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常見陽平氏インタビュー(全3記事)

「やる気がない」では片づかない「静かな退職」 今問い直すべき仕事のあり方 [1/2]

【3行要約】
・身を粉にして働く「昭和的価値観」と、役割以上の仕事を拒む「静かな退職」。この対立の根底には、現代の資本主義に対する深い諦念が潜んでいます。
・労働社会学者の常見陽平氏は、「静かな退職は日本型雇用の呪縛を解く真っ当な選択」と語り、やる気に頼らずとも回る組織設計の重要性を説きます。
・「言われたことしかやらない」と部下を責める前に、企業は役割の境界線を再定義できているか。人手不足時代の新たな組織のあり方を問い直します。

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ハードワーク志向という逆方向の動き

常見陽平氏(以下、常見):一方で、現場で感じるのは、いわゆるブラック企業と呼ばれるような企業が、一定数支持されてしまっているという現実です。

メディアで批判されたり、ネットで話題になったりするような、営業の厳しさで知られる会社です。初任給は高いけれど営業が厳しい、といった企業ですね。

最近では、そうした企業を「ザス・ゾス系企業」と呼ぶこともあります。挨拶が気合いに満ちていて「ザス!」「ゾス!」のように聞こえることから来ています。IT企業や不動産、住宅系の企業などが該当すると言われています。

そうした企業に行けば力がつくとか、「新卒初任給40万円だから若いうちに稼ごう」という考え方もあります。コンサルを選ぶのも、徹底的に鍛えられるからです。

日本は働きすぎだから、もっと海外のように働けばいい、という単純な話でもないのだと思います。私は働き方改革は進めるべきだと思っていますが、海外と単純に比較すべきではないことは、優秀な若い人ほど理解しています。

海外はエリートとノンエリートの差が大きい社会です。日本は縮小している市場ですが、その中で戦える力をつける必要があると考える人も一定数います。

こうした中で、働き方には明確な違いがあります。ただし、ハードに働く人たちも、必ずしも会社が好きなわけではありません。仕事が好きだったり、自分の将来に投資している感覚だったりするのだと思います。

一方で、仕事や会社と一定の距離を置く人たちが出てきた中で、静かな退職は合理的だとも言えます。ただし、これは非常に複雑で、若者はこうだと言い切ることはできません。

大事なのは、全員が静かな退職をしているわけではなく、労働意欲や会社との距離感が多様化している、という点です。


「会社の飲み会に行かない若者」は昔からいた

——先ほど、昔から飲み会には参加したくないと思いつつも、断る選択肢がなかったというお話があったと思います。静かな退職というのも、今は名前がついて広まっていますが、実はそれ以前からあったものなのでしょうか。

常見:そうです。会社の飲み会問題は、何度も蒸し返されてきました。「今時の若者は飲み会に行かないぞ」という話を、私がリアルタイムで初めて見たのは、1980年代に「新人類」という言葉が流行った頃だと思います。

筑紫哲也さんが『朝日ジャーナル』の編集長だった頃に「新人類」という言葉が流行ったのですが、新人類っぽい人が一通り辞退したからか、流行語大賞はなぜか西武ライオンズの当時の若手が受賞するという、謎の展開でした。

とはいえ、その時もマジョリティは文句も言えず、なんだかんだ丸め込まれていましたが、それに対する抵抗や、それをリジェクトする奇異な若者といった言説は、ずっとあったと思います。そういうことは繰り返されてきています。

企業が“昭和的な文化”を手放さない理由

常見:現実を見ると、「昭和は終わった」と言いつつも、結局そうした文化を残し続けようとしているのが組織です。実は今、新卒一括採用の崩壊とか、日本的雇用システムが変わったと言われていますが、バブル期以上に昭和的な空気が強いのが、令和の大企業社会です。

バブル期も含めて、これほど入社式が派手な時代はないのではないかというぐらい、大手企業の入社式は派手です。また今、褒賞旅行や表彰旅行といった社員旅行が流行っています。旅行代理店の方に聞くとそういう傾向があるそうです。

これは何かというと、例えばエース社員には辞めてほしくないから、営業担当者を全国から集めて、日本国内であれば宮崎のシーガイアなどで、研修という名目の集まりを行う。偉い人の話や講演もあるかと思いきや、実際には懇親会やゴルフが中心で、費用は会社負担、というようなケースです。

「トップ営業20人はニューヨーク旅行です」といった制度もありますし、社員旅行も、ありがた迷惑だと言われつつも、根強く残っています。

さらに、社員食堂がある会社では、夕方にハッピーアワーを設けて交流の場にする、といった最近らしい取り組みも見られます。

——それはやはり人材の流出を防ぐためですか。

常見:流出を防ぐという意味もあります。ただ、「どうせ流出するから意味がないのではないか」という声もあるかもしれませんが、今は少し状況が変わってきています。

企業の評判は非常に重要で、例えば辞めた人が「前職はすごくブラックだった」と言えば、それは企業にとってマイナスです。

今はカムバック採用やアルムナイ採用といって、一度辞めた人が戻ってくるケースも増えています。これは人材獲得という意味で大きな可能性を持っています。いろいろ言って辞めたとしても、「やっぱりいい会社だ」と戻ってくる人もいるわけです。そうした意味でも、企業としては評判を落としたくないという意図があるのだと思います。


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