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荒川陽子氏インタビュー(全3記事)

職場のやる気を下げる「どうせ報われない」という失望 静かな退職を引き起こす“上司と部下のすれ違い”の正体

【3行要約】
・「静かな退職」が課題になっている中、その背景についてGreat Place To Work(R) Institute Japan 代表/働きがいのある会社研究所 代表取締役社長の荒川陽子氏に聞きました。
・荒川氏は、静かな退職者の3割が若手である現状を指摘し、評価への不満が引き金になると語ります。
・荒川氏は部下一人ひとりに個別対応して疲弊する前に、まずはチーム全体の「働きがい」を可視化し、組織の信頼関係を再構築するステップが有効だと提言します。

静かな退職を選ぶ人の3割が若手というデータも

——昨今、必要最低限の業務しか行わない「静かな退職」という言葉が注目を集めています。

メンバーのモチベーション低下に悩む企業が多い中、御社は企業の「働きがい」を調査し、組織の活性化を支援されています。事業について、概要を教えてください。

荒川陽子氏(以下、荒川):Great Place To Work(R) Institute Japanという機関名で活動しております。本部はアメリカにあり、現在世界約170ヶ国で展開しています。

各国で「働きがいのある会社」を認定し、ランキング形式で発表する活動を通じて、「働きがいのある会社を増やす」というミッションを担って活動をしています。

我々の強みであり特徴は働きがいを認定したりランキングにしたりする際に、従業員の声をしっかりと基にしていることです。働いている人たちが自分たちの会社をどう感じ、どう考えているかを評価の起点にしています。

加えて、従業員が自分の職場に対して働きがいを感じているかどうかだけでなく、会社が従業員の働きがいを最大化するために、どのようなポリシーを持ち、こだわって施策を打っているのかという、会社の施策そのものも評価して格付けする方法論を持っています。

グローバル共通の測定基準を持っているのですが、この共通基準に則って、各社の施策と従業員の認識、働きがいを感じているレベルの両側面からランキングを決めていることが、弊社の特徴です。

キャリアにおける諦めの気持ちを持ってしまっている

——御社は「静かな退職に関する調査2025年」などのレポートを出されていますが、静かな退職を選択している方には、どのような特徴があるのでしょうか。

荒川:静かな退職はプライベートの事情に関係なく、恒久的に必要最低限の業務しか行わないと決めている人たちです。つまり「退職」という言葉がキーワードには入っていますが、会社自体は辞めないで、働き続けると決めているんです。

しかも我々の調査では、静かな退職を選択している人のうち3割が若手だということがわかっています。一般的に、若手は可能性を秘めていて、成長するポテンシャルがありますよね。

どういうところに自分の強みがあるかとか、どういう領域でキャリアアップしていくかについて、とても可能性があるにもかかわらずチャレンジすることなく「自分のやるものはここだけでいい」というふうに、ある意味で諦めてしまっている。この静かな退職という働き方を選択している人たちに若手が3割いるというのは、ゆゆしき問題だなと思っています。

「無理をしない働き方」と「静かな退職」を分ける違い

——働き方のトピックに関しては、近年は無理をしない働き方を肯定するような空気があると思います。そういった働き方と静かな退職には、どのような違いがあるんでしょうか。

荒川:あえて分けるとすると、無理をしない働き方は、会社との関係性が基本的に前向きで協力的で、ちゃんと働くけど無理はしない。なので、自分の心身の安全が守られていて、(組織との)信頼関係の中でちゃんと成果に向き合っている健全な状態であると言えると思います。

静かな退職は、会社との関係で距離を取った状態です。不満とか失望が背景にあることが多いので、会社から期待をかけられていないと感じている。自分の成長とかキャリア・未来が組織と切り離されているので、がんばる意味が見えなくなっています。

なので分けるとすると、会社との関係性が前向きなのか、距離を取っているのかが、無理をしない働き方と静かな退職の違いであると言えます。

我々は働きがいのある職場が大事だと言っていますが、これは「がんばり続けることを強要するのではない」という点はちょっと強調したいところです。がんばらないことが問題なのではなくて、がんばりたいと思えない環境を作り出してしまうと静かな退職になってしまう。ここはけっこうポイントかなと思います。

マネジメントや評価制度の課題が要因の1つに

——静かな退職を引き起こしてしまうような組織には、何か共通点や特徴はあるのでしょうか。

荒川:入社後に静かな退職を引き起こす共通項としては、組織への諦めを持ってしまう引き金があるんです。我々の調査では、入社前から静かな退職をしようと思って入ってくるわけではないんですね。「自分はがんばっているのに評価されない」というところで諦めを感じてしまうのが1つの引き金になります。

もちろん、入社前はそこまでではなかったけれど、働きはじめてみたらプライベートをもっと大事にしたくなって、ワークライフバランスの観点から静かな退職を選択する人ももちろんいます。しかし、報われないという思いを持ってしまうのが引き金としては共通項であると言えます。

——そうすると、「この環境ではがんばりたいと思えない」「がんばっているのに評価されない」と感じてしまう要因には、マネジメントや評価制度に課題があるということでしょうか。

荒川:そのとおりですね。会社としては、そもそも人事制度の透明性が低い場合が多くなります。また、透明性を担保していたとしても、現場のマネジメントがきちんとそれを運用できていないこともありますね。

なので、一人ひとりの行動に対してフィードバックをするとか、成長に向けた支援を実現できていないと、部下はどんどん「何のために働いているんだ」となってしまう。「自分はがんばっているのに、がんばっていない人と給料が変わらない」とか、「今期はこんなにがんばったのに、なんだか評価が上がらない」といった状況ですね。

会社としては、(部下に)そのような評価を下す理由があるはずなんです。ですが、理由をちゃんと伝えていないが故に、本人からしたら納得できず、どんどんメンバーの心が離れてしまいます。

管理職の負担増で部下の細かな変化を見逃してしまう

——ここ数年、「管理職の罰ゲーム化」とよく言われていると思うのですが、管理職への大きな負担が静かな退職という現象を生んでしまっている側面もあるんでしょうか。

荒川:そうですね。管理職が見きれていないことはあると思います。でも我々の調査の中では、管理職はけっこうがんばっているんですよね。静かな退職を選んでいようがいまいが、部下に対して時間をかけているので、一概に管理職がいまいちだとは言えません。

でも、やはり管理職に負担が偏っているというか、いろいろなプレッシャーがあるのは事実なので、(結局は)メンバーの状態を細かく見れなくなってしまう。1on1はやっているのだけれど、かたちばかりになってしまって、結局は業務の進捗確認で終わってしまったりとか。

そういうことが繰り返されていくと、(部下は)自分の仕事の意味、やりがいが感じられなくなってしまって、静かな退職を選んでしまう方向に進んでしまいます。マネジメントの不備がそれを後押ししてしまっている可能性は、事実としてあると思います。

——忙しい管理職の方に向けて、部下に静かな退職を実践させない手段についてアドバイスするとしたら、どのような手法やテクニックがあるのでしょうか。

荒川:悪循環のメカニズムとして、働きがいが下がるとパフォーマンスが下がり、(人事)評価が下がる。そうすると、さらに働きがいが下がって、静かな退職を選んでいく、という悪循環が起きていきます。まず、この働きがいを下げさせないことがすごく大事です。なので上司の側からすると、働きがいのある職場づくりをがんばる必要があります。

その一番根本のところは、上司と部下の信頼関係です。これをいかに作っていくかが非常に重要になります。本人に仕事の誇り、やりがいを持ってもらい、(さらに)チームの連帯感を作っていく。このあたりをどうやったらできるのかをしっかり考えていただくのが、管理職側にとっては大事なポイントです。

効果的なアプローチはチーム全体の状況を俯瞰することから

——上司と部下との信頼関係を作るというところですが、例えば御社ではどのようなサポートをしているのでしょうか。

荒川:我々は、職場の働きがいを測る60問の設問を持っています。これの一部は、私が書いた『働きたくなる職場のつくり方』でも紹介させていただいていて、本の中では60問のうち15問を抜粋して掲載しています。そういったかたちで、まずは自分の職場を(客観的に)点検してみる。

一口に上司・部下の信頼と言っても、その中身のバリエーションはいろいろあるんですね。例えば「自分に対して、ちゃんと期待をかけてくれる上司が信頼できる」と思う部下もいれば、「年齢や性別に関係なく、公正に扱ってくれる上司が信頼できる」と感じる人もいます。

なので、メンバー一人ひとりとか職種とか、職場を構成する人たちによって上司と現場の信頼(をつくる要素)はけっこう分かれます。なので、まずはそれを明らかにすることが大事ですね。

その時に、「この領域は強いけど、この領域は弱いね」というのをまず可視化してみることが大切です。我々はその第一歩としてサーベイを使って、職場ごとの働きがいの実態を可視化しています。

その結果の全部に対処することはできないので「ここからやりましょう」と決めて、アクションをご提言していくというやり方をしています。

例えば、管理職を集めたワークショップをやらせていただいて、今回のサーベイによって職場がどう見えるか、どういう状況になっているかを見ていただいて、それに対して「なぜ、これが起きているか」という背景や、打ち手について考えてもらい、半年後にまた集まっていただいて、その結果をシェアをするというやり方になります。

——なるほど。部下一人ひとりに対処していく前に、まずは現在の組織の状態を俯瞰してみることが、部下のモチベーション低下を防ぐ対策として有効なのですね。

荒川:(メンバーと)1対1で全部の問題を解決していくのも1つの方法ですが、そうなると管理職にとっては大変な負担になってしまいます。

なので、まずは5人とか10人とか、「チームの総合力をどうやって高められるか」という観点から始めます。カルチャーとか状態を見て、チームの強みや課題を解決していく取り組みの中で、一人ひとりにもアプローチをしていく。(上司と部下の信頼関係をつくるステップは)そういう順番で考えたほうがいいと思いますね。

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