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都市の未来をデザインする - アーバニストが描く新しい街のかたち(全3記事)

「町内会の声が強すぎる」 日本のまちづくりに必要な「軽やかな個人」とは [2/2]

情報の密度と偶然の出会い 人口規模にとらわれない「都市的状況」とは

藤井:そういった意味で、もちろん東京みたいな大都市みたいなのはあると思うんですけど、地方にも都市という、別に街があればそれはもう都市じゃないかという考え方もあるかなと思うんですけど。そこには、都市という定義はあるのかな、というところをうかがいたくて。

石川:そうですね、そういう経済規模みたいなものというよりかは、都市的状況という言い方をしているんですけど、やはり都市的状況を成り立たせているのは何かなと思った時に、情報の密度とそこに出会う確率の割合みたいなものがあるなと思っていて。

それこそプロジェクトをやっていた山梨県の富士吉田も、空き家が多く大変なエリアなんですけど。今そこにいろいろなプレイヤーが移住してきて、ポコポコと活動を始めて、それこそ情報の密度が高まってくる。

そうするといろいろな人がそこに来るようになって、出会いとか偶然性のきっかけが生まれる確率が高まっていく。それがすごく都市的な状況だなと思って。なので、けっこう地方の中でも、一部でそういう都市的状況が起こっていたり、このエリアでそういうものが起こっていたりみたいなのはありますし。

私たちも、東京だけ、大都市だけで活動するわけでもなくて、本当にいろいろな規模感の街や場所に関わっているので、そういう認識で場所とかは捉えているかなと思います。

非西洋圏に注目する理由 チェンマイで開催した「for Cities Week 2025」

藤井:今の話は日本の話だったんですけど、今度は海外に目を向けて。もちろん活動されているのは日本だけじゃないと思うんですけど、それこそこの前「for Cities Week 2025」はタイのチェンマイで行われたと思うんですけど。

石川:はい。そうなんです。

藤井:チェンマイでやった理由とかはあったりするんですか?

石川:まず「for Cities Week」について話すと、まさに会社を立ち上げた初年度からコロナ禍だったんですけど、年に1回そういうアーバニストの人たちが集まって、これからの都市を考えるような祭典をしたいなと。

ただその祭典が、カンファレンスみたいな、誰かの偉い話を聴けるだけじゃつまらないから、私たちが大事にしている、より実践的なものとかアイデア、「こうなったらいいんじゃないか」という知恵をお互いに授け合えるようなかたちがいいなと思って。そういう学び合うための祭典を作ろうというところで、最初は東京と京都で始めました。

完全セルフファンディングでやっているので、ぜんぜん利益が出ない取り組みなんですけど(笑)、やりたいからやっているみたいなのと、そこからいろいろなご縁ができるというのもあるので、今もやっています。

2年目がエジプトのカイロでやって、3年目がベトナムのホーチミン。4年目はちょっといろいろな仕込みをしていて、2025年がタイのチェンマイというセレクトになっています。

毎年、国とかテーマとかを決めるのも、自分たちの興味があるところみたいなベースで決めているんですけど、意識しているのは「非西洋圏」というところ。

というのも、まちづくりの分野ですごく参照されるのって、例えばですけどアメリカでの実践とか、それこそポートランドの実践がこうでとか、ヨーロッパはこれがこうで……私たちもやはりヨーロッパに寄っているのもあるので、非常に学びになるところもたくさんあるんですけど。

アジアもいろいろな知り合いがいる中で、アジアはアジアでおもしろい実践があるのに、なかなかそこの交流だったりとか学び合いというのが、言語の問題もあると思うんですけど、なされていないというところに課題意識を持っていたので。

今まだ発掘され切れていない都市や、あるいは都市がけっこう劇的に変わっていくようなエリアを意識しながら、毎年「今、あるいはこれからに向けて、どこで何を考えるべきか」みたいなかたちで場所を選んでいます。

バンコクではなくチェンマイだったのは、この数年間、私たちも「More than Human」みたいなテーマを大事にしていて、それこそ都市は人間のためだけのものじゃないというところで。

プロダクトとかでは人間工学とか、人に対応したヒューマンスケールのデザインみたいなことが言われていると思うんですけど。生き物、植物、ほかの存在とともに、どう共生していくかというのも、もうこのいろいろな気候の変化の中では考えざるを得ない。

そうなった時に、チェンマイは真ん中に都市があって、東側に川があって、西側に山があって、かなりその土地の地域環境とともに、災害も含めてですけど、成り立ってきたと。

そして今でも都市生活の中でその自然環境を活かす知恵をデザインしているというところで、おもしろいなと思って。そこにKalm Villageというアートセンターがあるんですけど、そことパートナーを結んで、地元のランドスケープデザインチームとか建築家とかと一緒にワークショップも作って、今回現地での実践というものを教えていただような取り組みをおこないました。

藤井:それってけっこう、日本にも輸入というか、そういうこともできそうな感じですね。

石川:そうですね。参加者自体、募集をするようにしていて、今回も日本以外にもベトナム、パキスタン、フィリピン、香港とか、けっこういろいろなところから来ています。1個大きなものを持って帰るということではないんだけど、それぞれがそれぞれの国や地域で実践できることを持ち帰るようなところにはなってくるのかなとは思っています。

ベトナムに関しては、2年前にfor Cities Weekをホーチミンでやってから、2025年の初めに「everyday studio」という、現地スタジオを立ち上げてて、今は現地のという建築チームと一緒に運営しながら活動を開始しています。

ベトナムも「Pizza 4P's」という、日本だと麻布台ヒルズに入っていますけど、あれはベトナム発の日本人方々が立ち上げたで、現在彼らと一緒に新しいコンセプトの、より環境負荷を下げるような店舗のデザイン、体験設計みたいなものも、studio anettaiとともに仕事としてもやっていて。そういった展開が今ベトナムでもできてきているという感じですね。

(次回につづく)

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