今週は、日本企業が直面する「人口オーナス期」の組織マネジメント課題と解決策が人気記事となりました。5位の「管理職に必要な7つの能力」から1位の「ギリギリ職場の末路」まで、一貫して浮かび上がるのは「時間内で成果を出す仕組み作り」「部下の自己肯定感を高めるコミュニケーション」「多様な人材が活躍できる組織づくり」の重要性。
多様な働き方を前提とした新しいリーダーシップの方向性を示す記事をお届けします。
5位:管理職の"本質的な問題"は課題に気づけないこと 組織の成長を左右する7つの能力とは
「管理職が部下を育てない」「指導しない」「面談しない」という企業からの相談が多いと語るのは、株式会社PDCAの学校代表取締役の浅井隆志氏です。その背景には「管理職にそもそも必要な能力が足りていない」という根本的な問題があると指摘します。
浅井氏は、日本企業の管理職は「プレーヤーとして優秀で、社歴と年齢が一定以上あるから就く」ケースが多く、管理職としての能力があるかどうかは二の次になっていると説明。特に中小企業では人材不足から「最も良い人」を管理職にするものの、必要な能力が十分でない現実があります。
浅井氏によれば、管理職に必要な能力は以下の7つです。
1. 目標管理能力:目標を適切に設定し、逆算してアクションプランを立て、PDCAを回す
2. 問題解決能力:組織課題を抽出し、解決していく力
3. チームビルディング:単なる「集合体」から相乗効果のある「チーム」を作る
4. 指導能力:その都度何かを教えたり指摘したりする力
5. 育成能力:計画的に教えていく力
6. 自己成長能力:リーダーとして率先垂範する姿勢
7. 実践力:コミュニケーションスキルやコーチングスキルなど多様なスキル
特に深刻なのは「問題を問題と認識していない」状態だと浅井氏は強調します。「特に課題はありません」と答える管理職が多いという現実は、管理職自身が課題に気づけていないことが最大の問題だというのです。
「管理職には組織課題を常に先取りして先手を打っていく姿勢が必要です。新入社員の立場、経営者の立場、取引先やお客さまの立場など、多角的な視点で問題を抽出してアクションを取ることが求められます」と浅井氏は語ります。
元記事はこちら 4位:時間外労働を"強制終了"したら生産性が驚くほどアップ "起業から20年間残業ゼロ"の社長が語る働き方改革
「もう睡眠不足自慢はカッコわるい!」というテーマで開催されたオンラインセミナーで、株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵氏が興味深い体験を語りました。
小室氏は2006年に起業し、これまで3,000社の働き方改革を支援してきましたが、自身も「時間制約付き社長」として20年間残業ゼロで経営してきたといいます。「長男を出産した3週間後に起業したので、年間200回の講演依頼があっても、秋田で講演しようと青森で講演しようと、18時15分には保育園の前に帰ってこなければなりませんでした」と当時を振り返ります。
小室氏は、前職の資生堂時代には残業をしていたものの、起業後は「強制終了」されたことで「自分の頭が良くなったのかな? と思うぐらい、時間内での生産性が自分でびっくりするぐらい上がりました」と驚きを語ります。
時間内で成果を上げるためのポイントとして、小室氏は次のことを挙げています。
・人材育成が最大の肝:自分ができることを徹底的に他のメンバーにできるように育成する
・考え方を徹底的にシェア:全体を見る自分の考え方を社員と共有し、同じ方向を向けるようにする
・飛行機や新幹線の移動時間を活用:34冊の書籍もすべて移動中に書いた
小室氏は「長時間労働が"勝ちパターン"とされていた時代は終わりました」と強調。日本は人口ボーナス期(若者が多く高齢者が少ない時代・1960年代〜1990年代)から人口オーナス期(若者が少なく高齢者が多い時代)に移行しており、不眠不休で働いて成功した時代は終わったと分析します。
元記事はこちら 3位:メンバーの不満が蓄積していくタスクの振り方 マッキンゼー流・リーダーの心得4ヶ条
「明日から使えるメンバーを活かす3つの行動」をテーマに語るのは、元マッキンゼーのコンサルタントで現在Betterboundで事業責任者を務める田中直道氏です。
田中氏は「メンバーのポテンシャルを引き出すには、目的を共有し感情でつながることが不可欠」と語ります。「リスペクト」という言葉は一見当たり前に思えますが、実際の職場では「それはリスペクトが欠けている行動ではないか」と思う場面も少なくないといいます。
特に問題なのが、単に「これやって」とタスクだけを渡すようなコミュニケーションです。田中氏は「タスクだけを投げられると、受け取った側はいったんはやるかもしれませんが、それが繰り返されると『これをなぜやっているのか』『自分の役割は何なのか』といった疑問や不満が蓄積していきます」と指摘します。
同じタスクを依頼するにしても、「会社として今こういう方向を目指している。そのために、このタスクはこういった成果につながるんだ」というストーリーを添えて伝えることで、相手の理解と納得を得られるコミュニケーションが可能になるといいます。
田中氏が提唱する「リーダーの心得4ケ条」は以下の通りです。
1. チャレンジをする:「背中で語る」という表現が近い。リーダーが自ら行動し、成功や失敗の結果を見せることでメンバーにその意義を示す
2. ストーリーを語る:「今、何を目指しているのか」「なぜそれに取り組む必要があるのか」という一連のストーリーをメンバーに伝える
3. 盛り立てる:小さな成功体験を積み重ねることで「できる」「やれる」「楽しい」といったポジティブな感情を醸成し、チームの士気を高める
4. 緊張感を持つ:自分の発言や行動がチームにどう伝わるかを常に意識する
元記事はこちら 2位:10点満点中7点の部下に「惜しい」と言ってはいけない 部下を育てられない上司あるある
研修トレーナーの伊庭正康氏は「部下を育てるのが難しい」という声の背景には「部下を育てる時に何があればいいのかわかってない」という本質的な問題があると指摘します。伊庭氏によれば、「説得」と「納得」は違います。説得は「言われたからやるしかない」という感覚、納得は「なるほど、そういうことか。だとすればやらねばならない」と自分が納得している状態です。
伊庭氏が挙げる「育てられない上司あるある」は以下の通りです。
1. 部下を肯定しない:10点満点中7点の部下に「いいところまでいってるけど惜しい」と言うのはNG。「すばらしい」と肯定することが重要
2. 雑談をしない:雑談を通じてお互いのことを知り、信頼関係を築けなければ、言いにくいことも言えない関係になる
3. 武勇伝を言いがち:「今とは違ってあの頃はね……」というテイストではなく、今に照らし合わせた共通点を伝えるべき
4. 育成の熱量が少ない:業務のやり方だけでなく「仕事観」を教えることが大切
5. 部下に対する質問が少ない:すぐに答えを言うのではなく、質問を通じて「自己決定感」を持たせることが重要
伊庭氏は特に「自己決定感」の重要性を強調します。「手柄は部下に取らせてほしいんです。『自分で決めた』という自己決定感をしっかりと担保しておいてください。すぐ答えを言われると、自分と違う答えであれば『説得された』となります。でも質問されて自分で答えたことに対しては、人は納得するんですね」と説明します。
元記事はこちら 1位:残業ができる人に頼り続ける「ギリギリ職場」の末路 つらい働き方を脱するための"真のハードワーク"とは
株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵氏が、「ただつらい働き方ではなく、勝てる働き方こそがハードワーク」と提言しています。
小室氏によれば、日本社会は「若者が少なくて高齢者がたっぷりいる時代」である「人口オーナス期」に入っており、「少しの人でたくさんを支えると社会が非常に大変になってきます」。そうした社会で再浮上するために重要なのは「現在の労働力をマックス確保」することだといいます。
「人口ボーナス期には体力のある男性だけが分母に入っていますが、オーナス期になったら支える側が足りなくなるので、女性や障がいを持つ方や親の介護をしている方など、全部を(労働力として)入れていくかたちになります」と小室氏は説明します。
このような社会で求められる働き方は、「時間の中で成果を出した人が勝ち」というルールに変更し、女性も障がい者もさまざまな人が支える側に回ることができること。
小室氏が警鐘を鳴らすのが、「一部の時間外労働ができる人に非常に頼る職場」の危険性です。「見た目上、事情がなさそうな人のところに業務が乗っかってくる」職場では、「誰かが残業できるよね」と頼るスタイルが生まれますが、これは持続可能ではないと指摘します。
なぜなら、「求められれば時間外労働できますよ」という状態の人の割合が日本では毎年減っていくからです。若い人の割合が減少し、育児や介護などの時間制約がある人が増えていく中で、そうした一部の人に頼った経営をしていると「年々勝てなくなっていく」というのです。
小室氏は、SNSでも話題になっている「子持ちさま問題」にも触れ、「子持ちはいいよね。あっちが配慮されてさ、できなくなった分の仕事は全部こっちへ来るじゃない」といった対立構造が高まり、「いざ仕事という時に一枚岩になれない」状況を危惧します。
こうした「ギリギリ職場」を解決する方法として小室氏が提案するのは、多様な労働力(週4日勤務、在宅勤務、育児時短、介護時短、65歳以上のシニア再雇用など)をうまく使い、「お互いが休むことが前提」でクラウドに情報を共有し、「パッと(他の人の仕事を)受け取って走る」というパス回しの仕組みを整えることです。
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