「早すぎた」縦型動画への確信と、TikTokへの悔しさ
藤井:当時、動画でアプリを作ってやるというのはぜんぜんなかった時代かなと思うんですけど、そこであえて動画でやろうと思ったのは、どこに理由があったんですか?
森川: 私もこの業界が長いので、「次は動画の時代が来るだろうな」というのが見えたのと、あと「縦長の動画」って当時誰もやっていなくて、「次は絶対に動画も縦長になる」という確信があったので始めたんです。どちらかというと「ちょっと早すぎたかな」と思います(笑)。今ようやく広がっているので。
藤井:そうですね、今ようやく一般的になりました。
森川: なので、TikTokとかの成功を見て、正直悔しいなと思いますよ。「もし僕がアメリカでC Channelをスタートしていたら、TikTokみたいになっていたな」という、ちょっと悔しい気持ちはありますね。
藤井:そこはすごく先見の明があるなと思って注目していました。LINEの時に「シンプル・クイック・サプライズ」といった哲学が培われたというお話を伺ったことがあるのですが、それはC Channelの立ち上げ時にも活かされていたのでしょうか?
森川: そうですね。UIに関しては、当時はLINEにいたデザイナーと一緒に起業したので、そのあたりは適用していました。ただ当時でいくと、まだ「動画を撮る」ということそのものに、抵抗がけっこうあったんですよね。
今だと当たり前ですけど、当時は動画を撮ろうとするとみんな逃げちゃうぐらい、動画に映りたくない人ばっかりだったので、それ以前の問題はありましたね。「どうしたらみんな動画を撮りたくなるのか」「どうすれば簡単に撮れるのか」。また、「見たい動画ってどんなものなのか」。ショートビデオもなかったので、「見たいショートビデオって何がいいのかな」とか、そういう模索の時代でした。
藤井:そこはどうやって解決していったのですか?
森川: 最初はテレビ局出身の人が中心だったので、どうしても長尺を作りたがったりとか、「横じゃないとできません」とかいろいろあって(笑)。動画を撮る時も、前説的なところから入るんですよね。「今ここでどうのこうので」みたいな。でもショート動画って、いきなりおもしろいところからいくわけじゃないですか。そういうところの考え方の転換みたいなところは、けっこう苦労しましたね。
藤井:みんなの意識を変えていくところからスタートさせたと。その転換において、「そうしたほうがいいよ」と思ったきっかけは何かあったのですか?
森川: やはり、出してみた反応ですかね。クリエイターがおもしろいと思う凝った動画よりも、ただそのあたりを撮った動画のほうが、再生が多いわけなんですよ。そうすると、「クリエイターの価値ってどうなの?」みたいな話にどうしてもなるところもあって。
ソニー時代の社内ベンチャー経験が支えになった
藤井:LINEという大企業からスタートアップへ行かれたわけですが、ここもすごく考え方をドラスティックに変えないといけないのかなと思います。どうやって発想の転換をされたのですか?
森川: 僕自身がソニー時代にベンチャーを立ち上げていたので、その時の経験が一番大きいですかね。今回の会社って、実はLINEに勤めながらプロダクトを作って、創業日にプロダクトをリリースして、その日に『ワールドビジネスサテライト』の生放送に出演して、みたいな感じだったんですけど。
ソニーの時はまず会社ありきで、何をやるかは決まっていなくて、「どうするんだ?」みたいなところから入ったので、あの時は本当にしんどかったですね。
藤井:それはソニーの社内ベンチャーみたいなものだったのでしょうか?
森川: ちょっと長くなりますが、ジョイントベンチャーだったんですよね。ソニーの部署でスタートしましたが、その後資本を集めて。ジョイントベンチャーだったので、名前にソニーとは付けられなかったですし、経営陣は他からの出向者もいたので、ソニーからのサポートも弱かったんですよ。本当に。
藤井:それで大変だったと(笑)。
森川: 本当に大変だったんですけど、ただ、それがすごい学びにもなったし、自信にもつながりましたね。「ソニーという名前がなくても、ある程度はできるんだ」みたいな。
藤井:そこの知識や経験が活かされているという感じですね。
森川: そうですね。なので、立ち上げた時にベンチャーだからどうだっていうのもなかったですし、僕が前職のハンゲームジャパンに入社した時も30人ぐらいでベンチャーだったので、そういう意味だとベンチャー的な感覚はありましたね。
当然、ソニーからの出向者であり、前職でも優秀な人は本国からの出向者もいたので、まったくゼロから採用してというのは初めての経験でした。そういうところは苦労しましたね。

(次回へつづく)