2025年も「ログミーBusiness」をご愛読くださり、ありがとうございました。今年公開した記事の中で、もっとも多く読者に読まれた記事の上位10記事をご紹介します。
2025年は、職場の人間関係から組織改革、睡眠と認知機能の関係、そして日本のベンチャー企業の最先端技術まで、多岐にわたるテーマが注目を集めました。見逃した記事もこの機会にぜひご覧いただければ幸いです。
10位:「言われたことはやるが、挑戦しない人」が増えた理由 日本の競争力低下、「失われた30年」の背景にあるもの
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授の野田稔氏は、日本の競争力低下と「失われた30年」の背景について興味深い分析を示しました。
野田氏によれば、日本企業は1989年には世界の時価総額ランキングの上位を独占していましたが、約30年後の2018年にはトヨタ自動車だけが残るという状況になりました。
なぜこのような急激な凋落が起きたのか。野田氏はその原因を「バブル崩壊後の緊急避難策の常態化」にあると指摘します。
・バブル崩壊時、企業は中長期的な研究開発投資を凍結
・新規事業投資を抑制し、人材育成への投資も削減
・成果主義人事制度の導入により社員に差をつけることで人件費削減と活性化を図った
「この緊急避難が常態化したことが問題でした。キャッシュ不足で死にそうな思いをしたため、『羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く』状態となり、徹底的な内部留保志向が高まりました」と野田氏は語ります。
結果として、30年間「守り」しか経験のない経営者が増加し、企業と人間の関係性が壊れました。野田氏は、この状況を「不真面目な優等生」と表現します。
「言われたことはしっかりとやるけれども、なぜやっているのかという青臭い話は一切しない。言われたところで高い点数を取ることが目的化した人間が増えてきた」と説明しました。
野田氏は「挑戦しない風土がデジタル化の遅れや国際化の遅れ、イノベーションの減少につながった」と指摘し、「会社に対する思いを変え、自分たちの役割を再定義することで、この状況を変えることができる」と締めくくりました。
元記事はこちら 9位:コミュ力の高い人が無自覚にやっている話し方5選 心を開かない相手の本音を引き出す相づちと質問のテクニック
株式会社らしさラボ代表取締役の伊庭正康氏が、短時間で信頼関係を構築するコミュニケーションテクニックについて解説しました。
第5位:「感情に同意する」相づちを打つ
例:「それは辛いよね」「楽しみですね」「いよいよですね」「お察しします」。
第4位:「もしあるとしたら」+拡大質問
例:「もしあるとしたらでいいんだけども、もっとこうなったほうがいいなとか感じてることがあれば教えてほしい」。
第3位:「訊く」と「聴く」をセットにする
例:「どんなことで忙しいの?」(訊く)→「それについてどう思っている?」(聴く)
第2位:スマートに褒める
評価をせずに感謝や感想を伝えて、褒めるのは具体的な事実にする。
例:「ハンガーを拾って、ハンカチで拭いていただいたところに感銘を受けました。本当にありがとうございます」。
第1位:無理に理解しない
心を開かない、話が合わないのは自分の課題ではなく、コミュニケーションをとれば解消に向かうものと置き換えて捉える。
「これらのテクニックで人に対する悩みがすっと消えます」と伊庭氏はアドバイスしています。
元記事はこちら 8位:6時間睡眠を5日間続けると、認知機能は"泥酔状態"まで低下 仕事を休めない日本人の「睡眠負債」がもたらす損失
睡眠医学の専門家である石田陽子氏が、睡眠不足が認知機能に与える深刻な影響について解説しました。研究結果によると、睡眠不足の認知機能低下はアルコール摂取と同様の危険な状態を引き起こします。
・起床後16時間で認知機能は免許取消レベル(アルコール血中濃度0.05%相当)まで低下
・平日6時間睡眠を5日間続けると、6日目の朝には「泥酔状態」の認知機能になる
・8時間睡眠でも徐々に認知機能は低下するため、土日は9時間程度の睡眠で負債を返済する必要がある
さらに恐ろしいことに、睡眠負債が溜まると自分の眠気がわからなくなるとのこと。「目覚めた時からもう寝ぼけているので、自分の眠気がよくわからない状態」で仕事をしているという現実があります。
石田氏は「人間がトップパフォーマンスで活動できる時間は起床後10時間程度」と指摘し、一般的な就業時間(8時間)と通勤時間を考えると、「トップパフォーマンスで残業することは不可能」と説明しました。
日本では睡眠不足によって「プレゼンティーイズム」(出勤はしているが健康上の理由で生産性が低下する状態)が発生しており、1人あたり月5〜6万円の損失が生じているとのこと。国全体では18兆円以上の経済損失になるという試算もあります。
「感情マネジメントにこそ認知機能が必要です。睡眠負債がある限り、優れた感情マネジメントを発揮することはできません」と石田氏は強調し、「ちゃんと寝る人が評価される社会になってほしい」と語りました。
元記事はこちら 7位:猛暑のエアコンコストを削減 日本発"世界に1つだけの素材"で、新進気鋭のベンチャーが挑む45兆円市場
アドバンスコンポジット社が革新的な素材技術で、世界的な環境課題に挑戦する様子が紹介されました。
AKIYOSHI氏によれば、日本の夏の消費電力の30〜40パーセントはエアコンが占めており、オフィスでは50パーセントに達します。エアコンの消費電力の約8割は重い金属部品によるものですが、同社は革新的な素材技術「溶湯鍛造法」を用いて、従来の鉄製部品(4.6キロ)を大幅に軽量化した新素材(1.6キロ)の開発に成功しました。
「この部品に必要な条件を全部満たしている素材は、世界でうちしか作れません!」とAKIYOSHI氏は自信を示します。この技術の意義は大きく、特に世界的な環境規制により空調機器の消費電力増加が予測される中、重要性が高まっています。
「世界の年間消費電力の3パーセントを削減できる可能性があります。これは日本の年間消費電力の8割以上に相当します」。また、同社の技術「溶湯鍛造法」は、下記のような特徴を持っていると語りました。
・素材Aに開けた細かい穴に、溶けた素材Bを高圧で押し込む
・従来不可能だった素材の組み合わせと割合で新素材を創出
・設備投資だけで数十億円、開発に10年を要した
・特許100件以上を取得予定
現在は工場4棟で年間5億円の売上ですが、自動車メーカーやAIプロセッサ、データセンターなど多分野で採用が進み、市場規模は45兆円以上と見積もられています。
「放射線遮蔽素材の開発にも成功しました。鉛より軽くて放射線を遮蔽する素材で、原発の隔壁、放射性廃棄物の運搬、医療、宇宙など多分野で革命を起こせます」とAKIYOSHI氏は意気込みを語りました。
元記事はこちら 6位:強さは鉄の100倍、軽さは鋼鉄5分の1の夢の素材 「宇宙エレベーター」実現の鍵を握る、世界に1つの量産技術
カーボンフライの木村貴幸氏が、日本発の「夢の素材」カーボンナノチューブと、その応用としての宇宙エレベーター構想について紹介しました。カーボンナノチューブは驚異的な特性を持ちます。
・鉄の100倍の強度
・鋼鉄の5分の1の軽さ
・大量の電気を通す能力
木村氏は「私たちはこの夢の素材をもって宇宙産業に参入します」と宣言。現在54兆円規模の宇宙産業が抱える根本的な課題を解決するという野心的な目標を掲げています。
宇宙エレベーターの構想は、ロケット輸送の課題を解決する画期的なアイデアです。
【現在のロケット輸送の課題】
・高コスト:1発50〜100億円、1キロ当たり45万円
・運搬物の制限:強いG(重力加速度)に耐える必要あり
・安全性の問題:爆発リスク
【宇宙エレベーターのメリット】
・コスト:ロケットの100分の1に削減可能
・安全性:電力のみで動作するため爆発リスクなし
・アクセス性:Gによる負担がなく、特別なトレーニング不要
木村氏によれば、「宇宙エレベーターのケーブルに使用できる唯一の素材がカーボンナノチューブ」です。鋼鉄では45キロで自重に耐えられなくなりますが、カーボンナノチューブなら可能になります。
「カーボンナノチューブメーカーは、糸を作ろうとして何度も挫折してきました。直径や長さ、欠陥をナノレベルでコントロールする必要があるからです」と木村氏。同社は20年以上の研究の末、精密にコントロールしたナノチューブを量産することに成功しました。
現在は複数の特許を押さえ、2年後のIPOを目指しています。「みなさまに本気でカーボンナノチューブの可能性を信じていただければ、宇宙エレベーターという夢を現実にできる」と木村氏は締めくくりました。
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