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国産有人宇宙機という夢 - 宇宙輸送インフラ構築への挑戦(全3記事)

小型カプセルで世界一の技術を持つ日本が、宇宙輸送で勝てる理由 2026年「あおば」打ち上げ、2030年代に有人宇宙機を実現する東北発ベンチャー [2/2]

2030年、宇宙は商業化の時代へ。ISS後を見据えたロードマップ

藤井:「あおば」が成功した後、有人宇宙機の開発に進んでいくのでしょうか。

小林:ロードマップみたいなところをもう少しお話ししますと、我々は大きく「ELS-R事業」と「ELS-RS事業」っていう2つのソリューションのラインナップが、特にこの5年くらいの中ではありまして。

ELS-Rって呼んでいるのは、宇宙ステーションとかには行かずに、研究開発で実験・実証して、その成果物を戻していくっていうのがELS-R事業で、RS事業というふうに呼んでいるのは、宇宙ステーション上で人がいる環境で研究開発したものを宇宙ステーションから地球に戻してくるというサービスです。

基本的にはこの2つのソリューションというのを2030年くらいまでメインのものとして我々としても取り組んでいくところになっています。ですので、「あおば」を打ち上げた後というのも、ELS-R事業での衛星を2027年以降も継続的に打ち上げていくような計画になっています。

RS事業においては今、宇宙戦略基金、政府の予算の応募プロセスに我々も応募してやっているような最中でまだ結果は出ていないんですけれども※、これが決まると3年で25億円の予算も付いてきて、2029年頃に宇宙ステーションで実施をして、2030年頃から商業宇宙ステーションでのサービスが、ということを目指していますので、基本はこのラインです。

※2025年11月に無事採択された。

そこと並行して、先ほどの月から戻してくるですとか、火星に行くですとか、あと人を乗せた宇宙機を作っていくというところが並行して動いていくようなイメージになります。

有人宇宙船に関しては、我々は2030年代の実現というのを目指していますので、そこに向けて今、基礎的な研究開発などを社内で行ったりですとか、そういう有人関係のプロジェクトもありますので、そういったところの技術開発プロジェクトにも取り組みをしていくというようなところです。

藤井:宇宙ステーションから戻すというお話でしたが、ISS(国際宇宙ステーション)自体が役割を終えるという話もありますね。そのあたりは見据えていらっしゃるのでしょうか。

小林:そうですね。このRS事業の取り組んでいる経緯ですとか目的みたいなところもお話ししますと、おっしゃるとおり、今ある宇宙ステーション、ISS自体はもう、2030年頃に運用が終了するというところです。

一方で宇宙空間の研究開発のプラットフォームというのは欠かせませんので、それをこの2030年以降、民間企業が作るプラットフォームを国も民間企業も利用していきましょうと、基本的にはそういう流れになっていまして。

世界各国でそうした宇宙ステーションに代わるプラットフォームの開発が行われています。その1つはELS-Rみたいな無人の研究開発プラットフォームでもありますし、米国企業を中心に、まさに今の宇宙ステーションと同じような民間の商業宇宙ステーションというものを作ろうという企業がアメリカで複数社出てきています。

このRSというサービスにおいては、ISSで実証した後にこの商業宇宙ステーションでのサービス化を、定期的な運航というのを目指して我々が開発しているサービスになっています。なので民間の宇宙ステーションから高頻度で地球に戻してくるっていうサービスが、このRS事業で目指しているところですね。

藤井:2030年以降、御社のサービスはさらにポテンシャルがあるというイメージですか。

小林:そうですね、はい。2030年までは国のプラットフォームがベースで国が運用しているところから、2030年から一気に民営化、商業化されていくというところになりますので、2030年以降大きく成長してくる産業だと思っています。

特に日本国内で言うと技術実証の場として宇宙でこういったプラットフォームを使っていくと。宇宙開発に参入する上では宇宙で部品とかも実証を事前にする必要がありますので、こういったニーズもあります。

米国とか欧州で期待されているのは、宇宙で製造して、それを地球上で使うというようなところでして、例えば創薬の研究開発などを宇宙で行って、地上で薬作りを行うですとか、あとは宇宙でしか作れない半導体材料を作るですとか、バイオ系のマテリアル、例えば人工臓器を宇宙で作るですとか。

けっこうそういった最先端の科学、研究開発、製造という領域が宇宙で行われる可能性が今ありまして、これが2030年以降に飛躍的に成長していく新たな産業だと思っています。宇宙でしかできない産業ができてくると、そこに仕事として行ったりですとか、企業が宇宙に研究所を持つと。

こういう世界がすぐに来ると思っていますので、そういった世界に向けてまさに今技術開発をして、2030年からの一気に成長していくタイミングに備えて技術開発、事業開発を行っていっているというところになります。

藤井:あと5年ですね。夢のようで夢じゃない、現実が目の前にあるなと。

小林:そうです。いやぁ、もうすぐ先の未来ですね。

(次回へつづく)

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