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荒川陽子氏インタビュー(全3記事)

部下の「静かな退職」を予防する3つのマネジメント術 社員の反応が変わる「ちょっとした声かけ」の力

【3行要約】
・「静かな退職」が課題になっている中、その背景についてGreat Place To Work(R) Institute Japan 代表/働きがいのある会社研究所 代表取締役社長の荒川陽子氏に聞きました。
・荒川氏は、日本は他国に比べ「周囲が楽しく働いている」と感じる比率が低く、同僚への関心が薄れているのではないかと語ります。
・部下との信頼関係は再構築するためには「期待の明確化」「裁量の提供」「承認」という3つのステップを回し、管理職が自ら自己開示を行うことが効果的だと提言します。

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「仕事を楽しむカルチャー」を支える要素

——「静かな退職」が発生しにくい、従業員エンゲージメントが高い職場には、特徴や共通点はあるのでしょうか。

荒川陽子氏(以下、荒川):私たちGreat Place To Work(R) Institute Japanでは、働きがいのある職場を「全員型『働きがいのある会社』モデル」と表現しています。

従業員を中心にして、信頼と、自分の仕事に対する誇り、そしてチームとの連帯感という3つの大きな柱があります。

従業員とリーダーの間の信頼の柱が一番重要なポイントで、この中には「信用・尊重・公正」という、信頼をかたちづくる3つの要素があります。さらに、自分の仕事に対する誇りと連帯感という、全部で5つの要素がそれぞれ高いレベルであることが働きがいがある組織になります。

最新の調査結果では、「働きがいのある企業」ランキングにランクインしている働きがいがものすごく高い日本企業と、(ランクインはしていない)我々の認定制度の認定を取得される企業、最後に認定が取れない企業群の3層に分けた時に、一番上のランクインしている企業と、その次の認定企業との差を分けるものは何なのかを分析しました。

その結果、ランクインしている企業は「仕事を楽しむカルチャー」がすごくあるんですね。

ただ、この仕事を楽しむカルチャーを支えるものとして「経営の質」と「人材のマネジメント」が非常にうまくいっているという、2つの要素があるとわかりました。実は休暇制度とか、多様性の配慮といったポリシーの有無には(ランクイン企業と認定企業の間で大きな)差がなかったんです。このあたりが働きがいのある会社ランキングにランクインしている企業の非常に大きな特徴であると言えると思います。

日本は「働きがいがある」と答える比率が低い

——「経営の質」というのは、具体的にはどのような要素を指すのでしょうか。

荒川:「経営や管理者層が事業運営能力が高いか」といった質問項目もあるので、そういう意味では業績みたいなところも含まれはしますが、特に違いが出たのはリーダーシップやビジョン発信ですね。

——なるほど。業績の面だけではないということですね。では、「仕事を楽しむ文化」について、もう少し具体的に内容を教えていただけますか。

荒川:基本的に、メンバー一人ひとりが仕事を楽しいと思えているかを確認している設問があって、日本はこの項目の数値がすごく低いんです。「自分の会社に働きがいがあるか」と聞かれると「そこそこYesだ」と答えるのですが、「周りの人を含めて、みんなが楽しく働いていますか」と聞くと「Yesと言えない」という答えになるんですね。

——それは他の国と比べて有意に低いということなんでしょうか。

荒川:そうですね。もちろん他の国も低めに出る設問ではあるんですが、特に日本のスコアが低いです。

オフィシャルではない場で仕事について語り合っているか

——その低さを生んでしまう要因には、どういったものがあるのでしょうか。

荒川:スコアが高い企業群は(リーダーシップやマネジメントといった)経営の質がすばらしいということなので、逆説的に言えば、そういったことが今ひとつできていない状況と言えると思います。

あともう1つ、これは今回のデータから出ていることなので事実としてあると思うんですが、私の仮説としては、周りの人の仕事ぶりに関心がない、関心を持ち得ていないのが1つあるかなと思っています。「周囲の人が仕事に行くことを楽しみだと思えているか」という設問なんですけど(これの数値が低いんです)。

昔のように仕事が終わってからも飲みながら延々と仕事の話をすることって、最近はもうないじゃないですか(笑)。私は少なくともあまりなくって。

直属の部下やマネージャーなどと、オフィシャルではない場で仕事についてたくさん語り合っているかというと、ちょっとそうではないかもしれないなと思うところはあるんですよね。

そのようなかたちで、周りの人の働きぶりに関心を寄せる余裕がなくなっていたりとか、関心を寄せなくとも仕事が回るように設計されているとか、そういう変化もあるかなと思っています。

——効率化故に、同僚への関心を持つ必要がなくなっているし、なくても大丈夫になってしまっている。そうなると、「飲み会に行け」とは言えないと思うんですけど……。

荒川:もちろんです(笑)。今の時代にあった、周りの人の仕事ぶりに関心を寄せるとか、仕事ぶりを知る機会をつくることが重要ですね。

なので我々は、「表彰制度などをうまく運用したほうが良いですよ」というご提案をすることが多いです。やはり、メンバー一人ひとりがどういうことをがんばっているのかとか、その結果に何を感じて、そこから何を学んで、どういうふうに成長したのか。そういった情報に触れる機会をもっと作ったほうがいいと思うんですよね。

そういう機会が増えてくると、「あの人って、仕事がすごく楽しそうだな」とか「うちって良い会社なんだな」とか、「お客さまに良いことを提供してるじゃないか」と思える。そうやっていくことで、仕事を楽しむカルチャーが作られていくんじゃないかなと思うんですよね。

——確かに。例えば自社の仕事がお客さまの役に立っていることがわかると、モチベーションにつながりますよね。

荒川:はい。仕事を楽しむカルチャーの裏側には、汗水垂らしてがんばって、こだわって工夫して、必死で働いて成果を上げている仲間がいる。そして、自分もそうであるという実感があると思います。

モチベーションが低下した部下に管理職ができること

——部下のモチベーションが下がることに危機感を持っている管理職の方も多いと思います。モチベーション低下や、静かな退職を早期に予防するために見ておくべきポイントはありますか。

荒川:働きがいを高めるマネジメントのポイントとして3つお伝えしたいのですが、1つめが期待の明確化です。何をすれば評価されるのか、会社として今は何を求めているのか。この期待について、きちんと言語化して伝えることが大事です。

2つめが裁量の提供です。結果責任と意思決定の自由度をセットで渡すことだと思っています。期待はするのに裁量がない状態だと苦しくなってしまうので、ちゃんと業務の裁量を渡す。

最後の3つめが承認とフィードバックです。成果だけじゃなくて、挑戦とかプロセスも認めることが大事になります。期待をして裁量を渡して承認する。これをきちんとやっていくのが、働きがいを高めるマネジメントにおいて非常に重要ですね。

これがきちんと回っていくと、我々の「『働きがいのある会社』モデル」の最も重要なコンセプトである、経営やリーダーと現場の信頼が豊かになっていくということです。

管理職のちょっとした工夫が部下との関係性改善の第一歩に

——静かな退職予備軍となるモチベーションが下がっている部下に対して、上司はどのような言葉をかけるべきでしょうか。

荒川:心を閉ざしている人に「働きがいを持て」とか、前向きな姿勢を求めるのは心理的な負担になり得るので、やめたほうがいいと思います。

私たちは働きがいを「働きやすさ」と「やりがい」の2つからなると整理をしているのですが、特にやりがいは、ハーズバーグの二要因理論(アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した理論。仕事の満足感は動機付け要因から、不満足感は職場環境といった衛生要因から生まれるとするもの)でいくと、動機付け要因にあたるものですね。

これは外発的な動機付けというよりは内発的な動機付けなので、会社が与えたりとか命じたりするものではなくて、自分からやりたいと思える気持ちを触発することがすごく大事です。

会社側・管理職側にできることは、あくまでもこの土壌を整えることです。なので、信頼関係をコツコツと作り、期待をかけていくことが必要ですね。

——確かに、モチベーションが下がっている状態では「働きがいを探そう」みたいな言葉に対して「自分がいけないのか」と、プレッシャーに感じてしまう可能性もありますよね。

荒川:そうですね。なので最初のアクションは、「なぜ今、モチベーションが下がっているのか」を丁寧に聞くことだと思います。

放置していいわけではないので、何が引っかかっているのかを丁寧に聞いて、結果に対して組織として「これは改善をしようと思う」とか、「これは今すぐはできないけれど、将来的には変えたいと思っている」とちゃんと伝える。

あとは、やっぱりちょっとした声かけだったりするんですよね。本当に小さなことなんですけど、今までメンバーを呼んで話をしていた管理職が、メンバーのところまで歩いていって話しかけるとか。

ちょっとしたことでもメンバーを褒めるとか、あるいは、管理職側の自己開示。最近気になっていることを自分からしゃべってみるとかですね。本当に小さなことなんですけれど、そういうことで「メンバーの反応が変わった」ということを体験される管理職の方ってやっぱりたくさんいるんですよね。

そういうことからでいいので、メンバーとの関係性を変えていくアクションを起こしていただけると、けっこう反応は違ってくると思います。

——組織的な取り組みも大切ですが、管理職ができる工夫だけでもメンバーのモチベーションが変わっていくというのは大きなポイントですね。荒川さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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