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Quality of Engineers' Life〜エンジニアが考える働きやすさ〜(全1記事)

技術者にとっての“働きやすさ”とは何か? エンジニアであり続けるために大切なこと

2018年9月10日、渋谷区文化総合センター大和田で、テックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」が開催されました。サイバーエージェント、GMOインターネット、DeNA、ミクシィの4社が立ち上げた合同プロジェクト「SHIBUYA BIT VALLEY」。その発足に合わせて、若手エンジニアに向けた、多様な働き方や最新の技術にまつわるさまざまなトークセッションが行われました。トークセッション「Quality of Engineers' Life〜エンジニアが考える働きやすさ〜」に登場したのは、BIT VALLEYを結成した4社の技術部門のマネージャーたち。サイバーエージェント執行役員の長瀬慶重氏をモデレーターに、エンジニア視点での働きやすさについて議論します。

エンジニアにとっての働きやすさ

長瀬慶重氏(以下、長瀬):みなさん、こんにちは。今日は先ほどご紹介した4名の方と、「エンジニアが考える働きやすさ」についてお話をしたいなと思っております。

実はエンジニアを取り巻く環境はここ数年、一気に多様化しておりまして、企業もさまざまな取り組みをしています。企業の取り組みと実際の現場でのさまざまなライフステージの変化が行われていますので、今回はそういったところで等身大のお話を4名の方にしていただきたいなと思っております。

テーマとしては大きく2つで、1つ目が「ライフステージの変化にどう向き合うか」というところ。2つ目が「幸せなエンジニアライフとは」。これは「長く働ける」というところも前提でのテーマになっております。

今日のモデレーターは、サイバーエージェントで今AbemaTVの開発などを見ています、長瀬が担当させていただきます。

それではパネラーの4名の方に、簡単に自己紹介をお願いできればと思っております。井上さんからお願いいたします。

井上ゆり氏(以下、井上):はい。株式会社サイバーエージェントの井上と申します。私実は、エンジニア歴16年になります。「老害」と言わないでください(笑)。

(会場笑)

私はアドテク本部というところで、リードエンジニアとしてアーキテクチャを考えたり、データ分析基盤の構築などをやっています。最近ですとRustで広告配信サーバーの実装などをやっておりました。よろしくお願いします。

長瀬:よろしくお願いします。では次、樋口さんお願いいたします。

樋口勝一氏(以下、樋口):GMOインターネットの樋口と申します。自称、日本で一番Microsoftの製品、WindowsとかOfficeを使ったインターネットサービスを提供しているエンジニアです。Windowsを追いかけ続けて、かれこれもう20何年になるんですけども。今日は少しだけ、リモートワークについてのお話をさせていただけたらと思います。よろしくお願いします。

長瀬:よろしくお願いします。続きまして、上埜さん。よろしくお願いします。

上埜かおり氏(以下、上埜):はい。株式会社ミクシィの、上埜かおりと申します。2014年に新卒で入社して、エンジニア歴5年目になります。今はカスタマー・リライアビリティ・エンジニアリング、略してCREという聞いたことのある方いるかと思うんですけど「カスタマーの信頼性を上げる」「満足度を上げる」ことを目的として開発を行っております。

ライフワークの変化周りについて、私ごとなんですけどちょうど産休・育休に入るタイミングなので、そのへんでお話できればなと思っております。よろしくお願いします。

長瀬:よろしくお願いします。では最後に、西野さん。お願いします。

西野剛平氏(以下、西野):はい。こんにちは、株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)の西野剛平と申します。エンジニア歴は15年くらいになります。もともとはゲームの開発をしていました。現在はAIシステム部っていうところで、人工知能の研究開発をしています。

主にコンピュータビジョンといって、画像周りのAIの研究をしています。今回このセッションには、育児休暇を取得したということもあって呼ばれました。その辺りの話はあとでさせていただければと思います。よろしくお願いします。

長瀬:よろしくお願いします。

ライフステージの変化にどう向き合うか?

長瀬:ではさっそく、スタートしたいと思います。「ライフステージの変化にどう向き合うか」というところで、各企業さまざまな取り組みをしています。その中でも特徴的なものを持ってきています。

向かって左側がDeNAさんの取り組みです。育児・介護のところも含めた支援制度で、9つの取り組みから構成されているというものです。またサイバーエージェントでは、女性の活躍促進制度というところで「マカロン」という制度をやっておりまして。女性が長く働き続けられる環境を作るための制度など、取り組んでいるというかたちになります。

このネット業界には20代~30代が多くいると思います。ライフステージの変化で1番最初にやって来るのが、やはり育児・子育てになってきます。先ほど上埜さんも育休を控えているというお話ありましたが、これから産休に入る上での不安とか、あと心構えや準備していることなどあれば、ぜひミクシィさんの事例と共にさっそくお話いただけるとうれしいなと思います。

上埜:はい、わかりました。そうですね、不安はもちろんあって、初めての経験なのでそこをどうしていくかっていうところと、あともう1つは育休で1年弱くらい職場を離れることになるのでブランク明けでちゃんと復職できるのかっていう不安がちょっとあります。

育児に関しては、会社の制度としてはとくに不安なところはなくて、雰囲気的にも、産休はもちろんなんですけど育休も取りやすい雰囲気になっているので安心はしています。男性社員でも育休を取られている人が結構いて、よく世間であるような育休に対するプレッシャーというものはないので、非常に安心しています。

あと制度以外で言うと、弊社だとSlackで子育てチャンネルという、お子さんのいるパパママの先輩社員の方々と交流できるようなチャンネルがありまして、そこで過去の経験談を聞いたり、自分が不安になってることとかを相談できるので非常に安心なところではあります。とくに保育園とか入園が難しいっていうところもあるので、そこのチャンネルで相談をさせてもらっていました。

あとは育休中のブランクに関してなんですけど、XFLAG スタジオで出しているプロダクトに、CREという職ではほぼすべてに関わってまして。新しいプロダクトもたぶん育休中にどんどん出てくると思うので、それについていけるかっていうところはかなり不安があります。

ただ、そこはチームのバックアップがすごく丁寧にあるので、不安なところではあるんですけど自分でもがんばっていきたいなっていうところと、仕事に関してはもう復職してからのがんばり次第だとは思うんですけど、技術のキャッチアップに関しては個人的にできるところではあると思うので、休みの間、「休み」といっても産休・育休で忙しいところではあると思うんですけど、その時間をやりくりしてうまくやっていければなと思っています。

エンジニアが育児休暇を取るということ

長瀬:男性の育休というお話ありましたが、西野さんはリードエンジニアでたくさんのエンジニアを見る立場でありながら、育休を取ったというお話を聞きました。実際、そのときのお話を聞かせていただいてもよろしいですか?

西野:はい。僕が育休を取ったのは今から2年半程前で、当時『戦魂-SENTAMA-』っていうゲームのリードエンジニアをしてました。エンジニアの数がだいたい10名くらいで育休を取った期間は2ヶ月ですね。

「2ヶ月間育休を取る」って言うと、その間に仕事をできると思われるかもしれないんですけど……「育児休暇」は、「休暇」というよりも扱い的には「休職」に近いんですね。労働基準法的にも「その間は働いてはいけない」となってるらしく。

そういったこともあって、育休に入る前に会社のPCをすべて返却し、携帯電話からの連絡手段であるGmailやSlackもアカウントを凍結されました。なので、一切仕事ができない状況になってたんです。最初はすごく不安でしたが、育児休暇に入ってみると、子育てがすごく大変で、仕事のことを完全に忘れて育児に専念できたので、逆に良かったのかなと思ってます。実際、奥さんにもすごく感謝されましたし。

あと、今回このセッションにアサインされたわけですが、その理由を担当の方に聞いたところ、「DeNAのエンジニアとして育児休暇を取得した第1号が僕」っていうことだったんですね。それを聞いて「意外だな」と思いました。もっと取ってる方はたくさんいると思っていたので。

逆に言うと、それだけ育休を取得することに対しての特別感というのはない、そういった雰囲気が会社の中に根付いてきているのかなと思います。

あと、リードエンジニアという立場でありながら育児休暇を取ったわけですけど、「育休を取る」って決めたらできるだけ早めにチームのメンバーに周知をして、引き継ぎも早くする。そうすればリードエンジニアという立場であっても、少なくとも僕が知る限り、仕事に支障なく休むことができたのかなと思っています。

何よりも、2ヶ月間というまとまった期間を、仕事を完全に離れて、家族との時間にあてられたということ自体、社会人生活においてはまずないような事なので、本当に貴重な体験だったと思っています。

以上になります。

長瀬:ありがとうございます。会社のステージでも、それぞれ取得できる・できないというのはありますけれども。お二人のお話っていうのは、いろんな勇気が出るお話なのかなと思います。

幸せなエンジニアライフとは何か?

長瀬:2つ目のテーマとして「幸せなエンジニアライフとは?」というところで。僕は今年で43になりまして、2000年過ぎくらいによく囁かれてた「35歳限界説」という言葉があるんですけれども。実は経済産業省のデータを見るとここから2020年、2030年と、30代~40代の技術者が格段と増えてくるというような状況になってきます。

これから先どんどん、35歳、40歳の技術者が増えてくる中で、先日GMOインターネットの熊谷会長がこのようなツイートをしていてものすごくおもしろいなと感じました。「福利厚生ナンバーワンを目指す」ということを言ってまして、例えば健康を気にしているエンジニア向けに24時間営業の社食を作ったり。あとクリーニングを出せるコンシェルジュを作ったり、託児所まで完備してると。こういった企業の取り組みも、すごいなぁと思いました。

実際に今日、GMOインターネットの樋口さんが来てまして。会社としてはエンジニアとして働く上で、ものすごく環境に投資してるなという印象があるんですけれども。冒頭でもあったようにエンジニアのリモートワークを取り入れる会社が増えてきてると思っていて、実は2000年前後からそういったような取り組みをやられてたというお話を聞きました。ぜひともそこらへんのお話を聞かせていただきたいなと思います。

樋口:はい。「35歳エンジニア限界説」っていう先ほどのお話ありますけども、僕もう47なんですが(笑)、GMOインターネットはじゅうぶん現役の最前線でサービスを作ってます。それくらい働きやすい環境というのは会社の中で整いつつあると感じています。

これまでのお話ですと、育休・産休というかたちでは、きちんと会社としても休まなきゃいけないはずなんですが、やっぱりリモートワークっていうのは「休暇中に果たして働いていいのか」というそもそもの話があると思うんですけども。

僕はそもそも、仕事の必要性からリモートワークを始めたんですね。2000年に僕が入社してGMOインターネットでWindowsを使った日本で初めてのホスティングサービスみたいなものを始めました。

サービスを作ったあとはもちろん運用っていう仕事が発生するんですけれども、当時Windowsエンジニアは社内で僕1人だけだったんですね。それで、もちろん24時間365日サービスを提供しなきゃいけないんですけれども、昼夜構わずトラブルが起きたときは対応しなきゃいけません。

そのたびに夜中、車飛ばして会社のデータセンターまで行って直さなきゃいけないのかっていう。そんなのありえない仕事のやり方なんでどうしても「リモートでなんとかしよう」という。当時まだ回線が今ほどはよく整ってなくてとっても細い回線でWindowsの画面を呼び出して、一生懸命リモート操作した覚えがあります。

そんな中で2009年ごろから、Windowsのデスクトップをインターネット上に展開して、みなさんに使ってもらおうっていうサービスを始めました。ちょうど2011年に東日本大震災が起きたときに、GMOインターネットグループのスタッフがほぼ数日間にわたって出社できないという状態がありました。

そのとき会社としても危機感がありまして、ちょうど私が提供していた「デスクトップを使ってもらう」っていうサービスをすぐに転用して。社内のネットワークに入れるような環境を作って、全社的に出社できないような状況でも仕事がリモートからできるんですよというのを会社に意識づけられたのが、震災をきっかけにありました。

震災がきっかけになったリモートワーク

樋口:その震災をきっかけとして、GMOインターネットグループ全体では今、年に1回防災訓練の企画として「全社員がリモートで1日社外から仕事をする」っていう訓練をしてます。その訓練の甲斐があって、上層部も「全員がリモートでできる環境・制度を整えなきゃいけない」という、そういう意識づけが最近できてきました。

ただ「リモートワーク」と一口に言っても、コードを集中的に書いてるような人の仕事に関しては、時間も場所も選ばないで仕事ができるので非常に効率が良いんですけれども、会社側からしてみると健康管理とか勤怠管理っていうところの問題もあります。

リモートワークを利用する側にとっても、やっぱり自己管理はとても重要なファクターになってきます。会社側としてはリモートワークをきちんとできるだけの環境を整える・制度を整えるということが今後、さらにリモートワークを利用できるようになるために必要なことだと僕は考えています。

長瀬:はい、ありがとうございます。井上さんは女性エンジニアとして、16年のキャリアを積まれていると聞きました。実際にこれまで、もしくは今後も含めて、エンジニアであり続けるための工夫、やっていることなどあれば、ぜひ教えてください。

井上:エンジニアにはいろいろなタイプがいると思うのですが、モノづくりに喜びを見出すタイプのエンジニアもいるんですけれども、私はそうではなくて。英知を駆使して問題を解決することに喜びを見出すエンジニアなんですね。

なので業務のほかに、自分の武器である情報を収集したり、知識を得たり技術を研鑽することに時間を使って、いつでも最適解で問題を解けるように準備をするよう心掛けています。

若いエンジニアたちへのメッセージ

長瀬:ありがとうございます。最後に、時間も迫ってきていますが、今日、若いエンジニア、学生の方も多く来ておりまして。みなさまから1人ずつ、簡単にメッセージをいただけるとうれしいなと思います。西野さんからでいいですか?

西野:はい、じゃあ僕のほうから。先ほど樋口さんのほうからリモートワークの話があったと思うんですけど、DeNAの僕がいる部署でも、リモートワークが認められてます。

僕も積極的に活用してるんですが、けっこう思うところはあって、自宅で作業を行うという事は、休日自宅にいるのと物理的な場所は同じになるので、仕事と休日の境目は曖昧になりがちです。人によっては夜遅くや休日もダラダラと仕事を続けてしまったりということもあります。

つまり、休みと働く日のメリハリがなくなってくるんですね。なので、働き方の多様化が進むにつれて、時間管理などの自己管理能力が求められてくると思います。これからエンジニアを目指す方は、エンジニア的な技術スキルとともに自己管理のスキルも身に付け、これからのエンジニアライフを満喫してください。以上です。

長瀬:すばらしい、ありがとうございます。上埜さん、お願いします。

上埜:はい。私はちょっと学生さん向けのメッセージになってしまうんですけど、ぜひインターンとかバイトとかをやってみてもらいたいなと思ってます。私は残念ながらというか、もったいないことにぜんぜんやってなかったんですけれども。

会社を選ぶにあたって自分がやりたいことができるとか、育休だったりフレックスができる・リモートワークができるっていう制度が整ってるのはもちろんなんですけど、そういう制度がちゃんと良い雰囲気で使えるかっていうのとか。あと、やりたいことが抵抗なく受け入れられる会社なのかってことは雰囲気を見ないとわからないと思うので。

実際に会社の中に入ってみて、学生時代の自由が効くうちに、できる限り多く経験してみて選ぶ幅を広げておくことができれば、より自分に合った会社に出会えると思うので、ぜひインターンとかバイトに行ってみてください。以上です。

長瀬:ありがとうございます。樋口さん、お願いします。

樋口:これからのサービスづくりというのは、今まで僕たちが作ってきたようなサービスではなくて、AIを入れてみたり、今まで考えもつかなかったようなサービスがこれから生まれてくると思います。

それに合わせて、みなさんがこれから社会人になって働くとなった場合に、やっぱり僕たちが思いつかなかった働き方、エンジニアリングの価値を生み出す方法というのが、きっと出てくると思うんですね。

そういうのをぜひ、この渋谷の企業に入社していただいて。みなさんの力で新しいサービス・新しい働き方というのを作りだしてもらえたらと思います。よろしくお願いします。

長瀬:ありがとうございます。最後に井上さん、お願いします。

井上:はい。これからエンジニアを目指すみなさん、既にエンジニアになられているみなさん、楽しくて底なし沼のエンジニアリングの世界が、みなさんの一生の相棒になることを願っています。私たちと一緒に、楽しいIT業界を盛り上げていきましょう。よろしくお願いします。

長瀬:素敵なメッセージでした。ありがとうございます。私、2005年にサイバーエージェントに入りまして、けっこうネット業界を比較的長く見てきてますけれども、実はもう終身雇用とか、1つの会社に縛られるような時代ではなくて。まさしくエンジニアが、自分が働くステージ・会社を選ぶ時代になっているというふうに思っています。

もちろん企業は、エンジニアにとって挑戦ができて安心できる環境を作っていくというところが大事ですけれども。若い技術者の方は、例えばスタートアップで思いっきり無茶をしたい、今のステージになったらこういうステージの会社でこういう環境で働きたいと。エンジニアは選択がものすごくできる時代になっていますし、これから5年、10年経つとさらにそれが加速すると思います。

ぜひみなさん、自分が今どういうチャレンジをしたいのかっていうことを、自社、もしくは業界内を常に見て、さまざまなチャレンジをしていけるといいのかな、というふうに思います。我々企業はそういった機会を後押しできるように、ますます制度のほうを拡充して、この業界を盛り上げられるといいかなと思っております。

コンパクトなセッションでしたけれども、本日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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