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世界中の開発者と共にモノづくりをするために必要な6つのこと(全3記事)

世界中のエンジニアとモノづくりをするために心がけるべきこと Part.3

2019年9月14日、渋谷ヒカリエでテックカンファレンス「BIT VALLEY 2019」が開催されました。若手エンジニアに向けて、多様な働き方や最新の技術にまつわるさまざまなトークセッションが行われました。トークセッション「世界中の開発者と共にモノづくりをするために必要な6つのこと」に登場したのは、株式会社ディー・エヌ・エーのソフトウェアエンジニアでGoogle Developers Expertの田中洋一郎氏。登壇資料はこちら

外部とのつながりを持つ

田中洋一郎氏:次、「外部とのつながりを持つ」。これは「世界の入り口ってどこだ?」というのを探すためのノウハウになるんですが、僕がやってきたことは、まず身近から始めました。

今、首都圏だと毎日どこかしらで勉強会が行われています。僕はとにかくそういったところに顔を出していました。そこで聞いたことを基に手を動かして何かを作ってみたり、ブログを書いてみたりしてアウトプットをします。

そこで終わってしまうのではなくて、今度はその成果を社内や部署の人たちに対して「僕こんなことを聞いてきたよ。おもしろいでしょ?」と、伝えていました。

そして、この“社内”という幅をどんどん大きくしていきました。さっき「自分のコミュニティを作った」という話をしましたが、それもこの活動の一環です。こうやって自分が伝える人や場所を増やしていくことで、アクティブで詳しくて「この人尊敬できるな」という人といっぱい出会うことができます。

そういった人たちができれば、もし自分が迷ったときにはそういう人に聞けるようになります。あるいは、別のそういった人たちから相談を受けることも多くなります。これをひたすら繰り返していくと、気が付くと周りが外国人だらけです。

……なんか話が飛びましたよね。でも、本当にこれを信じて続けていくと、ある日突然、実は「あれ? 周りに日本人がいない」というふうになります。

なぜかと言うと、どんどん自分が詳しくなりすぎて、知っている日本人がいなくなってしまうんですね。これは日本のすごく悲しい状況を示していると思うんですが、残念ながらやっぱりテクノロジーはほとんどが海外から入ってくるものばかりです。

なので、自分がそこまでいってしまうと、例えば日本の支社があったとしても、その支社の人たちに聞いても「本社の人にしかわかりません」という答えが返ってきてしまう。

こういう状況になれば、自然と外国の方とやり取りするしかなくなるようになります。これは、たぶん3、4年も続ければそうなると思いますので、ぜひ実践してみてください。

何かを作って公開する

次、「何かを作って公開する」。当たり前の話かもしれませんが、僕がいろんな勉強会に行ったり情報発信をしたりするきっかけは何だったのかと言うと、コンテストに作ったものを応募したことです。

コンテストがあれば誰でも自分で作って応募するのはできるし、やる気の問題なので当時は幸いやる気が出たと。

Mashup Awardsというイベントが今でもあると思うんですけど、これの3回目に僕はモノを作って応募しました。幸いにも3部門ぐらい受賞できたのかな? 賞をいただくことができたんですが、ここから「受賞したのでちょっとインタビューさせてください」と、インタビューがきます。そのインタビュー自体は記事化されて出ただけなんですけど、そのインタビュアーが、実は偶然Googleと関係のある人でした。

その方が「こんな人がいるよ」と、僕をGoogleに紹介します。するとGoogleの人に「ちょっと会ってみましょう」と言われて呼ばれて行って、何を言われるのかなと思ったら「実はOpenSocialみたいなものが出るので、ちょっとやってみませんか?」という感じで、話を聞くと「おぉすげぇ。おもしろそうだ」となって、がんばって調査をして本を出してそれが評価されてミクシィに入社したという感じです。

なので、この場合は、何かを作ってからは全部受け身ですね。なんか勝手にとんとん拍子で話が進んでいった感じなんですけど、でもきっかけは自分がやったことです。

もう1つの例を挙げますが、OpenSocialはSNS上でしか動かないので、動作確認がすごく大変でした。それだと大変なので、手元でも動かして確認する環境を自分で作ってリリースしたら、当時Googleの台湾のオフィスの人たちがそれを見つけて「これすごいじゃん! 20%ルールでしかできないけど一緒に開発しよう」と、突然メールがくるんですね。

実際に日本にも来てくれて一緒に開発をして、僕のプロダクトはGoogle I/Oで……僕が発表したわけではないですけど、発表されました。

これも、自分で勝手に作ったら外国の人が見つけてきて「一緒にやろうぜ」となって、英語を喋らざるを得なかったというかたちになります。さっきのChromeアプリでもそうですし、GDEになったのもそうです。自分で作って公開すると、それが一人歩きをして自分が思ってもいないようなことが起きるということが本当にありますので、みなさんもぜひ実践してみてください。

カッとなったときにやる

あと、「カッとなったときにやる」。「カッとなって○○しました」みたいなのってもう死語ですか? そんなことはないと僕は信じていますけど、例えば、去年の末かな? 弊社、僕は今ディー・エヌ・エーで働いていますけど、ディー・エヌ・エーのHRの中でハイアリングのシステムがすごく使いづらくて、面接をやったんだけど面接官の人が「この人こうだったよ」とフィードバックを面接の評価システムに入れたとしても、人事担当者がそれに気付けないと。

それで「すごくタイムロスをしている」という話を聞いて、「そんなのちょっと作ればできるじゃん」ということで、僕が1時間ぐらいでBOTを作って提供したら、すごく喜ばれました。

これはちょっとした話ですが、例えばmixi PlatformとかLINEプラットフォームをやっていると、いろいろなトラブルが起きます。「あ、あのアプリが悪いことをし出した」とか「突然こんな不具合が出た」とか。

みなさんがふだん作っているものでも、そうだと思うんですね。いきなり思いもよらない不具合が見つかってサービスダウンした、みたいな話はよくある話です。そのときに自分がどのように動くかというところが大事になります。

例えば、このようなグラフを持ってきたんですが、縦が事故発生率でグラフの傾向がこんな感じです。

じゃあ横の軸は何だと思います?

これは、積極的にモノづくりに関与している度合いが多ければ多いほど、やっぱり事故の発生率というのは上がるんですね。つまり、いっぱい仕事をしていて、いっぱいチャレンジをしていて、いっぱい他の人よりも開発している人であればあるほど、事故の確率は上がります。不具合を出す確率も上がります。

でも不具合を出さない、事故を発生させない人が優秀かと言うとそうじゃなくて、やっぱり事故はいっぱい発生しているんだけども、それよりもその分開発をいっぱいしている人のほうが現場で優秀と言われているはずなんですね。

なので、いっぱい失敗をして障害を出して、ちゃんとリカバリーをするというのを繰り返している人であればあるほど優秀な人だと、僕もチームメンバーを見ていてそう思っているし、そういった人たちの失敗をいかにカバーしていくかが、僕がチームリーダーをやったときのモチベーションになっていました。

なので、日頃から積極的に障害や不具合を自分が出したものでなくても取りに行くということをやっている人であればあるほど、そのあとの伸びがすごく高いです。

部下の中には、まったく関係のないチームに障害が出ていて、発生したときにその原因の調査をやっていた部下がいるんですけど、その部下と期末の評価面談をしたときに、ぜんぜん関係のないチームの障害なのに「僕はそれを防げなかった」と言って、僕は良い評価をあげたんだけど「その評価は受け取れません」と言って受け取ってくれなかったことがあります。それぐらいのストイックさを持つのが大事かなと、そのときは思いました。

英語に屈しない

最後。やっぱり世界となると日本語を喋れる人が少ないので、英語になります。僕が今どうやって英語を勉強しているかと言うと、いきなり日常会話や一般的な英語を喋るというのはなかなか難しいし、機会も少ないです。そうじゃなくて、自分が得意なことプラス英語でやっていくと続くかなと思っています。

僕はソフトウェアエンジニアなので、いろいろなチュートリアルが英語で登場してくるので、それを読んで試すというようなことをやって、日々英語に触れる、英語を読むということを欠かさずやっています。

逆に、英語を書くほうについては、日本人を無視してまずは英語で書いて海外向けに出すということを続けています。プラス、自分が何か作ったら本当に英語でしかコミュニケーションが行われていない場所に「こんなの作ったよ」と宣伝を書くと、それに対してフィードバックや質問が来て、読み書きですけど、やり取りの練習にすごくなるので、これもおすすめです。

また、エンジニアであれば、スタック・オーバーフローという技術的なQ&Aがいっぱい行われている場所があります。僕は、技術は詳しいけれども英語が苦手で、スタック・オーバーフローにいる人たちは英語とかそういったことはともかく技術的に何かを知りたい。Win-Winじゃないですか。なので、拙い英語でも「こうやってあげればいいんだよ」みたいに答えてあげると「お! ありがとう。解決したよ」とすごく喜ばれます。

こういった成功体験を繰り返していくと、だんだん自信がついてくるんですね。あとは会話ですけど、実はいきなり英語しかしゃべれない人としゃべるってやっぱり難しいですが、どんどん海外の人とやりとりしていくのが増えていくときに、(英語が)第2外国語の人が多いんですよね。なので、みんな英語を勉強してきている人たちと一緒に会話をすることになるので、自分の気持ちをわかってくれるんです。

そうすると、通じなくてもなんとか聞き出そうとしてくれるというところが入ってネイティブの人と話せるようになるので、みなさんここを勘違いしている人が多いんですが、けっこう「意外と英語の会話は、気持ちをわかってくれる人と最初にやることになるので、安心してくださいね」という感じです。

というわけで、まとめです。6点。素振りを欠かさない、外部とのつながりを持つ、居場所を探し続ける、何かを作って公開する、カッとなったときにやる、あとは英語は安心して学習してください。この6点を今日は持ち帰っていただきたいと思います。

これさえ毎日ちょっと心掛けていれば小さな島国のパソコンから世界中のいろんな人とコラボレーションをしてモノづくりができるようになるはずですので、ぜひみなさん実践していただきたいなと思います。

今日はありがとうございました。

(会場拍手)

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