【3行要約】・優秀なプレイヤーがマネージャーに昇格することは多いが、部下との関係構築に悩むケースが後を絶ちません。
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『部下をもったらいちばん最初に読む本』著者の橋本拓也氏は、28歳から4年間を「マネジメントの無免許運転期間」と振り返り、部下から「私に興味がないですよね」と言われた経験を持ちます。
・マネージャーは自分の成功パターンを押し付けるのではなく、まず部下の願望を理解しようとする姿勢が重要です。
「私に興味がないですよね」部下に言われた痛恨の一言
——まず、前提の部分で、初めて部下を持って失敗した経験についておうかがいします。著書の中で、4年間マネジメントの無免許運転期間を過ごしてきたというふうに振り返られていらっしゃいますが、その期間に具体的にどのような失敗や挫折があったのでしょうか?
橋本拓也氏(以下、橋本):そうですね。書籍でも書いたのですが、28歳から32歳の4年間ぐらいが、完全なるマネジメントの無免許運転期間でした。
どのような失敗や挫折かというと、やはりメンバーとの上手な人間関係を築くことができなかったので、メンバーに対して一方的に指示をしたり、管理をしたり。あとはメンバーの話を聞いておらず、仕事を勝手に引き上げる。そういったことをしてしまったことによって、結果的にメンバーが離職したり、体調不良になったり、あるいは私の下だと目標達成しないので別のチームに異動していなくなったり。今思い出しても本当に申し訳ないことをしたという後悔がありますが、それを半年ごとに繰り返していたような状態でしたね。
——なるほど。今振り返って、これが一番まずかったと思う失敗を教えていただけますか?
橋本:メンバーのことを駒とは思っていなかったつもりなんですけれども、上司が指示をしたことは実行するだろうと思って、メンバーの願望や欲求やコンディションとかを一切考えることなく、一方的に指示・命令していたのが問題だったと思いますね。
当時、部下から言われたのは「橋本さんは本当に私に興味がないですよね」ということと、「橋本さんは本当に私の話を聞いていないですよね」ということ。これが最も言われた2大ワードでした。実際、聞いていなかったんですよね。メンバーが「この前こんなことがあったんですよね」と言っていても、ぜんぜん興味を持てず、「あっ、そうなんだ」と言って素通りして。別の日に「この前こんなことがあったんだね」って話しかけちゃって、「はい、この前、それ、言いましたよね」と言われたり。
「あれ? どこ出身だったっけ?」というのを5回ぐらい同じ人に聞いたりしてしまって、話を聞いてもいないし興味も持っていないということで、メンバーも「橋本さんは私にあんまり関心を持っていないんだな」と思って、人間関係がうまく築けなかったですね。
「目標達成」と「業務を進めること」だけが自分の関心事だった
——職場に雑談は要らないみたいな考え方だったんですか?
橋本:それもちょっとありますけれども、仕事なんだから、仕事内容とか目標達成の話だけをしようよと。仕事で目標達成と業務を進めることが私の関心事なので、私の関心事でいつも会話をしていました。メンバーがいろいろしゃべっていることは私が関心を持っていることじゃないのでぜんぜん覚えられなかったり記憶できなかったっていうのがありましたね。今振り返ると、マネジメントとしてあまりに未熟だったと思います。
本当はメンバーが関心を持っていることにこちらが合わせて仕事を振ったり、コミュニケーションを取っていったほうが、メンバーは前向きに仕事をすることができますよね。
——詳しくお話しいただき、ありがとうございます。今振り返ってみて、自分の上司が当時の自分みたいなタイプだったとしたら、どんなふうに思われますか?
橋本:そうですね。もちろん悩み相談もできませんし、できないというよりはしようとも思わないですね。私のことを真剣に考えてくれていないということがわかるので、私の悩みも私の目標も一切この人には話さない、話したくない。この人が私に興味を持ってくれていないから、私もこの人には興味を持ちたくない。そんな気持ちになっていたと思います。
優秀なプレイヤーほど陥る「自分と同じ」という勘違い

橋本:それから、当時は「自分と相手は同じタイプだ」という勘違いをしていました。詳しくは本の中にもある内容なんですけども、選択理論心理学という心理学をもとにしたリードマネジメントの手法で言うと、人には5つの基本的な欲求があると言われています。
例えば私であれば、目標達成することが楽しくて重要だと考えていたので、人に褒められることとか、みんなで一緒に楽しく仕事をするのはそんなに重要ではないと考えるタイプです。1人でもいいから粛々と黙々と成果を出すことが重要だと思っていたんです。だから、メンバーも全員そう思っているという勘違いをしていました。
——なるほど。
橋本:実際のメンバーは、仲間と一緒にチームでやることが楽しかったり、1人でやることはモチベーションが下がったり、あとは達成することも大事だけれども、貢献してお客さまに喜んでもらえているという実感を得たかったり。そのことに気づくのが遅かったですね。
——人によって働きがいみたいなのを感じるポイントが違うということなんですね。橋本さんはマネージャーになる前から、目標達成をするとか成果を上げるところにすごくやる気を見いだすタイプだったのでしょうか。
橋本:そうなんです。でもプレイヤーとして優秀な人は、比較的そういう人が多いようにも思いますね。
プレイヤー時代の成功体験がマネジメントの壁になった
——橋本さんご自身は、どういった経緯でプレイヤーからマネージャーに抜擢されたのでしょうか。
橋本:実は新卒で入社した当初は、社内ベンチャーで新規事業を立ち上げて、プレイヤーとして5年間結果を出した後に、その事業を潰してしまったという経験があるんです。これは本の中では語っていないんですけども、一度事業を潰して今の部署に異動してきました。ここでまた26歳から28歳までの2年間プレイヤーとしては結果を出して、今度はマネージャーになって部下を育てる立場になってから暗黒時代が4年間続いた感じでした。
——そうなんですね。プレイヤーとして成果を出すための秘訣はありますか?
橋本:もともと学生時代から、自分が目標を掲げたら逆算をして、実行して、達成するまで諦めないという考えはありました。だから、事業を潰してしまった時にも、お客さまに対してのクオリティに問題があったので事業閉鎖になったんですが。目標自体はずっと達成はしていましたし、もともと自分の中で達成する能力と達成したいという欲求は高かったと思うんですね。だから、マネージャーになった時に、メンバーもみんなそうだろうと勘違いしてしまったんです。
やはり、やればいいのに実行しない。行動せずに止まってしまう。そういうところが一番衝撃を受けたところでしたね。
具体的に言うと、例えば僕の場合だったら、目標達成しようと思ったら朝早めに来て、今日の段取りを考えて、やることを書き出して、やる順番を決めて実行するとか。わからないことは自分から先輩に質問しにいって実行していたんですよ。でも、メンバーは朝早くも来ないし、自ら質問もしにいかないという。「なぜなんだ?」ということが衝撃でしたね。
「理解させる」より「理解しよう」とする姿勢が大事
——すごく優秀なプレイヤーだったからこそ、成果を出せないとか、目標達成のモチベーションが低い人への理解ができないところもあったんですね。自分とは違うタイプの部下に対して、どう向き合っていけばよかったのでしょうか?
橋本:やはりメンバーの中には、私とは違う願望があるんですよね。何かしらの目的があってこの会社に入ってきているので、それは成長したいのかもしれないし、仕事内容が楽しくて好きなのかもしれないし、お客さまに喜んでもらいたいのかもしれないし。
なので、まずは話すとか説明するとか指示する前に、本人がどういう願望を持っているのか、入社の動機は何なのかっていうことに興味を持って聞く。だから、メンバーのことを「理解をしよう」と思っていろいろ質問したり会話をすると、メンバーの願望がわかってくるんですよね。その願望に合わせて、「じゃあ、この仕事をこんなふうにやってみて」と伝えていくと、前向きに取り組んでくれることが今はわかりますね。