先週ログミーBusinessで公開した記事のうち、上位5記事をランキング形式でお届けします。今週は「管理職の罰ゲーム化」「自律と挑戦」「リーダーに向く・向かない」「心理的安全性」といったテーマが人気を集めました。プレイングマネージャーとして板挟みになりながら奮闘する方、自律して動くメンバーを増やしたい方、KPIや1on1に悩む方に、現場で役立つヒントをお届けします。
5位:部下の2割は上司を“敵認定” 「わかってくれない」と向き合う最初の一歩
本田英貴氏は、心理的安全性を「単なる“ゆるい職場”」と誤解したままでは、組織は機能しないと警鐘を鳴らします。本来の心理的安全性とは、仕事を前提としながら、厳しいフィードバックも含めてお互いの考えを伝え合える状態。そのためには「まず、お互いを知ること」から始める必要があると語ります。
印象的なのは、「上司に本音を言えている人は半分もいない」「2割の人は上司を“敵”だと思っている」というリアルなデータです。本音で話せる関係は、一足飛びに生まれるものではありません。「この人は自分のためにがんばってくれている」「話してみると意味のあることを返してくれる」という経験を、小さな積み重ねとして築いていくことが重要だと示します。
また、「部下を理解しよう」と一方向に偏る危うさにも触れます。本田氏は「自分のことも理解してもらうこと、相手のことを理解すること、その両方が必要」と強調します。さらに管理職という役割については、「普通に給料をもらえればいい人は、やらないほうがいい」と言い切ったうえで、それでも挑む人は「仲間や会社が好き」「近くの人の役に立ちたい」というピュアな動機で動いていると語ります。
最後に、本田氏はマネジメントの本質を「チームを組織のゴールに連れていくこと」と定義します。そのために、個々の心理的安全性の感じ方の違いを踏まえつつ、プライベートも含めた状況を理解し、チーム全体を動かしていく難しさとやりがいを、等身大の言葉で語っています。
・心理的安全性は「何も言われないこと」ではなく、厳しいことも含めて話し合える状態
・上司に本音を言える人は5割未満、2割は上司を“敵認定”している
・「部下だけを理解する」のではなく、「自分も理解してもらう」双方向の理解が信頼の土台になる
・マネジメントの本質は、メンバーの違いを踏まえたうえでチームをゴールに連れていくこと
元記事はこちら 4位:がんばっているのに伸びない人の共通点 「やらなきゃ思考」が成長を止める
ビジネスリサーチ会社エスノグラファーを率いる神谷俊氏は、「自律」という言葉が人によってバラバラに理解されている現状を整理し、学術的なフレームから「自律レベル」という概念を紹介します。自律には「セルフマネジメント型(低い自律)」と「セルフリーダーシップ型(高い自律)」の2つがあり、同じ“自律”でも質がまったく違うと指摘します。
セルフマネジメント型は、「就業規則だから」「社会人として当然だから」「任されたからやる」といった義務感・責任感に突き動かされた働き方です。本来は医療分野で、依存症患者が自分を戒めるための概念だったセルフマネジメントが、仕事のスタンダードなモードになってしまうと、短期的にはパフォーマンスを維持できても、長期的には健康悪化や学習意欲の低下、キャリアのプラトー化を招くと言います。
一方でセルフリーダーシップ型は、「おもしろくてのめり込んでしまう状態」で仕事をするモードです。子どもが遊びに夢中になるように、自分事として仕事に入り込むことで、クリエイティビティや学習意欲が高まり、結果としてパフォーマンスも向上し、離職意向も低くなると説明します。ただし、1日中この状態で働くのは現実的ではないため、「高い自律レベルの時間をどれだけ増やせるか」が重要だと位置づけます。
神谷氏は、キャリア自律が重視される背景には、この「低い自律状態(やらなきゃ思考)」から抜け出し、高い自律状態の割合を増やしていく必要性があると整理します。「やらなきゃ」でがんばっているのに伸びない人は、セルフマネジメントに偏りすぎていないかを見直すことが、成長の第一歩になると示唆しています。
・自律には「セルフマネジメント型」と「セルフリーダーシップ型」の2つのレベルがある
・義務感と常識に駆動される働き方は、長期的には健康悪化・キャリア停滞につながる
・夢中でのめり込むセルフリーダーシップ状態は、創造性・学習意欲・満足度を高める
・「やらなきゃ思考」で走り続ける日々から、高い自律状態の時間を意識的に増やすことが、成長とキャリア自律の鍵になる
元記事はこちら 3位:リーダーがあれこれ手を出し「KPI地獄」に陥る職場 リーダーに向く人・向かない人の違いトップ5
研修トレーナーの伊庭正康氏は、「リーダーに向く人・向かない人の違い」をランキング形式で解説します。その出発点は、「リーダーは生まれつきの資質ではなく、“もう1つの顔”としての役割である」という視点です。家庭での顔、専門家としての顔に加えて、「リーダーとしての顔」を意識的につくることができると語ります。
伊庭正康氏が第5位に挙げるのは、「遠慮」と「配慮」の違いです。向いていないリーダーは、遠慮して自分で抱え込んだり、メンバーに踏み込めなかったりします。
対して向いているリーダーは、忙しい相手にもタイミングを見て声をかけ、「今任せたいことはこれだけれど、不安な点はない?」と、相手の状況と気持ちの両方に耳を傾けながら伝えていきます。「遠慮ではなく配慮を」と繰り返す伊庭氏のメッセージは、現場感覚に根ざしたものでした。
さらに、「エネルギーを奪うリーダー/与えるリーダー」という対比も印象的です。無言で席に座り、暗いトーンで一日を始める上司は、それだけで職場の空気を重くしてしまう。
一方で、番組MCのように、明るい挨拶と感謝の言葉、前向きな表情で場を回すリーダーは、自然とメンバーのエネルギーを引き出します。「声の表情」「姿勢」「聞く時の表情」といった細部まで、リーダーの“顔”を具体的に描写しているのが特徴です。
そして第1位が、「不安からあれもこれもやってしまうリーダー」と「やることを絞るリーダー」の違いです。指標を7つ・8つ並べる「KPI地獄」に陥る組織を例に出し、「まずは3つまで、ベストは1つ」と絞ることを推奨。リバーシの角になぞらえ、「ここを押さえれば全体がひっくり返る」というキーストーンを見極める重要性を説きます。
・リーダーは資質ではなく「役割としての顔」。意識して身につけることができる
・「遠慮」して踏み込まないのではなく、相手の状況と感情に「配慮」しながら伝える姿勢が重要
・挨拶、声のトーン、姿勢など、リーダーは職場のエネルギーを左右する“MC役”
・KPIを増やしすぎる「KPI地獄」を避け、リバーシの角となる指標に絞り込む発想が必要
元記事はこちら 2位:上司が“挑戦を渡す”と自律は下がる 善意のマネジメントが空回りする理由
神谷俊氏は、自律レベルを高めるヒントを「遊び」と「ちょうどいい刺激・挑戦」の観点から解き明かします。赤ちゃんがわざわざ立ち上がろうとする様子や、子どもが危ない遊びに挑戦する姿を例に、人は本能的に「自分にとってちょうどいい刺激」を求めるようプログラムされていると説明します。
ここで紹介されるのが、M・J・エリスの「最適覚醒水準」とチクセントミハイの「フロー理論」です。自分の能力にフィットした挑戦レベルが目の前に現れると、集中力・楽しさ・パフォーマンスが高まり、ポテンシャルを最も発揮できる状態になる。その一方で、挑戦が難しすぎると不安と緊張で動けなくなり、逆に簡単すぎると飽きと手抜きが生まれてしまうと整理します。
管理職の受講者にこの話をすると、「なるほど、明日から部下に難しいことをやらせてみます」と返ってくることが多いといいます。しかし神谷氏は、この反応にこそ落とし穴があると指摘します。
上司から「挑戦だ」と渡された仕事は、部下にとっては単なるタスクに過ぎないことが多く、義務感を強めてしまう危険があるからです。善意で「挑戦を渡す」つもりが、むしろDriven to Work(やらされ感)を加速させ、自律レベルを下げてしまうと警告します。
ではどうすればよいのでしょうか。神谷氏は、最初はパフォーマンスに直接関係なさそうに見える小さなアクションから始め、本人が試行錯誤しながら学び、その結果として挑戦レベルを少しずつ上げていく「階段づくり」が重要だと述べます。
マネジャーの役割は、大きな挑戦をトップダウンで渡すことではなく、本人がオーナーシップを持って挑戦をデザインしていけるよう、プロセスを支援することだと位置づけます。
・人は「自分にとってちょうどいい刺激・挑戦」の時に最もポテンシャルを発揮する
・上司が“挑戦タスク”を配ると、多くの場合は義務感を強めるDriven to Workになってしまう
・まずは小さなアクションから始め、本人のPDCAを通じて挑戦レベルを自ら引き上げる階段をつくる
・マネジャーは「挑戦を渡す」のではなく、「挑戦を自分でつくれるよう支援する」役割にシフトする必要がある
元記事はこちら 1位:プレイングマネージャーが忙しさで潰されないために リーダー2人体制、業務15%削減…「管理職の罰ゲーム化」をなくすコツ
MIMIGURI所属の池田めぐみ氏は、「管理職の罰ゲーム化」という言葉が現実をよく表していると語ります。プレイングマネージャーは、自分の業務に加え、部下育成、トラブル対応、ハラスメント対策、リスキリング支援、メンバーの感情ケアまで一手に引き受けがちです。池田氏の同世代の管理職も、「休日も仕事になってしまって、やっていられない」と疲弊しているケースが多いといいます。
そこで提案されるのが、『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』で整理した「チームレジリエンス」の3ステップです。①困難な状況を整理し解決に動く、②困難を振り返り学ぶ、③次に同じことが起きた時の被害を最小化する――というプロセスを通じて、「起きてからがんばる」だけでなく、「起きる前から負荷を減らす」視点を持つことが、管理職の罰ゲーム化を防ぐ鍵になると述べます。
実務的な打ち手としてまず挙げられるのが、「マネージャーの仕事を15パーセント減らす」ことです。1日1時間程度を目安に、発言していない会議から抜ける、部下に任せても問題ないタスクを手放すなどして、困難の未然防止や仕組みづくりに充てる時間を確保することを勧めます。「自分がやったほうが早い」と抱え込んでいるタスクを見直すことがスタートラインになります。
さらに、「事業リーダー」と「組織リーダー」の2人体制という、新しいチーム設計も紹介されます。1人が事業推進やプロジェクトの推進を担い、もう1人が育成や組織づくりに軸足を置くかたちです。制度として難しい場合でも、信頼できるメンバーをインフォーマルリーダーとして位置づけ、「組織づくりを一緒に担ってほしい」と依頼することで、マネジャーの負荷を下げつつチームの業績が上がっているケースがあると語ります。
また、近年話題になる「感情労働」についても、池田氏は「マネジャーが1人で抱え込むのはヘルシーではない」としています。ストレスケアの方法をチームで共有し、ミーティング冒頭に「今日の気分」を天気で表現して伝え合うなど、ライトな実践を通じて「お互いに関心を持ち合う文化」をつくることを提案します。メンバー同士がケアし合える環境を整えることで、「メンバーのケアをしなきゃいけないリーダー」が潰れてしまうリスクを減らせると解説しました。
・プレイングマネージャーへの業務・感情ケアの一極集中が、「管理職の罰ゲーム化」を生んでいる
・困難への対処だけでなく、未然防止まで含めた「チームレジリエンス」の3ステップが重要
・会議やタスクを見直し、業務を15%削減して「仕組みづくりの時間」を捻出する
・「事業リーダー」と「組織リーダー」の2人体制やインフォーマルリーダーの活用で、1人に負荷を載せすぎない組織設計を目指す
・感情ケアもチームで分担し、「お互いに関心を持ち合う」文化をつくることで、サステナブルなマネジメントを実現する
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