってきてほしいと思います。自分のやりたいことと得意なところ・好きなところが一致していることが望ましいかなと思います。

和田氏(以下、和田):ありがとうございます。では、次に岡本さんお願いします。

岡本氏(以下、岡本):社会に入ると、答えがないトピックや取り組みがたくさんあります。でも、学生のうちからそういうことが経験できることもたくさんあるかと思います。

例えばスポーツをやっているときに、答えのない事柄に対して、自分でなにかしら考えてアプローチを取って結果出してきた経験がある人は、やはり企業の中でも、その経験が必ず活かせると思います。

基本的に学生のときは個人で何かやることが多いと思いますが、例えば団体スポーツの中で組織をどう強くするか、というような話は会社に入っても似たかたちで出てきます。なので、そういった答えのない事柄に取り組んでしっかりと結果を出してきた人はぜひ入ってきてほしいですね。

和田:ありがとうございます。最後に齋藤さん、お願いします。

ポジティブな気持ちと柔軟性が必要

齋藤(以下、齋藤):マネージャーのポジションから言ってしまうとミスリードするのではないかと、心配ですが、あくまで僕の個人的な意見です。僕はやはり気合のある人がいいなと思っています。

自分は英語にちょっと自信がないとか、会社に入って活躍できるかわからないと思っている人もいると思いますが、みんなそうです。僕もそうでした。何十年も前ですけど、社会人1年目でやった仕事が、携帯電話を持って1万回落とす仕事でした。

でも、そこから着々こつこつと仕事を受けていって、10年後ぐらいにはプロジェクトマネージャーや100億円規模の大きなプロジェクトを回すところまで登り詰めることができたのは、「みんなから期待されたことに応えたい」「新しいものにチャレンジしたい」、そういう気持ちがあったからだと自分では思っています。

そういうポジティブな気持ちを持って柔軟性を持った人に入ってもらえると、どんな素養であろうと、少なくとも私の部下だったら一人前に育てる自信はあるので、一緒にがんばっていきたいなと思っています。

スキルより伸びしろを重視している

質問者5:外資だとスキルを重視して採用といったイメージがあったのですが、今の話を聞くと、スキルを重視するよりは物事に取り組む姿勢などを見ているということでしょうか?

齋藤:はい、そうです。少なくとも僕は今持っているスキルよりもこれから先どれぐらい伸びそうかを重視しています。みなさんは大学の研究を4年か6年やっていると思いますけど、これから20~30年働くので、そこから先の伸びが重要です。なので、ベースは持っていてほしいですが、やはりポテンシャルがすごく重要かなと個人的には思います。

司会者:学生さんからよく「学部卒の人もいますか? 院卒の人が多いですか?」という質問をいただきます。この中で学部卒の人いらっしゃいますか?

(岡本氏が挙手)

司会者:岡本さん、学部卒ですね。修士卒の方は?

(登壇者全員が挙手)

司会者:博士課程の方?

(和田氏が挙手)

ここもバラバラですね。修士卒でないと採用されないということではないです。

質問者6:貴重なお話ありがとうございます。大学院で研究された方が多いと思うのですが、仕事でその研究が活かされているのか、ぜんぜん違うことやっているのかを聞きたいです。

小高(以下、小高):私は大学院を卒業しました。学生の頃はガラスの研究をしていました。具体的に言うと、ガラスから結晶が生まれるのですが、どうやってガラスから結晶が析出するのかをひたすら調査していました。今はボッシュに入ってABS、金属や電気を扱う機械系や電気系という、まったく違う分野で働いています。

どう活かされているかといいますと、ABSはいろいろな製品の組み合わせです。ポンプやモーター、プラスチックの樹脂製品や基盤など、いろいろなものが組み合わさっていて、一つひとつに担当がいます。私はABSの中のモーターを担当しているのですが、モーターは磁石でできていたり、コンタクトには金属のメッキが加工されていたり、よく見ていくと化学製品の集まりだとわかります。

なので、化学の基礎知識がすごく重要です。科学的知見、磁力が発生するメカニズムなどは機械系や電気系の人はあまりやっていません。ですから、大学院まで研究していた樹脂やガラスを直接仕事で活かせているかといったら活かせていないのですが、化学の基礎知識はとても活かせている実感がありますし、機械や電気の人とは違ったアドバンテージだと思っています。

司会者:ありがとうございます。佐藤さん、いかがですか?

問題解決や問題を自分で見つける力が重要

佐藤:私の場合は、学生時代にやっていたことと今の業務はぜんぜん関係ないです。学生の頃、研究室の先生の言葉に共感しました。「佐藤君、お金を使って失敗が許されるのは、学生のうちだけだよ。好きなことをやって成果を求められないのは学生のうちだけだから、学生のうちの研究は好きなものを選んだほうがいい」と言われました。

プラズマの自己組織化という、不思議現象があります。蛍光灯みたいなもので電離している気体のことをプラズマといって、それが勝手に蜂の巣状やシマウマのようなパターンなどの模様になってしまうことを研究していました。当時は興味があったので選択していましたが、今の仕事とはぜんぜん関係ないです。研究の進め方や考え方は活かせていると言うことはできますが、こじつけになるかなと思います(笑)。

和田:私はエンジニアの社内トレーナーをやっていて思うことがあります。ASEANでのトレーニングの一環でさまざまな事業部のコンポーネントのレビューや設計審査に参加しています。30分ぐらいで話を聞いて、中身を理解してフィードバックをすることを年に何十回、何百回やっています。

ふだんの業務で扱われている技術的な理論や専門知識は、かなり基礎的なことです。教科書で勉強していることの最初の20ページや30ページに載っている基礎の部分だけで、かなりの仕事の分野をカバーできると思っています。

当然、小高さんがおっしゃったように、もし電磁気の勉強をしていたらマクスウェルの法則を理解するときのハードルはちょっと下がるかなと思うのですが、専門知識を活かすといっても、そのぐらいのメリットじゃないのかなと個人的には思います。

会社に入ってから問題解決や問題を自分で見つける力などをもっと伸ばしていくことによって、いいエンジニアに成長すると私は思っております。

学生時代にやるべきことは?

質問者7:今仕事をしているなかで、学生時代にやっておいたほうがよかったことや、やっておいてよかった考え方や計画の立て方など、なにかありましたら教えていただければと思います。

:学生時代にやっておいたらよかったことを1つ言うと、発展途上国にもっと行けたらよかったなと思っています。

なぜかというと、自分で初めてインドに行ったのが2014年で、2回目は2016年に行きました。2014年にはなかったUberやOlaなどのライドシェアのサービスが2016年には多くの人が使っているようになっていました。このスピード感は日本では味わえない。

だから、そういう発展途上国をいろいろ回っていって、社会人になってから少しずつ期間を空けて行ってみると、ものすごい勢いでテクノロジーが浸透していっているスピード感や刺激を味わえるのは日本では得られない経験かなと思います。時間があるときに発展途上国……近いのでASEANというか東南アジア地域やインドに行っていただいて、3年後にもう一度訪れると、いろいろな学びがあるのかなと個人的には思います。

和田:ありがとうございます。「これやっておきたかったな」とか、ほかになにかございますか?

岡本:社会人になると「金はあるけど時間はない」というふうになるので、学生さんみたいに「金はないけど時間はある」というような状況をもっと楽しめていたらよかったと、社会人になってから思いました。

なので、朴さんが言ったように、そういう条件でしかできないことを体感したり、世の中の広さを知っておくのはやはり重要だなと思います。

和田:ありがとうございます。次で最後の質問とさせていただきます。

ボッシュには模範となるべき先輩がたくさんいる

質問者8:お話ありがとうございます。齋藤さんは最初のキャリアで携帯を1万回落とすといった仕事をしていたとおっしゃっていました。仕事を続けるモチベーションは、明確なビジョンや将来のビジョンから来ていたのでしょうか?

齋藤:だいぶ昔のことなので……思い出します。

(一同笑)

そうですね、僕がその時ラッキーだったのは、同じ部署に「こういう社会人になりたい」と思う先輩の存在があったことです。当時、部署には50〜60人いて、そのうち5人ぐらいは「この人すごいな」という人がいました。

「こういう人になりたい」と思いながら仕事をしていたら、いつの間にか、10年目ぐらいに「齋藤君、ついに僕を抜いたね」と言われたときに「ああ、よかったな」とすごく思いましたね。

なので、入社当初は「こういうことを身につけたい」「こういうキャリアを歩むんだ」という具体的なイメージは持っていませんでしたが、自分がすごいと思う人たちを見ながら自分のキャリアをイメージしていた感じですね。みなさんも職場に入ったらそういう人と会えると思います。ボッシュにはそういう人がたくさんいますよ。

司会者:宣伝ありがとうございます(笑)。それでは、パネルディスカッションをここで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)