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『破壊の学校』で、起業家精神を次世代に継承する(全3記事)

マザー・テレサからシリコンバレーへ 奥田浩美氏が「創造」ではなくあえて「破壊」を説く理由

【3行要約】
・「破壊」という言葉は負のイメージが強いが、奥田浩美氏は「次の創造のために必要なプロセス」として「破壊の学校」を設立しました。
・ インドの破壊神シヴァの教えに触発され、「何かがなくなった時に最高の瞬間が訪れる」という哲学を採り入れた活動を6年間継続。
・ 社会福祉からIT業界へ転身した奥田氏は、「社会を良くする」という一貫した目的の下、AI時代こそ人間の役割を見出す姿勢が重要だと説きます。

「破壊」なくして最高の瞬間は訪れない インドの神・シヴァが教えてくれたこと

「破壊の学校」という強烈なネーミングで、起業家精神を次世代に継承する活動を続ける奥田浩美氏。なぜあえて「創造」ではなく「破壊」という言葉を選んだのか。その背景には、若き日にインドで出会った破壊神シヴァの教えがありました。マザー・テレサの施設研究から、シリコンバレーの熱狂へ。一見つながらない2つの世界をつなげた「社会を良くする」という一貫した思いとは。本記事では、奥田氏が語る「破壊」の本当の意味と、IT黎明期から現在に至るまでの軌跡をお届けします。

藤井創(以下、藤井):本日はよろしくお願いします。最初に奥田さまのお話をうかがうにあたって、やはり一番気になっているのは、「破壊の学校」というネーミングについてです。これが非常にインパクトがあって、印象に残っていて。

あえて「創造の学校」や「革新の学校」とせず、「破壊」という言葉を使った背景について、まず教えていただけますか?

奥田浩美氏(以下、奥田):もう6年やっていますね(笑)。私たちって、幼い頃から何かを得ることや作ることを学んできて、右肩上がりで上昇し続けることを良しとしてきているんですけれども。

私の根底にあるのは、例えば2歳の子どもが砂のお城を作った時の感覚なんです。お城が出来上がった瞬間、ワッと壊すことにすごい喜びを覚えますよね。それはなぜ楽しいかというと、「また次のものを作れるから」という喜びがあるからなんです。

藤井:なるほど、次のものを作るための破壊、ということですね。

奥田:ええ。でも、何かを手放したり、何かがなくなったりすることについては、学校でもぜんぜん教えてくれません。「なくなることは良くないことだ」というふうに教えられていますから。

この考え方の根底には、私が若い頃に生活していたインドでの経験があります。インドには破壊神シヴァの教えというものがあって、「何かを壊すのではなく、宇宙に委ねて何かがなくなった時に、あなたには一番すばらしい時が訪れるんだ」という考え方があるんです。そこから「破壊」という言葉を使っています。

藤井:そうなんですね。どうしても「破壊」というと、悪いイメージが強い気がしてしまうのですが……。

奥田:そうですね。破壊と創造という言葉が対になっていますが、インドでは破壊神と創造神、2つの神様がいるんです。でも実は、破壊神のほうが大人気なんですよ(笑)。

藤井:(笑)。そうなんですか。

奥田:創造というのは、何もなくなったところで人間が頑張って復興させたり、何かを作ったりするもので、人間の営みとしてすでに備わっているものです。どちらかというと、何かをなくすとか壊すということのほうが、人間はすごく不得意なんですよね。そこは神に委ねる部分であって、シヴァ神のほうが有名ですし、私もそこに加わっているわけです(笑)。

藤井:(笑)。

奥田:別に私はヒンドゥー教を信仰しているわけでも、ヒンドゥーについて詳しく語れるわけでもありません。ただ、シヴァの在り方みたいなものが、今の時代に必要だと感じています。まさに今日、イーロン・マスクが「2026年、シンギュラリティ来たる」と言及するような時代において、今までどおりのものの上に何かを作るやり方は、もう通用しないなというのが、ちょうど10年前から感じていたことでした。

藤井:確かに。建物などもそうですが、今ある場所はほぼ埋まってしまっていますから、その上にさらに何かをやろうとしても無理なんだろうな、という気持ちになります。

奥田:そうですね。なので、破壊や喪失といったことに対して価値があるということを示したかったんです。

マザー・テレサの背中を追った日々から、シリコンバレーの熱狂へ

藤井:ちょうど今、インドのお話が出ましたが、奥田さまはムンバイ大学の大学院を出られているんですよね。その後、IT企業のほうに進まれていますが、一見するとこの二つはつながらなさそうな気がします。ここはどうつながるのでしょうか?

奥田:実をいうと、私はもともと社会福祉の修士を取っているんです。ムンバイ大学の社会福祉の修士課程で、マザー・テレサの施設研究が私のテーマでした。そこからITって、ぜんぜんつながらないですよね(笑)。

藤井:(笑)。確かにそうですね。

奥田:インドのカオスな環境に行った時に、ある種、挫折をしたんです。私の力ごときでは、世界は1ミリも変わらないなと。私が1987年にインドに渡って、1989年に帰ってくるまでの間、その差分は限りなくゼロに近かった。

「私の2年間は何だったんだろう?」というくらい、何をやっても成果は得られませんでした。若くて力もないし、お金もない。何より自分のかなえたい夢みたいなものも薄かった時に、「0.0001ミリすら変わらない」という事実にすごく打撃を受けて帰ってきたんです。

藤井:それは大きな無力感ですね。

奥田:ところが、ちょうど私が帰ってくるその年、1989年頃に、私の仲間たちや周りのインド人たちが、ものすごい数でインドからシリコンバレーに渡り始めたんです。

藤井:まさに全盛期の始まりですね。

奥田:そうなんです。福祉の人たちが渡ったというよりは、私が住んでいたムンバイの比較的恵まれた地域の子女たちが、こぞってシリコンバレーに行き始めました。

「あそこには何があるんだろう?」と思って情報を得てみると、どうもシリコンバレーという場所に「インフォメーションテクノロジー」という産業が勃興してきて、そこがこれから世界を変えるらしい、という話で。

藤井:なるほど。

奥田:私はマザー・テレサのように世界を変えるという旗を振っている人に信仰して付いていっていたわけですが、そこへ「もっと簡単に世界を変える人たちがいて、魔法のようなものが生まれるらしい」という話を聞いたんです。

そこでふと、「じゃあ、インドからシリコンバレーに情報を集めてみよう」と思って振り切ったのが1989年です(笑)。

藤井:(笑)。そういうきっかけだったんですね。

奥田:基本は「社会を良くする」という思いです。その時代のIT起業家たち、例えばティム・バーナーズ=リーなどもそうですが、結局「社会がフラットになれば情報もみんな平等になるし、平等になれば貧しい人たちにも新たなチャンスが生まれる」と考えていました。

そういう意味で、私にとっては「世界を変える」とか「社会が良くなる」という要素が、ITに全部込められているような気がしたんです。そこで一気に、社会福祉とITがつながりました。私にとっては手段が違うだけで、基本は社会を良くするという思い込みでその世界に入ったんです。

藤井:手段が違うだけで、目的は一緒だったわけですね。

奥田:ええ。ただ、私はエンジニアではありません。だから私にできることは、「そういう世界を良くするITというものをもっと広めることだ」と考えました。アメリカでどんどん興ってくる新興企業や技術を日本に広めるお手伝いをしようと、「イベントとカンファレンス&マーケティング」という産業を作ろうとしたのが1991年です。

藤井:僕も実は今の仕事をする前、『I/O』という雑誌の編集長をやっていたんです。なので、ITの創成期の人たちの話を聞くと、あの頃の熱量が今こんな状態になっているんだなと、すごく感慨深いものがあります。

奥田:すごくわかります。自分が25歳、26歳の時に持っていたITに対するイメージが、この三十何年過ごしてくる中で、どんどん削られていくような、心がえぐられるような気持ちになることもありました。それでも、私たちはいわゆるDXとか、そういうものと縁を切っては暮らせない時代を生きています。

それなら、私が20代の頃に目指した「もしマザー・テレサがITの世界に生きていたら何をするんだろう?」という思いを、最後まで人間として振りかざしていこうかな、というのが私の活動の源泉にあります。

そう考えると、世の中の動きとしてAIが台頭してこようが何しようが、そこをどうにかしなければいけないと思っている人間がいる限り、やることはいっぱいだし、希望はいっぱいだしと思って、ワクワクしています(笑)。

藤井:なるほど。確かに移り変わりはありますが、まだワクワクすることはありますよね。

奥田:そうですね。逆に、人間がすごく必要とされる時代になったなと。今生きていてよかったなと思います。

(次回へつづく)

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