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塩見賢治氏インタビュー(全2記事)

「あと5年やらせてほしい」という現場を振り切る勇気 Sansan取締役が成果が出ている事業でもブレーキをかける理由 [1/2]

【3行要約】
・Sansan塩見氏が、会社を成長させ続けることは、期待して飛び込んできた仲間への責任であり、停滞させることこそが「裏切り」であるという強い信念を語りました。
・たとえ成果が出ていても、全体最適のためにリソースを振り分ける「シビアな優先順位付け」こそが、マネジメントにおける真の難しさであり本質です。
・正解が誰にもわからないAI黎明期の今こそ、インターネット黎明期と同様に「失敗を恐れず進化し続けること」が、新たな価値を生む最大のチャンスになります。

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ベンチャーの成長は、信じてくれた仲間への責任

——現場の熱量と経営の合理性に基づいたシビアな判断の間で葛藤されたことはありますか?

塩見賢治氏(以下、塩見):もちろん、葛藤はあります。けれど、経営において最も重要なのは「全体最適」であり、最終的に会社をしっかりと成長させていくことが一番だと僕は思っています。なぜなら、それがひいてはメンバーのみんなのためにもなると信じているからです。

特に僕たちはベンチャーですから、会社が成長し続けることこそが、成長を求めて飛び込んできてくれた人たちへの責任だと思うんです。もし成長を止めてしまったら、それは彼らに対する「裏切り」になってしまうと思っています。

うちのメンバーは、みんな「ベンチャー」だと分かって入ってきています。それなのに経営が「もう中小企業でいい。儲かっているから成長しなくていい」なんて言い出したら、それは期待して入ってくれた仲間への裏切りだと思うんです。

メンバーは、会社の成長と自分の成長を重ねられる環境を求めています。だからこそ、まずは会社全体を成長させることが、僕が果たすべき最大の使命。

でも、その過程では厳しい決断も必要です。「会社の成長のために、これまで心血を注いできたこの施策を、今は後回しにしよう」と言わなきゃいけない時がある。 始めたことには理由があるし、みんなが必死に頑張ってきたことも、僕が一番近くで鼓舞してきたことも事実です。それでも、リソースをどこに投下すべきか。その非情なまでの優先順位付けが、会社とメンバーを守ることにつながると信じています。

例えば、ある事業が10パーセント成長していたとします。本来なら「よくやった!」と称賛されるべき立派な成果です。でも、隣に50パーセント成長している事業があれば、経営資源が有限である以上、リソースをそちらに集中させる決断を迫られます。

現場からは「あと5年やらせてください!」という声も上がる。彼らは命を懸けてがんばっているし、実際に数字も出している。会社に貢献していないわけじゃないんです。

そんな彼らに「さらなる高みを目指すには、今はこっちなんだ」と告げるのは、本当に心苦しい。理屈では「理解」してくれても、感情で「納得」はできないわけですよ。「ここまでがんばってきたじゃないですか!」という叫びは、経営をしていれば必ず直面する、一番つらい場面です。

うまくいっていない事業を閉じるなら、「ナイストライだった」と納得感も作りやすい。でも、成果を出しているものに対して、相対的な優先順位でブレーキをかけなきゃいけない。そこが、マネジメントの真の難しさであり、つらさなのかなと思います。


​​上場企業としての自立、Eightが向き合う「営利」の現実

——「Eight」は収益性に課題があったフェーズもあったかと思います。その中で事業継続の判断に迷いが生じたことはありますか?

塩見:もちろん、「いつ儲かるんだ?」という声はずっとありました。黒字化したのもようやく最近の話ですから。 でも僕たちは、個人の名刺管理や人脈管理は、日本のビジネスパーソンが必ず持つべきものだと確信していたんです。ビジネスデータベース「Sansan」の次の世界があるとしたら、それはEightの世界だと。だから当時は収益に目をつむり、「未来への投資フェーズ」として突き進んできました。

とはいえ、上場が決まれば話は変わります。営利企業として、株主から「いつまで投資し続けるのか」という厳しい視線にさらされる。ボランティアではない以上、「利益が出る事業であること」を証明しなければ生き残れない状況を突きつけられたんです。

実際、上場のタイミングでEightの規模を半分ほどに絞るような決断をしたこともありました。他の事業の稼ぎを回し続ける正当性が、上場によって失われてしまったからです。

本当の意味で「やめよう」と思ったことは一度もありません。でも、「このままじゃ生き残れない」という危機感は今でも持っています。今の成長速度でいいのか、我々が目指す世界にはもっと早く到達すべきではないか。伸びているからOK、ではなく、もっと高い成長を目指さなければならない事業なんだと、常に自分に言い聞かせています。

非連続な成長で「Eightが化けること」を証明する

——今一番のEightの課題とは何でしょうか?

塩見:今の課題は、成長の角度を「倍々ゲーム」にできていないことですね。 本来、コンシューマービジネスの醍醐味って、ブームを巻き起こして一気に跳ね上がるような「非連続な成長」にあるじゃないですか。

確かに、着実な「積み上げビジネス」にはなっています。でも、堅実に積み上げるだけなら、それこそ経理AXサービス「Bill One」や取引管理サービス「Contract One」といったBtoB領域でやるほうが、事業としての合理性があるという見方もできてしまう。 Eightに求められているのは、BtoCの領域でどうやって爆発的な成長を見せられるか、そこだと思うんです。

毎年30万人ずつ増えてはいますが、本来なら翌年は60万人、その次は120万人と加速していかなければならない。まだ1,000万人の大台にも届いていない。道筋が見えていないわけではないけれど、それをまだ結果で証明できていないんです。

「Eightはここまで化けるんだ」ということを、何としても証明しなきゃいけない。それが、今Eightが抱えている最大の課題ですね。やれないとは思っていないですよ。やるために今がんばっていますっていうところですかね。

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