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食の革命 - 細胞性食品が描く持続可能な未来(全3記事)

親に内緒で東大院退学、投資銀行も辞めた 吉富愛望アビガイル氏が細胞農業のルールづくりに人生を賭ける理由 [1/2]

【3行要約】
・投資銀行から細胞農業へ。吉富愛望アビガイル氏は新技術のルール形成という方法論に惹かれ、キャリアを大きく転換しました。
・一般社団法人細胞農業研究機構の理事として、ブロックチェーンや暗号資産の規制変化の経験を活かし、細胞性食品の未来を切り拓いています。
・吉富氏は「良いところを活かしつつ、ネガティブインパクトを最小限に抑えるルール」の構築が、新技術普及の鍵だと語っています。

新技術のルールづくりに惹かれた理由

——投資銀行から細胞農業の世界へ。一般社団法人細胞農業研究機構の吉富愛望アビガイル氏は、新しい技術に対するルール形成という方法論に惹かれ、この分野に飛び込みました。

ブロックチェーンや暗号資産の規制変化を目の当たりにし、「良いところを活かしつつ、ネガティブインパクトを最小限に抑えるルールとは何か」という問いに向き合ってきた吉富氏。細胞性食品という新しい食の未来を切り拓くため、キャリアを大きく転換した経緯を聞きました。

投資銀行から細胞農業へ 

藤井創(以下、藤井):まずは吉富さんの経歴からおうかがいしたいのですが、もともとは投資銀行にいたとか。

投資銀行にいた際に、世の中の社会的な課題も、たぶん金融の世界にいながら見えていたと思うんですけど、その時に見えていたものって、今の段階で何か思いつくものがあったりしますか?

吉富愛望アビガイル氏(以下、吉富):その時は、社会課題とかはあまり考えていなくて。というのも、投資銀行と並行してすでに政策の勉強をしていたので、それよりももっと前から、今取り組んでいる仕事(編注:JACA、細胞農業研究機構での仕事)についてのモチベーションはあったんです。

投資銀行の中ではそれに加えて、新しい分野にチャレンジする企業、特に大企業の意思決定の難しさであったりとか。どういった環境や数字であったりを用意してあげると、よりスムーズに意思決定が進むのかを勉強していました。

また、日本企業の海外企業買収のプロセスをサポートしていたこともあって、日本企業にとっての海外展開の難しさだったり。今の細胞性食品の分野でも、企業のチャレンジを応援できるような環境づくりを進めていきたいな、と思っていました。

藤井:なるほど。細胞性食品(編注:培養肉など、動物や魚の細胞を培養して作られる食品)って、食料とか環境とかの問題と関係あるのかなと思うんですけど、そこらへんって投資会社にいた時にそういう問題に気づきましたか? それともさっき言われたように、政策に興味があったというところで、もともとそこには興味があってという感じなのかでいうと、どちらになりますか?

吉富:後者ですね。実はもともと食の分野そのものに関心があったわけではなくて。新しい技術に対してどういうルールを作っていくかという、方法論そのものに関心があったんですね。

というのも、社会人として最初に勤めた分野が、ブロックチェーンとか暗号資産の分野で、ちょうど「コインチェックの資金流出」の話とかがあって、その前後で日本のレギュレーションがすごく変わった。

もともと日本は、世界で初めて暗号資産の分野でルールづくりをしたんですけれども、それによって業界の台風の目になって、日本で行われるカンファレンスには海外からいっぱい人が来る感じだったんです。

けれど、そこからレギュレーションが変化していく中で、台風の目が中国に移ったりというダイナミズムを見て。

新しい技術には、もちろん良いところとそうでないところがあると思うんですけれども、良いところを活かしつつ、どうやってネガティブインパクトを最小限に抑えるのか。そのための社会的なルールってどんなものなのかというところに、もともと関心がありました。

そういう勉強を多摩大学の社会人向けのコースみたいなのを取って勉強していたら、ちょうどそのコースを取り終わったぐらいの時期に、当時の先生から「培養肉っていう分野があるらしいぞ」ということで、「研究会をやるから良かったら参加して」って言われて(笑)。

どちらかというと、その先生に引っ張られるかたちで入ったんですけれども、私は初期メンバーの1人だったので、途中で今のもう1人の理事と一緒に引き継いで、今に至るっていう感じですね。

藤井:その時はまだ培養肉って、当然そんなに知られていなかったと思うんですけど。

吉富:なかったですね。

藤井:それを聞いてどう思いました?

吉富:当時はたぶん研究会の設立メンバーとして、企業を含めてだいたい10社ぐらいだったんですね。確かJT(日本たばこ産業)や大手の食品会社も入っていたと思うんですけど。

当時の気持ちとしては「なるほど、こういう技術があるんだ」っていうところと(笑)、でも日本のスタートアップがこんなにがんばって技術開発をしているのであれば、応援したいという気持ちもありました。

あとは同じ社会人向けのコースを取っていた時に、1つワークがあって、何でもいいからルール形成戦略を考えてみろっていうワークで、私はたまたま食料を選んでいたんですね。

というのも、たまたまその時の先生が、日本の(食料)自給率を100パーセントにするためのルール形成を考えるとか、いくつかアイデアを話していたので、なんとなく「自給率100パーセント」について考えてみよう、と思って。

その時スーパーフードとかチアシードとかがはやっていたので、もしかしたらそういうスーパーフード系をたくさん食べたら、自給率100パーセントになるんじゃないかと思って(笑)。

計算したら国内の食肉生産を支えるための穀物でも、ものすごく広大な土地が必要だったりとか、人材が不足していたりとかして、100パーセントにするにはかなりのリソースを使うというのが数字でわかりました。

素人計算なのであっているかはわかりませんが、国の予算の数倍ぐらいの規模の数字だったんですよ。でもその時に日本の食料問題というか、自給率100パーセントってかなり大変なんだなっていうのと、食料安保にも関心を持ち始めたところがありますね。

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