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クリエイターエコノミーの創造 - 個人が輝く新しい経済圏の設計図(全3記事)

「シリコンバレーで自分の小ささを痛感した」 BitStar渡邉拓氏が掴んだ、世界を変える視座とYouTuber市場への確信 [2/2]

「好きなこと」から見つけた新たな道

藤井:そこで電気自動車カーシェアリング事業を手がけた後、まったく畑違いのYouTuber支援に転身されたと思うんですけど。なぜそのようなキャリアチェンジになったんですか?

渡邉:3年ぐらいやった後に、結果、ビジネス的にはそこまでマンションへの導入というのがメチャクチャ進んだわけではなくて。既存のマンションとかに無償で入れて、課金ベースで、トランザクションベースで課金していくということをやったりしていたんですけど、なかなかハードルがすごく高かったんです。

マンション管理組合さんの合意がなかなか得られないとか、既存マンションの4分の3以上の決議が必要なので、そんなに使わない人もいるじゃないですか。

藤井:確かに(笑)。

渡邉:なんか無料ベースだとけっこうキツイなってなって。新築マンションには入れていたんですけど、決まってから竣工までに2~3年かかって、トライアルでまた3年ぐらい稼働を見てから、そこから部署に広げていくってなると10年がかりで。そうなると、もうまちづくりみたいなイメージになって。

スマートシティプロジェクトとかにも国の助成金をいただいたりもしていたので、やはりそういうまちづくりぐらいの広い視点で長い目線でやらないとビジネスとしてはなかなか難しいなということもあって。会社としては売却されたんですけど。

僕としては、売却前のタイミングと、あとは「3年ぐらいでもともと独立したい」って社長に入社時にお伝えしていたので、そこで独立してというところが、今のBitStarにつながっています。

「さすがに独立して同じことできないしな」とかって思いながら、「自分、何が好きなんだろうな?」とかって思いながら次の仕事を考えていて。なんか今までの連続で、延長線上でビジネスができなくなっていて、好きなものをやりたいなと思った時に、動画がメチャクチャ好きで、見るのもつくるのも好きでしたし、大学でも研究とかを、動画像処理とかをやっていたりしたのを思い出して。

ちょっと動画のビジネスをやろうかなと思って、初めはキュレーションメディアのビジネスで、なんかキュレーションと、コンテンツパートナーとアライアンスを組んで。IVSやホリエモンチャンネルとパートナーシップを結んだり、自分で、「Samurai Venture Summit」とかを撮りに行って編集したりしていました。

そうしたら、なんか、好きだからできたんですけどね、ビジネス的にはわかんねぇな、みたいな(笑)。

藤井:(笑)。

渡邉:そういうことをやっていた時に、コンテンツパートナーに友人のYouTuberがいて、そこで、こういう話を聞いていったりとか。

あとは、大手の企業さんがうちのメディアに出稿していただいていたんですけど、ちょっとおもしろいことをやりたいというので、YouTuberのコンテンツパートナーとこの企業をマッチングしたらおもしろいんじゃないかなって思って。そこでクライアントさんから受注したのがきっかけで実体験ができたというのが最初のきっかけでしたね。

実際、そのプロジェクトが終わった時に、年末年始で振り返りというかイーストベンチャーズさんがやっているシェアオフィスで、僕ともう1人の起業家が、年末大みそかに行って、徹夜で考えました。年始にビジネスをピボットすることを考えないといけないなみたいな。

悶々と考えていた時に、振り返ってみると実体験で、友人のYouTuberを支援したことをきっかけに、なんかこれってすごくコンテンツ産業全体が大きく変わっていくことなんじゃないかなという可能性を感じて。

ちょっと調べてみたら、アメリカとかでもYouTuberとのマッチングをやっているところもあったりしていて、これはマスのメディアというよりは個のメディア。広告だったりプロダクション、制作メディアのあり方が大きく変わりそうだなと感じて、「これだ」と思ってやり始めたのがBitStarというかたちでしたね。

そこから、初めて出資を取りにいったりとかという。

藤井:その当時は、もう、ぜんぜん周りにいわゆるYouTuberみたいなのはいなかった?

渡邉:そうですね。(登録者が)5万人登録いたらけっこう規模が大きいほうで。(登録者が)数十万人いる人なんて、もう数えられるぐらいという感じでしたね。

「何もない」状態からのスタート

藤井:その時、創業当時とかは、世の中もそうじゃなかったというのもあると思うんですけど、この時にちょっと大変だったりとか、「どうやって乗り越えよう?」みたいなことはありましたか?

渡邉:そうですね。まずこのビジネスが固まる前と後で、起業した時って何もアイデアがなかったので、とりあえず「なんとかなるさ」という思いでやっていたんですけど。

なんでその覚悟があったかというと、孫正義さんとかビズリーチの南壮一郎さんとか、あとは、サイバーエージェントの藤田晋さんとか、そんなみなさんの伝記を読んで、みんな何やるか決めずに辞めているじゃないかということを思って、謎に自信をつけてしまってですね(笑)。

私もそれまではスタートアップでの仕事が忙しかったのですが、とりあえず区切りを決めようと思って、決めて、辞めた後に何かあるかな、何かできるかなと思ったら何もなく(笑)。

とはいえ、そういう伝記に支えられたというのは、1つあるかなって思います。何か固まる前で、孫さんも1年ぐらいアイデアに時間をかけていたりしていたという、謎に自信をつけて、まぁ、そんなもんだろうと思ってやっていたんですけど。

でも、みんなから白い目で見られるので、結婚式とかに行ってもなかなかお金を払えないし、3万のところを2万円で行ったりして、代わりに「結婚式動画つくるからさ」ってやって、みんなに馬鹿にされながらやっていましたけど、その時はそれで自信を持ってやっていましたね。

BitStarが決まってからは逆に、「あっ、これで世の中を変えられるんだ」という、「まだ俺しか気づいていないかもしれない」みたいなワクワク感で、何を言われようが、「だって、こう変わるじゃん」みたいな、というので乗り切っていけたというか。

共同創業者に、2015年の元旦に、「俺、決めた。これやるわ」という連絡をしたら、「はっ?」とか言ってよくわかっていなかったみたいなんですけど、理解されなかったとしても、なんかその時はそういう熱量でいけちゃったという。

藤井:その時に、もうけっこう明確な未来が見えているみたいな、これでいけるだろうみたいなのはあったということなんですかね?

渡邉:そう。その時はわりと、なんていうか確信めいたものが、自分の中ではけっこうあって。今と別にアイデアはそんなに変わっていないと思います。実際もっと時間軸でこうなるだろうなとかという違いはあれど、長期で見たらそんなに変わらない未来になっているかなとは思っていました。実際、昔言っていたことと今やっていることって、そんなに変わっていないよねとは思っていたりします。

藤井:そう言えば、学生時代はサッカーをやられていたんですよね? そのサッカーで「日本一を目指す」経験と、現在のBitStarで「業界No.1を目指す」姿勢には共通する要素があると思っているんですけど、スポーツで培った勝負哲学が経営にどう活きているか教えてもらえると。

渡邉:日本一を目指す環境と地区大会を目指す環境は全然違うと思うのですよね。やはり上を目指そうとしたときの練習量や練習メニュー、何より一緒にやる仲間のレベル感はとても重要です。サッカーでは大学で最もうまいメンバーが集まるような場所に入りましたし、後輩もうまいメンバーを集めました。つまりビジネスにおきかえると採用と育成環境が大事ということですね。

BitStarでも同様に地区大会ではなく、あと数年でアジアNO.1を目指してやっています。共感してくれている優秀な仲間を集め、私たちの業務レベルもNO.1にふさわしいレベルになるべく「バーレイザー」という現場の基準をあげていくという意味のスローガンを掲げ、育成プランも少しずつ充実し、年々生産性は拡大していっています。おそらく昔のメンバーが今は入社できないぐらいに引き上がっていっています(笑)。 

(次回へつづく)

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