デザインは全員で作る時代に
クックパッドが目指す、これからのデザインとプロダクトのあり方

クックパッドが目指す、これからのデザインとプロダクトのあり方

Cookpad TechConf 2019
に開催

2019年2月27日、恵比寿ガーデンプレイスザ・ガーデンホールにて、「Cookpad TechConf 2019」が開催されました。Cookpadのエンジニアやデザイナーがどのようにサービス開発に取り組んでいるのか、またその過程で得た技術的知見について公開します。プレゼンテーション「クックパッドが目指す、これからのデザインとプロダクトのあり方」に登壇したのは、クックパッド株式会社、CEO室デザイナー統括マネージャーの宇野雄氏。講演資料はこちら

これからのデザインとプロダクトのあり方

宇野雄氏(以下、宇野):みなさん、こんにちは。改めまして、トップバッターを本日務めさせていただきます、デザイナーの宇野です。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

おそらくですね、「クックパッドのデザイナーの宇野なんて奴知らねーぞ」という方が大半かと思いますので、簡単に自己紹介をさせてください。

デザイナー統括マネージャー、UIデザイナーをしております、宇野と申します。僕はそもそもずっとUIデザイナーをしているんですけれども、最初はWeb制作会社に入りまして、いろんな受託制作をしておりました。

その後何社か通りまして、ソーシャルゲームの会社だったりとか、前職はヤフー株式会社におりました。そちらでですね、みなさんが知っておられるようなところだと、Yahoo!ニュースですとか、知恵袋、Yahoo!乗り換え案内、Yahoo!検索、そのあたりのデザイン責任者及びデザイン統括というかたちでしておりました。

本日のこのプロフィール、ハイライトはこちらです。「2019年2月より現職」、いまです。

(会場笑)

この「17」って、何の数字だと思います? これはですね、僕がクックパッドに正社員として在籍した営業日数です。

(会場笑)

みなさんとの差分は17日間です。その17日間をフルに使って、今日はお話をさせていただきたいと思っています。

もちろん、さすがにそればかりお話することはできません。私はCEO室に所属しておりますので、事業観点ですとか、デザイナーのマネージャーとして「今後クックパッドはどうするのか?」というところも自ら発信をして、ある意味決意表明をしたいなと思います。

クックパッドの今

まず、クックパッドって何の会社か? 僕がこの17日間で何を感じたかも併せてご説明をさせていただこうと思います。何の会社だと思われますか?

3つご用意しました。レシピの会社である。料理の会社である。毎日の料理を楽しみにする会社である。

僕自身も実はレシピの会社だと思っていました。多くの方にご利用いただいているレシピサービスの会社。でも、実は「毎日の料理を楽しみにする」、こういったコーポレートミッションがあります。これを目指している会社だと。本日の講演は、すべてこれを念頭に置いていただきたいと思います。

そのうえで、現在、国内で展開しているサービス群です。

実は僕がよく知らないものもたくさんありました。これだけのたくさんのサービスを持っています。新しいものでは、右の「OiCy」というIoTサービスであったり、その隣はAlexaのスキルですね。クックパッドの名前を冠していないサービスもございます。

さらにグローバルでは非常に大きなサービスになっていて、非常に勢いのある成長を遂げています。

現在4,000万人、71カ国、26言語、これもぜんぜん知りませんでした。僕の知らない国がたくさんありました。これは先日、夜中に71カ国をマッピングしていったんですが、モーリタニアも入っています。モーリタニアの場所、わかる人いますか? わからないですよね、一番左の点です。覚えて帰ってください。

真面目なお話に戻りましょう、「なぜいまこんな事業をやっているのか?」。先ほどお話しましたように「毎日の料理を楽しみにする」、これがコーポレートミッションです。

では、実際にミッションに対して、何ができたのかというところ。

この資料は、IRにも載っているんですが、月間ユーザー数5,400万人、世帯数を母数とした場合、80パーセントの世帯にご利用いただいています。ですがこれは、レシピのサイトとしての実績です。

じゃあ、さらに料理を楽しみにするということを母体として考えたとき、ユーザー体験ってどんなところなのかということを、一度みなさんと考えていきたいと思います。

料理のユーザー体験を分解する

僕が思い浮かべたことを並べてみました。実際はもっと細かく分けられますが、想像のつきやすい範囲で並べています。

朝食、昼食、夕食でそれぞれお料理されたり、それを食べたりする時間がありますが、実際はその準備や片付け、レシピを考えるといったいろいろなものが含まれていますよね。

このなかで、レシピサイトを見て解決するようなことって、案外少ないです。料理を作って食べたときの「おいしい」って、レシピサイトのものではありません。あくまでそのご家庭のなかでの楽しみでしかない。では、そういったものをさらに強く、大きくしていくためには、何ができるんだろうか? これが料理のユーザー体験というところです。

これは1日の時間軸のなかでお話していますが、切り方を考えると、さらにいろんなものがあります。

お子さんが生まれると離乳食が必要になりますが、いままで作ったことがない体験ですよね。子供に対する食育ですとか、「もっと良い材料を買いたいな」「近くのスーパーでは売ってないけど、こんなおいしい食材手に入れたいな」とか。

昨今はインスタなどのSNSに写真投稿するので、「おいしい料理ってどうやったら上手に撮れるんだろうね?」とか。もちろん健康やこだわりの調理器具、料理自体のレベルアップもあります。

そして、やはり今後に出てくるであろう環境問題もあります。食材廃棄もいろいろと問題になっています。恵方巻など、毎年のように話題に出ていますけれども、あれは局部的な問題でしかなくて、やはり日本全体でもそういったことが日常的に行われていますし、世界的にも大問題です。

料理を見据えただけでこれだけのものが、さらにもっとたくさんのものが出てきます。それをいかに楽しみに変えてあげるか。今、苦しい思いをしながら料理を作っている人もたくさんいると思います。それをどう変えていけるかが、料理のユーザー体験であると考えております。

そうなると、やはりすごいご馳走を作って「今日は張り切って作っちゃうぞ」と。そしてホームパーティーを開いて、みんなが「おいしい」って言ってくれた。これもとても大切な体験だと思います。

でも、できれば僕たちは、毎日の料理によりフォーカスしていきたいと考えています。パーティーの瞬間だけドーンと上がっても、次の日に忘れてしまったら、もったいないと思います。それならばもっと日常的に、毎日クックパッドを見ていたら、どんどんどんどん料理が楽しくなっていく。そんな体験を生めないかと考えています。

Cookpadに足りていないこと

そこで、いま、クックパッドに足りないこと、できていないこと。若干ディスりに聞こえるかもしれませんが、率直な感想として受け取ってください。

まず、先ほどご説明したように、日本ではたくさんのクックパッドのサービスが展開されています。プラットフォームであったり、リアルな部分では調理器具といったものも外に展示されています。「OiCy Taste」というレシピ連動調味料サーバーなど、ああいったものまで手を出していいかもしれない。

そう思ったときに、「これってクックパッドが作ってるんだっけ?」「へえ、そうなんだ」と本当に言ってもらえるようなものになっているのか。

逆にこれは、クックパッドという会社側の意思のお話です。「こういうふうに使ってほしい」「こんな体験を積んでほしい」、さらには「こういうふうになっていってほしい」みたいな思い。それがいま、クックパッドというサービスから他のサービスから伝わっているかな、と。

あと、「クックパッド」というのは社名でありサービス名です。ただ、そのあたりが少しブレてきてしまっているかもしれません。クックパッドというサービスを通してやりたいことを、他のサービスもそれをどんどんどんどん埋めていって、料理という全体の体験がどうやって作れるのか、そのあたりがまだ語りつくされていないんじゃないかな、僕はいまそう感じています。

端的に言うと「クックパッドっぽさ」がほしいなと考えています。

クックパッドっぽさとは何か?

じゃあ、「クックパッドっぽさ」ってどう作るんだろう? そもそも何だそれ? これは非常に難しい問題だと考えているんですけれども、1つわかりやすい例を持ってきました。

この6枚のアニメーション、見たことある方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。初めて見た方は、これ、何だと思います? これは、ディズニーのアニメーションの基本となる動きを集めたものなんですね。

なんとなくそう思って見ると、すごくディズニーっぽく感じてきませんか? 左上のアニメーションなんかは、物理的にあり得ないわけです。でも、そこにディズニーっぽさがある。単なる立方体のアニメーションからもこういったことが感じられます。

そう考えると、「見た目は違ってもいいんじゃない」というのが、まず僕が思っていることです。

左は『オレンジページ』です。右は『dancyu』です。両方ともレシピについて、これ、語っています。まったく違いますよね。

でも、根幹の思いは一緒で、その用途自体はきっと似たようなものですよね。ターゲットや届けたい体験が変わった。結局それを突き詰めていったら、こういうふうになっている。

これが実際の、クックパッドアプリの「旬(2月)」タブです。これは僕がとっても好きなタブです。右側は、Komercoです。この2つはデザインテイスト自体が違います。これはターゲット自体が異なるからですね。

でも、これ自体は問題ではありません。やはり僕らがやりたいこと、伝えたいことを突き詰めていった結果こうなっているということなんですね。

そこで考えているのが、「ふるまい」の共有化です。

いくつか挙げてみました。1つ1つは大したことないと思います。ただ、うちのサービスはこういうことを追求していく。表に出る体験からまったく出ないもの、なんなら「こんなもの見ないほうが幸せだよね」という部分までありますが、そういったところから、まずは信頼感や実績が上がってきます。

レシピの信頼性は、クックパッドが絶対に大切にしたいものです。そしてなにより、ワクワクしてもらって料理を楽しみにするために、このサービスたちは生まれています。そういった意味で、「ここを守れなかったら、クックパッドとしてやるべきことではない」といったことが、だんだんと見えてくるはずです。

プロダクトとクリエイターの関係性

これをどうやって実現していくか。プロダクトとクリエイターの関係性について少しだけお話もさせてください。僕自身はデザイナーですが、デザインってデザイナーだけがやるものではありません。僕はこれが本質的な部分かと思っております。

デザインといっても、いろんな意味があります。経営のデザインや、視覚に残らないもの、1ピクセルにこだわるものまでいろいろありますが、すべてに対して僕はこう思っています。

変な話、ある意味、夢物語みたいなところもあると思います。毎日の料理を楽しみにする。でも、それを現実にするための手段は、やっぱり技術であってほしいというのが僕の思いです。

課題解決の手法ですよね。それは僕が作ってるデザインであれ、これから登壇する各メンバーであれ、みんな同じだと思っています。

そこが足りないと、結局実現する手段が少なくなってきます。これは非常に怖いことです。「こんな世界が実現できるよね」と思ったけれども、技術が追いついていなかった。もちろん「時代的に無理だ」みたいなこともあると思いますが、少なくともその選択肢を狭めることをしてはいけないと考えています。ですから、日々の鍛錬や学習が必要になってくるわけです。

なによりも多くの人に安心して使ってもらいたい、という部分もあります。当然会社としての信頼性や内容など、そういったものもあります。そこに技術やデザインというものが深く絡んでいると考えています。

これは「BTCモデル」と呼ばれる図です。最近やたらこの話ばかり世の中に出ています。BusinessとTechnologyとCreative、この3つが合わさって初めて良いものができあがると。

こんな図もありますが、僕はできればつながっているのではなく、もう少し重なっている、もとから境界なんてなくて、すごくあやふやな部分になっている。こういう世界が実現したいと考えています。

さらにこれを付け加えます。

Business、Technologyから、Creativeに流れている。これはスキルセットの話ではなくて、実際の作っていくなかで起こっていることを可視化しました。

右側の人はユーザーさんだと思ってください。ユーザーさんが見るクックパッドというアプリの画面は、最終的になんらかデザインされています。でもその裏側には、ビジネス要件やテクノロジーの要件など、当然「そんなUI実現したくても、レスポンスはそんなに返せないわ」とか、逆に「こういうフォーマットで、もっとこういうことが実現できるよ」とか。

デザインは、最後はにデザイナーが整えるかもしれませんが、そういったものをすべて盛り込んだうえで作られているはずです。

なので、会社にとってのデザインは出口である。その画面を実現するために作っているものがあるんじゃないかと思います。でも、それを使ってくださるユーザーさんにとっては、初めての画面なんです。ゴールと入口が合わさってしまっている。これがなかなか難しいところだと思っています。

僕の前職、ヤフーのCEOをやられている川邊さんが「ユーザーにとってはデザインがすべてなんだから、そこに誇りと責任を持て」と言ってくださいました。僕はこの言葉を大事にしています。

初めて目にする瞬間、「なんだこれ」って思ったら、もう使ってくださらないです。裏にどんなに素敵なテクノロジーがあろうと、どんなに良い体験があろうと、ビジネスモデルがあろうと、そこで使ってくれなくなったらおしまいです。

そんな意味で、見た目の良さを整えるデザインももちろん大事なんですが、それ以上に、裏側にあるいろんなことを取り混ぜてUIデザインとして実現できているか。そして、それはきっとデザイナーだけが受け持つには、あまりにも大きすぎる問題だと思いますし、逆にBusiness、Technology、Creativeの3つだけではない、もっと多くの要素を含んでいると思っています。

全員でデザインを作り上げる時代に

僕は自分のブログにも書いたんですけれども、すごくたくさんの要素があると思うんです。

カスタマーサクセスだとか、そういった人たちもプロダクトを作っているわけです。「お客さんからこんなお問い合わせが来ました。こういうところで迷っています。これを解決できないか?」。それも立派なデザインですし、プロダクトに反映されるものです。

また、法務もやっぱりありますよね。とくにクックパッドは食品を扱っておりますので、センシティブな部分がたくさんあります。「これを食べたら痩せるよ」とか、当然書けないわけです。

その他にも広報もあるでしょうし、営業もあるでしょうし、BizDev、マーケティング、開発、さまざまな人たちが作り上げて、1つの画面、1つのサイト、1つのサービス、1つのアプリ、さらに言えば、この会社を作っていると感じています。

こういったものを作り上げる体制として、例えばデザインスプリントなんかはGoogle Venturesが採用した手法ですね。5日間でプロトタイプを作り上げる。これは後ほど細かい説明を後の人間がしてくれますが、こういったものも必要です。

これはデザイナーやエンジニアなど、いろいろな職種が参加するんですが、この期間中は、もう職種なんて関係ありません。役割としてはあるかもしれませんが、全員で考えて、全員で作り上げるというプロセスがあります。

また、最近は僕も初めて使ったんですがFigmaというデザインツールを採用しました。

Sketchを採用してらっしゃる会社さんも多いかと思いますが、デザイナーだけじゃなくてコラボレーションをしながら作っていこうよ、というものです。

デザインを始めた段階ではたくさんのコメントが付いていくので、一緒に作り上げた感覚が非常に強くなります。また、完成する前にいろいろな指摘をもらえるので、結果として、トータルのタイムが非常に短くなって、楽しいなと思っています。

そのように、やはり全員でデザインを作り上げる時代になりました。少なくともクックパッドはそんな会社でいなければならないと、僕はそう考えています。

ですから、これには足りないものがたくさんありますし、まだまだ実現しなければいけないものや、「こういった人と一緒に作らなきゃいけない」「こういった人と一緒に作っていきたい」みたいな、いろんな思いがあふれています。

それを実現するために、あまり簡単にいくとは思っていませんが、どんなことができるのか、僕は非常にワクワクしています。今日できることはここまでなんですが、さらにこの先いろいろな場面でみなさんに対して、世の中に対して「どうやってこんな組織を作り上げていくのか?」「こういったプロダクトを作っていくのか?」ということを発信していきたいと思っておりますので、楽しみにしていてください。

毎日の料理を楽しみにする。これを僕はデザインの力で全力で押していきます。今日の発表はここまでになります。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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