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「見たことのない本」で、出版業界の未来を拓く(全3記事)

ミッション・ビジョンは不要 「LINEの既読スルー」で企画を決めるライツ社の生存戦略 [2/2]

「ミッション・ビジョン・パーパス」を持たない強さ

藤井:そんな経緯で立ち上げられた御社ですが、「ライツ社」という社名は、「書く」の「write」、「まっすぐ」の「right」、「光」の「light」を掛け合わせているとうかがいました。この名前にはどのような背景があるのでしょうか?

大塚:実は名前を決めたのは髙野なんです。「ライツ社がいい」と。あそこに映っているロゴのとおり、「書く(write)」「正しい・まっすぐ(right)」「照らす(light)」という意味です。

これは本当に髙野の直感じゃないですかね。聞いてすごくいいなと思いました。日本に「ライツ社」という名前の会社は一つもなかったし、唯一無二の名前ですしね。

ただ、これはちょっと後付けになりますけど、「書く力で、まっすぐに、照らす」という言葉以外、ライツ社では決めている言葉が何もないのがある意味、よかったなと。理念もないし、ミッションもない。今で言うと、他には何がありますかね?

藤井:ビジョンとかでしょうか。

大塚:そう、ビジョンとか。あと最近流行りの……パーパスとか。そういうのが一切ないんです。

前の職場では、逆にそういったものをいろいろ決めていたんです。理念があって、ミッションがあって、経営目標があって……でも、それらがただの飾りになっていたのが、僕は非常に嫌だったんです。「何なんやろ、この意味のない言葉は?」とずっと思っていました。社員が100人とかいる組織だから必要なものだったんだろうなとは思いますけど。

僕らは最初、たった4人で始めました。4人しかいないのに、そんな言葉がないと成り立たないような組織は弱いなと思ったんです。「書く力で、まっすぐに、照らす」という気持ちだけでやれる人数のほうが、むしろ良いチームなんじゃないかと考えたんですね。

藤井:弊社も50人くらいのメディア企業なんですが、みんなでミッションやバリューを決めようと盛り上がってやっても、後から「これ意味あるのかな?」と思ってしまうことは正直あります(笑)。

大塚:大きな組織なら要るんでしょうけどね。

藤井:そうですね。無理やり言葉を作ってみんなを動かすというのは、少し違和感があります。

大塚:でも、この「ライツ社」という名前にして本当に良かったというか、出版業界の人たちから「出版の希望だね」とか「明るいニュースだね」と言ってもらえることが多いんです。それはこの名前があるからこそなんだろうなと思います。

企画会議なし、市場調査なし LINE一つで決まる出版企画

藤井:ミッションがないというお話でしたが、例えば企画会議もしない、市場調査もしないともうかがいました。では、具体的にどうやって企画を決めていくのでしょうか?

大塚:特に決まったやり方は本当にないんです。基本的に、編集だけじゃなくて営業でも事務でも、誰でもアイデアを出していいという環境にしています。自然とそうなっているんですが、何か思いついたらすぐに共有します。

僕らはバラバラで仕事をしていることも多いんです。在宅勤務だったり、出張に出ていたり。つながっているのはLINEだけなんですよ。社内にはLINE以外のツールはありません。そのグループLINEに、おもしろいと思ったタイトルとか記事のネタを投稿するんです。

もしそのネタが本当におもしろかったら、7人が7人ともバーッとコメントを返してくるんですよ。7人全員が「おもしろい」と言うなら、それはけっこうな確率でヒットすると思うんですよね。全員じゃなくても、その中の4、5人が反応するだけでも確度は高い。

逆におもしろくなかったら、僕が言おうが髙野が言おうが、もう反応がないんです。既読スルー(笑)。そうしたら「あ、これはやるべきじゃないんだな」という最初の基準になります。

藤井:なるほど、反応の量と熱量で判断するんですね。

大塚:その上で盛り上がった場合、最終的には僕と髙野で決めるんですが、判断基準は2つです。一つは、編集側として「この本は現実的に作り切れるか」ということ。もう一つは、髙野が営業として書店さんに案内した時に、「話題書のコーナー(一番大きな仕掛け棚)に置いてもらえるイメージが湧くか」ということ。この2つが一致した時に、「じゃあやりましょう」となります。

(次回へつづく)

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