2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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Jessica Collier氏(以下、Jessica):UXライティングを誰がして、どういうことをすればよいかというのは、いまひととおり話しましたが、良い例と悪い例をいくつか見ていきましょう。
いくつか例をお見せしていきます。どのようにすればこの例を改善できるか思い付く人がいればぜひ会場から発言してください。
これはエラーメッセージです。このエラーメッセージの悪いところはなんでしょう? ここで今何をしてほしいのか?
(参加者回答)
Jessica:とても長い。エラーメッセージというのは短く明確に何が間違っているかを伝えて、それを修正してもらうというのが本来の目的なんですね。
(参加者回答)
Jessica:なぜユーザーにしてほしくない、おすすめしない選択肢が最初から入っているのか。
ほかには?
(参加者回答)
Jessica:エラーメッセージなのに質問がされている。しかも右下にOKというボタンが置いてある。
Phil:これはEvernoteのエラーメッセージです。
(会場笑)
Jessica:これはEvernoteのエラーメッセージです(笑)。Philが書いたかもしれない(笑)。
Phil:なにか間違っているときというのは、1個間違っているより10個20個間違っていることが多いです。
Jessica:なので紐を引っ張ると全部崩れ去るというような状況になっています。
次です。「このルールはルールにエラーがあるために保存できません。ルールを編集し、もう1度ルールを保存してください」。
ここでユーザーが何を間違えたか伝えられていると思いますか? 伝わらないと首を横に振っているみなさんはそのとおりです。ユーザーが達成したいことをまったく助けられていない文言になっています。
これをトートロジーと言います。ロジックで循環して同じものに戻ってしまうという表現です。「エアーがあるのでエアーがあります」という言葉づかいになっています。これは非常に悪い例です。
では、これの悪いところはなんでしょう? このあとに良い例も見せますのでご安心を。
「オプトインしなければ、5月25日以降はメールをお送りしません。オプトインをしてズームと一緒につながりましょう」「はい、オプトインします」「はい、オプトインしますが月1にしてください」。
選択肢が2つあります。どっちもYesから始まっています。
(会場笑)
メールがいらないという選択肢が存在しません。YesかYesしか選択肢がない。ユーザーを結果的に騙すような行為をしています。
これは私の使っている銀行です。私はこの銀行が大好きです。ただこれだけは許せません。見るたびに爆発しそうになります。
どの箇所か判別が難しいかもしれませんが、こちらのTILEという表現部分が問題です。TILEというのはUIの要素の1つです。カードみたいな意味の専門用語ですね。なんでわざわざそんな特殊なUIの要素の名前をユーザーが覚えなければいけないのか。
(参加者回答)
Jessica:顧客はみんなUIデザイナーではないから、TILEという言葉を知らない人が大多数だと思っています。これはユーザーのことを考えていないという例です。開発者がインターフェイスのコピーを書いているけれども、自分の世界に閉じこもって出してしまった例です。
これはGoogle Docsです。私はよくこれを使います。いつもタブが大量に開きっぱなしです。
Google Docsを開いてそのあと離れて何日か放置して、戻ってきてそのGoogle Docsを共同編集でほかの人が編集していたとします。そのときにこのメッセージが表示されます。
これはメッセージとしては「あなたぜんぜんこのファイル見てなかったでしょう」というメッセージです。実質的に「あなたの同僚のほうがこのドキュメントでは仕事をしていますよ」というメッセージになっています。なにもしてなかったからこそ「リロードしてください」というメッセージになってます。
ここはまさに言い回しと言い方、表現の柔らかさが重要になってきます。生産性を上げるツールがあなたの仕事だとしたら、ユーザーに罪悪感を与えないようにするというのが実は重要になってきます。
Headspaceを使っている人いますか? 月額サブスクリプション型の瞑想アプリですね。HeadspaceはUXライティングが非常に上手なサービスです。
この画面はスマホへの通知の許諾許可を得るようにしている画面です。あなたを邪魔する許可をくださいという画面です。この画面では、なぜその通知、邪魔をするかというのを明確に伝えるメッセージが入っています。
毎日15時に瞑想しようということを覚えていられることが少ないだろうと。通知をオンにして邪魔をする権利を与えることで、毎日15時に瞑想することを思い出すことができるだろうと伝えています。
次は、法務書類ですね。プロダクトを開発しているときに弁護士とやりとりをしていると、言葉は非常に混乱しやすくなります。
Pinterestはこれらを非常に上手に扱っています。これがすべての文言で、言わなきゃいけないのはこれだけです。法律上言わなければいけない要素としてはここにすべて入っています。
最後に英語で全部説明します。利用規約の内容のサマリーを毎回すべての項目に足してわかりやすく説明してくれています。
残念ながらこの例はこれで終わりなんですが、ほかの人のアプリを茶化すのは意外と楽しかったというのを思い出しました(笑)。
(会場笑)
最後にUXライティングに興味がある方向けに、こういったリソース・参考情報があることをお伝えしておきます。
私自身が役立つと思った本や記事やスタイルガイドなど、数は少ないですがここにまとめさせていただきました。1つは私の記事です(笑)。気まずいですが一応入れておきました(笑)。
(会場拍手)
司会者:このあと質疑応答に移ろうかなと思いますので、この機会にJessicaに聞いてみたいことがある人がいらっしゃいましたら手をあげてください。翻訳もしますので日本語で言ってもらってもぜんぜん大丈夫です。
(会場挙手)
ではそちらの方。
質問者1:よくWordPressのプラグインを翻訳するんですけれども、英語から直したら妙に饒舌になってしまったり、逆だったり、意味がわからなかったりすることがよくあるので、とくに英語からCJK(Chinese Japanese Korean)の言語に移し替えるときにどういう考え方でアプローチすればよいか。
完璧に理解しあうのはおそらく難しいので、開発者との間で一番彼らが言いたいこと、かつ日本人にとって使いやすいかたちであるときにどのような点に注意すればよろしいですか?
Jessica:プラグインを作った人と直接会ったりできますか?
質問者1:はい、できます。
Jessica:ローカライゼーションというのは非常に共同作業が発生するものだと認識しています。そのまま直訳をするのではなく、意味合いを理解してもらうのが実は重要だと思っています。
通訳:最初に仕事に入る前に何度も何度も彼らが言いたいことをちゃんと調整しなければいけないので、何回もやりとりがあるということを最初に念を押したうえで仕事に入ったほうがいいと。
「翻訳してね」「はーい」でファイルを送って終わりじゃないんですよということで始めないと、おそらくトラブルになりますねという、そういう回答でした。
質問者2:はじめまして。日本の企業でデザイナーとして働いているんですが、初めてUXライターという言葉を聞きました。UXライターについてすごくおもしろいなと思ったんですが、サンフランシスコではUXライターはどのような企業と、もしくはどういう人たちと仕事をしているのか聞きたいです。
Jessica:いろんな役割、機能をもったチームと私は今活動をしているのですが、インタラクションデザイン、ビジュアルデザイン、イラストレーター、UXリサーチ、UXライティング、みんなで一緒に作業をしています。プロダクトを作るのはそのやり方が1番いいことを学んだからです。
質問者2:その中でご自分の役割としてはどういうポジションですか?
Jessica:初期のプロダクト戦略そのものに関わっているという感じです。あとは使用している言葉の本当に細かいところまで突き詰めることをしています。
質問者2:ありがとうございます。
Phil:Jessicaの仕事を少し追加で説明します。私たちは部署が6つあります。1つはプロダクト事業部で、Jessicaはそのすべてを担当しています。
役割は3つあり、デザインすべて。ユーザーテストすべて。ブランドに関連するものすべて。
プロダクトデザインとブランドを一緒にするのはすこし特殊だと思われます。よくブランドはマーケティングに配置されるのですが、ブランドとプロダクトは関連性が非常に高く、プロダクトこそブランドであるという考え方ができると思っています。
その中で今、Jessicaは16人のチーム、最も大きい部署を抱えて活動しています。
質問者3:お話ありがとうございます。私も多言語対応をしているサービスに携わっているのですが、例えばロシア語やポルトガル語などを翻訳するとものすごくテキストが長くなってしまうことがあります。
そういうときの対応として意訳するか、「……」で丸めるか、その言語のときだけデザインを変えるという判断になるかなと思っていて。例えばそのときだけデザインを変えなければならないという判断をどういう基準でジャッジされているのかなというところをお聞きしたいです。
Jessica:ロシア語は非常に難しいです(笑)。すごく大変です。あちらの方にも説明したように直訳がうまくいった試しはありません。UXライティングの意味合いとしては、プロダクトコンテンツがどのように変化するかも含めて戦略に最初から組み込む必要があります。
インターフェースの渡された部分に、触れてはいけない「聖域」みたいなものはないと私は思っています。そのインターフェイスを使う人が実際に使ってくれるように考えることこそが重要です。
Tシャツのフリーサイズのように「これで全員着れるでしょ」というものはなく、アメリカ版を作ったからほかのところにそれを使い回すというのはできないと思っています。
なのでコンテンツがデザインを左右する。その逆は起きないという流れができ始めているのはそれが理由だと思います。
コンテントエレメンツというものには非常に良い基準がありまして、まったく要素の違う言語へのローカライゼーションをどうするべきかというのを説明しているものがあったりします。
質問者3:ありがとうございます。
質問者4:私はWebサービスを作っている会社のUXライティングをやっています。まだ会社としてUXライティングの歴史が浅くて、これから画面文言ガイドラインみたいなものを作ろうとしているんですけれども。それをどうやって作っていったらいいかなというのをお聞きしたいです。
最初に言葉一つひとつにこだわるのがいいのか、それともプロダクトマネージャーやUXリサーチを巻き込んで作っていくのがいいのか。ガイドラインの作り方のコツをお聞きしたいです。
Jessica:非常に重要なタスクです。私の経験上、独裁体制で「この言葉を使え」というのはうまくいかないと思っています。なぜなら彼らは無視できてしまうからです。
ただ、みんなで取り組むという流れを作り、プロダクトマネージャーやカスタマーサポートのみんなが「その言葉いいね」というものにたどり着くことができれば、その時初めて各人がそれを積極的に使うようになります。
みんなアドバイスやコンサルティングは受けたい。デザインチームにいたら知ることがなかったものをまとめることができます。
質問者4:Thank you very much.
質問者5:UXライティングの文化がない会社があるとしたら、そこにUXライティングの文化を導入するときに気をつけたほうがいいことはありますか? また、評価のメトリクスがあればお聞きしたいです。
Jessica:UXライティングの文化がないところには、UXライターというよりは問題解決の部分を見せて、ユーザーの離脱に文言がどう関連していることを示すやり方があります。
どこで離脱しているか、どのフローでリレーションが落ちているか。答えとしてはいろんな理由でみんな離脱しているんですが、1つだけということはありませんが、ほぼ確実に言葉が関連している問題はあります。
UXライティングが提供できることは、そういう脱落しているユーザーが、ある文言、ある表現によって脱落していることを分析することで、解決策に直結させられます。
広義のプロダクトデザインになるんですけれども、デザイナーの前に上司が出てきて「この緑色が嫌いだ」みたいな言い方をする人もいると思いますが、それはデザインの機能としてはぜんぜんよくないものです。
デザインで重要なのは、どの部分で問題解決ができていないかを明確にする言葉。UXライティングはそこに影響しています。
質問者5:ありがとうございます。
質問者6:UXライティングにおいてフォントを選んだり、タイプフェイスを選ぶことというのはどれくらい重要でしょうか? もし重要だとしたらなにかおすすめのTipsを教えてください。
Jessica:とても重要です。UXライティングがコンテンツデザインと呼ばれる理由があるんですが、キャッチコピーやコンテンツというのはすべてユーザーのために存在しています。なので非常に大事です。ビジュアルデザイナーや社内にいるほかのデザイナーと仲良くしておく必要もあります。
Phil:我々はフォントこそ重要だということで、All Turtlesのロゴも文字だけにしたという経緯があります。
質問者7:今日はありがとうございました。ユーザーがふだん使っている言葉をUXライティングに使うといいというお話があったと思いますが、プロダクトを提供するユーザーに属性に幅があります。若いとか年を取ってるとか、男とか女とか、どんな職業に就いているかとか。
それによって使われている言葉はかなり変わってくると思うんですが、最終的にどうやってプロダクトに使われる言葉を選択するのか。調べ方や評価の仕方があれば教えてください。
Jessica:いい質問ですね。様々な人がいるというのは当然のことです。なので、例えばカスタマーサポートのクレームメールとかを見たときに使われる言語のパターンを参考にすることができます。
ユーザー全体で共通となる言葉、共通の文化みたいなものを分析するように意識しています。例えば文面の作り方がほかと違ったり、話すトーンが違ったり、共通する単語や言い回しといったものが存在しています。
インターフェイスはある画面に関する、ある機能に関する部分というのをどのように表現しているかというところに共通項があります。その共通言語をプロダクトに反映させることで、よりわかりやすくしてあげる。
言葉そのものを使うというより、情報収集してそれを使っての解釈が重要になってきます。そのあとにそれが本当かどうかテストします。
私の判断で言葉の最終決定ということは1度もしません。実際のユーザーの前にそれを出して、それを理解してもらえるかというのを確かめる作業を必ずします。
質問者7:ありがとうございました。
Jessica:OK. Thank you so much.
(会場拍手)
Phil:みなさん、ありがとうございました。通訳の浅枝、お疲れさまでした。ありがとうございました。
(会場拍手)
発表が1つあります。我々はすべてのポジションにおいて積極的に採用を行なっております。デザイナー、UXライター、エンジニア、プロダクトマネージャー、いずれもあらゆる職種を募集しております。
そして全世界で仕事をすることができます。いま東京、パリ、サンフランシスコにスタジオを構えていまして、働く場所を自由に行き来することができるような文化を調整しています。
プロダクトを作りたいという方々ともぜひ話したいと思っています。女性の社員の方も非常に積極的に採用したいと思っています。我々のテクノロジー業界の1番の課題としては女性比率が少ないことというのを感じています。それを変えることも目指したいと思っています。
どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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