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伝統の未来化 - 銭湯から学ぶ文化継承の新しいかたち(全4記事)

10年で半減した銭湯業界に学ぶ「縮小市場の生存戦略」 インバウンドに頼らない文化継承ビジネス [2/2]

業界激震の10年予測「年7軒ペースで淘汰、生き残るのは若返り成功店のみ」

藤井:京都って海外から来られるの方も多いと思うんですけど、銭湯には来られるんですか?

湊:梅湯で利用者の13、14パーセントくらいですね。それは集計を取っているんですけど、ただほかの京都の鴨川湯と源湯は1割もないですね。1パーセント以下じゃないですか。

本当にインバウンドは立地によるって感じですね。源湯と鴨川湯というのが観光地とはちょっと離れているところにあるので、近くにあるゲストハウスの人がたまにふらっと来るぐらい。

梅湯は中心地にあるんですが、ただ別にインバウンドを強化して取っていこうとはまったくしていなくて、勝手に来てその数字なので。それはありがたいのはありがたいんですけど。

藤井:それでいうと、銭湯ってやはり日本独自の文化なのかなという感じがしますね。

とはいえ銭湯が減りつつある流れは、緩くはなっているかもしれないけど、あるっちゃあると思うんです。ここってもう歯止めがかからないものなのか、今後は普通に停滞していくのか、あるいはもっと伸びていくのか、増えるのか。

湊:銭湯が減っていくことは、もう歯止めが効かないですよね。これはもうどうしようもなくて、銭湯だけじゃなくて日本の人口が歯止めが効かないように消えていっている。

僕はちょうどゆとり世代で今35歳。年齢的には仕事もできて脂が乗っていくみたいな、そのゆとり世代が担っていく大きい仕事って、日本が小さくなっていくところをどう処理していくかがメインの仕事になるのかなと、最近すごく考えていて。

その中でじゃあ銭湯も、どう考えてもやはりもう無理なので。人口の減少は地域の衰退と密接で、人口が減っているんだったら人も集めなきゃいけない。大きい会社は外国人を雇わないと足りないという状況の中で手を伸ばしていくとなると、相当無理があるので。

救えるところもなるべく救っていくとしても、その衰退は止まらないだろうなと。たぶん5年、10年後くらいにはいったんは止まるんですけど、それはもう淘汰され尽くしたところだけが(残っている状態)。

経営の跡継ぎがいて、この5年、10年間くらいで跡継ぎがいて若返ったところだけが10年後くらいには残っていて、そこからたぶんもうあんまり減らないと思うんですけど、本当にこの10年間くらいで相当減る。

今、京都府内で70数軒くらいなんですね。僕が始めた10年前からたぶん70軒くらいなくなっているので、半分くらい。年7軒ペースくらいで減っていっているので、そう考えたら単純にその計算で言うと10年後はゼロになる。

でも、ゼロにはならないと思います。今いる経営者の顔を思い浮かべると、跡継ぎに代わったところも40代とかになっているので、10年後にそこがやめることはまぁないんですけど、それ以外のところは基本的に高齢の経営者なのでやめるだろうなって。

その中にもやはりポテンシャルがある銭湯はたくさんあるので、そこをいかに第三者が継承できるのかが、我々が今がんばっているところですね。

藤井:例えば30年後とかになると、数はある程度淘汰されてはいるけども、今言った人たちがどう残していくか、ということでやっていく感じですか。

湊:そうですね。ただ銭湯という、いわゆる町のお風呂屋さんの数は減っているんですけど、温浴施設自体は減ってはいないので。サウナ屋さんだったりスーパー銭湯だったり、ホテルの大浴場とか、そういう場所まで含めればパブリックな浴場としては統計的にも減ってはいない。

町のお風呂屋さんが減っているというところで、日本の中における立ち位置が変わっていっているのもあるんですけど。

藤井:先ほど言ったように銭湯って日本の文化かなと思っていて、もちろん温浴施設としてはいろいろあると思うんですけど、やはり銭湯は銭湯で残していきたい。歴史的建造物ではないですけど、文化として残しておくのがいいのかなと個人的には思っているんですね。

湊:そう思いますね。先ほど言ったようになかなかそういう空間がない。で、ほかに作れるものでもないですし。すごくアナログでフィジカルな場所で、強制的に人と共同作業しなきゃいけない。それが近所の人であったりというところだったりとか。

あと安い料金で入れるというところも、いろいろな人たちを救えるというか、よりどころになり得るとか。公園はタダですけど、やはりなかなか自治的な問題がちょっと違ったりするので、そういう空間は残していきたい。

自分の地元がまったくそういうものがないところで育ってきて、こういうものがなかったらなかったでぜんぜん豊かに暮らしているので、銭湯がなくなったら豊かじゃなくなるかというと、まったくそうではないんですけど(笑)。

ただ、あったらあったでぜんぜん違うんだろうなという。生活の豊かさというか、広がりみたいなものは感じるところではあるので、それが今目の前でなくなろうとしていて、可能性があるのになくなっていくことがもったいないなと。

それが町の豊かさとか人々の生活の豊かさというところと、あと単純に商売としても成り立つと思っているので、もったいないなと思っていますね。

「観光温浴は別業者に任せる」日本人の日常に根ざした文化価値を守る信念

藤井:銭湯が日本の文化として残り、世界から「日本って銭湯文化なんだね」というふうに思われる未来はあるのでしょうか?

湊:世界からですか。僕は世界にぜんぜん興味なくて。外国人嫌いとかそういうのじゃなくて、まずは日本に住んでいる人たちが来なきゃ意味ないでしょという。そこに気づけなきゃ意味なくて、日本人は本当に逆輸入的なところが好きだから、外国人が評価していたら行くみたいな。

そうじゃないし、その方向性ではない。とにかくやはり日本に住んでいる人が銭湯に来ないといけない。生活の中にあるものだからレジャー施設ではないですし、そこの重要性というか、そこに気づいてほしいし。

そういうところをやっている側はしっかりと、なんとなく「銭湯ってあったほうがいいよね」って思ってもらえるような場所づくりをしていかないといけないよなと。

外国人の方たちは観光として見に来て、わからないですけど日本の精神性ってこういうところにあるんだ、実は銭湯にあるんだ、とかいうことを思ってもらえたら。

「日本って独特で違う」というのは、自分たちもいろいろな海外に行く時に感じると思います。僕がこの間台湾に行った時に飲食店、個人の定食屋的なところがたくさんあって。台北ではあまり自炊せずに、そこで夜みんなで家族でご飯を食べるのが普通ということを聞いて、わりと銭湯と近いなと。

しかも行政側もそれに対して税金の減免があったりするみたいで、そこにその国の良さとか民族性とか風土を感じたので、銭湯もそういう場所ではありたいですよね。

本当にわかりやすく、アニメとかそういうものじゃなくて、実際の日本人のしている生活って何だろうというのを海外の人が知る良いきっかけになると思うので。そういう意味では銭湯に来てもらいたいですけどね。

藤井:海外の人から「日本人ってこういう生活してるんだ」の中に銭湯があって。

湊:「知られざる」じゃないですけど。すごく不思議だと思うんですよね。みんな近所の人なのに裸で会うシチュエーションがあって、それは許されていて、なんだったらそこに外国人である自分も入ってきてもOKという。

そういう不思議さを日本人は感じないですけど、たぶん外国人の方はすごくそこに違和感があるのかなとも思いますし。そこで日本人のメンタリティというか、独自性を知っていただけたらうれしいなと思いますね(笑)。

藤井:インバウンド狙いじゃなくてということが逆に、「残す」というところの答え合わせな感じがしますね。

湊:本当にそうです。

藤井:インバウンド狙いだとパッて出てパッと消えちゃうというか。

湊:そうなんですよ。結局コロナの時にそれはよくわかった。京都も本当にインバウンドに助けられたお店とかはあったと思います。ただ銭湯はそうじゃなかったというところで。

観光大国にしていくのであればインバウンドってわかるんですけど、それは銭湯じゃない別の温浴施設がやればいいと僕は思っていて、銭湯はあくまでも日本に住んでいる人たちに向けたもの。大それたことですけど、そういう日本の精神性を伝えていく場所であってほしいな、みたいな感じですね。

藤井:なるほど。おもしろいお話をありがとうございました。

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