【3行要約】・子どもは自然と生き生きしているのに、大人になると"楽しむ力"を手放してしまいがちです。
・ ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏は、地下アイドル現場のフィールドワークを通じ、推し活がウェルビーイングの本質である「生き生き」を取り戻す場だと語ります。
・ LINEヤフー会長・川邊氏のように推し活を公言するロールモデルが増えた今、自分を解放できる"場"を意識的に持つことが求められています。
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大人が幼稚園児のように目を輝かせる場所 推し活とウェルビーイング
ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏が、地下アイドルのライブ現場で目撃したのは、幼稚園児のように目を輝かせるオジサンたちの姿でした。「全部合法なのに、なぜやらないの?」大人が無意識に手放してしまう"生き生き"の正体と、LINEヤフー会長・川邊健太郎氏も熱狂する推し活の効用。コミュ障を自認するアナウンサーが語る、ウェルビーイングの本質に迫ります。
藤井創(以下、藤井):今ウェルビーイングの話も出てきたので、吉田さんは推し活とウェルビーイングの研究をされているところもあると思うので、吉田さんなりのウェルビーイングの捉え方というのがもしあれば教えてほしいんですけど。
吉田尚記氏(以下、吉田):ウェルビーイングを簡単に言うと、日本語としては超ダサくて、ダサいからこそいいのか、ダサいからこそ伝わらなくなっているのかわからないですけど。
簡単に言うと「生き生き」なんですよね。だいたいみんな生き生きすることは、自分が病気だろうと何だろうと可能じゃないですか。
子どもって生き生きしていますよね。だから普通にほっとくと、人間はわりと生き生きしているはずなのに、大人になる過程において、生き生きさせられなくなっていると思って。自ら生き生きすることを手放している部分があると思うので。
本来人間は、そういうふうに生きることがたぶんできるはずなのに、みんなどこかで「こういうものだよね」と言って手放しているものの中に、ウェルビーイングを失わせる理由があるんだろうなって思っています。
藤井:大人になるにつれて手放してしまうものというのは、例えばどういうものですか?
吉田:例えばですね、僕はアイドルファンの研究をしているんですけど、アイドルファンの人たちって生き生きしていませんか?
藤井:していますね。
吉田:惰性で応援している人もいるとは思うんですけど、惰性で応援しているのは、やはり見ていても良くないというか、おもしろくないと。
社会学には、フィールドワークという手法があるんですね。その人たちの現場に行って、現場の人たちの話を聞いてきて、そこから気づきを得るみたいなやつがあって。僕は、最終的に「ももいろクローバーZのファンの研究をしよう」といって大学院に進学しているんですけど。
今、絵恋ちゃんという地下アイドルのフィールドワークに、その授業のテーマで行ってみようと思って、絵恋ちゃんの現場に通っているんですけど、まぁ最高なんですよね。
どう最高かと言うと、行ってみてわかったんですが、いる人たちは年配の方なんですよ。何ならオジさんやオバさんと言われる年代の人が多くいる状態で、あんまり20代もそんなにいないんじゃないかなぐらいのファン層なんですけど。
そのファン層の人たちが、絵恋ちゃんがステージに現れて、「みんな、やるよー!」と言うと、本当にみんなが完全に幼稚園児なんですよ。幼稚園でやるような行動をみんなしているわけです。みんなでレジ袋を持ってカサカサ振り回したりとか、絵恋ちゃんはそれを楽しくやらせてあげているんですね。
これを見ていて、めちゃめちゃ楽しそうなんですよ。みんながこんなになって、同時に移動して踊っているんだけど、見た感じは普通に、満員電車とかに乗って疲れている人たちと何ら変わらないわけです。
そんなみんなが、めっちゃ目がキラキラしているんですよね。「楽しそう」と言って。こういうのを見ていると、大人の人たちがそういうことをやって、楽しいことなのに、全部合法なのに、年配になるとほぼやる人はいないじゃないですか。「なんで?」と思いません? やればいいのにっていう。
藤井:そう思います。
吉田:子どもとかだと、何にも理由なく、公園で駆け出して階段を上ったりとかするじゃないですか。あれを大人がやっちゃいけない理由は何かあるのかって思うんですよね。
藤井:確かに。でもやはり、やらない大人が多いというのは、何かしら勝手にストッパーをかけているということ?
吉田:たぶん何らかの。そこを解放させてあげているアイドル現場があんなに生き生きしているのは、そういうことだよなって思いますよね。だって、大人はふだん大声を出しちゃいけないんですもの。
藤井:そうですね。
吉田:アイドル現場って、大人が大声を出していい現場じゃないですか。
藤井:なるほど。そういう考え方があるんですね。確かに。
吉田:そうです。それがもう今、当たり前になっているんです。世の中では。
藤井:なるほど。アイドルのフェスとか行ったことはあんまりないので、よく映像とかで見たりはするんですけど、その盛り上がりは、今話を聞いていてなんだか「なるほどな」って思った部分はあったんですけど。
日本だと、海外に比べてそういう場所がけっこうあるんじゃないかと思うんですが、アイドルの現場以外にもこういうのがあったりしますか?
吉田:アニメとかもそうですよね。(僕は)そっちも専門と言えば専門ですけど。
でも要は、オタクって言われるようなものの周りには、そういうことがいっぱいある。だから、「何をしてもいいよ」と言って、「大人って本当にキャバクラに行きたいの?」というのは言いたいですよね。
藤井:確かに。
吉田:「酒を飲んで自慢話や愚痴を聞いてもらうことが、本当にいちばん生き生きする?」と。「それよりは、友だちと集まってドッジボールとかをやったほうがよくない?」みたいな。
藤井:その違いってなんでしょうね?
吉田:ロールモデルがあるかないかですよね。「大人は、ちょっと小金をつかんで、六本木で豪遊すべきだ」みたいなイメージがもしかしたらあるのかもしれないですけど。
ただ、違う目線でもって世の中に関わってみると、実際は自分の好きなことをやっている人たち、めっちゃいる。
だけど、これが世の中のロールモデルとして知られていないから、ロールモデルを基にして行動を起こす人はすごく多いので、そうなってしまう人が多いのかなと思っています。(大学院では)まさに、そのロールモデルばっかり研究している人たちが身の回りにいるので。
藤井:それで言うと、それこそ昔、僕も本当にパソコンが出てきたぐらいの時代に、パソコンをいじっているとオタクと言われていた時代があったんですけども(笑)。
吉田:だから秋月電子の周りには、めっちゃ幸せそうな大人たちがいっぱいいるじゃないですか(笑)。
藤井:そうですね、いますね。部品1つ選ぶのでも、すごい楽しそうだなっていう人が(笑)。
吉田:そうそう。秋月電子と千石電商の周りにはそういう人がいっぱいいるのに、秋月電子に夢中な人のドラマとか、あんまり見たことがないですよね。
藤井:うん、それは。
吉田:あってもいいんじゃないって思うんですけど。
藤井:今でこそパソコンをみんな使っているし、スマホとかも使っていたりするし、「オタク」と言われることはあんまりなくなったとは思うんですけど。