【3行要約】・管理職は罰ゲームと言われ、なりたくない人が増加している一方で、マネジメントの複雑さが増しています。
・Z世代の台頭やAI技術の進歩により、従来の管理手法では対応できない課題が顕在化。
・長澤里美氏は「問いを投げて待つ」姿勢と相手を深く知ることで、健全な組織づくりと成果創出を両立すべきと提言します。
前回の記事はこちら アンコントローラブルなのが管理職の魅力
——管理職は罰ゲーム、という言葉があるように、管理職になりたくない人の割合は年々増加傾向にあります。その理由は何だと思いますか?
長澤里美氏(以下、長澤):仕事が増えてしまうし、仕事が増えるけれども報酬があまり変わらないからじゃないですかね。あとは、単純にやったことがないからかもしれません。
——長澤さんが考える管理職の魅力はなんでしょう?
長澤:対象が組織であり、自分だけではないので、アンコントローラブルになるということがおもしろさの1つだと思います。
——そこにおもしろさを感じられないとけっこう厳しいですかね?
長澤:どうですかね。他にもモチベーションを持つポイントはいろいろあると思います。自分自身のためではなくチームのためにがんばる、という思いを持つ人もいると思うので、それぞれだとは思います。難しい問題ですね、それは(笑)。本当に難しいお題かなと思いますね。
Z世代との向き合い方
——今でもマネジメントは難しいと思いますか?
長澤:とてもそう思います。しかも、これからはAIがどんどん進化していくので、マネジメントのかたちも変えていかなければならないと感じています。人間が担うべきこととAIに任せられることをきちんと切り分けていく必要がありますし、その上で自分の頭で考え抜ける人や、AIを使いこなせる人材がますます求められていくはずです。働き方も含めて、これから先はマネジメントの在り方自体が大きく変化していくと考えています。
——もう実感されていますか?
長澤:もう実感しています。私は今40歳ですが、Z世代は考え方が違いますし、どうやってその人たちをモチベートしていくのかは、永遠のテーマだなと思っています
私は3年前にWannaEatへ転籍したのですが、そこはZ世代の社長が率いていた会社なんです。入社した時点で、組織の中核を担っているのはほとんどZ世代で、「あ、これはジェネレーションギャップがすごいな」と強く感じました。いわゆる昭和世代とは、やはり感覚がまったく違いますね。
——それは仕事に対する考え方ですか?
長澤:仕事に対するスタンスもそうですし、「何を原動力に働くのか」というモチベーションの源も大きく違うと感じます。今の若い世代は、自分の知的探究心を満たすために働いている人が多い印象です。
一方で、昭和世代のほうが「仲間のために働く」「チームのためにがんばる」といった協調性を重んじる傾向が強いかなと感じています。
とはいえ、今の若い世代は本当に賢くて、スマホネイティブでもありますし、できることもたくさんある。だからこそ、その強みを活かしながら世代間のバランスをどう取るかは、常に考え続けているテーマですね。
自己肯定感が低い部下や「やりたいことがない」部下へのアプローチ
——若い世代の方と話していると、「あまり自信がないです」「いやあ、私なんか……」とおっしゃる方がけっこう多い印象があります。本当は十分できているのに自己肯定感が低くて悩んでいる、そういう人にはどのように対応していくのがよいと思いますか?
長澤:そういう人には、まず自分のいいところをきちんと言語化してみよう、といつも伝えています。自己肯定感が低い人って、自分の長所を自分で認識できていなくて、どうしても短所ばかりに目を向けがちになってしまうんですよね。
だからこそ、「自分のいいところを強みに変えて、仕事に活かしていこう」と話しています。もし本人が気づいていないようなら、「ここがあなたのいいところだよ」と、こちらから具体的に伝えるようにしています。
——他にも、「やりたいことがないんです」とか「10年後どうなりたいか希望がないんです」みたいなパターンもあると思うのですが、その場合はどうしますか?
長澤:やりたいことがない人って、実はけっこう多いんですよね。そういう人には、あまり遠い未来ばかり考えすぎず、まずは目の前の目標にきちんと向き合おう、と伝えています。
小さな目標を一つひとつ達成していくことで成功体験を積んでいけば、そのプロセスの中で少しずつ「自分は何をやりたいのか」が見えてくると思うんです。なので、先の大きなゴールを描かせるというより、手前に短いゴールを設定してあげる、というイメージで設計しています。
悩める上司への処方箋 マネジメントの本質とは
——部下との関係に悩む上司はたくさんいると思いますが、最初の一歩になる行動は何だと思いますか?
長澤:やはり「問いを投げて、待つ」ことを意識してほしいなと思います。例えば私自身は、1on1ではなるべく自分から答えを言わないようにしています。フィードバックでは事実と結果だけを伝えるようにして、どう受け止めてどう行動するかは本人に委ねる。
あわせて、権限委譲の範囲をあいまいにせず、「ここまでは任せる」「ここからは自分が判断する」という線引きをはっきりさせる。そういったかたちで、自分の行動に落とし込んでいます。
——自分のマネジメントがうまくいっていないかも、と悩む読者にどんな言葉をかけたいですか?
長澤:どんな言葉がいいでしょうね。でも結局、「自分のマネジメントがうまくいっていないかも」と感じる時って、多くの場合は相手のことをよく知らないだけなんだと思うんです。
だからこそ、まずは相手の話をきちんと聞いてあげること。そして、先ほどもお伝えしたように、よく話を聞いた上で待ち、相手自身に答えを出してもらうこと。その繰り返しを積み重ねていくことで、関係性もそうですし、組織の改善も少しずつ進んでいくのではないかなと思います。
——「相手を知る」という意味では、上司のほうから積極的に声をかけることが大事だと言われる一方で、今度はハラスメントの問題にもつながりかねないと思います。「プライベートなことまで話したくない」「仕事は仕事として線を引きたい」という部下もいる中で、そのバランスはどのように考えていますか?
長澤:私自身は社長という立場なので、メンバーとはあまり直接コミュニケーションを取らず、自分のラインを明確に引くようにしています。その上で、自分の思想をきちんと理解している人にだけまず伝え、その人たちからメンバーへ届けてもらう、というかたちで階層をつくるマネジメントをしています。
——「この人、理解してくれているな」と判断する基準はどういうところにありますか?
長澤:判断基準は、私が一番大事にしている思想をきちんと体現しているかどうかです。例えば「All win(お店・お客さま・仲間・社会のすべてが勝てる状態を目指す)」という考え方や、常に限界を超えていこうとする姿勢、仕事に向き合うスピード感などですね。
そうした価値観を日々の行動で示してくれているメンバーは信用できますし、「こういうことを実現したい」といった自分の考えも、そうしたメンバーを起点に落としていくようにしています。

——長澤さんが考えるマネジメントの本質とは何ですか?
長澤:本質ですか……難しいですね。ただ、マネジメントの役割は、健全な組織をつくり、その組織としてきちんと売上や成果を上げていくことだと考えています。どれだけいいマネジメントができていたとしても、結果につながっていなければ意味がありません。
ですので、会社の業績や価値創出に向き合いながら、その実現のために組織のあり方をきちんと変えていくことが、マネジメントの本質かなと思います。