CLOSE

デザイナーのキャリアと働き方 〜バックグランドから紐解くデザイナー像〜(全6記事)

「デザイナーという肩書きを捨てていると思う」 当事者たちが語る、5年後のキャリアと働き方

2018年3月29日、3331アーツ千代田にて、株式会社rootが主催するイベント「Service Design Night Vol.6」が開催されました。今回のテーマは「デザイナーのキャリアと働き方 〜バックグランドから紐解くデザイナー像〜」。登壇したのはIT業界で活躍する現役のデザイナー4名、そしてモデレーターにinquireのモリジュンヤ氏を迎え、デザイナーのキャリア論を紐解きました。パネルディスカッションでは、登壇した4名のデザイナーが、それぞれ自身のキャリアを振り返ります。

デザイナーの数が圧倒的に足りていない

モリジュンヤ氏(以下、モリ):メドレーもコイニーと近いというか、事業会社の中でデザインチームがいて働いてきたんだと思うんですけど、その組織体制だったり、デザインチームがこう動いています、そのなかでこういう課題がある、このへんがうまくいっていないということはありますか?

小山敬介氏(以下、小山):メドレーは、開発本部の中にデザインチームがあって、僕を入れて3人で回してるんですけど、1事業1デザイナーみたいな感じです。

モリ:僕の記憶が確かだったら、事業4つありましたよね?

小山:4つあります。「介護のほんね」は今不在。

モリ:1つの事業だけ不在。

小山:それ以外の事業にそれぞれ1人ついています。全社員が今250人ぐらいいて、私が担当している事業部には、そのうちの150人弱ぐらいが「ジョブメドレー」に関わっています。

モリ:はいはい。

小山:デザイン担当は1人なんです。

モリ:圧倒的に少数ですね。

小山:そうですね。その中で施策を考えるディレクターが7人ぐらいいて、開発を行うエンジニアがだいたい7人ぐらいいる。間に僕が1人という感じです。古里さんと同じように人員がたぶん足りていないという。

モリ:デザイナーの人が増えればいいのか、それともやりとりする部署、ビジネスサイド、開発の人たち、経営層みたいないろいろ社内で人がいると思うんですけど、そのへんとデザインの人たちのコミュニケーションとか位置付けはなにかありますか?

小山:そうですね。そこは、取り仕切る人……プロダクトマネージャーであったり、事業部長がしっかり陣頭指揮をとるので、その指揮にもとづいてディレクターなりデザイナーなりエンジニアが動いていく。そこはしっかりしています。

僕はどちらかというとプロダクトマネージャーとずっとコミュニケーションをとって仕事を進めるという感じですね。

モリ:チーム全体というか組織全体として、デザインに対する理解度だったり、配慮するみたいなことは、手応え的には?

小山:みなさん目が肥えているというか、デザインに対しては厳しいです。「デザイナーしませんか?」という方、たまにいらっしゃるので(笑)。そのへんは挑戦しがいはありますし、楽しく厳しく環境ではあります。

モリ:本当は人数がもう少しいると……?

小山:助かります。ただ事業規模に対して本当に人が足りてないとか足りてるとかっていうところを話したい。でも、肌感では「もうちょっと人いたらなぁ」とは思います。

モリ:なるほど。ありがとうございます。

デザイン部会で横のつながりを調整していく

モリ:三古さんのところだと、THE GUILDさんは有名なのであれですけど、組織体制やデザイン……デザイナー以外にもいらっしゃるんですよね。

三古達也氏(以下、三古):そうですね。エンジニアの方もいますし。

モリ:そのへんの組織の体制、デザイナーの動き方みたいなのは……今(入社から)3ヶ月ぐらい?

三古:そうですね。3ヶ月。

モリ:3ヶ月なので、軽くで大丈夫ですけど。

三古:そうですね、悪いところから言うと……。

モリ:いいですね(笑)。

三古:はい(笑)。THE GUILDって、さっき言ったように、自分で会社を持っている方やフリーランスの方の集まりなので、横のつながりが少なかったようなんです。

同じ場所で仕事をしているし、同じTHE GUILDの人として仕事をしているんだけど、「あの人と仕事したことない。なにやってるのかわからない。どういうふうにやってるのかもわからない」という状況だったらしいんですね。僕が入る前ですけど。僕が入ったことで……僕の使命は「みんなをつなげる架け橋になれ」と言われています。

働き方としては、コアメンバーと言われる方が何人かいらっしゃるんですけど、その人たちについて仕事を一緒にしていく。その案件が終わったら、次の人について仕事をしていく。いろんな人を渡り歩いて、いろんなデザインの仕方、そのスキルを渡り歩いて学んで発表しろと言われていますね。

週に1回、「デザイン部会」というデザイナーが集まってお悩み相談などをする時間があるんですが、そこで「どういうことがあった」「こういうことがあった」「これがわからない」といった話をすることができるんです。こういった機会を通じて、今自分が良くないと思っているところを、これからどんどん改善していけるんじゃないかなとい思っていますね。

モリ:そのへんの課題はあったけれど、そういう「こうすると改善されそう。解決できそう」を「やりましょう!」ってなるぐらいの柔軟性というか、ネットワークの軽さみたいのはある?

三古:そうですね。あと、いろんな案件が同時に走っているので、「こういうことがあったよ。このノウハウ他で使えないか?」とか。

色盲の方に向けたデザインというのを普段する機会ってあまりないと思うんですが、たまたま担当している方がいらっしゃって。「色盲というのは何なのか?」という前提から、「こういうツールがあります。こうやって解決していきます」「実際にデザインとしてはこういうふうに落としました」というプロセスを全部教えていただいて、それについて話し合う時間も、ノウハウの共有もすごく濃いんです。

モリ:ありがとうございます。

デザイナーだって経営やビジネスがわからないといけない

モリ:時間がもうちょっとで、あと1問だけ聞いて、あとはみなさんから質疑を受け取る時間を増やしたほうがいいかなと思います。

未来の話というか「この先どうする?」という話で、こういう質問を入れてたんですけど、もし触れられそうだったら触れつつ、「5年後こうなってるといいかな。こういうことしていたいな」などを、それぞれシェアしていただけるといいなと思います。

どなたからいきましょうか。「すぐいけるぜ」って人います? 大丈夫ですか? じゃあ、お願いします。

三古:今の話の続きで、THE GUILDはプロフェッショナルな方が集まっているのですが、そういう方々、THE GUILDのコアメンバーで一番年齢が低い方というのはちょうど僕の5個上なんですよ。33歳ぐらいなんですけど、「あそこまでは追いつかなきゃな」と思っています。

自分で会社を持って、大きな案件を回して、デザインもできるし、エンジニアリングもできるし、アートディレクションもできるし、「なんでも」なんですが、やっぱりそういう方々を見ていると、追いつかなきゃいけないし、追い抜かなきゃいけないしって、すごいプレッシャーがあります。

THE GUILDの名に恥じないデザイナーにならなきゃいけないですし、デザイン以外のスキル、プログラミングでも数値解析でもUXでも、そういう複合的なスキルを持っていたいですね。5年後までに。

モリ:5年ぐらい上の今、THE GUILDの最年少だった人という、その人たちを目標にしつつ、スキルセット的にはわりと複合的にデザイン業務以外のところ、デザインワーク以外のデザインに関係することをいろいろと習得できる、できた、というところですね。

三古:そうですね。そういう方が多いですし、すごく楽しそうに仕事しているので、なりたいなと思います。

モリ:ありがとうございます。次、5年後いかがでしょう? じゃあ松本さん。

松本:そうですね、5年後……まだイメージが湧かないですけど、デザインが持っている力、デザイナーとしての力を社会に向けたいなとは考えています。

もともとなんか「デザイナー村」みたいなものがあって、そこのグループで「いいね!」し合うみたいなところから、いや、むしろデザイナーは経営やビジネスわからないとダメだよねって、たぶん経営側に引っ張り出されると思うんですよ。

でも、そこでもっと考えなきゃいけないのは、デザインは道具として今まで消費社会の片棒を担いできたようなことをやってきて、その力をちゃんとポジティブな方向に向けたいなと考えています。

そこでその力をちゃんと社会に向けるという上で、自分が事業を考えて、それをちゃんとデザインまで落とし込むということをやりたいなと思ってたんですけれども、それだとちょっと効率が悪いなっていうのを最近思っていました。

それよりも、NPOとか社会的課題を解決しているような組織のためにデザインの力を使うほうが良い。まだまだデザインの力でより良く変えられる部分は多いと感じていて、そういった分野に注力していけるような会社を立ち上げたいなというのは考えています。

モリ:5年ぐらいには、じゃあそういうのが活躍してる状態で。

松本:はい。

モリ:ありがとうございます。

「サービスを作る人。強み=デザイナー」という肩書

モリ:じゃあ。

古里:はい、そうですね。なんでしたっけ? NYAGOでしたっけ? この前リリースされた新しいアプリ。

モリ:昨日でしたっけ?

古里:あ、そうそう。「Talkroom」というのもあるじゃないですか。20歳そこそこの人たちがサービスをがんがんやっていて、すごく不安になるんですよね。「自分はこのままデザイン続けてても大丈夫なのかな?」と悩んでます。

5年後は、デザイナーという肩書きを捨てていると思います。たぶん5年後の肩書きは「サービスを作る人。強み:デザイナー」という感じになっていると思うんですよね。サービスをがんがん作っていく人になりたいです。

モリ:それは、さっき三古さんが言っていたような、複合的なスキルを習得していくみたいなことに近いですか? それとも事業を立ち上げるとか、経営の近くをやるとか。

古里:三古さんの型で言うと、僕が言っているのはおそらく「デザイン×経営」「デザイン×新規事業の立ち上げ 」という感じですね。

モリ:デザインの強みを持ちつつ、「それでなにするの?」というところ、そういう新規事業を立ち上げるところをもっと力をつけていきたいということですね。

古里:そうですね。今度はなにか自分でデザインして作っていくのがいいかなと思っています。5年後。

モリ:ありがとうございました。小山さん。

小山:かなり近い感じでしたね。5年後を考える前に、「5年前はどうだったか?」というところを考えたときに、主に手作業というか泥臭いことをやってたなという。

今、ではどうかというと、手作業ももちろん続いていますが、突き詰めて考えるという点で、今やっている施策の先が今後どうなるかというのを本当に考えるようになってきています。それがたぶん次の5年後になると、おそらく「考える」メインになるんだろうなと思います。

モリ:なるほど。

小山:その時は、それこそ経営であったり、医療の現場と密接につながるような取り組みであったり。

デザインという枠だけじゃない、考え方で仕事をしていきたいなって。抽象的ではあるんですけど、デザインから良い意味で離れていくことをやっていきたいなと思います。

モリ:みなさんデザインから離れるじゃないですけど、再解釈したり、デザインのフレームから外れるというか、出ていくというのを志向されている感じ?

古里:そうですね。

モリ:ありがとうございました。もうちょっと掘っていきたいんですけど、時間がかなり経ってしまったので、このあとちょっと時間を作ってから質疑の時間にしたいと思っています。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 今までとこれからで、エンジニアに求められる「スキル」の違い AI時代のエンジニアの未来と生存戦略のカギとは

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!