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森田翔氏インタビュー(全2記事)

顧客に「お願い」せずに成約させるテクニック 「売り込み臭」をなくすセールストークの極意 [2/2]

「買ってください」とお願いしてはいけない理由

——段階的に「営業ポジション」「友だちポジション」「先生ポジション」と移行していくのではなくて、最初から「先生ポジション」を狙うんですね。

森田:少しずつ積み重ねていくのも大事ですが、最初からここを取りにいくという意識が非常に重要だと思っています。

私のクライアントさんには、自分の商品の値付けができず、相手に主導権を握られてしまっている方が非常に多いんです。そういう方は往々にして、ファーストアプローチの段階でお願いして買ってもらっているんですよね。「すみません、買ってもらっていいですか」みたいなポジションで入ってしまうと、なかなかそこから抜け出せなくなって苦労します。

やはり最初から、相手に求められて商品・サービスをお届けできるポジションを意識したほうがいいかなと思います。

——私も営業時代、訪問先で仲良くなって買ってくれる人はいましたが、だんだん「何回もお願いするのは悪いな」と、自分自身が辛くなってしまったこともあります。「先生ポジション」で相手から求められて提案することで、そうした悩みも解消できそうですね。

森田:そうですね。どこかのタイミングでお願いしないといけないシチュエーションはあると思いますが、最初からお願いばかりしていると、いわゆるテイカーだと思われて、せっかく築いた関係性も崩れてしまいます。

あくまでもこちらから価値を提供していくスタンスで、かつ相手の知らないことや望んでいることに刺さるような問いかけをしながら、相手から求められる存在に自分をデザインしていく。これは事前にある程度準備ができることだと思います。

売り込み臭を消す「引く」アプローチ

——書籍で書かれていた、クロージングのテクニックもお話しいただけますか。

森田:まずテクニックの1つに「譲歩」があります。「返報性の原理」といって、相手から何かを受け取ると「お返しをしなければ申し訳ない」と感じる心理作用が働きます。なので、ビジネスパーソンは、まずとにかく目の前のお客さんに価値を提供していくのが大前提です。

クロージングで商品を買ってもらう際に、「押す」アプローチの反対が「引く」アプローチです。オファーの出し方として、ちょっと大きめのオファーを最初に見せておいて、「でも、あなたにはここまでは必要ないですよね」と譲歩する。

すると相手は、今度は自分が譲歩しないといけないという気持ちになるので、本来紹介したい提案を、売り込み臭を感じずに受け取ってくれる、というテクニックです。

——たしかに、私自身もこのやり方を受けて商品を買ったことがあります。

森田:そうですね。悪用厳禁といいますか、うまい人はこういうのを巧みに使っていると思います。ただ、私たち一般のビジネスパーソンは、そもそも悪いものを売っているわけではなく、本当に目の前の人に役立つものを提供しているはずです。それが最大限必要な人に届くように、トークのスキルやテクニックは必要だと思います。

売り込まずに成約させるテクニック

——この「譲歩」のテクニックを使った後に、本来提案したかったものの成約につなげるには、どうしたらよいのでしょうか?

森田:私は売り込み臭をなくすということに本当に注意しています。なので譲歩をした後すぐに「商品はこちらです」と出してしまうと、「結局この人は売り込みたかったのかな」という臭いがふわっと香ると思うんです。

そこで、「もしそこまでご興味を示されているのであれば、お力になれそうな商品・サービスの情報があるんですけど、ご提案してもよろしいですか」と、ここでも提案する許可を得るためのワンクッションを置きます。

こういう問いかけをすると、「ありがとうございます。お願いします」と、相手から感謝されて、かつお願いされて初めて紹介する、という構図がつくれます。自分から言うんじゃなくて、とにかく相手が聞きたい、お願いしてきたから私は話すんだよ、ということですね。そうすると、まったく売り込み臭がしないまま、自分の商品・サービスをお伝えする流れをつくることができます。

かなり丁寧でまどろっこしいかもしれませんが、それぐらい自分から売り込みをしないことが、最終的には一番Win-Winにつながりやすいのかなと結論づけています。

ノウハウを学んでも成果が出ないのはなぜ?

——ここまでさまざまな「伝え方」のスキルをご紹介いただきました。一方で、本を読んだり研修を受けたりしてノウハウを学んでも、成果を出せる人とそうでない人がいると思います。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

森田:今日お話しした問いかけや譲歩といったテクニックは、非常に再現性があると考えています。私も最初は知らなかったスキルばかりですが、だんだんと身についてきました。それを今度は、同じように困っている人に教えていく中で、しっかり成果を上げてくる人と、なかなか成果につながらない人がいることに気づいたんですね。

私自身は、学術的にも経験的にもこのアプローチは効果的だと自信があったので、自分の教え方が悪いのか、コンテンツを見直したほうがいいのかと、一時期自分を責めていました。でもある時、成果が出る人と出ない人では「思考の癖」が違うなと気づいたんです。

学んだスキルを成果に変える「3つのお」

森田:成果を出している人に「ちなみに、なんでそんなに成果を出せるようになったの?」とインタビューしてみると、共通点が出てくるんです。それが、ふだんどういう思考回路でスキルを身につけているか、という傾向でした。それが、成果を出す人がやっている「3つのお」です。

まず1つ目の「お」が「置き換え思考」です。成果が出ない人は、スキルをスキルとして勉強しているだけで、「ふーん、勉強になった」で終わってしまいます。

成果を出している人は、スキルを学んでいる時に「こんなスキルがあるんだ。じゃあ自分の場合だったらどういう時に使えるかな」「どんなトークになるかな」というふうに、必ず自分ごとに置き換えています。この思考の差はかなり大きいと思います。

2つ目が「落とし込み思考」です。置き換えただけだと、まだ弱いんですね。それをどこまで詳細に自分ごととしてイメージしているか。具体的には5W1Hで、いつ、どこで、誰に、どのようにやるかを言語化できているか。特にWhenとWhere、「いつ」と「どこ」で、今日学んだスキルを使うかを明確にすることです。

例えば営業の方なら、「明日のアポイントでこういう話になるから、今日学んだスキルをこういうトークで入れてみよう」というかたちで明確に決まっていれば、間違いなくその瞬間に使えるはずです。こうやって実際にスキルを使っていくことで、少しずつ身についていきます。

最後は「追い込み思考」です。1回使っただけではスキルが身についたとは言えません。私は「1スキル100本ノック」とよく言っていますが、それぐらい追い込むことが必要です。一定期間、追い込まれる環境に身を置いて何度も使っていただければ、そのスキルは確実に自分で使えるものとして定着します。これは成果が出る人が共通して身につけているマインドなのかなと思います。

——私自身もビジネス書を読んで終わりになることが多いので、すごく参考になりました。
森田さん、ありがとうございました。

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