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都市の未来をデザインする - アーバニストが描く新しい街のかたち(全3記事)

「町内会の声が強すぎる」 日本のまちづくりに必要な「軽やかな個人」とは [1/2]

【3行要約】
・日本のまちづくりは地元住民の声が強く、多様性や変化に乏しいという課題を抱えています。
・「for Cities」共同代表の石川氏は「コロナ禍のアムステルダムで、観光客不在の特殊状況下で地域のための小さな活動が生まれていた」と語ります。
・石川氏は都市を人口規模ではなく「情報の密度と偶然性」で捉え、アジア各国での「for Cities Week」開催を通じて非西洋圏の都市実践を発掘・共有しています。

コロナ禍のオランダで事業計画を練った 「for Cities」設立の経緯

——都市体験のデザインスタジオ「for Cities」共同代表の石川由佳子氏が、コロナ禍のオランダで事業計画を練った設立の経緯から、日本のまちづくりが抱える課題まで語りました。

町内会の声が強すぎる現状に対し、「軽やかな個人」や「よそ者」の視点が重要だと指摘します。都市を人口規模ではなく「情報の密度と偶然の出会いの確率」で定義し、チェンマイやベトナムなど非西洋圏での活動展開についても明かしています。

藤井創氏(以下、藤井):その後、今いる「for Cities」の共同代表になられていますが、立ち上げられた理由を教えてもらえますか。

石川由佳子氏(以下、石川):for Citiesは2019年から2020年にかけて立ち上げた一般社団法人で、都市体験のデザインスタジオという言い方をしているんですけど、独立してから数年経って立ち上げた団体になります。

ちょうどコロナの時期だったんですけど、実は今一緒にやっている杉田(真理子)もロフトワークにいて、彼女は京都ベースで活動していたんです。

お互い「都市」というバックグラウンドがあったので、都市ネタを情報共有するみたいなことをしていて、「この情報共有、意味ありそうだからオープンにしない?」みたいなところで、2019年ごろからポッドキャストを始めたのが最初だったんです。

今はもう6年やっている『Good News for Cities(〜都市に関する炉辺談話)』というポッドキャストなんですけど、それをいろいろやっているうちに、もうちょっとプロジェクトにしたいというところで、ドイツのZK/Uというアーバニスト・イン・レジデンスに2人で応募して、そこで採択されるということになっていたんです。

そうしたらコロナがガンと来ちゃって、ドイツに入れませんみたいなことになって、「どうする?」みたいなのを2人で、遠隔で電話していた時に、「オランダは国境が開いているらしいよ」みたいな感じになって。

「とりあえずオランダで会おう」ということで、オランダに集合して、私も他に知り合いがいたので、その知り合いのプロジェクトを一緒にやりながら、今後何ができるかというのを彼女と考える機会もあって。

「何かしら、もうちょっと動きとしてインパクトを持てるようなことをやっていきたいよね」、かつ、「街に対してちゃんと責任を持ちながら関わっていきたいよね、個人の趣味とかではなくて」というところで、組織として立ち上げようというところになったと。

それこそコロナ禍だったんですけど、私たちはアムステルダムのボートハウスに住んでいて、そのボートハウスで事業計画とかを考えていました。最初に作ったのが「for Cities.org」というアーバニストのためのオンラインプラットフォームなんですけど、そのワイヤーフレームとかデザインコードとかを練りながら、そこでまずベースの骨格ができたというのが初めでした。

都市体験という言い方をしているのも、先ほど言ったような建物を建てるというよりかは、その建物をどう使っていくかとか、そのエリアをどう育てていくかというようなところも含めた地域のデザインということをやっていきたいというふうに思って、あえて体験という言葉を入れてスタジオ化したというところがあります。

観光客がいなくなったアムステルダムで見えた、地域のための小さな活動

藤井:コロナ禍の間で始まったということだったんですけど、コロナ禍だとやはりみんな外に出ないじゃないですか。そうすると都市と関わることがあまりなくなったりもしたのかなと思ったんですけど、そこはどんな感じだったんですか?

石川:そうですね。なのでまさに地域でのプロジェクトはガクンと下がった時期ではあったんですけど、アムステルダムはその当時でもけっこうおもしろくて。あそこ(アムステルダム)なんてもう、観光大国というか観光にかなり頼り切った街で、(その当時は)ほぼ観光がなく、ここに住む人たちだけになった状態だったので、そういう特殊な状況ということもあったんですけど。

地域のために小さな活動が地域レベルでは起こっていて、隔離とかではなくて、みんなコミュニティスペースに出てきたり、人と触れ合うことが普通にあったので、エリアで小さい活動ができていたんです。

ただその当時、なかなか(その他の)プロジェクトができていなかったので、for Cities.orgという先ほど言ったアーバニストのためのアイデア・データ・バンクみたいなもの。いろいろな国で起こっている、アーバニストが取り組んでいる活動のアイデアを世界に承継すべきというようなプラットフォームを作ったんです。

そういうオンラインベースでの交流だったりとか、アーバニズム、都市みたいなものを考える動きを加速させたいというところで、最初からそういうオンラインベースのネットワークを作る時期だったのかなと思っています。

藤井:アムステルダムで準備をして、日本に帰ってくるのはどういうタイミングでしたか?

石川:それこそ登記して、日本でも活動を開始しようみたいなタイミングで帰ってきたという感じです。

長くいる人の声が強すぎる日本のまちづくり 「軽やかな個人」が必要な理由

藤井:先ほどのお話の中で、建物なのか人なのかというところ、アーバニストという言葉も人ですよというところでお聞きしたいことがあって。

他のメディアで「軽やかな個人みたいなほうに移っていくべきだ」みたいなことを話されていたと思うんですけど、これってコンセプトとしてどういうものなのかも教えてもらえますか。

石川:そうですね。先ほど言ったプラットフォームを作ったのも、ローカルのことをもっとグローバルに考えたいというところがあって、日本のまちづくりの現場にいると、けっこう町内会の人が強いとか、地域の人の声が、いい意味でも悪い意味でも強くて変わらなさがある、みたいなところがあったり。

ぽっと来たよそ者よりも、そこに長くいる人のほうが正義みたいなところがあることに、ちょっと違和感を持っていて。というのも、それこそ渋谷なんてよそ者だらけの街で、でも彼女・彼らは街を成り立たせるメンバーでもあるのに、その声が届いていないみたいなところだったり、街を作る現場になかなか多様性がなかったり。

例えば外国の人とかは(町内会などに)来ないですし、子どもとかも来ないですし、やはり関心のあるデベロッパーの方とか町内会の中でも意識がある方とか、そういう顔ぶれになってきてしまう。もっと多様なバックグラウンド、そこにパン屋さんがいてもいいし、ファッションの人もいてもいいし。

だからそういう多様な背景を持った人が、軽やかに、それこそ参加できるような在り方だったりとか、開き方だったりとか、関わり方ができるような状況を作っていきたいなと思っていました。

あとは、『よそ者としての都市』というZINE(小冊子)を、オランダにいる時に初めて出版したんですけど、アウトサイダー的視点というのは、すごく重要だと思っていて。「まれびと」的視点といいますか。

やはり私もけっこう地元がない感覚で、それこそ小中はドイツにいたりとか、引っ越しも何回かしていたりして、もうずっと生まれてからここにいるという経験もしていないので。ある種、どこに行ってもよそ者だったというのもあるんですけど。

その人たちだからこそ見える街の価値とか、ずっといるからこそ見えなくなっている魅力ってあると思っていて。それはよそ者だからこそ発掘できるし提示できるんじゃないかというところで、よそ者的個人とか、そういう人たちも重要なんじゃないかと思っています。

藤井:なるほど。けっこう地元の昔からいる人たちが強いというのは私も感じていて。私も一応東京出身で、東京からあんまり動いていないんですけど、東京のちょっと西側のほうなんです。あまり都心のほうに行くこともなくて、一方で夏休みとかに地方に行くこともあんまりない。田舎みたいなのがなかった世界なんですけど。

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