【3行要約】・休息は「寝る」だけではなく「活力を高める」ことが重要だと知られていますが、多くのビジネスパーソンは週末に寝だめして時差ボケ状態になるという問題があります。
・片野秀樹氏は「休日は権利ではなく義務」と指摘し、週末を次の5日間のパフォーマンスを上げるための準備期間と捉えるべきだと提案しています。
・効果的な休養には7つのタイプがあり、自分に合った方法を見つけ対処することで、真の活力回復につながります。
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「疲労」しにくくなる習慣づくりのコツ
——前回、慢性疲労を抱えるビジネスパーソンが増えていることや、疲労を溜める働き方が個人や企業にもたらすデメリットについてお話ししていただきました。書籍(
『疲労学:毎日がんばるあなたのための』)の中では、そもそも疲労しにくくなるための習慣について「活力を高めることが大事だ」と書かれていましたが、その理由を教えていただけますか。
片野秀樹氏(以下、片野):そうですね。まず活力の反対語を考えてほしいんです。実は辞書にも書いてあるとおり、活力の反対語は「疲労」なんですね。疲労対策をするんだったら、「活力」をいかに上げるかということになります。
——「活力を上げる」というのは考えたことがなかったです。
片野:そうですよね。みなさんあまり活力を意識して生活していなくて、休むというと、「寝ればいいんだろう」っていう話になるんですよ。私たちは幼い頃からの経験で「寝れば治る」と考えてしまいがちなんですが、我々は毎年加齢している。その中で、小さかった頃の原体験に頼ることはナンセンスですよね。

——そうなんですね。仕事が忙しいと週末に寝だめしてしまいがちですよね。
片野:寝ることはもちろん大切ですが、もし「寝る=休養」と思われている方がいるのであれば、それは間違いです。寝ることが休養だとしたら、1日ずっと寝ていれば、しっかり活力が高まった状態になるはずです。しかし現実には、1日丸々体を動かさずに横になっていると、筋肉が1〜2パーセント減るんです。
週末の寝過ぎで「時差ボケ」状態に
片野:寝ることは、一定時間はとても良いことですが、それ以上寝ることはむしろ悪影響もある。1日ずっと横になって週末を過ごすと何が起こるかというと、ソーシャルジェットラグ、いわゆる社会的時差ボケが起こります。翌日、時差ボケ状態でお仕事に行くことになります。その状態だと午前中は頭が働かなかったりして、本来のパフォーマンスはぜんぜん出ないですよね。
さらに今、都庁なんかでも週休3日なんていうお話が出ていますけど、リスクがあります。お休みをたくさん取っていただいてしっかり回復する、あるいは活力を高めるための休みだったら、十分取るべきです。でも、休み方を知らない方に与えてしまうと、時差ボケになってしまうリスクにつながります。
——しっかり休んだつもりでも、むしろ仕事に悪影響が出てしまうことがあるんですね。こうした間違った休み方を避けるには、どうしたらいいでしょうか。
片野:私がよくご提案するのは、「まずはオフファーストで考えてくれ」ということです。みなさん、5日間のウィークデーがあって、ウィークエンドで2日間後ろにお休みがあるという発想になると思うんですよ。これはウィークエンドという言葉自体に「エンド」があるというところもあると思いますが、カレンダーもそうなんですよね。平日の後ろに土日が2日間ある。
——確かに。
片野:あれはISO基準で作られているので、そうなっています。後ろに2日間あるとなると、金曜日の働き方は「今日ちょっと乗り越えれば、なんとか明日休みだ」という発想になってしまうと思います。
「じゃあ、ちょっと横になって寝だめしようか」なんてやってしまうと、今度は時差ボケで月曜日に影響してしまうわけですよね。なので、私たちは「土日が前にある」という発想で考えてほしいと言っています。今はGoogleカレンダーでも、簡単に設定を変えられると思います。
土日が前にあるという発想になると何が変わるかというと、「この2日間は何のためにあるのか?」という意識になるんです。
——次の5日間のために、というふうに変わるんですね。
休日は「権利」ではなく「義務」
片野:5日間のタスクを生産性高く終わらせて、1日1時間でも2時間でも早く帰るためには、「この2日間でどれだけしっかり活力を高めて、月曜日を迎えなければいけないか」こういう意識に変わるということです。
そうしたら、2日間ゴロゴロ寝ているという選択肢はなくなります。昼間しっかり起きて、お子さんと一緒に活動するとか、スポーツをするでもいい。いろいろな活力を高める方法を、自分から主体的に取りにいく。要は、オフを自分からマネジメントするという発想です。
——平日に少しでも早く帰って自分の自由な時間を持ちたい、という人にもこの考え方はマッチしますね。
片野:はい。私たちはよく「休日は権利じゃない。義務だ」と言っています。権利というふうに考えた瞬間に、「この権利は自分に与えられたものだ」となり、その休みに対して思考停止で何もしなくてもいいという発想になってしまう。
一方義務とすれば、「なんで私はこの休日を義務として捉えなければいけないのか?」「パフォーマンスを100パーセント発揮するために、この義務において、何をしなければいけないのか?」というように意識が変わってきます。
意識が変わると行動が変わります。それによって自分自身の活力をいかに高めるか、意識的に活力を高める行動を取っていただくということです。そこにたどり着いていただけると、次の5日間は効率的に回るということなんですね。
7タイプの休み方
——先ほど、週末に寝だめをするのは月曜日からの仕事のパフォーマンスを下げるとうかがいましたが、逆に週末に旅行をしたり非日常的なことをすると、疲れて仕事に影響することもあるのではないでしょうか。
片野:そうですね。まず、先に書いた
『休養学 あなたを疲れから救う』という本では、いかに活力を高めるか、休養によって活動能力をいかに増進・増幅するかということで、7タイプをご提案しているので、ご自身にあった休み方を見つけるヒントになるかなと思います。

その中で、転換タイプというのがあるんですね。これは外部環境を変えましょうということです。典型的なのは旅行をすること。まったく違う環境に身を置くことが、休息になるタイプです。
でも、実は外部環境と内部環境の境目は皮膚です。皮膚の外の環境を変えればいいだけなので、旅行よりももっと手軽に効果を得る方法があるんです。例えば、整理整頓や掃除、お部屋の模様替え。これらをすることで、自分の外の環境を変えられるんですね。
そもそも「休養の行動って何がありますか?」とよく聞かれるのですが、「その答えは明確にあなた自身に出すことはできません」と私は言います。答えは1つじゃなくて、人それぞれなんです。
本の中で書いた7タイプは、自分の休養モデルを自分で認知させるためのものなんですね。その認知をしないことには、再現性がありませんから。
——「頭を使って疲れたから散歩しよう」とか、自分に合った休み方を選べるようになりますよね。
「仕事のことを考えてしまって休めない」という人へ
——ちなみに、休みの日でも仕事が不安で休めない方も多いかと思いますが、そういう時はどうしたらいいのでしょうか。
片野:何が不安なのかをちゃんと考えたほうがいいと思います。仕事が終わらないのが不安なのか、仕事を誰かに奪われることが不安なのか、自分にとって無理難題の仕事だというのが不安なのか。それが明確でない中で「不安だ」と言うと、不安がさらに不安を呼びます。
——確かに。
片野:なので、まずはその不安の原因が何なのかをつかむことが大切です。原因をつかんだ後に必要なのは、その不安を自分自身で解決できるかどうかを考えることです。自分が解決できるのであれば、そのための方法をどのように取ればいいのかを自分で設計できるかどうかです。
あるいは、その解決できる不安が自分自身ではなんともならないものだったら、誰か別の人の力を借りる。この課題を1人でこなせないなら、チームでやりたいのでメンバーを何人か募るとか、そういう方法があると思います。
あと、そのストレス自体を無視するという方法もあるんですね。仕事だったらなかなか難しいと思いますが、会社での人間関係で反りが合わない人がいるとしますよね。それをなんとか合わせようとしても、さらにストレスになりますから、もうその人とは接触しないという選択肢もあると思います。