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よそはよそ、うちはうち 〜自分のものさしで、好きにエンジニアやる〜(全2記事)

多様なバックグランドのエンジニアが活躍するGitHubの開発組織

2019月10月14日、テクノロジーカンファレンス「DevFest Women Tokyo 2019」が開催されました。Diversity(多様性)とInclusion(認知と尊重)をテーマとしたカンファレンスで、IT業界で活躍している女性やLGBTQたちが自らのキャリアを通して得た知見を共有します。「よそはよそ、うちはうち 〜自分のものさしで、好きにエンジニアやる〜 」に登壇したのはGitHub/Enterprise Support Engineerの鈴木順子氏。講演資料はこちら

「自分のものさし」で、好きにエンジニアやる

鈴木順子氏:よろしくお願いします。今日は「よそはよそ、うちはうち 〜自分のものさしで、好きにエンジニアやる〜」と題して話をします。

まずは自己紹介をさせてください。PNSKといいます。GitHub、Twitterのアカウントは、このアカウント名になっているので、よければフォローしてください。名前は鈴木順子といいます。GitHubではアジアパシフィックチームでエンタープライズサポートエンジニアをやっています。エンタープライズサポートエンジニアは、GitHub Enterpriseという製品のテクニカルサポートをしている役職になります。

GitHub Enterpriseには、オンプレ版とクラウド版があるんですが、どちらもユーザー面だと使ったことあるかもしれないんですけど、GitHub.comと同じです。ただ、管理面に関しては、企業利用にフォーカスした製品になっています。

なのでサポートエンジニアは具体的に何をしているかというと、主にオンプレ版のシステム障害の調査であったり、バグの調査であったり、あとはアップグレードのサポートをしたりしていて、そのほかで言うと、ソースコードを読んで自分たちでバグを直したり、あとはリリースしたこともあるんですが、どちらかというとインフラ寄りの知識を使うことが多い職種になっています。

これまでのキャリアについてですが、GitHubは2社目で、GitHubに入る前は渋谷にあるWeb企業に新卒として入社しました。入社するまではWeb系の知識はまったくなくて、量子科学の分野で、水素原子やヘリウム原子に電磁波を当てたらどうなるかというような……(笑)。ちょっとマニアックな研究をしていました。

約7年ほどサーバーサイドエンジニアとして、主にJavaを使ってWebアプリケーションであったり、ガラケーのアプリだったり、認証基盤を開発していました。必要に合わせてエンジニアマネージャーをやったり、プレイヤーに戻ったり、エンジニアマネージャーをやったりと、エンジニアという軸は変えてないんですが、わりと自由に役職を変更していました。

ちょうどGitHubに入社する約2年くらい前に、会社全体の開発環境を一新するような組織を立ち上げて、そこから縁があって、今から4年前に現在も所属するアジアパシフィックチームのエンタープライズサポートエンジニアとして、GitHubに入社しました。

ちょうど日本オフィスが立ち上がって半年後ぐらいで、日本語のサポートを一から始めますよというタイミングだったので、その立ち上げに純粋に興味があったのと、ずっとJava書いてたのでRubyに興味があったのと、あとインフラ寄りの知識が必要なのもわかっていたし、英語を使えるようになるんじゃないかな、とか(笑)。

あと、ちょうど結婚してしばらく経ったあとで、苗字も変わってたので、転職のタイミングで仕事上の苗字も変えて、キャリアを一から築いていくつもりで、けっこうリフレッシュした感じで、ワクワクして入ってきたのを覚えています。

GitHubの働き方と信条

今日お話する前に、私の過去の発表資料を紹介させてください。過去にあまりキャリアの話したことがなくて、女性のエンジニアのキャリアについて自分が話したときの発表資料を、今回をきっかけにさかのぼったらけっこう前で、約3年前のGeek Women Japanでした。

今回のイベントでの運営をされてるshokoさんに声をかけていただいて登壇したものなんですが、3年前と基本的に考え方が変わっていなくて、もしよければこの資料を公開していますので、合わせてあとで見てみてください。

今日のアジェンダですが、前半は私たちGitHubのDiversity, Inclusion & Belongings (DI&B)の取り組みについて紹介して、後半については私個人のキャリアの考え方について、簡単に紹介します。キャリアの考え方といっても別に大それたものはなくて、何もこだわらずに、わがままに、好き勝手にエンジニアをやってきたお話をします。

まずGitHubとは何かについて、簡単に紹介します。GitHubはサンフランシスコを拠点とするソフトウェアの会社です。本社はサンフランシスコにありますが、会社に所属するメンバーは世界中にいて、社員の約半分はリモートで仕事をしています。

そのため、仕事でのコミュニケーションはオンラインが基本になっています。ふだんのカジュアルな会話はSlackを使っていますし、なにか特定のトピックに関するディスカッションについてはGitHubのIssue機能を使っています。またマネージャーとの1on1だったり、チーム定例はビデオチャットを使用して、フェイストゥフェイスで行っています。

またGitHubは、1億を超えるリポジトリが存在する、ソフトウェアを開発するためのプラットフォームでもあります。GitHubを使うと住んでいる場所に関係なく、世界中の人々と自分のコードをシェアしたり、一緒に開発することができます。実際に世界中に住んでいるGitHubのメンバーが、このGitHubというプラットフォームをGitHubを使って開発しています。

GitHubは世界中の開発コミュニティをつなぐ拠点であると、私たちは考えています。そのため世界中の開発者にとって最適なプラットフォームをこれからも構築していくには、私たちGitHub自身がそういう世界を反映する会社になっていく必要があると考えています。

柔軟なワークスタイルがとれる

私たちが多様であることがソフトウェアの開発の境界をなくして、ソフトウェアの可能性を広げていくことを目指しています。そのためGitHubでは「Diversity, Inclusion & Belongings」という考えのもとに取り組みを行っています。

Diversity、つまり性別や人種とか、いろんなバックグラウンドの人たちを組織に入れましょう。また組織に入った人たちには、バックグラウンドに関係なく、ディスカッションやいろんなジャッジメントに参加してもらいましょう。

Belongingsは、周りからインクルージョンされたりするだけじゃなくて、本人自身がこのGitHubという組織の中で、自分のバックグラウンドも含めて自分らしく働ける、自分らしく活躍できると感じることが大切だと考えています。

GitHubには、リソースグループが4つあります。Blacktocats、Octogatos、Adacats、Octoqueerです。とくに上のBlacktocatsとOctogatosは、それぞれ黒人・ラテンアメリカの人たちにフォーカスしたリソースグループで、こういった人たちはGitHub内でもまだまだ割合がとても低くて、これからもっとハイアリングして割合を増やしていって、その上でみんなが活躍できる環境を作っていこう、というリソースグループになっています。

AdacatsとOctoqueerはそれぞれ、ジェンダー・LGBTにフォーカスしていて、これらについてもGitHub内で活躍できる環境を作るために、エンパワーするためのリソースグループになっています。私自身もAdacatsに所属しています。

Adacatsの名前なんですが、これは史上初のプログラマーといわれるエイダ・ラブレスさんの名前が由来になっています。このかわいい女の子のOctocatを見たことがある人がいるかもしれませんが、この子もそのエイダ・ラブレスさんがモデルになっています。今日もこのキャラクターのステッカー、私実はいくつか持ってきたので、よければ欲しい方は、あとで声をかけてください。

GitHubはDiversity, Inclusion & Belongingsの取り組みの一環として、ダイバーシティレポートを公開しています。実際のデータを可視化して公開することで、自分たちの課題をしっかり見つめ、改善していく意思表示としています。この情報自体は資料内にURLを書いてるんですが、Webで公開されているのであとで詳細を見ることができるんですが、ここでいくつか紹介していきます。

まずは、Geographic distribution。これはGitHubの社員がどこから仕事をしているか、ロケーションの分布と割合を示しています。ちょっと図が小さいんですが、細かく見たい方はあとでURLにアクセスして見てみてください。このデータから、約30パーセントが本社のサンフランシスコから、約20パーセントがローカルオフィスやコワーキングスペース、そして残りの約50パーセントがリモートで家から仕事をしていることがわかります。

GitHubとしては、住んでいる場所に関係なくGitHubのメンバーが価値を提供し続けられるようなワーキングスタイルを考えています。この考えは私個人としてもとてもいい考えだなと思っています。とくに今、私妊娠10ヶ月目に今日入ったんですけど(笑)、正確には今日から産休なんですけど、リモートワークのスタイルが根付いている環境だったので、家から仕事ができましたし、通勤の負担がかなり軽減できました。

今ちょうどタイムリーに妊娠中ですが、妊娠中だけじゃなくて、それぞれのライフステージや個人の状況に応じて柔軟なワークスタイルがとれるのは、とても良い環境かなと思っています。

さまざまな人種が活躍できる職場に

次にジェンダーの割合ですが、まずは全体として女性の割合は約30パーセント、また技術職に限定すると、約20パーセントになっていることがわかります。これどう思いますか? 低いですよね。なので私たち自身もあまり高い数字だとは思ってはいなくて、ダイバーシティの観点で言うともっといろんな人を入れるという意味で、女性の比率をもっと上げていく必要があるとは考えています。

次に人種の割合です。このデータはアメリカのみのデータなのでGitHubの全体の比率ではないんですが、全職種で見ても技術職に絞っても、白人のメンバーの人の比率が高いことがわかります。次にアジア人が多くなっているんですけど、このデータはアメリカに限定されているので、実際にはアジア人の比率はもう少し上がるんじゃないかなとは考えています。

そのほかを見ると黒人の人であったり、ラテンアメリカの人の割合がとても低くなっていることがわかります。先ほど紹介したリソースグループの話でもありましたが、いろんな人種の人が増えていくようにもっと改善していく必要があるかと考えています。

次にジェンダー別・人種別の2018年のデータになるんですが、プロモーション、昇格した人の割合を示すデータです。ジェンダーで見ると、男性よりも女性のほうが昇進している割合が高いことがわかります。一方で白人と有色人種では、白人の人のほうが昇進しているのがわかるかと思います。なのでプロモーションに関しては、ジェンダーについてよりも人種について改善の余地があると考えています。

日本のテック業界においては、女性エンジニアの問題がメジャーにはなってるんですが、これは日本人が日本ではマジョリティなので、人種の部分には私たち自身が気付きにくいことがあるかと思います。ただGitHubとしては、性別だけの話ではなくて、人種についても課題として考えなければいけないと思っています。

多様なバックグラウンドの人材が異なるカルチャーをもたらす

次に、GitHub全体の話をしたので、ギットハブ・ジャパンの話を簡単にします。約4年前の2015年6月くらいにギットハブ・ジャパン合同会社を設立しました。ギットハブ・ジャパンというと、日本法人内で閉じた組織体制をイメージする人が多いんですが、そういう位置付けではなくて、あくまで雇用形態として日本に住んでいるメンバーが所属している、という形になっています。

実際には、私はアジアパシフィックチームに所属していますし、私のマネージャーはオーストラリアに住んでいます。そのほかサポートエンジニア以外でも、アメリカだったりオーストラリアだったりと、チーム体系としてはとてもグローバルな形になっています。

ただし営業に関しては、ギットハブ・ジャパンをオープンしてから、日本のマーケットに対しての活動をどんどん広げていっています。ギットハブ・ジャパンのTwitterアカウントを開設し、その後ギットハブ・ジャパンのサイトやブログ、また最近ではまだまだ未完成ではあるんですが、ヘルプドキュメントの日本語化が順次進められています。さらに日本ではGitHub主催のイベントを開催したり、ワークショップを開催したりと、日本にフォーカスした活動を多く行っています。

先ほども触れたようにGitHubと別会社という位置付けではないので、ワークスタイルの考え方もGitHub全体のものと同じです。大門に東京オフィスを持っていますが、GitHubのメンバーはロケーションにこだわらずに仕事をすることができます。もちろんオフィスからも仕事ができますし、カフェや自宅からも仕事をすることが可能です。

日本に住んでいるメンバーも全員が東京にいるわけではなくて、東京以外の地域にもGitHubのメンバーがいて、それぞれが好きな場所から仕事をしています。また法律に関することを除いては、日本特有のなにか特別なルールがあるわけではないです。

ただ日本のマーケットへのアプローチだけじゃなくて、東京にオフィスがあるからこそ得られるメリットもあるなと私は感じています。例えばこの写真は、つい先日私の同僚が開催してくれたベビーシャワーの写真なんですけども、オフィスに来るとこんな感じでいろんな職種の人たちがいて、一緒になってイベントをしたり、コミュニケーションをとることができます。

とくにこのベビーシャワーは日本ではまだそんなに浸透していないイベントなんじゃないかなと思うんですが、もともとこれは日本をベースにしていない同僚が提案してくれて開催されました。

もしオフィスに日本人しかいなければ開催されなかった可能性は高いですし、こうして日本特有のイベントじゃないことをできたのも、いろんなバックグラウンドのメンバーが日本にいて、日本オフィスというみんながカジュアルに集まれる環境があるというのがとてもメリットになっているのかなと思います。

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