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「雰囲気がいい=いいチーム」ではない! “仲良しグループ化”が優秀人材を逃す罠

開発知識に加え、マネジメントスキルも求められるプロダクトマネージャーが最速・最高のアウトプットを生み出すにはどうすればいいのでしょうか。そこで、これまで2社のCTOと5社の技術顧問を経験してきた一休の伊藤直也氏による「1人CTO Night」を開催。主催は転職サイト「DODA」を運営する、株式会社インテリジェンス。本パートでは、参加者から寄せられたお悩み「エンジニアの採用問題」「メンバーの責任感問題」などについて、伊藤氏とソラコム・玉川憲氏が回答しています。

工数管理とメンバーの責任感問題

質問者6:(1)ビジネスサイドとの調整に関する問題についてです。

ビジネスサイドのスタッフが、なにを開発するにしても工数を最小化しようとしてきます。現状、エンジニアが工数の根拠や、その施策の効果見込みを可能な限り数値化して説明していますが、説明にエネルギーがかかっており、エンジニアが疲弊してしまっています。

この背景には、チームがビジネス側とエンジニア側に分かれており、ビジネス側の政治力が強いという状況です。すべての施策はROI(利益見込/工数見積)で優先順位がつけられています。そのため、「工数を極小化するインセンティブが働きやすい→技術的負債がたまりやすい」「売上が立つわけではない施策の優先順位が低くなりやすい→負債返却、開発環境改善、セキュリティ対策といった施策の工数が取りづらい」という状況が生まれています。

現状は、エンジニアが施策効果を可能な限り数値化し、都度ビジネスサイドへ説明する方法で進めていますが、数値化に無理やり感があり、無駄なことに時間を使っている感覚がエンジニア内に生まれていて、モチベーション低下にもつながっています。(負債返却やセキュリティ対策は売上は立たないので効果を数値化しづらい。しても無理矢理感がある) 。

ビジネスサイドへの説明エネルギーを極小化して、スムーズに開発が進むようにするにはどうすればいいでしょうか。

(2)メンバーの責任感の問題です。想定しうるリスクを事前に確認せずに独断専行して進んでしまい、納期遅延・障害を頻繁に起こすチームメンバー(エンジニア)がいます。再三注意するも、悪びれた様子もなく同じことをくり返します。責任感を醸成し、自発的に改善してもらうには、どのようなアプローチが効果的でしょうか。(口頭でキツく注意する、人事評価を悪くする、というアプローチは試したが改善の兆しなし)。

伊藤:いや、質問が長っ!(笑)。

(会場笑)

玉川:これ、長すぎるので飛ばそうかとも言ってて(笑)。

(会場笑)

伊藤:「ビジネスサイドとの調整に関する問題」「工数を最小化しようとしてくる現状」。

玉川:なるほどね。「ROIで優先順位がつけられる」。

伊藤:まあ、そうですね。「メンバーの責任感の問題、想定しうるリスクを事前に確認せず……」。

玉川:ちょっと2つ目の質問はぜんぜん違うレベルですね。

伊藤:「口頭できつく注意する、人事評価を悪くするというアプローチを試したが改善の兆しなし」。これは……。

玉川:「口頭できつく注意する」という文章を、僕は読みたくないですね(笑)。

(会場笑)

自発的改善に「ムチ」は駄目

玉川:1つ目の質問。でも、これは。

伊藤:あるあるですけどね。

玉川:そうですね。ROIで優先順位をつけること自体は、間違っていることではないんじゃないんですか? 

さっきも出てきましたけど、それはそれでやったほうがいいのは間違いなくて。「少ない労力で作れて利益が高いのがいい」は確かなんですよね。ただ、そこばかりになると、このへんの問題が出るということですね。

伊藤:だから、難しいかもしれないですけど。本来的にはセキュリティや技術的負債の返済ということと、売上がでるような施策というのは、同列に並べて優先順位つけちゃいけないんですよね。

玉川:そうですね。

伊藤:そうしたら、絶対に売上云々に負けるんで。だから、それよりもいかに同列に並べずに進めるような方向に持っていくかですよね。

玉川:それこそルールじゃないですけど、すべてのワークロードのうちの何割かは、そういう技術的負債を返すことに力を注ごう……みたいな。

伊藤:というか、ここ、ぶっちゃけロジックで攻めると絶対負けるんで。ロジックで攻めるのはあまりよい方法じゃないんですよね、リファクタリングや技術的負債をどうやって返済するか問題は。いかに合理的な理由があって「これをやらなきゃいけないか」と説明しにいったとしても、最後には数字で負けます。だから、なんか信頼関係というか、寝技に持ち込むほうが。

玉川:本当にそうですよね。

伊藤:一休の場合は、その技術的負債をなくすチームを作っちゃいましたからね。

玉川:もう、リソース的にそこは割り当てられているという感じですよね。

伊藤:それはうまく経営陣の人たちと話をして、「そのくらいのリソースを割り当てていきたい」と言って、「伊藤さんがやりたいんだったら、それでいいよ」という感じだったんで。

玉川:そうですね。

伊藤:2つ目は……。基本的に、アメとムチの「ムチ」はあまりよくないです、短期的にしか効かないです。注意や人事評価を悪くするなどですね。その人に辞めてほしいなら、話は別だけど。

玉川:そうですね。

伊藤:自発的に改善してもらうには、ちょっと駄目。

玉川:人事評価を悪くまでしているんですよね。

伊藤:そもそも論かな。評価を悪くするのが駄目なんじゃなくて「改善してほしいなら鞭では駄目」という。

玉川:コメントが難しいんで、次いきましょう。

(会場笑)

エンジニアブログ経由の採用は、効果が限られる

質問者7:採用についての質問です。うちの会社は内容がおカタイうえ、オンプレでフィードバックサイクルが長いためか、若いエンジニアを採用することができていません。他社の状況を知らないため、かなり主観に偏りますが、開発体制は少しずつよくなっていると思います。それを伝えていることで採用がいい方向になっていくのかどうか自信を持てずにいます。

本来はコンテンツの魅力で採用をすすめるのが本筋かと思いますが、入社してからわかってくるのも悪くないと思っています。それには入ってもらうことが必要なのですが、コンテンツの魅力を除いた場合、どういったポイントが採用において魅力となりうるかお聞きしたいです。

伊藤:はい、採用について。

玉川:そうですね。

伊藤:うーん、「若いエンジニアを採用することができない」。

玉川:「コンテンツの魅力を除いて、採用……」、コンテンツを外に出すことができない。

伊藤:これ、別に今日は主催のインテリジェンスさんがいるからそういう話するわけじゃないですけど。

いわゆるエンジニアブログとか、ああいうコンテンツで引っ張って採用するのは、なんか目立つから「そういうやり方がいい」とみんな思いがちなんですけど、あれをやって効果が出る会社はすごく限られていますよね。

玉川:まあ、そうですよね。

伊藤:だから、そっちの発想でやるとするのなら、ちょっとよくないかもしれないですね。やはり知名度がない会社は、素直にエージェントさんを頼ったほうがいい。

基本的には、いかにエージェントさんとの間で期待値をすり合わせて、自分たちが「こういう人ほしい」と思っている人を連れてきてもらうかにエネルギーをかけたほうがいいです。パイプラインというんですけど、候補者の数が多くなります。

「そこにお金かけられない」「あくまで自社応募ですごくエンゲージの高い人採りたい」だと、話は別なんですけど。ブログを書いたり、メディア力を高めたりみたいなのは……。

ああいうのは、人がきたら簡単にエンゲージするのを確立できている会社が追加でやる話であって。

玉川:確かに。

伊藤:あっちがメインになるのは、よっぽどなにかBtoCですごく人気サービスやってますとか。なんていうか、技術的にすごいエンジニアを引きつけるような「ビッグデータ系の人工知能やってます」といった、バズワードを持っているなら話は別なんですけど。そうじゃないと、ちょっと難しいんじゃないですかね。

玉川:おっしゃるとおりですね。

ブログを書くより、面接の改善を

僕、けっこう外資が長かったんで、採用するときのJD(ジョブ・ディスクリプション)をきちっと書くんですよね、アメリカやヨーロッパの会社は。一方、日本はそれが3行。「明るく元気な人希望」みたいな(笑)。

(会場笑)

「笑顔で挨拶できればいい」みたいな(笑)。それはたぶん、採用する側がトレードオフなどをきちんと突き詰めてなくて。そんなパーフェクトな人なんて採れないんで。「最低限、これはできて」、そして「これはできなくてもいい」「これができるとプリファラブル」みたいな。そういうことですよね。そういうのがきちっとしてなきゃいけない。

伊藤:あー、それ、実際ありました。「僕、採用をがんばりたいんだけど採れない」と。最初はブログ書くとか。一応、僕が顧問やっていたので「伊藤直也がいます」みたいな。Wantedlyもがんばってたんだけど、あまり芳しくなくて。

玉川:Wantedly、ディスりました(笑)。

(会場笑)

伊藤:いや、Wantedlyが悪いって話じゃないです、お世話になってます (笑) 。

それで結局、エージェントさんに渡している募集要項を改めて見たら、ぜんぜん思っていたのと違うことが書いてあって。ずっと昔に渡してたものを更新してなかったんですよ。あれは表に出てないから案外知らなくていい。

棚卸ししたら、すごく昔の技術の募集していて「それは来ないわ」となりました。そこを書き替えたら、けっこう来たことがあります。地道にそういうことをやっていったほうが近道ですよね。正しい問題を見極めるというか。

玉川:あとは面接自体も、じつは採る側の視点だけじゃない。あれはアピールの場でもあるので、そのへんもやってないところ多いですよね。「すごくつっけんどんな面接官しかいない」って、絶対に入んないですよね。

伊藤:あるある。最初、エンジニアが採用面談に行くと上から目線だったんですよ。候補者の方に対して「なにか自己アピールしてください」みたいな。

玉川:日本の儒教的課題ですね。あれ、よくないですね。

伊藤:それで「勘違いするな」という話をして。別に向こうは「一休に入りたい」とまでは思ってなくて、いろんな会社を受けているなかで「受けてみようかな」みたいな人がほとんどだと。そういう相手に上から目線で試すようなことをしたら、入ってくれるわけないんだから。

だから、「この人いいな」と思ったら、こちらから事業の説明や「こういうことがおもしろいと思ってます」をきちんとアピールして、採用の場そのものをエンゲージの場にしろ、という話をしました。

玉川:そうですね。採用側の教育も必要ですよね。

伊藤:それ、すごく重要なんですよ。

玉川:しかも、あまりいい候補者がいなかったときにつっけんどんにする人もいて。それはものすごく会社にとってダメージです。「あの会社、最低だよ」と思われるし、そういううわさは広まっちゃいますからね。

伊藤:そういう地味なところを1つずつ直していくというのが大事。わりと採用は、そこがボディーブローのように効いてくるというか。

玉川:なにせAmazonに入ったとき、最初の……2つ目の面接かな? ジャスパー・チャンという、Amazon.co.jpの社長だったんですよ。彼はすごくて。部屋に入った瞬間に握手して、その後もずっとそのまましゃべりの熱いトークで。

伊藤:若干、暑苦しいですね(笑)。

玉川:面接の半分が彼の話で時間が過ぎるくらい。それほどのパッションがあるんですよね。そういうのは、見習ったほうがいいんじゃないかな。

伊藤:(笑)。

玉川:そこまでやらなくていいですよ。ただ、それくらい採用活動は大事な活動なんですね。

伊藤:なんかあれですね。コンテンツの魅力やるとかいう以外に、やれることいっぱいあるんじゃないかなということですよね。

玉川:そうですよね。

「笑顔=その職場にいたい」ではない

質問者8:部下が仕事を楽しめているかが不安です。仕事も進めているし、時々、職場で笑い声も聞こえますが、他の先輩社員に厳しく指導されていたりする姿を見ると、「ゆとり」世代なのですぐ仕事をあきらめたり、辞めてしまうのではないか不安です。なにか兆候など見分けるコツやテクニックはありますか?

伊藤:「部下が仕事を楽しめているか」(笑)。

玉川:これはもう、話してくれと感じですよね、部下との1on1で(笑)。

伊藤:1on1で「大丈夫?」という話をきちんと聞く。あと、さっきの話じゃないですけど、例の心理的安定性の話なんですけど、楽しいというのは……。「笑ってる=その職場にいたいと思う」とは、また違いますからね。

玉川:「乾いた笑い」みたいな(笑)。

(会場笑)

伊藤:そういう意味じゃなくて(笑)。仲良しグループになっているとかですね。上昇志向が高い人にあるのは、仲良しグループになっちゃって、シリアスに自分たちのプロダクトや事業を見られていないことにストレスを感じて、辞めちゃうことがあるんですよ。

玉川:確かにそうですね、仲良しグループだと。その中にいるのはいいですけどね。それで2〜3年経ったらゆでガエル(注:熱いお湯にカエルを入れると飛び跳ねて逃げるが、常温の水に入れて徐々に熱すると水温に慣れて、ゆで上がってしまうという警句)的で、もう外で通用しないみたいな。

伊藤:そうそう。だから、もっとユーザーインターフェースなどを、きちんと議論を交わしてレビューしたいのに、「そんなきつい言い方するなよ」となっちゃって。なんか、なあなあになっちゃうことにストレス感じるタイプも逆にある。だから、必ずしも雰囲気がいい=いいチームではなく、別問題ですよね。

玉川:この人の場合、そういう兆候を見つけるのが苦手だということだったら、やり方としては、それが得意な人が絶対いるから、その人に聞くのがいいですよね。

伊藤:聞くとか、その人に、こういうモチベーション・マネジメント任せちゃうということですけど。

玉川:絶対いますからね。

伊藤:います、います。

玉川:だいたい「あの人、最近大丈夫かしら?」と言っている人、絶対いるので(笑)。

伊藤:まあ、1on1で「いやー、そうですね」と言って、翌日に「辞めます」と言ってくる人もいますしね(笑)。わかんない人には本当にわかんないですよね。

(会場笑)

「あれ?」みたいなときがありますけど。でも、やればなんとなくわかります。

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