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塩見賢治氏インタビュー(全2記事)

「あと5年やらせてほしい」という現場を振り切る勇気 Sansan取締役が成果が出ている事業でもブレーキをかける理由 [2/2]

「停滞こそが失敗」AIという新たな黎明期に挑む

——この連載の読者に対して、「失敗との向き合い方」で伝えたいメッセージがあれば、おうかがいしたいです。

塩見:「失敗から学べ」っていうのは、もう本当にありきたり過ぎますよね(笑)。それを今さら僕が言ってもな、とは思うんですけれど。かと言って「失敗を恐れるな」っていうのも、ちょっと無理筋じゃないですか。失敗したくないですよ、ぶっちゃけ。そんな自らね、好んで失敗したい人なんていない。

ただ、ビジネスの世界においては「停滞こそが失敗だ」とは思ったほうがいいかなと思います。やはり進化していかないと。少なくとも世の中が動く速度以上に、自分たちが進化していかないといけない時代かなと思っています。

特に今、AIが来ているじゃないですか。僕自身もちょうどインターネット黎明期、あの変わり目の中でキャリアを築いてこれたのは、今思うとめっちゃラッキーだったんですよね。 当時は失敗が許されたんですよ。だってみんな正解がわからないから。

だからこそわからなくてもチャレンジできたし、いろんな経験もできた。これはもう、時代だったわけです。たまたま、そういう後押しのある業界にいたっていうのが、すごく大きいと思っています。


制約が取っ払われた先にある、リアルな「ワクワク」

——AIによって開発コストが下がり、誰でも簡単に物が作れるようになる中で、これからの時代におけるものづくりの価値や、エンジニアのモチベーションはどう変わっていくと思いますか?

塩見:世の中に価値を作り出すっていうこと自体は、社会生活がある以上、ずっとモチベーションであり続けると思うんですよね。やはりそこは変わらない気がします。

今までのものづくりが、すごく低コストでできるようになったのは事実だと思うんです。逆に、その前提の上で作るものや、世の中に求められる価値のレベルが一段上がる気がしていて、そこはワクワクしますよね。

これまで「こういう制約があるから、ここまでしかできなかった」という壁が取っ払われて、めちゃくちゃ便利なものが生まれるとか。例えばこれまでは制約があって、車は200キロまでしか出せなかったけれど、おそらく「いや、もう600キロでも700キロでも走れますよ」っていう世界に突入するわけじゃないですか。

そこで「じゃあ、600キロ出る車を作ることに価値がないのか?」と言われたら、僕はめちゃくちゃ価値があると思うんですよね。人が求めるレベルをもう一段引き上げられる世界が来る。それを機械が全部勝手に生み出してくれるわけでもないと思うので、より高度なことができるようになるはずなんです。

ただ、それが本当に「いいもの」かどうかって、バーチャルな世界だけだとあまりわからなかったりするじゃないですか。昔の「クソゲー」みたいなほうが、実は楽しかった……なんてこともあるわけで(笑)。

——(笑)。

塩見: RPGとかも、ドット絵でやっていた頃のほうがおもしろかったとか。死ぬほどお金をかけて作った今のフルグラフィックのものが、じゃあ本質的に楽しいのかって言われると、「ちょっと違うかな」みたいな話ってやはりあると思うんですよ。それはもう「進化」というより、何か「別物」なんでしょうね。

昔、ファミコンがなかった時代にファミコンができたから、みんな感動したわけじゃないですか。だから次は、ファミコンとはまた違う「何か」ができるんじゃないかな、と。

——確かにそうですね。昔は制約があったからこそ、その中での工夫がおもしろかったという面もありますし。

塩見: それが、こうやって実世界に入ってくるんじゃないですかね。今までは電脳空間の中でしか実現できなかったことが、リアルワールドに飛び出してくる世界。

いや、本当に「空飛ぶクルマ」ができたりとかするわけじゃないですか。VRの世界なら、もう普通に飛んでいますからね。人まで飛んじゃってる。でも、それをVRの中だけで体験するのは、ちょっと失敗したというか、物足りなかったじゃないですか。

結局は「やっぱりリアルだよね」って話になった。そのリアルな世界で、バーチャルと同じことができたら「すげぇじゃん!」ってなると思うんです。それが実現できたら、楽しいんじゃないかな、と思ったりしますけどね。わからないですけど(笑)。


「ナイストライ」で済んじゃう時代を使い倒せ

塩見:僕が1994年に入社した時、もちろんSIerだったので1人1台パソコンが配られて、Excelも初期のバージョンでしたけれど、今の働き方と大きく変わるかっていうと、実はそうでもないんですよ。会社に来て、パソコンを開いて、メールをチェックして……。それが当たり前で、30年間ずっとそれをやってきました。

ところが、10年前の先輩に聞くと、パソコン1台なかったわけですよね。「じゃあ、どうやって仕事してたんですか? SIerですよ?」って聞くと、「いや、ノートと鉛筆と電卓と電話だ」って言うわけですよ。もう、理解できないんですよ。「どうやって仕事するんですか?」と(笑)。 

今僕が会社に行って、ノートと鉛筆だけ持たされて何ができるかって、何もできないですよ。だけど、その時代でもシステムは動いていたし、新幹線も走っていた。仕事の仕方すら今の僕らには想像できない世界だったはずなんです。

僕はインターネット黎明期の第1期生みたいな立場で、それまでとはまったく違う仕事の仕方からイチから始められたのが、すごく大きかった。 それと同じことが、今のAIでも起きると思っています。

たぶん、みなさんもそう感じているはずです。10年前の仕事が想像できないのと一緒で、10年後もきっと想像がつかない。もう本当に、ぜんぜん違う世界ですよ。

10年後の人が今を見たら、「10年前って、人間がパソコンで仕事してたんですか?」「何をそんなに死ぬほど働いていたんですか?」って言うかもしれない。「デバイスでエージェントを呼び出して、指示すればいいだけじゃないですか。パソコンでわざわざやることなんて思いつかないんですけど」みたいなね(笑)。 それくらい、今はすごく世界の変わり目なんです。

もちろん、失敗は付き物ですよ。僕もそうだったように、今はまだ誰も正解を知らないから「ナイストライ」で済んじゃう時代。AIを触る人たちにとっては、めちゃくちゃチャンスがあるし、失敗しても一定許される環境だと思うので、あんまり恐れなくていいんじゃないかなって。……もちろん、失敗したくないですけれどね(笑)。なんか時代の後押しがあるんじゃないかっていう気はします。すべてが変わるみたいに。

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