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『話し方の戦略』著者に聞く、成果を上げる話し方(全3記事)

話し方の「3つの原則」とは? プロが教える、「結果を出せる人」が身につけている技術 [1/2]

【3行要約】
・ビジネスで成功するには流暢さだけでなく効果的な話し方が重要ですが、多くの人が独りよがりの話し方に陥っています。
・千葉佳織氏は「目的設定」「対象者分析」「話し言葉の性質理解」の3原則を提唱します。
・「相手ありき」の姿勢で短い文を意識し、コアメッセージを明確にして予行練習することが重要です。

前回の記事はこちら

話し方の「3つの原則」

――ここからは、商談やプレゼンといったビジネスシーンで使える話し方のコツについておうかがいします。書籍(『話し方の戦略 「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術』)の中で書かれていた「話し方の3つの原則」とはどういうものか、教えていただけますか。

千葉佳織氏(以下、千葉):まず「話し方の3原則」というものをお伝えします。1つ目は「目的を定める」ということ。2つ目は「対象者を分析する」ということ。3つ目は「話し言葉の性質」を理解しましょう、ということです。

1つ目の「目的」に関して、私たちはふだん話す時間が意外と多いんです。あとはルーティンの会議なども多いので、「その時間で何を達成したいか」を忘れてしまうことが多いんですよね。なので話をする状況において「今日はこういうことを成し遂げたい」というのを、抽象的でもいいので一言でまとめておくといいです。

何も考えずに「自己紹介」をしていないか?

千葉:例えば自己紹介をする時に何も考えずにしてしまうと、仕事の経歴や趣味などでなんとなく終わってしまうことも多いんです。ですから、「信頼に値する人だと思われたい」とか、ちゃんと目的を設定しておく。

そうすると、「これまでの仕事では、主にどれぐらいの時間をかけて、どんなことをやってきたのか」とか、「何にやりがいを感じているのか」というところに熱量を入れたり、目的から逆算して言葉を選ぶことができるようになります。そういうところで、まず目的の設定は重要だと思っています。

――確かに、自己紹介の目的まで考えたことはありませんでした。「相手に信頼してほしい」とか「好印象を持ってほしい」といった目的を最初に決めると、強調する部分や表現の仕方も変わってくるんですね。

千葉:そうですね。「自分がこうありたい」というのと、「相手にどう思ってもらいたい」ということ、どちらの視点でも大丈夫です。いずれも、話し始める前に目指すゴールを頭の中で整理しておくだけで、言葉の質が変わってきます。

相手の知識レベルや興味関心に合わせる「対象者分析」

――2つ目の「対象者を分析する」とはどういうことですか?

千葉:目の前の方が、これから話す内容をすごく理解されている方なのか、それとも知識が浅い方なのか。あとは、その方が比較的速いスピードで物事を理解したい方なのか、ゆっくりとしたトーンで落ち着いて話を咀嚼したい方なのか。

それから、そもそも相手が自分自身に興味を持ってくれているのか、興味を持ってくれていないのか。これらを自分なりに考えて、その前提で相手に言葉を届けるということです。

――これらのポイントについて、実際にどのように分析されていますか?

千葉:私の場合は、企業の方に対して研修を導入いただくような話をさせてもらう時があります。例えばその企業の方2名がいらっしゃったとして、1人は興味があって研修を入れたいと思っていただいている方、もう1人はあんまり興味がないけれども同席をしている方だとします。この時にまず、「この方は興味があって、この方は正直ちょっと後ろ向きなんだな」ということを理解します。

そこで、まず後ろ向きな方に向けて、私自身が提供するものを「おもしろい」と思ってもらうためには、どんな歩み寄り方ができるかな、と考えます。

例えば私の場合は少し丁寧に自己紹介をして、経歴だけではなくて、自分がどういう思いを持ってこの仕事をやっているのかを熱量をもってお話をします。あとは研修の特徴をお伝えする時に「ほかの会社と比較して、ここが圧倒的に私たちが優位なところなんです」と強調したりします。

または「御社の課題に対して、こういうアプローチだから明確に解決できるんですよ」というところをちょっと厚めに話したりします。

「相手ありき」の話し方で

千葉:それから、「どういうスピード感で話をするか」はかなり意識しています。相手の方の話の速度がものすごく速かったり、先に結論を知りたい方の場合は、私もかなり食い気味に話をして、なるべく早めに結論をお渡しすることもあります。

一方でゆっくり話をされる方は、自分と同じぐらいのスピード感で情報を受け取りたいと思っている方が多い。その時は特に重要なことをゆっくり話すようにしています。

――「自分がいかにうまく話すか」ではなく「いかに相手が理解しやすいように話すか」という相手目線が大事なんですね。

千葉:そうですね。私自身が大切にしている言葉が「独りよがりではなく、相手ありきにしよう」という言葉です。

独りよがりというのは、いわゆる「自分がこうしたい」という状況が先行してしまっていること。緊張するから早口で全部終わらせたいとか、かっこいいから業界用語を多用したいとかですね。それを相手ありきに変えられると、相手が聞き取りやすい抑揚や話のスピードにできたり、相手がわかりやすいように少し言葉の難易度を下げて話をしたりできるはずなんです。

なので対象者を分析するというところにおいては、相手ありきのコミュニケーションを取っていくのが前提として重要だと思います。

話し言葉は「一文の短さ」が鍵

――3つ目の原則「話し言葉の性質を知る」についてはいかがですか?

千葉:話し言葉って、音声でしか聞き取れない、シビアなコミュニケーション形態だと思っています。

書き言葉の場合は、理解できなかったらもう1回読み直しができるんですけれども、話し言葉は録画していない限り、一度聞いてそれで終わりです。なので「音で聞いた時に、いかにわかりやすいか」が、非常に重要なんですよね。

では具体的にどうしたらいいかというと、「文章の長さを意識しながら話す」ことです。ここで例として、まず一文がものすごく長い状態のものを話してみますね。

「私たちはAI診断とトレーナーの指導を掛け合わせた話し方トレーニング『kaeka』というサービスを提供していまして、これまで7,000名の方にサービスをご利用いただいたのですが、経営者の方や政治家の方だけではなく人事や営業職、社会人の方全般にご利用いただいており、非常に好評をいただいているんですが……」。

このように、ずっと「、」がつくような状態のコミュニケーションだととてもわかりにくいんですよね。

――聞いているほうも、どこで一文が終わるかわからないから、途中で集中が切れてしまいますね。

千葉:はい。ただ、これって意外といろんな方がやっている会話の形態だったりもします。一文を短くしてみるとなると、こうなります。

「私たちはAI診断とトレーナーの指導を掛け合わせた話し方トレーニング『kaeka』を運営しています。これまで7,000名の方にサービスをご利用いただきました。経営者、政治家だけでなく、社会人の方にも幅広くご利用いただいています。こちらがその資料です」。

――最初の例と比べて、内容が頭に入ってくる感じがします。一文の長さも、聞こえやすさに影響するんですね。

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