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国産有人宇宙機という夢 - 宇宙輸送インフラ構築への挑戦(全3記事)

宇宙に行くロケットは何十社もあるが「戻ってくる技術」は世界で10社 誰もが宇宙で生活できる世界に必要な、唯一のインフラとは [2/2]

「戻ってくる技術」で宇宙と地球の経済をつなぐ

藤井:それで、そこから現在の事業にはどのようにつながっていったんですか?

小林:結局、今の事業をやっている理由というのは、宇宙で人が生活するってなったら、そもそもまだまだわからないことが多いということです。そもそも人の体に宇宙環境はどのような影響を及ぼすのかっていうのがまだまだわからないことが多いので、研究開発は欠かせないですし、宇宙で当然人が生活するっていったら食料をどうやって作るかとかですね。

あとは宇宙に人が行くということは産業を作らないといけない。これってまさに宇宙にしかない無重力環境を使った製造とか、そういう産業だと思っていますし、当然行くということは、住むということになるとそこに行くための輸送の手段。これは戻ってくるというのも含めてないと、人が行くためには戻ってくる技術が、やはり必要不可欠です。

こういう、人が宇宙で生活したりするのに必要な要素みたいなのをブレイクダウンしていって、その中で、「じゃあ、事業になりそうな領域、一番今市場としてホットになっている領域はどこなのか? 技術としても、日本から例えば世界で戦っていける領域はどこなのか?」というのを考えていってたどり着いたのが今の事業という感じですね。

藤井:それでいうと、ちょっと話が戻るんですけど、起業した時、日本も含めて宇宙ビジネス全体の状況はどのようなものだったのでしょうか。

小林:立ち上げたのは2021年の2月ですので、本当に4年半前ぐらいですけれども、国内ではもう例えばispaceさんとか、アストロスケールさんとか、すでに最近上場したような宇宙スタートアップ企業を含め、かなり大きく事業としては進んでいたようなフェーズでしたね。

ですので、スタートアップとして宇宙に取り組んでいくというところが、ある種すごく自然なフェーズだったのかなと思っています。当然海外ですとSpaceXとかはもうロケットをバンバン打ち上げるような時代になっていて、有人輸送も宇宙船もSpaceXがやっていてっていう時代。

今とそんなに変わらない、本当に3、4年前くらいの話なので、大きく変わらない。宇宙産業がこれから発展していきそうっていう、そういうタイミングですよね。

藤井:私も宇宙系のメディアの方とたまに会って話をすることがあるのですが、今本当に宇宙ビジネスが熱いという話をよく聞きます。まだまだこれから盛り上がるジャンルなのかなという気もしてはいるんですけど、宇宙産業とか宇宙ビジネスっていうのはまだ日本でも伸びてくる気配はありますか?

小林:そうですね。宇宙産業自体、今すごく盛り上がってきていますが、本当にこれってまだまだ入り口だと正直思っています。宇宙産業って自動車産業とかにも匹敵するくらいに、日本の基幹産業になるくらい大きく成長していくものだと思っていまして。

実際、市場規模としてもすでにグローバルで数十兆円。2040年頃には100兆円、200兆円ぐらいまで宇宙産業は拡大していくっていうふうに言われていますけども、まだまだ何倍にもなっていくようなそういう産業です。

当たり前のように、海外に人が旅行に行ったり海外で仕事をしたりするのと同じように、宇宙に仕事しに行ったり、宇宙に旅行に行くとか生活するとか、そういう世界が本当に10年後、20年後にやってくると思っていますので、そういう意味ではまだまだ盛り上がっているとはいえ、本当に最初の小さなところだと思っていますね。

藤井:なるほど。そんな中で、2025年7月ぐらいに「軌道上のヒト・モノをつなぐ交通網を構築する」という新ビジョンを掲げられました。このビジョンを掲げた理由や、従来の宇宙産業と根本的にどう違うのかという点を教えていただけますか。

小林:まず創業の時から我々の一番上にあるのがミッションなんですけれども、このミッションの「誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにする」。ここはですね、ずっと変わっていないところです。

一方で、もう少し近い領域は、だいたい2040年くらいの姿を我々はビジョンとして設定していまして、軌道上のヒト・モノをつなぐ交通網を構築するというビジョンを掲げたというところですね。

この大きな理由としては、もともとの創業の経緯とかを含めて、建築とかですね、そういう文脈もあったので、もともとのビジョンの中には、例えばそういう有人の、人が滞在するようなプラットフォームを作るですとか、そういった要素も一部含まれていた部分もあるんですが。

今のこの宇宙業界の流れですとか、外部環境、さらには我々の強み、立ち位置みたいなところをあらためて見直した時に、やはり一番の我々の強みは「戻ってくる」っていう技術ですし。

一方で、この戻ってくる技術っていうのは、単に研究開発とか実験・実証の場所だけではなくて、これは輸送サービスですよねと。ここの輸送、交通網を作る。こういうプレイヤーなんだということの立ち位置をですね、明確にしたかったというのが1つあります。


というのも、例えば実験・実証だけではなくて、最近はispaceさんとの連携協定を結んでプレスリリースも出したんですけど、月から戻してくるですとか、あとは2024年度の宇宙戦略基金に、複数の企業と連携して採択いただいていますが、火星に行くようなプロジェクトを今我々は取り組んでいます。火星に行く時も同じく大気圏再突入技術が必要です。結局これって輸送のサービスだと思っているんですよね。

さらに言えば我々としては、人が宇宙で生活できる世界を作っていきたいというところで、人を運ぶというのが創業当初からずっと大事だと思っていました。やはり人が乗る、有人宇宙船を日本発で作っていきたいというのが大きな思いでありまして。

軌道上のヒト・モノ……のヒトというのはまさにそういう意味でして、人を運ぶ有人宇宙船を作っていきたいと。これも人が宇宙に行くということで必ず戻ってくるという技術は欠かせないので、ここの、宇宙に行った後のロケットのその先のコアになる交通網、輸送サービスに我々が関わっていきますよと。

そこをですね、対外的にしっかり示していきたいですし、我々としてもそういう領域にちゃんと事業を広げていきたいという思いを持っていました。

実は創業当初からそんなに大きく変わってはいないんですが、創業当初はもうちょっと広かったところをむしろちゃんと研ぎ澄ませて、ここが我々の強みだっていうのを明確に出したいっていうのがあってですね、ビジョンも新しく刷新したというところですね。

藤井:やはり「戻ってくる技術」というのがすごいなと思っていて。行くのはお金の問題もありますけど、行ってそのまま、デブリになっちゃうかもしれないですけど、放置するとか。落とすときは、大気圏で燃やしちゃうぐらいで。

戻ってくる技術ってすごく大変だろうなと思うのですが、あえてそこに挑戦するというのは、あまり他社ではやられていないのでしょうか。

小林:そうですね。日本ではまず我々のみですし、世界でもですね、小型のプレイヤーで言うと我々と同じようなことをやろうとしている企業は10社ぐらいが世界で出てきていますが、我々が立ち上げた時はまだどこもほぼ立ち上がっていない無名の状態でした。

大型の、SpaceXみたいな人が乗るようなものになってくると、中国とかがありますけれども、基本的にはそんなに数は多くなくて。ロケットはもう世界で数十社ぐらいあって、日本でも何社もいて開発されていますけど。

やはり我々が、特にミッションに由来しているのは、宇宙で人が生活するってなった時は、当然運ぶだけではなくて戻ってくるというところも含めて、宇宙の経済と地球の経済をつなぐということが重要だと思っています。なので、誰もやっていないですが、絶対にこれから必要になってくる輸送のインフラのコアの部分を我々がしっかり押さえていこうということで、ここに着目して取り組んでいます。

結果として宇宙技術戦略とかを含め、再突入の技術っていうのは非常に重要な技術として位置付けられて、戦略基金とかの大型の予算が出てきていますので、こういったところからも非常に独自のポジショニングでやれているっていうのは我々の強みかなと思っていますね。


(次回へつづく)

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