【3行要約】・忙しい中でも新規開拓を継続することは難しく、つい既存業務を優先してしまいがちです。
・黒田剛氏は、移動時間を徹底活用し、スマホで仕事を完結させることで効率化を実現していると語ります。
・自分がコントロールできる行動だけをToDoに書き、1日をデザインすることで目標達成率を高めることができます。
前回の記事はこちら つい楽な仕事に逃げてしまう…新規営業あるある
——前回は、印象に残る伝え方やメールの書き方など、コミュニケーションの秘訣をうかがいました。相手とのコミュニケーションに時間をかけるぶん、そのほかの仕事はどのように効率化させているのでしょうか。
また、仕事の成果を上げるために、黒田さんの中でやらなくていいことやほかの人に任せることなど、どのように優先順位を立てていますか?
黒田剛氏(以下、黒田):相手には非効率に対応するぶん、自分の仕事はできるだけ効率的にします。AIとかのツールは全部使って、できるだけ自分の仕事には時間をかけないようにしています。あとは仕事の優先順位で言うと、僕じゃなくてもいいものはできるだけ人にお願いして、みんなが避けるであろうもの、大変なことを僕がやるようにしています。
僕は必ず1日10個(新規の)PRすると決めているんですが、これを毎日やるのはけっこう大変なんですね。新規営業は断られることが多いから、多くの人はそこから逃げたくなってしまう。

例えば、今日は30冊書籍を発送しなきゃいけないという時に、「この発送作業があるから、今日は1日10個の(新規の)PRができなくても仕方ない」となってしまうんです。僕だって発送作業は嫌いだけど、10個PRするよりは、発送作業をしたほうが気持ち的には楽なんです。でも、発送作業を誰かに頼んで、そのぶん僕にしかできない10個のPRをすると決めています。
これは新規営業あるあるなんですけど、既存のお客さんと新規のお客さんへの営業をするという時に、例えば毎週月・火・木・金は既存の営業、水曜日を新規の営業をする日と決めたとします。でもみんな、水曜日に既存のお客さんの営業をしてしまって「忙しくて新規営業ができませんでした」となりがちなんです。
移動時間を有効活用する工夫
——忙しい中でも、そうした「1日10件PR」などの目標を習慣化するために、どんな工夫をされていますか?
黒田:例えば電車に乗ったら、まずメールの受信トレイやLINEの返信を全部チェックするようにしていて、スキマ時間は全部メールの返信に充てています。新規PRを10件やるまでは、電車に乗っている時にゲームをしたり漫画読んだりすることは、絶対しないと自分に言い聞かせていますね。
——書籍では、移動中に仕事ができるように、スマホに情報を一元化していると書かれていましたね。
黒田:はい、スマホで仕事が完結できるようにしています。例えば本の表紙画像を送ってくださいと言う時に、「あれ、どこにあったっけ?」とか、パソコンがないと調べられないとなってしまうと、すぐ送れないですよね。
だから僕の場合は、よく使う画像とか、書籍の情報をURLにして「Googleドキュメント」にまとめておく。それをコピーしてそのまま送れるようにしています。
仕事の生産性が上がる「ノート」の使い方
——スマホに情報をまとめておくことで、スキマ時間を有効活用して仕事を進められるんですね。こうしたデジタルでタスクを管理されている一方で、紙のノートを使ってタスクを効率化させているともうかがいましたが、具体的な方法を教えていただけますか?
黒田:はい。これは僕が担当した本の著者の人に言われて始めたことなんですけど、ToDoを書いて、終わったら消していくのはよくありますよね。そうじゃなくて「明日の自分の行動全部を書いて、翌日にそれを消していくのがいい」って言われたんですよ。
朝起きてから「トイレに行く」とか「歯を磨く」「朝ご飯を食べる」とか、細かいことも全部書いて、消していく。その人が言うには、人間というのは、今椅子に座っていたとして、「お尻が椅子についていて、足の裏が地面についている」ということを「感じよう」としないと感じられないらしいんです。だから、自分が当たり前にやっている状態を理解することがすごく大事なんですね。

僕は1日に10個PRをすると決めているので、前日に書いておいたら、翌日になって「あっ、今日は3つしかできていない」とかがわかる。それを繰り返しやっていったら、「まぁ、いいや」という先延ばしがなくなって、とんでもなく仕事の生産性が上がったんですよ。
「自分がコントロールできること」しか書かない
黒田:もう1つは、前の日にそれを書くというのが重要で、頭の中で「こういうふうにやる」と、すでにシミュレーションをしているわけですよね。
例えば前日にToDoを書く時に、「明日は打ち合わせの準備をしないといけないけど、時間がないな。あっ、目黒駅から渋谷に行くまでの電車の中でできるな」とか考えるので、翌日にスムーズに動けるんです。みんなこれをやっていないので、自分だけ1日が2周目みたいな感じなんですね。
——すでに予習済みだから、当日に「これ、どうしよう」と迷うことがなくなるんですね。
黒田:そうなんです。さらにもう1つ書く時のポイントがあって、「自分が行動してできること」しか書かないことです。例えば「誰かから電話が来る」とかは書かないんですよ。自分でコントロールできることだけにフォーカスする。
そうすると、時間がなくてあらかじめ書いていたToDOができなかったという時も、自分のルーティーンを見直すチャンスになるんです。例えばベッドメイクした後に体重を計って、歯磨きして、朝30分英語の勉強をするというルーティンも、「あっ、これはこのタイミングでやったほうがいいな」とか、毎日調整していく。
そうすると、自分で1日をデザインできるようになるんです。そうやって、自分が目標にしている「1日10PR」とかも、どうやったら1日に組み込んでいけるかを工夫していく。目標が厳しかったらちょっとレベルを下げて、全部達成できたらまたちょっとレベルを上げる。
書くと目標達成しやすくなる理由
——なんとなく日々をこなすということがなくなっていくんですね。
黒田:まさにそうです。よく、自分の口で言ったものは達成しやすくなるって言いますよね。例えば企画書を10日後までに部下に作ってもらいたいという時に、「企画書を10日後までに作っておいて」って言っちゃダメなんです。「この企画書を10日後までに作らなきゃいけなくて、君ならどれぐらいで作れる?」と言うわけです。
「1週間あれば作れますね」とか、相手から期限を言わせるんですね。そうすると部下は「自分で決めた」と思うから、期限を守って動けるんです。これと同様に、さっきのToDoも人に言われたことではなく、自分がやることを決めて書いているから達成しやすいんだと思います。
——自分の仕事は効率化して、相手とのコミュニケーションに時間をかけるという黒田さんですが、このようにして日々の仕事を効率化させていたんですね。具体的なコツを教えていただきありがとうございました。