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伝統の未来化 - 銭湯から学ぶ文化継承の新しいかたち(全4記事)

「10ヶ月で会社を辞めて銭湯経営」 24歳の挑戦が、消えゆく日本文化を次々と復活させる理由 [2/2]

24歳で「サウナの梅湯」継承、無知ゆえの恐れなき挑戦

藤井:辞めてそのまま、この「サウナの梅湯」さんに来たって感じですか?

湊:そうです。学生時代にバイトしていたので、つながりがまだあって。社会人になってからもたまに番台のヘルプバイトみたいなことをしていたりとか、薄くつながりは持っていて。

で、前やっていた方、そこを借りてやっていた事業者が「もうやめる」という話をされて。赤字続きだし老朽化だし、ちょっともう厳しいのでやめると。

「いつやめるんですか?」って聞いたら……僕がもう仕事を辞めることを会社に伝えていたので、ちょうどそのタイミングと重なっていて、仕事を辞めて梅湯も空くから、そのままやっちゃおうと思って(笑)。

で、オーナーに会わせてもらって交渉して、オーナーも「ちょっと任せてみるわ」ということで任せていただくことになりました。

最初は仕事を辞めてから東京の繫盛店とかに行って修行して、30歳くらいになって独立できればいいかな、みたいに本当にふんわりしていたんですけど。でもいきなりこういう銭湯がやめていく原因すべてをはらんでいる梅湯を復活させられたら、もう最強だと思って。

しかもなんにも経験もない24歳だったんですけど、「最強やん」と思って。そういうような本当に若気の至りで、契約できたのでやってみたみたいな感じでしたね(笑)。

現実に直面「軽装で富士山登山」状態の厳しさ

藤井:その時、「サウナの梅湯」はけっこう赤字だったりとか、老朽化とか、いろいろな問題があったと思うんですけど。そんな中で、じゃあやろうと思った時に、不安のほうが強かったのか、「いや、これはまだやれる」って期待のほうが強かったのかで言うと、どちらですか?

湊:自分が無知だったので、不安要素はなかったですね。本当に無知だったので。今だったら銭湯業界とか銭湯のことをいろいろ熟知しているので不安要素がわかるんですけど、無知だったので周りが「こうだよ、ああだよ」って言っていることもまったくピンときていないという。

社会人というか大人としての経験値もないので「いけるっしょ」みたいな感じ(笑)。「その軽装で富士山を登るのはちょっとヤバいよ」って言われているのに行っちゃう、みたいな。

藤井:(笑)。それで実際、その軽装で行ってみてどうでしたか?

湊:一瞬で「これヤバいな」って思いましたね(笑)。

藤井:それはもう、入ってすぐわかった感じですか。

湊:まずオープンまでの間、ちょっとした改装と設備の改修とかを始めるんですけど、まずその段階で何がいくらかかるのかわからないので。そこで挫折というか、挫かれるというか、けっこういろいろなお金も時間もかかるんだってことをまず知って。

自分自身は何もわかっていないので、簡単なゴミの片付け1つでも人に指示がうまく出せなくて。

で、ボランティアでいろいろな方々が手伝ってくださっている中で、40代くらいのおじさんがテキパキそのへんをみんなに割り振って、自分はなんかアタフタしているみたいな(笑)。ちょっと情けないなと思いつつも、そういうところもわかっていなくて。

いざ始めてみたら、毎日の銭湯の仕事のルーティンが、本当に初めてやることだらけだったので、これはしんどいなと。終わりがないわけじゃないですか、ずっと続けていくから。「これ毎日やるのか」と、仕事という作業もそこで知りました。

あとは思った以上に集客がまったく伸びない。で、設備が壊れたりお客さん同士のトラブルがあったりとか、こっちがメチャクチャ怒られるとか。「何のためにやってんだろう」みたいな(笑)。最初のほうは、ぜんぜんお金にもならないし、というような状況でしたね。


(次回へつづく)

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