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長倉顕太氏インタビュー(全3記事)

40歳以降の人間関係は「年下」との交流が肝 『移動する人はうまくいく』著者が語る、職場で評価される秘訣

本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。

今回は、『移動する人はうまくいく』著者で、これまで編集者として数々のベストセラーを手掛けられた長倉顕太氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、年収1億近くの会社員だった同氏が、仕事で成果を出すポイントやコミュニケーション術について語りました

みんな「自分がやりたいこと」をわかっていない

——前回、安定した場所を離れ、非日常を感じることの重要性について語っていただきました。『移動する人はうまくいく』の中では、会社員を辞めて起業することを提案されていましたね。

長倉顕太氏(以下、長倉):まず1つ言いたいのは、リモートがOKなら、会社で働くのもありかなと思っています。要するに場所にとらわれてしまうのが会社員として働くことの問題なので、リモートがOKで、自分がそれなりに楽しいならその会社にいてもいいと思います。

——なるほど。会社を辞めて起業をするとした時に、どんな人が成功しやすいのでしょうか?

長倉:起業してうまくいくかどうかは、簡単に言うと自己管理能力の差ですよね。やはり行動管理をできるかどうかです。もちろんどういうかたちで独立するかにもよりますけど、
最初の0→1のところは本当に大変です。

僕は出版社時代にある種圧倒的な結果を出した上で独立しているので顧問契約を取れましたが、もし0→1からやるのであれば、相当行動しないと無理ですよね。1日15時間労働じゃないけど、そういう時代がなきゃ駄目だと思いますね。

あと、やはり人にいっぱい会うことですね。リモートがどうのこうのと言っていますけど、結局、人にどれだけ会うかです。非常に昭和的ですけれども、僕が何の目的もない飲み会を重要視しているのは、自分が何を考えているのかを知るためでもあるんです。

さっきもお話ししたように、みんな本当に自分がやりたいことや自分が価値を置いていることをわかっていないんです。やりたいことを聞くとまともなことは言うんですけど、だいたい本音じゃないんですよ。

ただ、例えば飲み会とかで人と対話する中で、ふとした時に「こういうのがやりたい」という本音が出るんです。僕自身も、「自分はこんなことを思っていたんだ」と思うことがあるんですね。

あとはやはりいろんな人と話していないと、多くの人の気持ちがわからない。マーケティングで言うインサイト的な部分がわからなくなってしまうんです。

例えばお客さんのアンケートも、鵜呑みにしてはいけません。「この時はこういうふうに書くのがいいだろう」と、お行儀のいいことを書いているだけで本心ではなかったりするので、人の本音を知ろうとすることが大事なんです。

同じ業界の人とつるまない

——人に会うことは、起業のための人脈作りにもつながりそうですね。

長倉:それは絶対しておいたほうがいいですね。僕もすごく意識していたのは、出版社時代に出版業界の人とまったくつるまなかったんですよ。やはり出版業界の人の中でつるんだって、自分の価値は出づらい。でも、まったく違う業界に1人だけ出版社の人がいたら、価値があるわけです。これもさっきの「場所」と「時間」を変えたら価値が出るという話ですね。

例えば僕が編集者に「本の作り方を教えますよ」と言っても誰も来ないけど、「編集者になりたい人に向けてだったら価値が出るかもしれない」とか。同じことをやっていても、いる場所によって価値が変わるんです。だから僕は常に「自分や自分の商品を、どこにどのタイミングで投げ込むか」を考えています。

「今の自分」を一番高く買ってくれるところに身を置く

——「『何をやるか』を最優先に起業するとうまくいかない」と書籍の中でもおっしゃっていましたね。

長倉:そうそう。まずは今の自分を一番高く買ってくれるところに行くしかない。それでうまくいってから、本当にやりたいことをすればいいんです。例えば100億円あったら、好きなこと以外やりようがないわけじゃないですか。そもそも本当にやりたいことを見つけるのって、めちゃくちゃ金持ちにならなければ無理だったりするんですよね。

——起業はちょっとハードルが高いと感じる方も多いかなと思いますが、もう少し手軽に、長倉さんの考え方を採り入れる方法はありますか?

長倉:やはり副業はありだと思います。「会社の規定でできない」という人の場合は、お金をもらわなければいい。例えば「カフェをやりたい」という人は、休みの日にいろんなカフェに行って、徹底的にタダ働きをする。

「僕は100ヶ所のカフェで働きました」みたいな話ができれば「話を聞いてみようか」と思ってもらえたり、お金を出してくれる人がいるかもしれません。

あえて「仕事」と「休み」を切り分けない

——休日の過ごし方を固定化せず、新しいことにチャレンジすることで道が開けていくこともあるんですね。

長倉:僕は20年以上休んだことがなくて、休みはいらないと思っています。そもそも「仕事」という言い方をするから「仕事」と「休み」を分ける感覚になると思うんです。なので僕の中ではすべて「活動」です。自分の活動があって、お金が入るものがあれば、出ていくものもあるし、お金にならないものもあるという感じです。

——会社員時代は土日休みだったと思いますが、あまり平日と休日の垣根はなかったんですか?

長倉:そうですね。一応土日休みだったけど、僕が提案して会社でセミナーとかもやるようになっていたので、土日はセミナーをしていて、ぜんぜん休んでいなかったですね。もちろん、会社に行くか・行かないかは別として、仕事はずっとしていました。

僕が今でも生き残っている理由って、ベストセラー著者みたいな人たちのサポートを今でもしているからなんです。僕は編集者時代から、その人のホームページを代わりに作ってあげるとか、メルマガの配信ができない人がいたら代わりにやってあげるとか。タダ働きでその人たちの仕事を手伝っていたから、20年ぐらいの付き合いなんですよ。

自分が提案して会社に儲けさせれば、当然お金ももらえるだろうし、もらえなかったとしても自分の実力にはなるので。休みの日は徹底的に誰かの手伝いをしたり、勉強したりするのもありかなと思いますね。

ベストセラーを読む人は成功しない

——休日に勉強のために読書をする人も多いと思いますが、長倉さんが書籍を選ぶ基準を教えていただけますか?

長倉:やはり値段が高い本とか、「売れない本を読め」ってよく言いますね。今は情報社会なので、多くの人が知らないことを知っている人に価値があるわけです。

ということは、売れていない本を読んでたほうがいい。だから編集者としてベストセラーを目指してきた自分が言うのはなんですけれども、ベストセラーを読む人は成功しないですよ。それよりは、やはり誰も読んでいない本を読んでいる人間のほうが強いなと思います。

あと出版社側も、値段が高い本はそれほど売れないとわかっている。高い本って分厚いから、作るのも大変なんです。その売れない本を一生懸命何百ページも作るって、狂気の沙汰なんですよ。ということは、そこには作り手のよくわからない情熱が絶対にあります。

軽めのビジネス書はある種、工業製品的なんですよね。それ自体が悪いとは思わないけれども、ただ本当の意味で人生を変えるとか自分の血肉になるのは、そういう「儲からない」とわかっていて必死に作っている人たちの本だと思うんです。

「自分がちょっと損をする」ぐらいの姿勢でいる

——会社員時代に、ほかにも仕事で心がけていたことはありますか?

長倉:今でもそうですけど、相手の記憶に残るかどうかですよね。まず覚えてもらえないと、次に呼ばれないんです。例えば、ビジネス書系の出版社は堅い会社が多いんですが、僕が当時いたフォレスト出版はそんなことはなかったので、金髪パーマでボロボロのデニムを履いていました(笑)。そうすると「変な兄ちゃんが来たけど、仕事はできるな」みたいに言われたり。

——記憶に残るようなギャップを演出していたんですね。編集者としては著者の方とのコミュニケーションもすごく重要だと思いますが、コミュニケーションで大事にしていることはありますか?

長倉:本にも書いているように「即レスする」ということと、やはり自分がちょっと損をするぐらいの姿勢じゃないと駄目ですよね。「損をしたくない」という人がけっこう多いんですが、僕はちょっと損するぐらいのほうが、相手が得しているわけだから、長い関係が続くと思っています。

プライベートで仕事相手と会わない

長倉:あとはこれは難しいんですけど、距離感をうまく取ることですね。「あんまり近寄らない」というのは、僕は仕事では重要だと思っています。基本的に、僕はプライベートでは仕事相手とは会わないです。お互いにお互いの世界があると思うし、そうやってズブズブになっちゃうと、やはり仲が良いからやっているだけみたいになってしまって、うまくいかない。

それから40代以降は、ひたすら年下と仕事をする。僕は独立した後は、それまでの付き合いがある人は別として、「新しく関わる人は全員年下」って決めたんですよ。

そこから10年ぐらい経っているので、今はどこへ行っても、だいたい僕は最年長みたいな状態になっていたり、その頃の人たちが偉くなっていたりしています。そうした時に、やはり若い人からの情報を意識していないと、そこに行かなくなっちゃうんですよ。だから、若者と関わることをすごく意識しています。

人生はだいたい大丈夫だから、もっと気楽に生きていい

——ありがとうございます。自身のキャリアに迷っている読者に向けて、最後にお伝えしておきたいことはありますか?

長倉:「人生はだいたい大丈夫ですよ」というのは言いたいですね。日本は本当にだいたい大丈夫なので、もっと気楽に生きてほしいなと思うし、気楽に生きている人たちに会いに行ったほうがいいと思いますね。

僕も出版社に入って著者みたいな人たちに会えたから、「いろんな生き方があるんだな」ってわかったので。そういういろんな著者とかに気軽に会える機会を作っているというのもあります。

なぜ独立したいのに会社員をやっているのが駄目なのかというと、独立したかったら、やはり独立している人たちと一緒にいなきゃいけない。海外に住みたいんだったら、海外に住んでいる人と一緒にいなきゃいけない。僕がハワイとかに移住できたのって、2拠点生活をしている人が周りに何人かいたから、抵抗がなかったんですよ。

自分がやりたい分野があるんだったら、その界隈をうろついていないとチャンスは来ない。よく言われますけど、稼ぎたかったら稼いでいる人といなきゃいけないっていうだけですよね。だからこれも結局、どこに自分が出入りするのかっていう場所を選ぶということなんです。

——まず自分の理想に近い場所に身を置くということですね。長倉さん、ありがとうございました。

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