先週は、ビジネスパーソン向けにマネジメントの本質を問い直す記事が多く読まれました。特に「部下を育てる」「正しい指示の出し方」「働きがいの創出」といったテーマが注目を集めています。部下の働きがいや自律を育むマネジメントについて、示唆に富んだ記事をご紹介します。
5位:「ちゃんと指示したのに」が通じないのはなぜか マネージャーに求められる最低ラインと"指示の深度"
なぜ「ちゃんと指示した」のに部下が期待通りに動かないのか──。こういった悩みを抱えるマネージャーは少なくありません。この問題の根本には「指示の深度」という概念が関わっています。
株式会社EVeM代表取締役の長村禎庸氏は、指示が4段階で構成されていると説明しています。
1. 目的:「なぜそれをやるのか」
2. 指示内容:「何をするのか」
3. 業務要件:「どのような内容・項目で行うのか」
4. 参考情報:「過去の事例や参考になる情報」
長村氏は「指示が実行されない理由は、目的がわからないのか、業務内容がわからないのか、業務要件が足りなかったのか、参考情報が足りなかったのか、というようにロジカルに判断できる」と指摘します。
マネジメントにはどうしても感情が伴いますが、指示の深度という「型」を理解していれば、「なぜ指示が通らないのか」を論理的に分析できるようになります。
人事図書館 館長の吉田洋介氏は「これまでによくあるマネジメントだと、『それ、指示が甘いです』『ちゃんと指示してください』というやりとりになるんですよね。でも、その『ちゃんと』の中身とか、何が足りないのかが1つずつ明確にならないと、結局同じことの再生産しかできません」と述べています。
マネージャーは自らのマネジメントを「型」として整理することで、過去の経験や感情に左右されない論理的な指示を出せるようになるのです。
元記事はこちら 4位:メンバーが育たない本当の理由 行き過ぎた上意下達が招く"思考停止マネジメント"
株式会社dazzly代表取締役の筒井千晶氏は、メンバーが育たない本当の理由として「思考停止マネジメント」という問題を提起しています。
筒井氏は指示管理型マネジメントの本当の弊害として、以下の3点を挙げています。
・行き過ぎた上意下達:いついかなる時も上司や先輩の指示に反論してはいけないという暗黙のルール
・行き過ぎたマイクロマネジメント:管理を徹底することをマネジメントの成功と誤解し、細かすぎる指示や介入が増えていく
・マネジメントの正解バイアス:このやり方がマネジメントの正解だと思い込み、マイナス点に気づきにくい
「指示すれば部下はやるはず、やるべき、従うべき」という発想や、「部下にさせるためにどうするか」という考え方が、メンバーの自律性を奪い、思考を停止させてしまいます。
筒井氏は「指示管理型マネジメントは時代遅れと言われていますが、本当にそうなのか」と問いかけます。問題は手法そのものではなく、「マイナス面だけを踏襲したスタイルになってしまっているだけなのではないか」と指摘します。
多くの現場では「マネジメントを手段にすり替えてしまって」おり、本来やるべきことからずれてしまっているのではないかという問題提起は、マネジメントの本質を考える上で重要な視点を提供しています。
元記事はこちら 3位:部下の「働きがい」を潰す上司の行動 管理職の「疲労」が伝わることで起きる悪循環
株式会社働きがい創造研究所 代表の田岡英明氏は、管理職の疲弊感が部下に伝わることで働きがいや生産性が低下する悪循環について警鐘を鳴らしています。
「管理職のみなさんが『疲れたな』という表情とか姿勢を見せると、現場の方々は『今、管理職って大変だなぁ』と。『もう管理職になりたくないな』という思いがどんどん広がっていくという悪循環になります」と田岡氏は指摘します。
田岡氏は管理職に必要なマインドセットとして「一緒に働きたいと思える管理職になること」の重要性を強調し、心理学をもとにした「ニューロ・ロジカル・レベル」という人間の意識の6階層を紹介しています。
1. 自身の仕事が生み出している世の中への影響
2. 仕事の中で達成している自身の使命(ミッション)
3. 自身が仕事で大切にしていることやこだわり
4. 仕事で使っている能力
5. どのような行動をするか
6. どのような組織を作っていきたいか
この6つのポイントの軸が取れていると、働きがいや生きがいを感じられるようになります。
田岡氏は「今までの指示・管理型のマネジメントから、共感・支援型のリーダーシップが求められている」と述べ、「ぜひミドルのみなさんには自分自身のミッション、それにワクワクしている姿を周りにお伝えいただきたい」と提言しています。
元記事はこちら 2位:目標は達成したのに外されたマネージャー 「執行」だけでは通用しないマネジメントの落とし穴
長村禎庸氏は、自身がマネージャーとして「目標を達成したにもかかわらず外された」経験から、マネジメントに必要な4つの基準について解説しています。
長村氏が提示する4つの基準は以下の通りです。
1. 執行:その時々の目標を達成するために、重要業務を見極め、実行する
2. 活用:全メンバーが持続的にパフォーマンスを発揮し続けるために、リソース・意欲・能力をフル活用する
3. 伸張:採用、育成を通じてチーム全体の力量を向上させる
4. 連携:他部署・上司が自部署の状況を把握できる状態にする
長村氏は自身の過去を振り返り、「目標は必ず達成します。いついかなる時もフルコミットで、徹底的にやります」という「執行」だけを重視し、「活用」「伸張」「連携」を軽視したマネジメントスタイルだったと語ります。
特に「連携」について、上司との定例ミーティングを「何も進まない時間」と考え、頻繁にスキップしていたことを告白しています。その結果、「部署がブラックボックス化すると、本部全体の意思決定の質が下がる。結果として、本部全体の成果・成長を妨げていると言われても仕方がありません」と気づいたと語ります。
長村氏は「『あなたは確かに、このチームの短期成果は残したかもしれませんが、全社の中長期的な成長に貢献するマネージャーではありませんね』というのが、私が外された理由です」と結論づけています。
この4つの基準はすべてのマネージャーに等しく求められるものですが、時と場合によって重点が変わることも示唆しています。
元記事はこちら 1位:優しい上司と甘い上司の違いとは よかれと思って部下の成長を奪う3つの落とし穴
研修トレーナーの伊庭正康氏は、部下への「優しさ」と「甘さ」の違いを明確にし、よかれと思って行っている行動が部下の成長を奪う3つの落とし穴について解説しています。
伊庭氏が指摘する3つの落とし穴は以下の通りです。
1. 過保護:部下の失敗を先回りして防いでしまう
2. 甘やかし:部下の要求にいちいち応えてしまう
3. 過干渉:必要以上に確認し、自分が安心する
伊庭氏によれば、優しさと甘さを区別する重要なポイントは「自立性を担保できるかどうか」です。例えば、会議の資料を忘れそうな部下がいる場合、先回りして資料を用意することは本当に優しさなのか、という問いかけをしています。
「甘やかしというのは相手の都合に合わせること。優しさというのは相手の成長に責任を持つこと」と伊庭氏は明確に定義しています。また、部下が仕事を時間内に終わらせられそうにない場合も、単に手伝うのではなく、「どう? 大丈夫そう?」と問いかけ、判断は相手にさせるべきだと主張します。
過干渉については「部下の失敗を怖がる上司っていますね。失敗から学べる環境を作るのが上司と言われます」と述べ、相手の成長の機会を奪わないことの重要性を説いています。
伊庭氏は「部下に任せるというのは、信じる力がないとなかなかできない」と指摘し、「部下はきっと失敗してもそこから必ず学んでくれる」「部下は必ず成長する」「部下は必ず機会があれば変わる」と信じることの大切さを語っています。
さらに「基準は下げず、要望は下げず、コミュニケーションは優しく」という方針を示し、厳しい基準を持ちながらも相手を尊重する姿勢こそが真の優しさだと結論づけています。
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