【3行要約】・24歳の湊氏は「サウナの梅湯」を継承するも、1日平均80人の集客と15時間労働、ロビー寝泊まりという厳しい現実に直面しました。
・「のれんを掛けて待つ時代は終わった」と気づいた湊氏は、ポスティングや店頭キャッチ、メディア露出など、無償でできる地道な営業活動を展開。
・2年目には朝風呂の開始や営業時間の延長(午後2時〜深夜2時)という大胆な改革を実行し、客数を倍増させる転機を迎えました。
前回の記事はこちら その軽装で富士山に登るのはちょっとヤバいよ
——周囲から「軽装で富士山に登るようなものだよ」と言われながらも、24歳の湊氏は赤字続きで老朽化した「サウナの梅湯」の継承を決断しました。しかし待っていたのは、想像を絶する現実でした。
1日平均80人という低迷する集客数、15時間に及ぶ労働時間、そして銭湯のロビーでの寝泊まり生活。「一瞬で『これヤバいな』って思いました」と振り返る湊氏ですが、そこから這い上がるための地道な努力が始まります。前回に続き、梅湯継承初期の奮闘と転機について聞きました。
1日15時間労働、ロビー寝泊まり生活の1年目
藤井創(以下、藤井):その時は、「サウナの梅湯」さんは何時から何時の営業だったんですか?
湊三次郎氏(以下、湊):その時は15時半から23時だったんですけど、10時くらいに着火して、15時半までの間に脱衣場の清掃をして、週2回くらいその間にダッシュで銀行に行って入金して帰ってきたり。
で、ご飯を食べてちょっと昼寝して、ゆっくりやって15時半。そこから23時までずっと番台。で、閉店したら1時手前くらいまで風呂掃除して、おしまいという。
薪でやっていたので、朝早い日は7時くらいに起きて薪を取りに行っていました。10時の着火までには全部終わらせないといけないので。薪の荷降ろしをやって、10時に着火してみたいな。
そんな感じだったので、すごく働きっぱなし。お金もなかったので、当時この近くに250円弁当というところがあって、それを昼に行って2個買って。夜は出られなくなっちゃうので、夜のぶんのお弁当も買ったりとか。今もある八千代さんというおでん屋さんが、特別に500円で晩御飯を作ってくださったりとか。
そんなわけで1週間くらいで家にも帰れなくなったので、最初の1年目は本当にずっと寝泊まりをロビーでしていました。だから本当に1年目はずっと梅湯にいたって感じですね。軟禁状態でした(笑)。
藤井:ロビーでは寝袋みたいなもので?
湊:布団をちょっと別のところに隠しておいて、閉店後に掃除が終わったらそれを持ってきて広げて寝るみたいな。
藤井:すごいですね(笑)。
地道な営業活動で集客改善「のれんを掛けて待つ時代は終わった」
藤井:1年ぐらい経って、ルーティンにも慣れてくるとそのうちに「こうしたほうがいいんじゃないか」とか、いろいろなものが出てくるのかなと思うんですけど。
その時にどういうアイデアというか、考えたことってあったんですか? 「もうちょっとこうしたら人が来るかも」みたいなのとかも含めて。
湊:お金がないのでアレなんですけど、大前提でやれることはやろうと。ポスティングを自分の足でしに行くとか。番台にただ座っていても、お客さんなんて増えるわけないし、ぜんぜん忙しくないので、やることがないんですよ。
じゃあもうお店の前に立って、来る人に「お風呂どうですか」ってキャッチをするとか(笑)。そういう地道にできることは、ひたすらやろうと。
例えば、インド・ネパール料理店の彼らってすごくビラ(配り)をがんばってやっているじゃないですか。なんで日本人が、商売に対してあれをやらないんだろうというのはすごく思って。何もやることがないんだったらあれをやればいいじゃん、と。
銭湯って町の商売で、昔はのれんをかけていれば来る商売だったので、それで儲かっていたところがあって。本当に何も自分たちからアクションしないんですよね。ショップカードを作るとか、広報するってことを何もしてきていないところもあって。
それでお客さんが来ないとか減っていくのは「当たり前やん」と。しかも自分たちが知らないだけで、周辺の人口だってすごく流動していて、新しく来る人もいれば出ていく人もあって、出ていく人もいれば新しく来る人もいる。
たぶん自分が思っている以上に新しい人たちがたくさんいる中で、その人たちにリーチしていない。まずそこからでしょ、というところがあったんです。
なので僕はポスティングを歩ける範囲でしたりとか、店の前に立ってこうやって(チラシ配りを)やるとか、あとこういうメディアに出るということ。とりあえずタダでできるので、それをやっていたって感じですね。
藤井:そういう流動的な人がいた時に、その新しい人たちは銭湯の存在に気づいていなかった感じですかね?
湊:そうですね。自分が住んでいる町でも近所に新しくできたお店とか、昔からある店とか、風景になっているので。新しくできた店はなんとなくわかりますけど、昔からある謎の小料理屋とかスナックとか、もう風景じゃないですか。
行く気にもならないというか、(頭に)ないじゃないですか、風景だから。銭湯がそういう存在になっているわけですから、「ここやってるよ」とか「誰でも来ていいんですよ」ということをまず開示していかないとダメだって気づいて、そういうオープンな場所にしていこうと思ったんです。