先週は、組織運営の根幹に関わる「人の動かし方」と「仕組み化」が大きなテーマとなりました。「評価されているはずなのに部下の意欲が上がらない」「同じミスが何度も繰り返される」「真面目な人を採用したのに成果が出ない」といった、多くのリーダーが直面する矛盾や悩みに対し、具体的な解決策が提示されています。特に、人間の弱さを前提とした「性弱説的マネジメント」や、主観を排除する「データドリブン人事」への関心が高まっています。
5位:評価されるだけでは人は動かない 職場で意欲の差が生まれる理由
現代の職場で増えている「自分は見えない存在だ」という孤独感。ジャーナリストのJennifer B. Wallace(ジェニファー・B・ウォレス)氏は、個人主義が加速する中で、組織を支える裏方の存在が軽視されていると警鐘を鳴らします。単なる業績評価ではなく、付箋一枚の感謝でも「その人らしさ」に触れることで、職場エンゲージメントと私生活の充実を同時に高められると説いています。
・「Mattering(重要感)」の創出: 「自分は誰かにとって大切な存在だ」と感じられることが、仕事への関わりを最大5倍高めます。
・裏方へのスポットライト: 相談員など目立つ職種だけでなく、経理や資金調達といった「舞台裏」で支える人々に具体的な感謝を伝えます。
・私生活への波及効果: 職場での評価不足は家庭環境や健康にも悪影響を及ぼしますが、逆に価値を認められれば「良い親・良い配偶者」でいるための心の余裕が生まれます。
ニューヨークの非営利団体では、相談支援員の扉だけが感謝の付箋で埋め尽くされていました。それに気づいた事務局長が、経理のマークに「あなたの粘り強さのおかげで、ある家族が住まいを失わずに済んだ」と、スキルだけでなく「その人らしさ」に触れたメッセージを送ったことで、組織全体の活気が劇的に変わりました。
ウォレス氏は、「何をしてくれたかだけではなく、その人がどんな人だからこそそれができたのかを伝えていたのです。そのおかげで人々は、自分という存在そのものにも価値があるのだと実感できました」と語っています。
元記事はこちら 4位:管理職のプレイング業務が30%以上になるとチームの成果は低下 忙しいプレイングマネージャーが悩む部下育成の突破口
多くの管理職が陥る「プレイング業務」の罠。PDCAの学校の宮地尚貴氏は、マネージャー自身が現場に深く入り込みすぎるとチーム全体の成果が低下すると指摘します。部下の報連相不足を「個人の資質」のせいにせず、具体的な「ルールづくり」という仕組みで解決する、性弱説に基づいたマネジメント手法を解説しています。
・プレイング業務の適正比率: プレイング業務が30パーセントを超えるとチーム成果は下がり始めます。成果を最大化するには、これを30パーセント未満に抑える必要があります。
・報連相の「予断」を防ぐ: 「困ったら相談して」は機能しません。「見積もり作成で3分手が止まったら声をかける」といった、迷いの余地のないルール設定が不可欠です。
・フローの整理: ミスが起きた際、「誰が」ではなく「どのフロー」が問題だったのかに着眼し、誰がやっても問題が起きない仕組みを整えます。
ある職場で報連相をしない部下は、「上司に話しかけにくい」「面倒くさい」「叱責が怖い」といった心理的負担を感じていました。これを個人の性格の問題にせず、毎朝・毎夕のタスク共有や、顧客メール作成時のチェック依頼を「ルール化」することで、業務ミスを未然に防ぎつつ、若手の戦力化を実現しています。
元記事はこちら 3位:「なぜなぜ分析」は順番を間違えると機能しなくなる ミスを繰り返さない組織をつくるポイント
トヨタ式の改善手法として有名な「なぜなぜ分析」ですが、単に「5回繰り返す」ことよりも、原因を掘り下げる「順番」こそが重要です。スキルベースの高松康平氏は、いきなり組織の要因や個人の能力を疑うのではなく、「行動」という近い原因から始めるべきだと提唱します。
・分析のゴールは「回数」ではない: 「5回」は自動車産業の経験則(ちょうどよかったから)であり、本質は「近い原因から遠い原因(真因)」へたどることにあります。
・正しい深掘りのパターン: 「行動(何をしたか)」→「個人(スキルやマインド)」→「組織(制度や風土)」の順で整理することで、見当違いな対策を防ぎます。
・外部環境まで視野に入れる: 最終的には組織の要因のさらに外側にある「外部環境」まで見られれば、分析としては十分な深さに到達しています。
メールの誤送信が発生した際、いきなり「担当者のスキルが低い(個人)」や「忙しすぎた(組織)」から分析を始めると、再発防止策がボヤけます。まずは「宛先の入力を間違えた(行動)」から始め、なぜ間違えたのか、なぜチェックが漏れたのかと順を追うことで、初めて効果的な対策が導き出されるのです。
元記事はこちら 2位:何度注意しても部下が同じミスを繰り返す原因 根性論に頼らない「性弱説的マネジメント」による指導方法
「何度言ったらわかるんだ」と部下に落胆する前に、疑うべきは「人の素質」ではなく「現状の仕組み」です。PDCAの学校の宮地尚貴氏は、人間は状況や環境次第でミスをしてしまう弱い生き物であるという「性弱説」に立ち、精神論に頼らない建設的な改善アプローチを提示します。
・性弱説マネジメント: 人は本来悪人ではないが、誘惑や疲労に負ける弱い存在です。期待しすぎる「性善説」や疑いすぎる「性悪説」ではなく、弱さを補う仕組みで管理します。
・意志の力に頼らない: ダイエットを成功させるために「甘いものを買わない」環境をつくるのと同様、仕事でも「ミスやズルが起きにくい」物理的な環境を整えます。
・マネジメントの放棄を自覚する: 「次は気をつけて」という注意だけで終わらせるのは、改善を本人に丸投げしている状態(マネジメント放棄)に近いといえます。
交通事故が多い交差点の例では、ドライバーの注意力を責めるよりも、信号機を設置したり見通しを良くしたりするほうが、確実に事故を減らせます。組織も同様で、「やる気がないのか」と能力を疑う前に、一辺倒な叱責を避け、誰でも正しく動ける仕組みを見直すことが重要です。
元記事はこちら 1位:「真面目で素直な人」を採用したら、ローパフォーマーだった…… 採用基準が「けっこう間違っている」理由
「勘と経験」による採用が、いかにバイアスに満ちているか。株式会社人材研究所 人事コンサルタントの曽和利光氏は、現場が求める「素直で真面目な人」が、データで見ると実はローパフォーマーになりやすいという衝撃的な事実を指摘します。主観の罠を脱し、客観的な「データドリブン人事」へ移行するための論点を鋭く突いています。
・心理的バイアスの排除: 確証バイアス(ラグビー部主将はリーダーシップがあるはず)やハロー効果(一箇所の良さに引きずられる)などが、正確な評価を妨げています。
・「類似性効果」の罠: 上司は自分に似たタイプの部下を高く評価しがちですが、これは組織の多様性を損なう要因となります。
・検査の妥当性: 一般的な面接(非構造化面接)の精度は極めて低く、実は適性検査などの「認知的能力テスト」や「ワークサンプル(実際の仕事を体験させる)」のほうが、入社後の活躍を正確に予測できます。
ある企業で「素直で真面目な人が欲しい」という現場の主観と、適性検査のデータを突き合わせたところ、なんと「従順性が高い」という特徴はローパフォーマーや早期退職者の傾向と一致していました。主観に頼った採用が、皮肉にも組織の成果を下げていた事例です。
曽和利光は、下記のように語っています。「このバイアスっていうのは、当然間違うこともあるんですけど、多くの場合はたいてい合っています。だいたいのラグビー部の主将はリーダーシップがある。『そりゃそうだよね』みたいな感じで。完璧じゃないし、間違っている場合もあるんだけど、たいてい合っているので、日頃はそれでいいです」。
「ただ、人事評価とか採用とか、配置とか昇格とか、ものすごくその人の人生に影響を与える、あるいは組織にも影響を与えるような状況で、だいたい7割ぐらいは合っているだろうというので、決めちゃダメです。残りの3割である可能性だってぜんぜんあるわけですよね」。
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