2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
Peatix Japan藤田祐司氏×ログミー川原崎晋裕【対談】(全1記事)
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):今日はよろしくお願いします。
今回の対談のテーマなんですが、ログミーとPeatixさん、同じ「イベント」をテーマにサービスをしている者同士として、イベントやそれにまつわるコミュニティの未来について話してみたいと思っています。
Peatixは僕も何度も使わせていただいているんですが、3〜4年前くらいは勉強会や小規模のワークショップなど、個人でやるイベントの取扱いが多かった印象があるんです。今はどんな感じなんですか?
藤田祐司氏(以下、藤田):Peatixは2011年5月に立ち上げました。でも、東日本大震災の直後だったこともあり、当時は5月6月になってもエンタメ系のイベントはほとんどないような自粛のタイミングだったんです。なので当初は震災の支援としてNPOを立ち上げた人たちが行う勉強会で多く利用されました。
しかし2011年後半になると、徐々にエンタメ系イベントなどが再び行われるようになりました。今、イベントジャンルでいうとビジネス:エンタメ:ライフスタイル=1:1:1くらいになっています。
Peatixでは、一つひとつのイベントページにそのイベントの属性がタブとして振られています。その属性をもとに、一人ひとりの趣味嗜好にあったものを把握することができる。そのデータを活用して「あなたはこのイベントに興味があるんじゃない?」とおすすめしていく機能があるんです。
今、その機能を使ったイベントと個人のマッチング精度が非常に上がっていまして。100人集客するイベントだと、30人強がPeatixのエンジンで送客している状況になっています。
川原崎:3割ですか! すごいですね!
藤田:3割が平均です。そのエンジンを磨き始める前は、だいたい数パーセントだったのですが……。今はそこまで上がってきています。
Peatixを活用する=お客さんが来る状況が、少しずつですが生まれてきています。ちょうど昨年くらいから送客力が明確に上がってきたので、そのあたりから企業の方々も自社セミナーやカンファレンスの運営にPeatixを活用するようになってきている感じです。
あとは、Peatixにはコミュニティ機能があり、メンバーになった方にイベント情報を送ったり、次の開催情報を自動的に通知できるんですね。イベント運営だけでなく、コミュニティメンバーを増やすために利用されている方も多いですね。
大手の旅行代理店さんでは、イベント運営のためにPeatixを活用してメンバーを募った結果、フォロワーを1万8,000人くらいまで増やせたという事例もありますね。そもそもPeatixはイベント運営のためのサービスであり、集まっているユーザーさんもイベントへ行くことを目的としている方々がメインです。行動属性として、イベントに対して一番積極的に動く方々が集まっています。
川原崎:最近、イベント自体の予算が増えてきていますし、市場も大きくなりつつあります。特にto Bはめちゃくちゃ増えていますよね。そう考えると、企業が考えるイベントの定義が少しずつ変化しているように感じているんです。
藤田:おっしゃるとおりイベントは非常に増えてきていますね。Peatixを利用してくださっている企業イベントもどんどん増えています。
企業がイベントを活用する理由は2つあると考えています。
1つは、例えばマーケティングツールを売っている企業であれば、営業的な観点でリード獲得のためにマーケティングの勉強会を開催しています。訪れた人にリーチして、自社サービスを知ってもらうことが目的のイベントやセミナーですね。これは以前から大きなマーケットとしてあります。
もう1つは、最近少し注目され始めているコミュニティです。ファンづくりに注力するカタチでイベントを行なっていく企業も増えています。
少し前だと、大型カンファレンスを年に1回開催するのが主流でした。最近だと、それほどのボリュームではないイベントを定期的に開催するケースも増えています。そのあたりを見てみると、大型カンファレンスは参加者が多いだけに、一人ひとりに対するリーチが難しい。当然ながら、開催側からすると1,000人や1,500人すべてと対話することはできないですよね。
でも、50人規模などのイベントであれば、わりと参加者全員と話せますし、リーチも高めることができる。そういった中で、企業に対するファンやコミュニティづくりという観点での企業のイベント活用が今後どんどん増えていくんじゃないかなと考えています。
先ほど事例として少しお話しした旅行代理店さんは、まさに数十人規模のイベントを定期的に開催しています。結果、数十人のイベントなんですが、グループメンバーは1万8,000人を超えている。そういった意味で、今までとは違うマーケティングのやり方の1つとして、イベントを通じて継続的にお客さんとコミュニケーションをとろうとしているところがあると思いますね。
川原崎:イベントに対してコミュニティがある、というよりは「コミュニティ継続のためにイベントをする」ということですね?
藤田:おっしゃる通りですね。イベントが目的、というケースももちろんあると思います。しかし、そもそもコミュニティ運営・継続するためにお客さんと接点を持つ手法の1つとしてイベントがあるのかなとは思っています。それで言うと、年に1回大きなイベントをやるのか、それとも継続的に接点を作っていくのかは、今後もいろんな組み合わせが生まれるような気がしますね。
川原崎:イベントもコミュニティも、同じ人に何回も来てほしい一方で、新しい人にも来てほしいじゃないですか。
藤田:そうですね。そこのバランスは大事ですよね。
「東京カルチャーカルチャー」を運営している河原あずさんがコミュニティについて「マルサン・コミュニティの法則」という話をしていて。
川原崎:マルサン?
藤田:いわゆるコミュニティを形成する人は、常にきてくれる人・ある程度の頻度できてくれる人・新規の人の3つに分かれているんです。そのバランスがだいたい3分の1ずつくらいだと、コミュニティにとっていい塩梅になる。新しい血を入れながら、かつ身内っぽくなりすぎないカタチで継続し、大きくなっていくという話をされていたんです。この話を聞いて、まさにそうだなと思いました。
ずっと来てくれている人たちが増えると硬直化します。だから、新しい人に来てもらうことはすごく重要です。その塩梅を間違えると、新規の人にとって「入りづらい」と思われてしまいます。そこをうまく考えていくことが大事なんですよね。
川原崎:なるほど。ログミーがやっているのはイベントのログ化なので、基本的にはイベント”後”のフォローなんですよ。「イベントをログしないなんてもったいなくないですか?」「せっかくいい話をしたんだからちゃんと残しませんか?」という。でもPeatixさんはイベント前が一番バリューが大きいというか。
藤田:そうですね。イベント主催者からすると、集客が一番大きな部分になりますね。
川原崎:そこは、先ほどの3割の新規送客につながりますね。
川原崎:僕自身、イベントへ行ってたまに思うことがあるのですが……トークの内容がおもしろくなかったときは、「この内容がログミーされていれば、わざわざ行かなくて済んだのにな」と思うことがあったりするんですよね。でも、トークや懇親会がおもしろかったときにはそうは思わない。たとえあとでログミーされることがわかっていても、来てよかったな、と思います。
これはうちのユーザーも同じで、Twitterなどの反応を見ていると「ログミーで書き起こされているから、このイベントへ行かずに済んだ」という人はいないんですよ。それとは違って「行きたかったけど行けなかったから、書き起こされていてラッキー」「ありがとう」というパターンのほうが多いんです。
そう考えると、ログミーが「今度、このイベントを書き起こします!」と取材予告をしても、「じゃあ行かない」という人はいないと思うんですね。いたとしたら、その人はもともと行くつもりがなかったんじゃないかと思います。
藤田:そうですね、いないですね。そこはとても重要なところですよね。
やはりイベントの内容によって「ログミーさんが書き起こしてくれるから行かなくていいや」というものは、作り方によっては起きるだろうと考えています。一方通行のイベントで、登壇者側が発信して終わる座学的なイベントがそれに該当しますよね。
川原崎:「とりあえず講演会!」みたいなものですね。
藤田:そうです。昔はそういったものが多く行われていたイメージがありますよね。
今では、イベントや交流会のなかで人と人とのつながりが生まれるような仕掛けを主催側で考えられていることが多いので、そこが大きく変化しているのかなと感じています。さらにビジネス関連だと、コミュニティに属す価値を高めようとしているところも増えています。なので、川原崎さんがおっしゃる通り「ログミーさんが書いてくれるからいいや」とならないですね。
川原崎:ならないですよね(笑)。
藤田:なんというか、むしろ……すごく怠け者な感じになっていますが「ログミーがいるからメモしなくてもいいや」となる感じでしょうか(笑)。あとでちゃんと振り返れるから、今日は話を聞くことに集中しよう、となれるというか。
川原崎:確かに。IVS(Infinity Ventures Summit)みたいなイベントだと、ネットワーキングが主流になります。でも、カンファレンスは1日中やっているんですよね。しかも複数会場同時進行なので、どちらかの会場にいると、もう一方の内容を聞けなかったりします。
ログミーではIVSのセッションもログ化しているのですが、主催者や参加者も含めてクレームをいただいたことがないんですね。それが参加費を必要とするイベントであっても、です。むしろ、参加者の方々に「メモを取る必要がなくなり、ネットワーキングに集中できる」と言っていただいたことがあります。それを聞いた時に「ログミーはイベントの代替ではまったくないんだな」と感じたんです。
藤田:おっしゃるとおりです、参加者からするとありがたいサービスですよ(笑)。
川原崎:ありがとうございます(笑)。
藤田:主催者にとってもイベント自体の価値が上がりますし、参加した人もできなかった人も、あとからログを見られる価値がありますし。
イベントをやる目的にもよると思うのですが「参加した人のみ体験できる、知ることができる」となると、情報の伝達が参加者のみに限定されてしまいます。情報をもっと広げることを目的とするならば、イベントをログ化して広げていくほうが価値があるんじゃないかなと思うんです。
ログを残すほかに、動画を配信する方法もあります。でも、やはり文字で読むほうが時間的にも低コストですよね。動画だと見る時間を短縮できませんし。もちろん、この部分に関しては人それぞれというところが大きいとは思うのですが。
川原崎:ログミーのサービスのご相談みたいになってしまうかもしれないのですが。僕がログミーを作った最初の理由は、動画を見るのがめんどくさかったからなんですね。
藤田:はい(笑)。
川原崎:その延長線上に、「イベントへ行くのが面倒くさいから誰か書き起こしてくれたら楽だよね」というものがありまして。書き起こせばコンテンツの流動性が上がり、消費しやすくなる。ようするに、扱いやすくなるところが価値だと思っていたんです。
でも実はそうじゃなかった。例えば、IVSさんのログをたくさん載せていると、ボランティアスタッフで参加したい人が増えたり。参加申し込み数が増えたり。ログすることを継続していくと、イベント自体の知名度やブランドといった価値が上がっていくように見えたんです。
つまり、ログの役割はただ利便性を上げることではなく、イベント間の「つなぎ」としてコミュニティの活性化と継続に貢献できることなんじゃないかと思っています。例えば、年4回開催するイベントであれば、2回目、3回目に行けなかった人たちが次のイベントまでのつなぎとしてログを読む。するとまた行きたくなる。ログミーはそのために存在しているという。
藤田:それはありますよね。
川原崎:コミュニティの継続には定期的なコンテンツの投入が必要だけど、それがイベントだけだとけっこう大変ですよね(笑)。開催するにしても、年に数回が限界になってしまう。その間のつなぎとしてログミーみたいなものがあるという感じなのかなと、最近ちょっと考え方が変わってきたんです。
藤田:そうだと思います。
イベント主催者の方々と話をさせていただく中で、イベントやコミュニティを継続していく大変さはすごくあるんですよね。どれくらいの頻度で続けていくのかも、決めるのが難しいんです。細かく開催するのは難しく、かといって間隔が空きすぎるとコミュニティから人が離れてしまうんじゃないかという不安もあります。
そこで問題になるのが「イベントとイベントの間をどうするか」です。それを悩んで考えている人は多いです。それこそ、本業が忙しくてコミュニティ自体をなかなか作れず「う〜」となっている方もけっこういらっしゃいます。
やはりコミュニティの方々との接点は、リアルな場としてイベントがあります。
一方で、イベントを半年に1回、1年に1回が限界という場合、リアルではない場でいったいなにができるのか。そこでログミーさんのコンテンツなど、いろんなかたちでコミュニケーションをとっていく流れはどんどん起きていると思います。
川原崎:ありがとうございます。ぜひ、Peatixに「ログミーでログを残す」ボタンを付けてください。
藤田:(笑)。
川原崎:ログミーは、今はメディアとしてやっていますが……。基本的にメディアは、媒体に対してファンがついてくる構造になりますよね。例えば雑誌『VERY』だと、そこに対して“アラフォーのママたち”がついているわけじゃないですか。コンテンツごとについているわけではないんですね。これは編集メディアとして目指すべき最強のカタチだと思っています。
一方でテレビになると、テレビ局じゃなくて番組ごとにファンがつくようになります。
ログミーでいうと、編集メディアの最強のカタチを目指すより、おもしろいイベントのログやおもしろい人の書き起こしなどがたくさん載っていて、そのイベントやスピーカーごとにファンがついていくのが正しい姿なんじゃないかと最近考えているんです。
それでいうと僕らは『VERY』よりも、Peatixさんに近いと考えているんですね。ようするに、僕らはメディアではなくプラットフォームだと思っているんです。いいスピーカーやいいイベントとユーザーをつなぐハブであり、発信者ではない。
藤田:Peatixの場合、すごく強化しているのがディスカバリーです。いわゆる、イベントに出会ってもらう、コミュニティに出会ってもらうのが一番だと思っているんですね。
そもそもPeatixにあるイベントはすべて主催者の方々が企画したものであり、それが掲載されて初めてサイト上に情報が出ます。我々が作っているものではないのですね。そこでいうと、我々としては「参加すれば、きっといいことがあるだろうな」というイベントやコミュニティがとにかくたくさん集まっている状態をいかに作っていくかが重要になります。
あとは先ほどおっしゃったとおり、5,000〜6,000ものイベントが常に開催されている中で、いかに最適なものと出会ってもらえるかというところです。そこが一番のチャレンジですね。
実は、アプリのバージョンがガラッと変わりまして……。
川原崎:あ、そうなんですか! どういうところを変えたんですか?
藤田:これまでは、いわゆるホーム画面にチケット情報などイベント情報以外にもさまざまな情報を掲載していました。その部分を、我々の専門担当がキュレーションをかけて、Peatixのなかでより魅力的なイベントを一つひとつ選んでピックアップしたイベント情報を表示するようにしたんです。ある意味で編集、キュレーションをかけて出させていただくようになったという感じですね。
それこそ、ビジネス系だけでなくエンタメ系やライフスタイル系など、イベントのジャンルをバランス良くお見せすることができます。そしてイベントに少しでも興味を持ってもらったり、発見してもらったりするところが大きな目的でした。
あとは、やはりイベントは大きな都市で開催されることが多いので。日本で言うと東京の次に大阪、福岡がイベントの多いエリアになります。そこで、都市ごとに場所フィルターをかけられるようにしたんです。
川原崎:場所は大事ですよね。
藤田:ほかにもありますが、やはり我々としては「どうやってイベントを見つけてもらうか」が大きく、そこに力を入れている感じですね。
川原崎:そもそもなぜイベントへ行くかというと……。例えばテレビ番組の中で野球の試合はめちゃくちゃ放映権が高かったりします。その理由は当然ファンやスポンサーがたくさんついているからなのですが。もう1つの理由として「再現不可能だから」という話を聞いたことがあります。
試合の結果が出たら、もう一度試合をイチから見直したりしないじゃないですか。ドラマやアニメは何回も消費できるけれど、スポーツは1回しか消費できない。だからプレミア度が高いんですね。
イベントも、講義は何回も再現できるけれど、体験型イベントはもう一度再現できない。スピーチはログミーである程度は再現できるけれど、ワークショップは再現できないじゃないですか。体験価値が高まっていく世の中の流れからすると、そういった再現度が低いイベントが今後増えていくという話なのかなと思いました。
藤田:参加者の満足という意味でも、これだけ情報が溢れる今の時代では、自分事として体験できるものにお金を払い、当日わざわざその場へ行って参加するニーズは高まっていく気はしていますね。
川原崎:お金では買いづらい、みたいな。
藤田:そうですね。これはイベントと言っていいかどうかわからないですが、人が集まるところに参加すると、なにかしらの刺激を必ずもらえます。
でも、イベントって実は当たり前に参加するものかというとそうではないんですよね。イベントへ行く前には、なにかしらのハードルがあります。「あ、おもしろそうだから行こう」とすんなり申し込んで参加しているかというと、実は「行かない人たち」のほうが数としてはまだ圧倒的に多いんです。好きなアーティストのライブへは行くけど、カンファレンスやコミュニティ性の高いミートアップへは行かないというか、行ったことがない人がまだまだ多いんです。
その人たちに理由を聞いてみると「なんだかよくわからない」「1人で行ってもなじめない気がする」「ちょっと怖い」という人が多くて。一歩前へ踏み出して参加すると、すごく得られるものも多いし、人生も豊かになると思うんですけど。そういった意味では、まだ行き届いていない状況だなと感じています。
川原崎:僕は、イベントなどに行くのが億劫になる気持ちがわかる人間です(笑)。でも、行ってみたら「楽しいじゃん!」って必ずなるんですよね。
藤田:「こんな世界があるんだな、のぞいてみようかな」のハードルをどうやって下げるのか。我々としては動画などで、イベントレポートのようなものを撮影したりしているのですが。そういった雰囲気を少しでも伝えて、いろんな世界に触れていただけたらなと思いますね。
川原崎:あくまでも入口に特化してイベントの価値を高める。参加してくれる人たちを増やし、コミュニティの継続性も高めていくということですよね。
藤田:やらなきゃいけないことはたくさんありますね(笑)。
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