部下に「もっと勝手にやっていい」と伝える　指示待ち部下が自分から動くようになる方法

上司から評価される人・されない人

——ここまで、組織の「見えていない問題」を見つけて解決する思考法について詳しくお話しいただきました。これからの時代に、「見えていない問題」を解決する力が欠かせないとのことでしたが、これまで高松さんが見てきた中で、評価される部下、あるいは評価されない部下の特徴はありますか？

高松康平氏（以下、高松）：最近は「主体性のある人」というのがバズワードのように使われていると思います。ただ、「主体性」って非常に掴みどころがない言葉ですよね。言い方を変えると、上司の本音としては「指示しなくても動いてほしい、何か提案してほしい」と思っているわけです。

ただ、ここにやはり誤解があると思っていて、主体性がある・ないというのは、部下側のマインドの問題もあるとは思うのですが、技術とかスキルも関係あると思っています。なので主体的に提案するという「技術」を持たないといけないんじゃないかなと。それがまさしく、この本で書いたことでもあるかなと思っています。

今はパワハラとかの問題で、上司が部下に言いづらいところもあります。それに、上司も何をやればいいかすべてが見えているわけではありません。現場でお客さんと対峙していたり、いろんな実務をやっている部下のほうが、状況をよく知っている可能性もあるわけです。

ですから、「こんなことをやったらおもしろいと思うんですけど、どうですか？」といったことを言える人、提案できる人が求められていると思います。

部下に「もっと勝手にやっていい」と伝える

——上司がどのように伝えたら、部下は自分から動いたり提案してくれたりするようになるのでしょうか？

高松：まず、会社として「そういうことを期待している」と伝えることが大事です。上司はもっと主体性を高く持ってほしいと思っているけれど、今の若手の人は別に自分の主体性が低いと思っていない。そこに乖離があるのです。なので「もっと勝手にやっていいんだよ」というのを伝えることが第一です。

では、それを伝えた時になぜできないかというと、やはり技術の問題です。知識とかスキルを身につけてもらう必要がある。すべてをマインドの話に収めずに、どうやったらそういう提案ができるかというスキルの育成などを、ちゃんと会社でフォローするとか、上司がどうやってサポートするかが大事かなと思いますね。

キャリアアップの鍵は「持論」を磨くこと

——今後、20代〜30代のビジネスパーソンがやっておいたほうがいいことや習慣があれば教えていただけますか？

高松：それぞれ人生や仕事のゴールは違うと思うんですけど、キャリアアップにおいては、やはり「持論を磨いていく」のが大事だと思っています。どういうふうになりたいか、そのためには何が必要か、というのを「持論」と呼んでいます。

最近はSNSでいろんな持論が溢れていて、特にXなどで「こういうふうになるべきだ」「こういう人はこうだ」みたいな意見がたくさんあります。それはその人の持論なのですが、そういうのを参考にしつつも、自分はどういうキャリアを描きたいのか、そのために何が必要かという、自分の考えを磨いていくことが大事です。

それを持っておかないと、やはり今は情報量が多すぎるので揺さぶられてしまいます。自分が何者なのか、何が大切なのかがわからなくなってしまうと思うので、自分の持論を磨いていく。そのために本を読んだり、いろんな人の話を聞いたりするのがいいかなと思います。

「好き嫌い」の中にこそ「自分らしさ」がある

——20代、30代の方へのメッセージはありますか？

高松：はい。「あんまり他人と比較するな」ということと、「みんな、がんばってるよ」ということです。最近の若い方に研修をやると、自己評価と他人からの評価が合っていない方がいらっしゃるんです。つまり、自己評価が低すぎる。

他人からはけっこう評価されているけれど、本人は「ダメだ、もっともっとやらなきゃ」と思っている。自己評価と他人評価がある程度合っていないと、うまく成長の好循環に入っていかないので、もうちょっと自分を褒めてあげてほしいですね。

自分に厳しすぎることが、必ずしも良いわけじゃないなと思うので、自己評価と他己評価は乖離がないようにしたほうがいいかなと。

それから、できる・できないの前に、「好き嫌いはある」ということです。「自分はこういう仕事が好きだ」とか「こういう時間が好きだ」とか、自分の感覚があるんですね。自分が好きなことをやっていたり感情が生まれたりする時が、その人らしさが出る時なので、それは大切にすべきです。

「イライラするもの」は自分がこだわっている部分

高松：「みんながこうやってやるから」というよりも、自分がどういう時に楽しいと感じるかや、何にイライラするかを大事にする。

例えば私は、適当だったりいまいちな研修を見ると、「なんでこうやらないんだ」とイライラするんですね。そこに自分らしさというか、思いが出てくる。ほかの人は別に「そんなもんじゃん」ってなるところでも、自分がむきになったりするものが本人にとっては大切にしたいこと。しかも、そこはあんまり変わらないと思うので、（キャリアを考える上でも）大切にしていただきたいなと思います。

——今の仕事で「こういうところに自分はすごくイライラするな」「もっとやれるのにな」と思うところが、もっとスキルアップできるポイントだったり、転職などのキャリア選択のヒントになりそうですね。

高松：あると思いますね。一般的には、最近コンサル職ってすごい人気で、みんな楽しいと思うかもしれないけど、私にとってはコンサルよりも研修講師のほうが楽しい（笑）。それは別に私の感覚なので、コンサルがしたい方はコンサルというフィールドでやるのがいいと思います。

でも、「みんなが行くから自分も行く」というのは、やはりどこかで無理があったり、他人目線になったりするので。自分がまずいろんなフィールドを体験するのはいいけれど、そこの感覚に対する嘘はつかないほうがいいんじゃないかなと思います。

自分の「感覚」に嘘をつかないキャリア選択を

——高松さんも新卒でマッキンゼーに入社されましたが、就活の人気企業ランキングを見ると、コンサルはかなり人気ですよね。

高松：次のキャリアアップのために成長・スキルアップをできる場所としては、コンサルティングファームはほかの会社と比べると抜群に魅力的なオプションだと思います。ただそれと同時に、自分の心が楽しいと思えるかがやはり大事です。私は入ってみたけど「なんか違うな」って思ったので、1年で辞めたことに後悔はありません。だから、そういう自分の「やってみての感覚」は大切にしてほしいです。

やはり新卒の段階では情報もないし、次にどんな仕事をしたいかが明確でなければ、コンサルに入るのは良いことだと思います。逆に言うと、それと同じような経験を、ほかの会社がもっと打ち出していかなければいけない。

コンサル以外の会社でも魅力的な仕事は絶対あるし、若手のうちにしておいたほうがいい経験はあるはずなのに、それが打ち出せていなかったり、「若手のうちに経験・成長できる仕事」だと思われていない。それはもったいないと思って、私自身、いろんな企業をご支援しています。

——高松さん、ありがとうございました。