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山田千穂氏インタビュー(全3記事)

部下との距離感を縮めたい上司がやってはいけないこと 元109店員の週刊誌記者が教える、職場コミュニケーションのコツ

本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。

今回は、記者で 『ずるい聞き方 距離を一気に縮める109のコツ』著者の山田千穂氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、職場コミュニケーションのコツや、口下手なタイプが身に付けておきたいスキルについて明かします。

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部下との距離感を縮めたい時にやってはいけないこと

——山田さんはこれまで、販売員やイベントの司会業、記者などさまざまな職種でご活躍されてきました。今年6月には『ずるい聞き方 距離を一気に縮める109のコツ』を上梓されましたが、ここに書かれているようなコミュニケーションのスキルは、どんな職種でも役立つものだと思います。あらためて、職場でのコミュニケーションのポイントを教えていただけますか?

山田千穂氏(以下、山田):とても初歩的なことに思われるかもしれませんが、部下は上司へ声をかけづらかったりするので、上司から「おつかれ」とか「おはよう」と挨拶をすることが大事ですね。

あとは、(部下とのコミュニケーションにおいては)相手が話したくないことを無理に聞かない。要は距離感をつかむことですね。相手から話しかけてこないのに、自分から「どこに住んでるの?」とかプライベートなことを聞かない。

販売員の時は、そのブランドが好きで来てくれるお客さんが多いので、「今着てる服、すごくかわいい!」って言ってもらえるんですね。そこから「ありがとうございます〜。こんな色もありますよ」って勧めるんです。だから(相手と距離を縮めたい時は)まずは自分に興味を持ってもらうことが大事ですね。

例えば相手がよく持っているキャラクターを覚えておいて、同じキャラクターのキーホルダーをカバンにぶら下げておくとか、相手が話しかけやすい状況を作る。それでも話しかけてこない場合は、もう自分には興味がないということだと思うので、あまりガツガツいかないほうがいいな、という線引きをします。

商談や打ち合わせなどの初対面で打ち解けるコツ

——自分から話題になるようなフックを作っておいて、相手の出方をうかがうということですね。山田さんがさまざまなご経験から培った「本音を引き出す力」は、ビジネスパーソンやリーダーにとっても重要ですが、身につけるためにはどうしたらいいのでしょうか?

山田:とにかくいつも気に留めていることは、「相手が話したい話を、最後まで全部聞こう」ということです。人は、話したいことがあるから誰かと会うんだと思うんですよね。例えば友だちが「ご飯行こうよ」と誘ってくれた時って、聞いてほしい話がなんとなくあるんですよ。

なので、こっちから「最近どう?」と聞いて、相手に全部話してもらう。そうすると、こちらの意見も聞いてもらいやすくなります。

——なるほど。例えば商談や打ち合わせなど、初対面で使えるテクニックはありますか?

山田:相手と打ち解ける一番簡単な(話題作りの)コツとして「りそうのあなた」というものがあります。簡単にお伝えすると、まず1つ目の「り」が流行。「そ」はそばにあるもの。「う」は生まれ故郷や出身地の話。「の」はお酒を飲むかどうか。「あ」は空いてる日に何をしているか。「な」はナンバーワンで、一番好きなものや今ハマっているもの。「た」は最近楽しかったことです。

例えば相手の会社に訪問して商談をする場合、相手のそばにあるものや、身につけているものは、その方が好きなものですよね。「うわ、この絵すてきですね」「そのネクタイすごくお似合いですけど、どちらで購入されたんですか?」とか。最初は相手が好きなものの話題を振るのが大事です。相手が話したいことを引き出して、「話せてすごくスッキリした」と思ってもらえると、第一印象って良くなるんですよね。

緊張した時にやりがちな失敗

——これは一般的なビジネスの場でもすごく使いやすいですね。逆に、山田さんはこれまでコミュニケーションで失敗した経験はありますか?

山田:相手が沈黙した時に、それを待たずに「こういうことじゃありませんか?」と、質問を上乗せしてしまって。ご年配の社長さんから、「自分をそっちに誘導しようとしてるんじゃないか」って怒られちゃったことがあります。

沈黙にはいくつか理由があるんですけど、基本的には相手が深く考えている時、より重要なことを言う直前に、溜めて溜めて沈黙しがちです。特に年齢が上の方とお話しする時は、誘導してると思われるとマイナスになってしまうので気をつけています。私は「沈黙に沈黙で共感する」って言っているんですけど、沈黙を変に恐れちゃいけないと思います。

——緊張するとつい矢継ぎ早にしゃべってしまいがちですが、気をつけたいところですね。大物芸能人のような、あまり取材を受けてもらえなさそうな方の場合は、どんなところに気をつけていましたか? 難しい相手を動かす秘訣があれば教えてください。

山田:そうですね。どうしたら相手のメリットになるかを、いつも考えています。著名人の方だったら、宣伝したい要素とか。実際には宣伝してあげられないこともあるんですけれど、直撃取材の時だったら、なるべく最初のほうに「今あのドラマの撮影をしていますけど、順調ですか」とか「現場の様子を教えていただけますか」とお聞きします。

こちらからそういう話を振ると、「もしかしたらこの媒体で何か宣伝してもらえるのかも」「メリットになるかも」と、相手に思ってもらえるじゃないですか。社長さんだったら、「あの商品を使ったんですけど、ここが良かったです」と、良かったところを具体的に伝えるとすごく喜ばれます。

自分から話すのが苦手な人へのアドバイス

——山田さんご自身はとても明るくてお話し上手なタイプだと思うのですが、口下手な方へのアドバイスをいただけますか?

山田:口下手な方は、まさに聞くことに徹しやすいです。話さなくとも、聞くだけで十分にコミュニケーションは取れると思っています。口下手な方は、とにかく相手のことをよく観察をするのが大事。相手にしっかり興味を持って観察すれば、他の人が気づかないような変化に気づけたりします。

例えば「髪の毛が少し短くなったね?」と尋ねたら「そうそう、実は昨日美容院に行ったんだよね。誰も気づかないのによく気づいたね」と言ってもらえたりします。

——自分から話すのが苦手な場合は、観察して相手の変化に気づくことで、会話のきっかけが生まれるんですね。

山田:世間的には話をしたい人のほうが多いので、常に聞くことに意識を向ける。聞くことは、相手をスッキリさせるだけではなくて、いろんな知識を享受できるという点で、自分にもメリットがあるんですよね。1冊の本を読むよりも、新たに人と会って話を聞くほうが、学びが多いんじゃないかなと思っています。

なので、人に会って話を聞いて得た知見を、どう行動に移していくのか。この部分にぜひ意識を向けていただけたらと思います。

——山田さん、今日はお話ありがとうございました。

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