戦略は目的達成のための方法論

深澤雄太氏:これが今日の本題なんですけど、「戦略的」とさっきからよく言っていますが、具体的に何を言っているのかはシンプルに、このスライドのとおりだと思っています。

戦略は目的達成のための方法論です。現代の……とくに技術が関わるような経営の現場においては、偉そうに言いますけど(笑)、目的から仮説検証の流れがほぼそのままで、すばり方法論が大事だと思っていて。

すごく使い古された表現で、すごく当たり前に聞こえるんですけど、こういう基礎的なことを高いレベルでちゃんと積み上げて継続することこそが重要だと思っています。

まず目的を設定して、現場との差分である課題をちゃんと洗い出して、現場を把握して課題をちゃんと洗い出して、その課題を解決するような仮説を考えて、実際にエンジニアが実装して、検証するところまでが大事ですね。

具体的に紹介していくと、たぶんアンダー30のエンジニアの方でいろいろな方が集まっていると思うので、こんな感じでスライドに書かさせていただいたんですけど。エンジニアの人生における目的は、たぶんいろいろあると思うんですよね。ただお金が欲しいとか、無限にコード書きたいとか、すごいプロダクトを作りたいとか。いろんなことがあると思うんですけど。

ここではとくに限定して話します。ほとんどの場合、稼いでいかないと生きていけない。どうしても、世の中の誰かのニーズに答えていかないとお金も入らないですし。どんどん苦しくなってしまうので。資本主義に還元されてしまうと思っていて。

自分がオリジナルのプログラミング言語を作ってそれだけで食っていける人はすごいんですけど、いったん置いておきます。世の中の誰かのニーズを満たすところにフォーカスして、目的を定めたほうがいいと思っています。

なので多くの場合、事業とかプロダクトへのインパクトを具体的な目標や個人のマイルストーンに置くと、エンジニアのキャリア的にはいいと思っていて。例えば、今の会社でより成果を上げたい。じゃあ具体的にいつまでに、どこの目標数値に何パーセント貢献するとか。

あと、ある技術を極めたい技術寄りの目標やモチベーションを持っている人でも、価値を生み出さない技術は淘汰されてしまうので。実際のプロダクトに入れ込んで、高速化を成し遂げたり、コストを何パーセント削減するかを見据えたりするのが大事です。

大きなプロダクトに貢献したいと思っていたら、今の会社にあるのかないのかわからないですけど、いつまでにどれくらいの規模がいるプロダクトの主要機能を一から作る経験をするとか、実際に何万人に影響を与えるとか、そういう感じで世の中へのインパクトを具体的な目標にすることをおすすめします。

現状把握と課題抽出

ここからすごく具体的な話をするんですけど、いったん今会社で作っているプロダクトの収益増に貢献することを目的として置いてみます。イメージが湧くようにあえて具体的な話をしているんですけれど、先ほども流れで書いたとおり、目的を定めます。目的の次は課題設定。課題設定の次は仮説検証なんですけど。

まず現場を把握するところと課題抽出のところを話させていただきます。目的はさっき言ったとおりです。現状把握のところなんですけど、みなさんエンジニアなのでなにかしらのプロダクトに関わりながら仕事をしていると思うんですけど。実際どれくらい自分のプロダクトをちゃんと把握しているかがマチマチだと思っていて。

会社の目標はさすがにわかります。今のユーザー数もわかります。どれくらいお金を生み出しているのか。その内訳がどうなのか。滞在時間がどれくらいあるか。その内訳はどこの画面でどれくらい使われているか。解像度を上げて具体的な数値で把握していくことがわりと重要だと思っています。

こういうことができれば自然と向き合うべき課題、世の中に大きくインパクトを与えられる課題が自ずと見えてくると思っていて。なのでスライド下に書いてるポイントのとおり、しっかり数値で把握して目標の中に落とし込むことが課題抽出、課題設定の一番重要なところだと思っています。

課題を設定したら今度は解決。それを解決する仮説を考えて、検証するところなんですけど。仮説に関しては、先ほどから述べている具体例のとおり、例えばどんなことが考えられるかと言うと、Webのプロダクトをイメージしてもらうとわかりやすいんですけど、例えば直帰率や離脱率を減らせば、ユーザーが何パーセント増えそうかがわかります。

あとは課金ポイント。「続きを読む」で課金したくなっちゃうポイントであったり、そこにたどり着く人が今どれくらいいて、何パーセント増やせば、ユーザー単価がどれくらい上がることがわかります。

あとは例えば、あるページからあるページに回遊する人がどれくらい増えたら滞在時間がどれくらい伸びるのか。そういうところにフォーカスして、実際に技術を使ってそれを解決するためのデザインや導線を変えるか。そういうところに落とし込むことができます。

いかに技術で仮設を解いていくか

スライドに書いてあるとおり、ここまで来てようやく技術の出番です。仮説をいかに技術で解いていくかを考えられる。リアルな課題解決ができると思っています。逆にこういうところがちゃんとできていないと、エゴで技術を使ってしまうことになってしまうので、かなり重要だと思っています。

ポイントとしては自分のこだわりはできるだけなくして、ちゃんとユーザーの気持ちになって……気持ちになるのは難しいかもしれないですけど(笑)。数値を見ながらちゃんと仮説を考えていけること。あとは解決策として妥当か、コスパがいいか。効果がちゃんと測定できるかを見据えて解決策を考えます。

実際にそれを検証するというところなんですけれど、これは実際に手を動かしましょう。得意なところだと思うんですけど(笑)。仮説が正しいかどうか検証していきます。今は基本的に統計的な部分であったり、データに関するリテラシーは必須だと思っていて。

インパクトを与えようと思って設定した課題を実際に解いてみて、本当に変化したのか。変化はしたけど実は意味なかったことも往々にしてあります。本当に意味があったのかをちゃんと確認します。

こういったサイクルを回しながら、目標に近づいていくことが、先ほどの方法論です。大げさに言えば、目的を定め、課題設定をして、仮説検証していく戦略思考ですかね。戦略思考のコアの部分だと思っています。

ここでは例にとどまったんですけど、今日はこのあといろんなトークでかなりリアルな課題解決がいろいろ伺えると思うのですごく楽しみにしています。

あとは補足の部分なんですけど、ここまでいろいろ経営的なところからちゃんと解像度を上げてブレイクダウンして、エンジニアリングにちゃんと適応していこうという話をしたんですけれども。エンジニア的にはマッチョで、ストイックだと思われるかもしれないです。

興味がある人ももちろんぜんぜんいると思うんですけど、興味ない人もいると思います。例えば、「自分はプロダクトの方針を決める立場にないから、考えても意味がない」と思ってしまいます。あるいは技術のほうに興味が強いのでプロダクトのことはそこまで考えられないこともあるかもしれないんですけど。

前者は背景を理解したうえで実装ができるほうが当たり前のように効率がいいです。意見を持っていたほうがチームワークするときに普通にやりやすいです。後者については、先ほども軽く言ったんですけど、技術も世の中へのインパクトが生み出せないものは消え去っていくので。その技術への興味があるんだったら、経済合理的にその技術をある程度活かしていく方法を考えたり、そういった視点も必要だと思っています。

一度こういう視点を身につけられると自分のしていることの意義がわかりやすくなるので、その分ちゃんと働きやすくなるとも思っています。

技術の高度化に順応すること

ここまで、今日の本題である戦略や経営の一番重要だと思うところを話しました。そのもとに、僕が考えた、インパクトを出すためのいくつかのポイントをざくっと紹介したいと思います。

まずは技術の高度化に順応することですね。これも過去2年間の基調講演でも言われてて、僕も当たり前のように言うんですけど(笑)。技術の進歩はどんどん高速になっていて、どんどん抽象化されていて。

1人ができることが増えているので、特定の技術にこだわらず、いろんなものをちゃんと組み合わせてリアルな課題に立ち向かえるよう、課題解決にちゃんと向かえるように、今までの経験とかもぜんぜん気にしなくてよくて。「よくて」って言うのもアレですけど(笑)。今までの経験にぜんぜん固執しなくて、あくまで目標に向かった学習や運用を目指していったほうがいいと思います。

次、環境を選ぶことですね。かなり理想的なことを言ってきた自覚はあるので、どうしてもここまで言ってきたことが通用しない環境もあると思います。なので自分の目標やキャリアに対して、ちゃんと自覚的に最適な場所に今いると思えることが、すごく重要だと思っているので。ここは自分で選び取る意識は必要だと思っています。

理由は端折るんですけど、エンジニア的に今働きやすいなと思う会社の共通点じゃないですけど。いくつかポイントを挙げています。業績が伸びている。これは重要ですし。あとは技術がちゃんと業績の根幹に関わっていて、ちゃんと理解のある会社であるところとか。

あとは現場って言うのもあれなんですけど、エンジニアがちゃんと経営目線を担保できるだけの情報が共有されている。さっき言ったような数字とかがわかんないのに、言われたとおり実装するという環境じゃないことであったり。

あとは事業に貢献できたときにちゃんと経済的なリターンがあるようなシステムがちゃんと整った会社であるかは当たり前に重要だと思っています。

経営目線を理解し、よりよいエンジニアライフを

最後になりますけれど、最後の最後でお気持ちみたいな話を入れているんですが。自ら掴み取るということで。実世界においてはどうしても技術より、事業や物事を動かせることが重宝されることもあります。例えば声が大きいやつが、「僕のほうが技術できるのに、なんであいつのほうが……」とか。言い方があれですけど、そういう局面は往々にしてあると思っていて。

僕ももともと、どっちかと言うと内向的な性格で、かなり技術技術という感じだったんですけれど。実際プロダクトを作りたいと思って世に出てお金を集めて、いろいろなアウトプットをしているうちに、どうしてもこういうことは必要だなと思って。事業を大きくするのに必要なことはなんでもやろうと覚悟を決めてやってきた経緯があります。

なので、こういった感じで事業や経営に対する理解であったり、リアルの課題に向き合うような覚悟があれば、必要なときに声を上げたり、いい機会に手を上げたりということができると思うので、世の中や会社や自分をちゃんとメタ認知して、俯瞰して、認識して、積極的に動いていくことを意識するといいと思っております。

経営目線を理解し、よりよいエンジニアライフを。ということで、基調講演を締めさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)