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『話し方の戦略』著者に聞く、成果を上げる話し方(全3記事)

プレゼン冒頭で「自己紹介」をするのはもったいない 仕事の成果を上げる「話し方」の戦略

【3行要約】
・話し方は生まれつきの才能だと思われがちですが、実は学習で改善できるスキルです。
・千葉佳織氏は「素直さこそが成功の鍵で、穿った見方をする・恥ずかしがる・怖がるの3つの感情が改善を阻む」と分析します。
・説明しても聞き流される、大事なことが伝わらない――こうした悩みには、「実は音声の問題も多く、抑揚の精度を高めることが重要」と指摘します。

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説明しても「聞き流されてしまう」原因は?

――説明している時、相手に「聞き流されてしまう」という悩みはどうしたらよいでしょうか。

千葉佳織氏(以下、千葉):正直状況次第ではあるんですけれども、言葉が関連している場合と音声が関連している場合があると思います。まず言葉が原因の場合は、順番がわかりにくいとか、そもそも話が長すぎて相手の関心が引きつけられないことがある。なのでその情報をより取捨選択していったり、短くするのが重要です。

ただ聞き流されてしまうというのは、実は音声に関連することも多いんですよね。声が小さすぎて聞こえないので、相手が聞くのが大変になってしまって、注意深く聞くのを諦められてしまうこともあります。あとは早口であるがゆえに、すべてを相手が咀嚼できずに、なんとなく重要な情報も流れてしまっていることもよくあります。

なので「聞き流されてしまうな、興味を持ってもらえないな」という方ほど「抑揚の精度を高める」ことがポイントになると思います。具体的には、声は腹式呼吸を使って大きく。声のトーンは1オクターブ程度使える状態で、高い音や低い音も駆使して、波を使って話せるような状態になる。重要なキーワードは0.8倍速で話せる状態を作る。そういうポイントが積み重なると、少しずつ変わっていくと思います。

「自己紹介」から始まるプレゼンはもったいない

――千葉さんはもともともともとディー・エヌ・エーで人事をされていましたが、当時会社説明などの状況で意識していたポイントはありますか?

千葉:はい。私は新卒採用部で、学生向けのプレゼンを担当したり、候補者さんにディー・エヌ・エーを選んでいただけるように、コミュニケーションを取るメンバーとして仕事をしていました。

特に私自身が意識していたのが「合同説明会で最も魅力的な企業だと思ってもらう」ということです。私がよく登壇していたイベントは、複数の企業さんが7分間登壇されて、最後に「一番魅力的だと思った企業に投票してください」という投票制度がよく設けられていたんです。なので人気が可視化されるような状態でした。

そうなった時に、この7分をどういうふうに使うのか、すごく試行錯誤したんです。例えばほかの企業さんで多いのは、「みなさん、こんにちは。これから株式会社○○の新卒採用のプレゼンテーションを始めたいと思います。今回担当します人事の○○です、よろしくお願いします」。

もうこれを話している時に15秒か20秒ぐらい経っている状態なんです。なので私はこれを削ぎ落して「私たちはこんな社会を作りたいと思って仕事をしています」といきなり本題に入って、「このプレゼンの話し始めはほかと違うな」と思ってもらえるようにしたんです。

ほかの方は最初に自己紹介をしている中で、私はディー・エヌ・エーの全体像を話しました。その上で、「では実際に中で働いている人はどんな人なのか、私の自己紹介をさせてください」と、中盤で自分の自己紹介を入れました。その構成がものすごく新しいので「どんな話だろう」ってワクワクして聞いてもらえるんですね。

「。」のあとは2秒空ける

千葉:あと、とにかく間を取ることを意識していました。通常みなさん話をすると、沈黙が怖くて「。」のあとはほとんど空けないまま、0.6秒ぐらいで話される方が多いんです。でも私は「。」のあと2秒は空けて話をしていました。

2秒空けることで、「次にどんな話をしてくれるんだろう」って、期待や集中力を寄せて話を聞いてもらうことができたんですよね。そうした工夫で、多くの合同説明会の中で1番の人気を勝ち取ることができました。

あとは、最終的に学生の方にディー・エヌ・エーという会社を選んでいただけるのがすごく重要ですから、魅力を伝える必要があると。その魅力の伝え方としてよくあるのは、ほかの部署にいらっしゃる方のお話を聞いていただいたり、サービスの魅力をお伝えしたりすることです。

でも私は、とはいえ人事という橋渡し役になる人こそ、まず魅力的であることが重要だと思ったんです。なので実際に学生さんと話をさせてもらう中で、自分自身が今、どういうふうに会社に関わっていて、何を楽しいと感じているのか、すべて棚卸しをしたんです。

なので学生さんと話をする時も「私はこういう生き方をディー・エヌ・エーの中でしていて、こういう挑戦ができるのがものすごく楽しいんです」「だからあなたも一緒に挑戦しませんか」ということを話していました。そこに対してすごく共感して入社を決めてくれた方もいましたね。

――人事も自己開示することが大事なんですね。

千葉:そうですね。特に人事の方って、自分は主役にはならないようにして、事業部の方とかほかの部署の方とか、リーダーの方にメッセージを届けていただこうという方も多いんです。でもそうではなくて、自分自身も魅力的であるために、人生を深掘りして、価値観を抽出して話せるエピソードを増やす。それが結果として結びついたかなと思っています。

成功する人の共通点は「素直さ」

――これまでいろいろな方の話し方を見てきた中で、千葉さんが「すごいな」と思った方はいますか?

千葉:例えばトヨタの豊田章男会長は、大勢の前でも自己開示力が非常に長けていらっしゃいます。あとは大きなプレゼンの場面でも「おそらくご自身でたくさん準備されたんだろうな」と伝わってくるような振る舞いをされていらっしゃいます。

――書籍(『話し方の戦略 「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術』)の中でも、豊田会長は「弱みを見せる」ことが得意だと書かれていましたね。

千葉:そうですね。あとは孫正義さん。近くで働かれていた方、関わりがある方からは、孫さんは会議の場自体をどれだけ密度が高く、そしてみんなが前向きになれるかを重視し、ものすごくコミュニケーションを大切にされていらっしゃる方だとお聞きしました。

プレゼンテーション自体も、ご自身の言葉と哲学をもって、ほかの方がお話しにならないようなアイデアを含めてご自身で発信しているという印象がありますね。

――千葉さんは経営者やリーダー向けのスピーチの原稿支援もされていらっしゃいますけれども、成功する人を間近で見ていて、共通点はありますか?

千葉:一番は「素直であること」かなと思っています。というのも、原稿を作成したり、自身のコミュニケーションの仕方を見返すのは、本人にとってもこれまで気づかなかったことに気づく機会になると思うんですよね。

そうなった時に「ここは改善したほうがいい」と指摘を受けたり、自分で思った時に、すぐに変えられるかどうか。そういうところが結局、一番の伸び代になってくると思います。

私はコミュニケーションの強化をする中で、よく3つの「つまずく感情」があるとお伝えしています。まず「うがる(穿った見方をする)」こと、あと「恥ずかしがる」「怖がる」。だいたいこの感情をお持ちの方は、そこから原稿を改善したり、コミュニケーションを改善したりする難易度が高いことが多いんですよね。

なのでご自身の素養として、素直であること。その上で「良いものを作っていきたい」というふうに向き合ってる方は、成功すると思っています。

20代で「やっておけばよかった」こと

――千葉さんが20代で「こうしておけばよかったな」と思うことはありますか?

千葉:趣旨に沿っているかわからないですが、「もっと早く起業すればよかったな」というのは常々思っています。私は25歳の時に起業したので、5年ちょっと経っている状況なんですが。自分の人生を振り返ってみた時に、話す力、コミュニケーションを科学して、すべての人生にスポットライトが当たる状態にするというのは、自分が最も熱量を持っているテーマです。

実際に、お客さんに変わっていただくこと自体がすごくうれしくて幸せなことなんですよね。多くの人に使っていただけるように、あとは話し方を義務教育にしていけるようにというところを目指して、これからもがんばってスピード感を上げていきたいんです。

そうなると、もっと早くからいろいろ動けていたほうが、そのぶんスピード感も早められていただろうなと思うことはあります。ただ、AIの時代になってよりいっそう、「やっぱりコミュニケーションを学習しないといけないよね」という風潮とか、追い風が吹いてきてはいると思うので。後悔することなくがんばれたらと思っています。

「話し方を磨いて人生が変わった」

――ありがとうございます。最後に20代・30代のキャリアに迷っている読者に向けて、何かメッセージがあればお伝えいただけますか。

千葉:はい。私は話し方を磨いて人生が変わりました。もともと話すことは苦手だったんですけれども、たまたま学習の機会に出会い、自分が思いをもってわかりやすく話すことができるようになれたという自信が持てました。そこから人生が一気に前向きになっていったと思っています。

話す力って、「もともとうまい人はずっとうまい」「うまくない人はずっとうまくなれない」って思われがちなんですけれども、私は決してそうではないと思っています。必ず学習して身につけられるものだと思っているんですよね。

なのでもし読者の方で、自分の話し方やコミュニケーションに悩まれている方がいらっしゃれば、自分が変われるんだということを信じて、諦めずに学習してみていただきたいなと思っています。

――千葉さん、ありがとうございました。

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