コイニー株式会社とサイドワークでデザイン活動する松本氏

司会者:では続きまして、松本さん、お願いします。みなさん、拍手でお願いします。

(会場拍手)

松本隆応氏(以下、松本):コイニー株式会社、リードデザイナーの松本と申します。よろしくお願いいたします。

今日はみなさん、最初のチェックインで和気あいあいと話されていて、「もう登壇者いらないんじゃないか?」って古里さんと話していたんですけども。

(会場笑)

松本:モリ(ジュンヤ)さんの巧みなモデレートで、参加されている方々の距離感も近くなって、これから密度の高い話ができるんじゃないかなと楽しみにしています。

簡単に自己紹介させていただきたいと思うんですけれども、まず今、私自身はコイニー株式会社という決済サービスがメイン事業の会社でデザイナーをやっています。

最近の仕事だと、STORES.jpというオンラインのECサイトを最短2分でつくれるサービスを運営しているブラケットという会社と、コイニーが2月に経営統合して新しく設立された、「ヘイ」というユニークな名前の会社のコーポレート・アイデンティティや新しいサービスのデザインをやっています。この他にも個人の活動として複数のスタートアップのサービス立ち上げなどにも関わっています。

ゼロから作れる場所で現場を見ながら新しいことを考える

松本:私のデザイナーとしての最初のキャリアは、広告制作会社だったんですけれども、入社初日から終電みたいな感じで、なかなかハードな環境で大丈夫かなと思いつつも、その分5年間色々な経験をさせてもらえました。

その中でいろいろ考えて、「ゼロから作れるところに入りたいな」と思って、コイニーという会社の立ち上げ期に声をかけてもらい、社員1人のメンバーとして、デザイナーとして入社しました。

コイニーの立ち上げのメンバー構成が中々ユニークで、代表の佐俣と、私と、もう1人プロダクトのデザイナー、エンジニアという、デザイナーが4人中2人というめずらしいチームでした。当時(2012年)はスタートアップにデザイナーが入ること自体が少なかったので、「何してるの?」ってよく言われてました。

実際のところは、コイニーの全体のサービス体験全体のデザインをやっています。今は3つの主な事業があって、店舗向けのクレジットカード決済、オンラインの決済、WeChat Payという中国の決済サービスに対応しているサービス。それらのアプリやウェブ販促ツールのグラフィックなど、サービスに関わるもの全体のデザインを担当しています。

実際に使用される事業者の方々は、日々忙しくされていて、ウェブのマニュアルよりかはサッと出せてスタッフ同士で共有できる紙のマニュアルの方が好まれたりします。そういった細かい部分まで気を配りながら全体のデザインをやっています。

オフィスでデザインしているだけじゃなくて、実際に加盟店さんのところに行って、インタビューしたりすることで、オフィスにいるだけでは得られない視点を見つけに行ったりすることもあります。

例えば、普通POSレジ画面ってお客さんには見えないようになっていますが、金額を見せるものとして使っていて、この作法の中でにあるべきUIはどんなものだろうと考えたりします。あとは、利用されるスタッフの方々の作法として、右上の写真の2人の関係を見ていただきたいんですけど、スタッフの方の位置が低いんですよね。

スタッフがコミュニケーションする時には、必ず相手の方より下に座って、丁寧なコミュニケーションを取っている。そんな関係の中で、「インターフェースやコミュニケーションはどうあるべきだろう?」と考えると、新しい機能やデザインのヒントになることがあります。

経営者の考えを解像度高くこもりなく可視化する

松本:実際にはプロダクトづくりだけじゃなくて、会社自体のミッションのワードづくりも経営チームと話しながら考えたりしています。

ただ、ワードを決めても浸透しなかったら意味がないので、「じゃあ、それをブレイクダウンして、評価制度とか組織の行動指針とかに落とし込んだらどうあるべきか?」というところまでやったりしています。

それを言語化したうえで、「じゃあ、もっと深掘って、自分たちが決済サービスをやって、お金の流れをつくるっていうことは社会にとってどういうことなんだろう?」といった根本的な部分を、社内イベントで対話しながら一緒に考えるきっかけをつくったりしています。

経営者が考えているビジョンを、いかに解像度高く、曇り可視化できるかっていうところで、Webサイトのキーメッセージのコピーライティングなどコーポレートのアイデンティティに関わる部分も担当しています。

他にも個人として、新規事業のサービスデザインも手伝ったりしいます。ちょうど2年前、Service Design Night Vol.1に登壇させていただいた時に、西村さんに「新サービスつくったんで良かったらお願いします」みたいな感じで回っていたのを思い出しました。

サービスを手伝うきっかけになったのは知人に「なんか一緒にサービスつくりましょう!」という感じで話が来て、チームとして面白そうだと感じたのがきっかけです。もちろんオフィスは無い中で様々なカフェを転々としながら週一で毎回終電まで議論しながら色々なサービスを一緒に考えていました。

いろいろ考えたうえで、「フォーム周りって、いろいろ面倒くさいよね」みたいな話が出て、「とりあえずそれをつくってみようよ」って行き着いたのが、「formrun(フォームラン)」というサービスです。

formrunはウェブサイトにコードを1行を入れるだけでフォームのセットアップができるもの。非開発者の方でも数クリックでフォームを作成することもできます。エンジニアの工数は限りなくゼロになって、デザイナーもフォームを簡単につくれる。おまけにそのフォームのデータは、単純にメールにプレーンテキストで来るんじゃなくて、直感的なカンバンのUIで進捗まで管理できるものです。

開発者からしたらフォームは送信されたら完了だけど、そこから先の顧客対応もチーム全体で可視化されておらず、結果的に顧客体験を残っている場合がある。なので「フォームの設置からその先の顧客対応に関わる課題を解決する」ということをコンセプトにつくったサービスです。

開発者も、デザイナーも、実際に管理・運用する側も、チーム全体にとって価値のあるものだと感じていただけていて、おかけさまでユーザー数も順調に伸びているようです。

全ては娯楽に向かうという「Just for Fun」の思想

松本:今までやってきたものをざっくりまとめると、コーポレートとサービスの統合的アプローチなのかなと思います。

先ほどのroot古里さんのアプローチと近いと思うんですけれども、サービスのアプリケーションやコミュニケーションがいかにきれいにつくられていても、それを実行・判断するコーポレートサイドの姿勢や戦略が一貫してないと、すぐダメなものになってしまいます。なので、この2つのバランスを取りながらやってくのが一番いいのかなと思います。個別最適じゃなくて全体最適でちゃんとデザインしていく、っていうことをやっています。

本日のテーマであるデザイナーのキャリアを考える上で、これまでを振り返った時に、「そもそもなんで自分はデザイナーとしてやってるのかな?」って考えた時に、究極、「楽しいからなんじゃないかな」っていうことを考えています。もともと僕自身も絵を描いたり、物を分解したり、つくったり、そういうのが好きなタイプなんです。

なにかを夢中になってつくっている時って誰かのためといより、まず自分自身がすごく楽しくて、その楽しんでつくったものが、さらに他の人を喜ばせたり驚きをつくれたらハッピーで、それが純粋に楽しくてやっている。

新しく作られたヘイっていう会社も、そのひとりひとりの楽しさが他の人に波及していって、それが全体でより良い世界の原動力になるんじゃないかなという思想があって、そこに通ずるものがあるなっていうのを考えています。

この考えの元になったのが、ヘイの代表がミッションを言語化した際に引用していて知った、Linus Torvaldsの『Just for Fun』っていう書籍があるんですけど、ご存知の方いらっしゃいます?

Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary

(会場挙手なし)

松本:むむ、意外といないですね。Linus Torvaldsという、インターネットを動かしているといっても過言ではないらい、多くのコンピューターにインストールされているオープンソースのOSであるLinuxをつくった人の本です。その中でLinusは人生における意義について独自の理論を持っていて、「人生においてすごく意義のあることは3つだ」っていうことを述べています。

1つ目は、そもそも生き延びる、生存することです。2つ目は、人間自体が社会的動物なので、それらをうまく回すために社会秩序を保つことが重要だということです。3つ目は、全部娯楽に向かうということを言っているんです。

具体例としては、戦争、セックスみたいなものも最初は生存欲求だったけど、社会的になっていく。究極的にはもう娯楽にしかならない。今手にしているスマートフォンだって、もともとは通信手段だったけども、結局はみんな娯楽に向かっている。

人生はなんであってもこの順序で進んでいくから、人生の究極のゴールは「楽しむ」。私自身、以前はまじめに小難しく考えすぎることがありましたが、この本を読んでから、まず自分が楽しむこと、適度に方の力を抜くことも大事だなということを考えながらやっています。

ということで、最後のセリフになるんですけれども、けっこう経営メンバーがおもしろい人たちがそろっているので、どんどんおもしろいフェーズへ向かっています。今入っていただけたら、かなりエキサイティングなことができるんじゃないかなと思います。なので、興味がある方は、ぜひhey.jpまで、よろしくお願いします!

(会場拍手)

司会者:松本さん、ありがとうございました。ヘイに興味がある人は、後でお話してください。

大学時代にインターンのアシスタントデザイナーとして始まった

司会者:最後に、THE GUILDの三古さんにプレゼンをお願いしたいと思います。では、みなさん、拍手をお願いします。

(会場拍手)

三古達也氏(以下、三古):よろしくお願いします。ちょっと押しているみたいなので、手短にいきたいと思います。「僕のバックグラウンド」ということで、自己紹介させていただきます。THE GUILDの三古と申します。90年生まれ、今27歳。今年の1月からTHE GUILDに入りました。

アプリのUIを中心的にやっていて、フリーランスとしてもいくつかサービスを担当させていただいたりしています。Twitter、ロクなことも……ロクなことしかつぶやかないんですけど、よかったらフォローしてください(笑)。

この「僕のバックグラウンド」ってnoteに記事を書いてまして、ぜんぜん読まれなかったんですけど。

(会場笑)

三古:深津さんが支援してくれなかったという(笑)。

(会場笑)

三古:ということで書いているので、サクサクいく代わりに読んでいただければと思います。過去編、現在編、未来編で、トークセッションのテーマもあるので、端折りながら話していきたいと思います。

僕のファーストキャリアはエウレカという「Pairs(ペアーズ)」を提供している企業から始まります。大学は普通の四大で、3年の冬ぐらいからデザイナーを目指して独学して、エウレカにインターンするところが最初ですね。

これは当時の自分のスマホ、iPhoneですね。「Pairs」のアイコンがあるんですけど、当時、このアイコンに雪を散らすのを担当させてもらって。「こんなの1週間でできるでしょ」って言われたんですが、3週間かかってもできなくて、上司にボコボコにされるというところから始まります。

これは台湾版の「Pairs」なんですけど、「派愛族」と読むのかな。今のデザインを持ってきているんですが、当時は台湾版を出すための日本語を台湾語に変更する作業、フォトショで1個1個コピーして貼っていくことをやってました。こういうアシスタントデザイナーとしての仕事をしていましたね。

社長が「UXだ! UXだ!」と叫んでいた

三古:当時、「Pairs」はすごく伸びているタイミングで、会員数やマッチング数がどんどん更新されていって、日々バナーを貼り換えるみたいなタイミングだったんですけど、すごくスタートアップ感があってめちゃめちゃ楽しかったんですね。つらかったっていうのもあるんですけど、めちゃめちゃ楽しかったので、今ここでデザイナーとして働いてるっていうのがあります。

「Pairs」ってデーティングサービスなので、男性と女性が出会うことをサービスの軸にしているんですけど、「『Pairs』で出会って結婚しました。ありがとうございます」っていう手紙がよく届いていました。

前の青山のオフィスに、掲示板として貼ってあったぐらい手紙がたくさん来ていて、そういうのを見ると社内が沸くんですよね。自分たちがつくったサービスが届いて、しかも誰かを幸せにしてるっていう現場にいられたことは良かったなと思っています。

本当にきつくて、ハードワークで、未経験で、自分は全然なにもできなかったので、在籍期間は短かったんですけど、それでもスタートアップの楽しさっていうのはすごく覚えていて、それが今でも自分のデザインの根源にあるのかなと思っています。

次は「DENDESIGN」っていう制作会社に入ります。幅広い案件を担当していたので、自分のデザイナーとしての基礎はこの期間についたんじゃないかなと思います。当時、まだUXという言葉が一般的になっていなかったんですが、社長が「UXだ! UXだ!」って言っていたこともあり、いろんなことを学ぶことができたなと思っています。

いろいろな場所にアサインされることでいろいろな勉強ができた

三古:ですが、エウレカでの体験が忘れられなくて、スタートアップに行くことを決めました。次はBASEですね。前職の宣伝をしてもどうしようもないんですが、今、香取慎吾さんを起用してCMを打っていますね。

僕はアプリのデザインを全部担当していました。「ほぼ立ち上げ」と書いたのは、1回外注のデザインが入って、実装して、リリースされたタイミングで僕がアサインされているんですが、そこからBASEのアプリを担当するようになり、300万ダウンロードまでいったんです。その時までずっと1人でアプリを全部デザインしてました。

(スライドを指して)これは今のストアの、App Storeの様子なんですけど、香取慎吾さんが自分のデザインを抱いているっていう。「すげーな」と個人的には思いました。これ、ちょっと怒られそう。

(会場笑)

三古:次はBASEのPAY事業部っていう決済事業部に入ります。決済のAPIを提供している「PAY.JP」と「PAY ID」、QRコードを読み取って決済するサービスを担当しました。

在籍は半年間でした。この2つのサービスのデザインリニューアルを担当して、今後も社内で運用をうまく回せるようなデザインを全部つくりあげ、その後退職します。

FinTechは法律がすごく大事で、相当勉強をしました。『FinTechの法律』という本があり、いろんなジャンルの法律を網羅していておもしろいので、FinTechに興味があったら絶対読んだほうがいいんじゃないかなと思っています。

FinTechの法律 2017-2018 (日経FinTech選書)

「法律的にこのデザインはNGです」と言われたことがあって、「そんなことあんのかよ」っていうのが印象深いです。

そして現在です。今、THE GUILDにいます。THE GUILDって……(他の登壇者の)みなさん会社の説明していて、「あ、忘れた」って思ったんですけど、省きます(笑)。

UX、解析、プログラミングの専門家の中で揉まれる日々

三古:転職して何日か後、1月の23日なので、約3週間後にCAREER HACK(キャリアハック)さんにインタビューされて掲載されました。入社したて状況でCAREER HACKに載ってしまったんですよね。自分自身、まだ実績は全然ないんですが、THE GUILDにはデザインだけではなくて、UXや数値解析、プログラミングの専門家の方がたくさんいて、毎日毎日すごく勉強になる環境に身を置けているなと思っています。

そういう人たちにもまれながら生活しているので、「自分はどうなっていくんだろうな」「決めなきゃいけないな」と思いはじめたところで。もちろんこれは辞めるっていう意味ではなくて、「自分はどの領域で極めていく必要があるのか?」ということを、この環境で意識させられています。

これは(仮)なんですけど、THE GUILDに入る前からフリーランスをやっていて、今は本格的に活動しています。

「SAKETIMES(サケタイムズ)」っていう日本酒のメディアのロゴを担当したり、知り合いの会社、ismという会社なんですが、メディアをつくってる会社、記事やライターが集まっている会社のロゴを作ったりしています。

今後はフリーランスとしてもどんどん活性化させていきたいとと思っているので、今、ポートフォリオを刷新していて。お仕事をいただけるような、自分を覚えてもらえるような、そういうポートフォリオをつくろうかなと思っています。

FinTech、レディースファッション、コンシューマーゲーム、アニメ、EDMが好きなので、そういった領域でお仕事をしたいですね。

未来編なんですが、この後でみなさんトークセッションがあるので、よかったら楽しんでいってください。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)