スマホの写真フォルダをカテゴリ分けする
――先ほど「新書を読むと分野横断的な知識が得られる」とおっしゃっていましたが、忙しい中でなかなか本を読めない方も多いと思います。勝木さんはふだん、どんなふうに本を読んでいるんですか?
勝木:(例えば本の執筆のヒントになるものを探して)「使えるところ、ないかな」って考えながら読む感じですね。あとぐっとくるフレーズを見たらマーカーを引いています。マーカーを引きながら読んでいるほうが、そういうぐっとくるフレーズとかが頭に入ってくる気がしています。「勝木さんはワーディングチョイスがすごいです」みたいなことを言われることがあるのですが、このマーカーを引く作業で鍛えられたのかもしれません。
――なるほど。読みながら意識的にワードを選んでいる感じですね。本以外で、勝木さんがふだんされているインプットの方法を教えてください。
勝木:私がほかの人よりもやっているのはXの検索ですよね。特定ワードで調べまくっています。
あと、ビジネスパーソンが使えるもので言うと、XとかSNSでぐっときたものがあったらスクショするんですよ。自分の今の写真ホルダーはめっちゃ構造化されています。iPhoneのアルバムの写真フォルダをカテゴリー分けするのは、めちゃくちゃおすすめです。私はたぶん人から見たらとてつもないレベルでカテゴリー分けしていて、自分の外部脳になっています。
例えば書籍の第1章、第2章、第3章とかって軸もあるし、来週から行くオーストラリアのケアンズの旅行についてのものもあります(笑)。あとはYouTubeとかでしゃべる内容も(書いて写真を撮って)ここに保存しています。
それから「X」っていうフォルダには、Xで発信する内容で「これ転用できるな」ってものを見つけたら(スクショして)入れています。あとは「起業」とか「健康」とか、めちゃくちゃ分けていますね。
書籍を読んでもすぐ忘れてしまう人は「構造化」が足りない
――細かくフォルダ分けすることで、どんなメリットがあるのでしょうか?
勝木:まず、インプットしたものを構造化するのはめちゃくちゃ大事です。書籍を読んでもすぐ内容が抜けちゃう人がいますが、こういうふうに構造化しないと頭に入ってこないと思うんですよ。
もともとの知識量が増えることによって、頭の中に知のネットワークが生まれます。そこが構造化・体系化されている人は、何かを読んだ瞬間にめちゃくちゃいろんな情報が入ってきて、また新しいものが生まれる。だから人生の早い段階で知のネットワークを作り上げるといいと思います。
もちろん実務的なスキルも大事なんですけど、AI時代においてはぐっとくるような、刺さる言葉を言えるかどうかが大事な気がします。そう考えると、ビジネス以外の本でも読んでいく価値はありますよね。つまり人間とは何かとか、社会とは何かみたいなことを言えるようにする。
事業をやるにしても「人間っていうのは根源的にこういうもので……」とか「社会っていうのはこういうものなんですけど、今までこうだったのが今後はこう変わって、こういうニーズが出てくるので、こういうビジネスをやるんです」と言えるかどうか。
その組み立てがないとステークホルダーが熱狂できないというか、応援できないんです。だから「何をやるか」という時にも、すごく文脈が求められる気がするんですよね。それを人々に刺さるかたちで言えることが大事です。

なので活字を読んで言語能力を高めることによって、自分らしい世界の切り取り方ができる。「昭和はこうでした、平成はこうでした。令和はこうなるので私はこれをやります」みたいな説得力が出るんです。自分のやっていることに意味を加えるために、そういう構造化ができたほうがいいんですよ。
そういうのができないと自分がやっていることに意味を見つけられなくて、どれだけ成功しても空虚感があると思います。
唯一無二のキャリアは「自分」と「社会」の交差点にある
――おもしろいですね。最後に、競争社会の中で生き残っていけるようなキャリアの「唯一無二性」をつくるヒントを教えていただけますか?
勝木:唯一無二性のあるキャリアを築くには、自分が好きとか得意なものと、世の中からある程度求められるものの「交差点」がポイントになると思います。一方で、より大きなことをするためには、自分がぐっときて、周りからまったく理解されないものに取り組んだほうが偉大になれると思います。
イーロン・マスクもそうです。自分が求めるものと社会から理解されるものが遠ければ遠いほど、成功した時に大きいと思うんですよ。これはある意味、当たったらすごい、みたいなハイキック型の成功ですね。
でも普通の人はそこまでの成功を求めていないですよね。ある程度幸せな人生を送りたいなっていう人は、自分らしさと、あと社会から「ちょっと違和感あるけど、まぁいいんじゃない」ぐらいの温度感があるものを狙う。社会からも一定「なるほど」って思われながら、自分的にぐっとくるみたいな、その絶妙なところを見つけることですかね。
ほとんどすべてのビジネスパーソンは個人としてある程度自分らしさを発揮しないといけない時代になると思いますし、そっちのほうが健康的なキャリアになる気がします。
――仕事において一定の成果を出しつつも、自分がぐっとくるような、唯一無二のところを探っていくのが、今後のキャリア形成において大事だということですね。勝木さん、ありがとうございました。