本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。
今回は、記者で
『ずるい聞き方 距離を一気に縮める109のコツ』著者の山田千穂氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、自分の隠れた強みを活かすキャリア戦略について語ります。
前回の記事は
こちら ほとんど自宅に帰らず…週刊誌記者のハードな働き方
——ここからは、山田さんの取材記者としての働き方について教えてください。記者時代は、張り込みや聞き込み取材で、ほとんど自宅に帰らず、夜はパトロールという名のネタ探しに奔走していたと。
今の時代はちょっとできないような、かなりハードな働き方をされていらっしゃいましたが、当時の働き方を振り返って、どう思われますか。
山田千穂氏(以下、山田):25歳で記者に転職をしたんですが、「少なくともここで10年は働きたい」という気持ちが固まっていたので、来た仕事は断らずに全部やろうとしていました。なので本当に生活リズムがバラバラなんですよね。
張り込みは、朝7時から始まることもあれば、深夜スタートの日もあります。合間に、企画もののページの識者取材を電話で行ったりもしていました。
その後は中目黒、代官山、恵比寿のほうにパトロールするようにネタを探しに行くわけです。芸能人がいそうなお店をいくつかリストアップしているので、そこを転々と回っていきます。
——そうした仕事中心の生活から、34歳の時に2回目のご出産があり、生き方を変えようと考えられたと拝見しました。ご決断の経緯をお聞かせください。
山田:そうですね。私は30歳で1人目を産んだんですけど、その時は背中におんぶして事件現場に行けたんですよ。地方の取材も母に同行してもらったりしていたんですが、次女を産んでからは、2人を抱えて取材に行くことはできないことに気づきました。
上の子が幼稚園に入学したタイミングだったので、幼稚園もそんなに休ませられないしなと思って。それで、今後の自分の生き方をどうしようかなと考えた時に、ここまでの自分の経験を伝えていったら、誰かの役に立てるんじゃないかなと、本を書こうと思ったんですよね。
成功者がやっているキャリア戦略
——ご自分の経験とワークライフバランスを両立する道を見つけられたんですね。山田さんは、記者としても多くの成功者に取材されてきたと思いますが、そういった方々に共通するキャリア戦略は何だったと思われますか?
山田:まず1つ目は、あまりライバルのいないマーケットで自分を活かすのが上手だなって思いますね。例えばタレントさんだと、ちょっと前は「おバカキャラ」って、そんなにいなかったので、そこで売り出されている方は「うまいなぁ」と思ったんですけど。
社長さんも同じで、ちょっと切り口を変えてマーケットの少ないところでやられています。例えば、髪の毛がストレートになるシャンプーを開発してめちゃくちゃ業績を上げている方がいたり。そういうまだライバルが少ないところを見つけるのがお上手です。
2つ目もそれにつながる話なんですけど、みなさん本当にしっかり自己分析をされています。自分には何が向いていて、どういうことが人から求められるのかを、よく分析しているんですよね。だからそういう小さなマーケット市場でぐっと伸ばせるんです。
そのためには、人がちょっと言ってくれたところを見逃さないことです。「そこ、おもしろいじゃん。もっと伸ばしたほうがいいよ」と言ってくれたことを素通りせずに聞き、ちゃんと活かす。自分では気づいていない自分の魅力って絶対あるんですよ。
「私の一番の魅力ってどこだと思う?」って、人に聞いてみるのもありだと思うんですよね。そうすると意外と「人と人をつなげるのうまいよね」「仕切るのがうまいよね」と言われたり。「え、そうなの? ぜんぜん無意識でやっていたのに」と思わぬ発見があります。
特に自分が信頼している先輩や、ずっと仲のいい友だちに聞くと、自分の知らない自分を意外と知ってくれていたりするので。
下の世代に意見を求める
山田:尊敬している人に限らず、ある映画監督は、自分の部下に「今の撮影はどこが良かったかなぁ?」と聞いてみるそうです。若者は新しい着眼点を持っているので、あえて下の世代に聞いてみる。成功している経営者の方は、特にそういうことがお上手だと思います。
価値観が凝り固まると、新しいものを生み出せなくなってしまう。業績を右肩上がりにするために、新しいものを常に考えたり、新しい価値観を取り入れていくことが大事です。
あとは、人に与えることを考えていますね。自分の利益だけじゃなくて、「どうしたら部下がより良く働けるのか」とか「どうしたら世の中がもっと良くなるのか」とか。それが共通点だと思います。
無意識に相手の「靴」をチェック
——なるほど。成功者のマインド以外の行動面、例えば生活習慣や持ち物でも共通点はありましたか?
山田:相手に不快感を与えないという意味で、靴はいつもきれいですよね。私は、無意識に靴をチェックします。足先、頭の先、手の先にも意識が行き届いている方は、社内の細かいところにまできちんと視点がいっている傾向にあるので。
社内で何か早めに気づかないといけないような事故やトラブルがあった時にも、すぐに気づくことができます。ですから、自分の先端まで気が行き届いている社長さんは、成功しやすいと思います。
中でも、靴って自分をどこかに運んでくれるものじゃないですか。靴が汚いと、いいところには行けない。逆に言うと、靴をピカピカに磨いておくと、そういう場所に行く機会ができるので。もし今の環境に悩んでる人がいたら、まずいつもきれいな靴で出掛けることを意識されると、キャリアや環境も良いほうへ変わりやすいと思います。