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タイパ時代だからこそ相手の記憶に残る「非効率」な仕事術(全3記事)

メールの頭と最後に「仕事と関係ない内容」を入れる PRのプロが語る、相手の心を動かす仕事術

【3行要約】
・ビジネスでは提案力が重視されるが、断られた後のフォローアップができずに機会損失している人が多いのが現状です。
・PRのプロである黒田剛氏は、エレベーターなど短時間の雑談で印象的なフレーズを残し、相手から連絡が来る仕組みを構築しています。
・営業担当者は「断られても終わりじゃない」という意識を持ち、相手の困りごとを聞きながら継続的にラリーを続けることが重要です。

前回の記事はこちら

提案を断られた時の一言

——前回は、「商品を売り込むのではなく、相手の悩みを聞いて解決策を提案する」という仕事術についてうかがいました。提案を断られることもあると思いますが、通すために工夫している点はありますか?

黒田剛氏(以下、黒田):まず「無理だね」と言われたら、基本的には通らないので1回諦めます。人って、感覚的に「あぁ、これいいじゃん」とかわかるもので、「厳しいですね」と言われた時は、相手はぴんと来ていないわけです。

さっきのウォーターサーバーの例で言うと、1回でもウォーターサーバーを使ったことがある人だったら、「あぁ、確かにいいかも」と思うけど、ウォーターサーバーを体験していない人はわからない。だから、まず相手がぴんと来るか来ないかが重要なんですよ。

相手がぴんと来ていなかったら、「わかりました。じゃあ、今回、番組で取り上げなくて大丈夫です」と言って安心させてあげる。僕は売り込むことはしません。その後に、「絶対にもう無理なのはわかっているんですけど、例えば番組で取り上げるとしたら、どういう方法がありますかね?」と聞きます。

そしたら、相手は過去の事例とかを思い浮かべて、「無理だけど、まぁ、こういうのがあるかな」とか言ってくれるんです。例えば「ウォーターサーバーを日本一売った営業の話」とか、とんでもないことかもしれないけど、何かしらアイデアを出してくれるんです。

そこから僕は、出版社の編集者に、「ウォーターサーバーを日本一売った人を知っていますか?」と聞きにいく。もしそこで情報が得られたら、最初にアイデアを出してくれたメディアの人にその情報を持って伝えに行くわけです。

「もしあるとしたら〜」の質問で相手に想像させる

黒田:あとは、相手が「もしウォーターサーバーを番組で取り上げるとしたらどうしたらいいだろう?」と1回考えることで、「取り上げなくてもいい」とわかっていても、ついついその後も考えちゃうんですよ。

例えば、休みの日に家族でどこかに行った時にウォーターサーバーを見たら、「あれ、黒田さんが言っていたウォーターサーバーじゃん。ちょっと飲んでみる?」とか言って、子どもが「おいしい」となったら、「黒田さん、この間のウォーターサーバーなんだけど」みたいに話が進むこともあります。

提案して断られたら終わりじゃなくて、「もうこの番組は諦めますけど、ほかの番組だったらどういう方法がありますか?」と聞くことが大事なんです。

つまり僕が意識しているのは、1つ目は先ほどお話ししたように、相手のお困り事を聞くこと。2つ目は「ウォーターサーバー」とかのキーワードを相手の頭の中にぽっと入れることです。そうすると、相手がどんどん想像するので、これを繰り返していくと、不思議と「この間言ったやつって……」みたいに連絡が来たりするんです。

商品の説明はNG、15秒でさらっと伝える

——「相手の頭の中にキーワードを残す」ということですが、具体的にどんな伝え方をしたらいいのでしょうか?

黒田:そうですね。まず、そうやって相手の困り事を聞いていくうちに、テレビ局で言えば「視聴率が欲しい」、「新事実が欲しい」とか、相手のお困り事のパターンがだいたいわかるようになってきます。

その後は、お困り事を解決するための方法を著者や編集者に聞く。そしてそれをテレビ局の人に戻すというふうにラリーを続けていく。そうしていくと、「ウォーターサーバーを日本一売った男」「日本で初めてウォーターサーバーを売った男」とか、何かしらおもしろいエピソードが出てくるんですね。

そうしたら、テレビ局の人に、「日本で最初にウォーターサーバーが設置された場所ってどこかわかります?」とか、エレベーターの中で15秒でさらっと話題を出すんです。この時に商品の説明はしません。

例えば喉が渇いていない人に水を渡しても、「要らないよ」となるのと同じで、相手が情報を求めていないのに、商品の説明をしても聞いてもらえません。でも、何か気になるような一言だけ言って帰ると、相手は「黒田さんに聞かれたウォーターサーバーの話、すごく気になる」となって、情報を求めて後から連絡が来たりするんですね。

これはたとえ話ですけど、「3秒で筋トレができる本とは?」とか「なぜできる男は『い・ろ・は・す』を飲んでいるのか?」とか、ふだんから自分の商品について短くてキャッチーなWeb記事のタイトルみたいなフレーズを考えておくといいですよ。

「エレベーターの中」が効果的な理由

——あえて内容を説明せずに印象的なフレーズだけを伝えることで、相手の興味を引くことができるんですね。エレベーターの中で伝えるというのもポイントなのでしょうか?

黒田:まず、雑談するとすごくうまくいくことが多いんです。電車を待つ時間とか、取材が終わった後の駅までの道のりとかにさっきの商品の記事のタイトルみたいなフレーズを伝えると、後から連絡が来て、「黒田さん、あの本、何だったの?」って言われることが多い。「なるほど、雑談の中で提案すると向こうも気が楽だし、一番届くんだ」ということがわかりました。

その中で一番効果的だなって思ったのがエレベーターの中なんですね。エレベーターの中って、短い時間だけど無言だと気まずいから、みんな天気の話をするじゃないですか。別にそれも悪くないんですけど、僕はそこでさっきのフレーズを言うわけです。

「できる人って、すごく『い・ろ・は・す』を飲むって知っています?」とか言うと、「えっ、何ですかそれ?」「今度本になるんですよ」って言って終わり。

後日に連絡が来ることもあるし、そのまま「その本のタイトルってなんですか?」「じゃあ、後でメールしておきますね」となることもあります。だから僕の中では、雑談で成果が出る場所ランキング1位はエレベーターの中なんです。

なんかエレベーターの中って、あんまり話しちゃいけない雰囲気がありませんか?昔、学校の全校集会で先生に隠れてこそこそ話すのがすごく楽しかった、みたいなのにちょっと近いんですよね。だからより頭に頭に残りやすいんだと思うんですよ。

相手もちょっと手持ち無沙汰だったりして、何も考えないで僕の話を集中して聞いてくれる瞬間なんです。一歩エレベーターの外に出ちゃうと相手も「あぁ、はいはい」って、次の行動に意識が行ってしまうので、この短い時間をいかに使うかが大事なんです。

あえて「メール作成」に時間をかける

——とてもおもしろいですね。コミュニケーションのところで言うと、メールには1件1件オンリーワンな文章を書くということも書籍に書かれていました。メールはAIなどを使って業務効率化する人も多いと思いますが、あえて時間をかけるのはなぜですか?

黒田:そうですね。やはり相手が喜ぶことが重要だと思っていて、僕からメールが来るとうれしいって思ってもらいたいんですよ。だから、どうしたら喜んでもらえるかを考える。

例えば、仕事の打ち合わせで「プロフィール画像をください」と伝えたけど、3日〜4日来なくて、またリマインドするということって、ありますよね。でも、打ち合わせが終わった瞬間に相手から送られてきたら、わずかなことですけど、すごくありがたいじゃないですか。

そういう「自分が相手の立場になった時にどんな気持ちになるかな?」というのを考えるのがまず1つです。

メールの頭と最後に「仕事と関係ない内容」を入れる

黒田:あとは、メールを送るのが苦手とか嫌いだったり、「いかにメールを送らないようにできるか」と言っている人もいるんですけど、僕はけっこう好きなんですよ。イメージとしてはラブレターを書くように、やり取りしている人は全員恋人みたいな感覚で僕はメールを送っています。

普通に話す時は、いきなり本題に入るのではなく「この間すごくびっくりしたことがあって」「えっ、そんなことあるんですね」みたいなアイスブレイクがあるじゃないですか。

そのアイスブレイクを、メールにも取り入れる。頭と終わりに1行〜2行、仕事とは関係ない内容を入れるのが大事なんです。簡単なことだけど、人と人の間ではそういうのがすごく大切だと思うんです。実際に周りのすごい編集者の人とかも、けっこうこのやり方をしています。

編集者ってすごく頭がいいから知識で著者を説得するのかと思ったら、そうじゃない。取材の時においしいサクランボを持って行って、著者が「なんで私がサクランボ好きなの、知っていたの?」みたいな。どんな難しい言葉よりも、そういうことで一気にスタジオの撮影がパーンと明るくなったりするんですね。僕はそういうのをどんどん真似して「自分のPRに取り入れられないか?」とやっているだけなんですよ。

——「相手がどうやったら喜ぶか」を考えてコミュニケーションをするのが大事なんですね。ありがとうございます。

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