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小室淑恵氏インタビュー(全3記事)

優秀な上司が休んだことで「指示待ち部下」が覚醒 「言われたことしかしない」社員が自ら動き出す

【3行要約】
・マネジャーの多くが「働かない社員」の存在に悩んでいますが、実は期待感の喪失や情報共有不足が根本原因となっているケースが多いのです。
・働き方改革の専門家によると、時間外労働ができない社員が「自分は評価されない」と諦め、意欲を失ってしまう悪循環が職場で起きています。
・管理職は自ら2週間の休暇を取って情報共有を促進し、仕事を適切に分割することで、全員が意欲的に働ける環境を作るべきです。

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「働かない社員」は期待感と情報共有が鍵


——反対に、いわゆる「働かない社員」がいる時。働き過ぎる社員と働かない社員のバランスの悪さも、現場マネージャーの悩みになるかなと思います。こうした状況にマネージャーはどう向き合っていくべきでしょうか。

小室淑恵氏(以下、小室):日本の職場で多いことですが、働かないと言われている人が、昔から働く能力も意欲もなかったわけではないということです。なんらかの事情で時間外労働や休日出勤ができなかったり、いわゆる気合いと根性の試練の中で「自分は期待されていない」と感じたり、どこかで、その社員が諦め型になった分岐点があると思います。

例えば、「あ、そういう仕事、私はできませんので」とビシッと断ってくるタイプの人。責任のある仕事を引き受けたら、普通は評価につながりますよね。だけれども、どんなに責任の重い仕事を引き受けても、「時間外労働ができない私は評価されない」ということが過去の経験上、散々わかっている中で、苦労だけ引き受けることは絶対にないわけです。

なので、評価されるという期待感を失わせてしまったことが過去になかっただろうかと、マネジメント層は一度考えてみていただきたいんです。(メンバーが)時間外労働ができる・できないということを、評価の中に持ち込んでないだろうか、と。上司がメンバーに対して、長いスパンできちっと評価をしていく期待感をちゃんと伝えていくと、息を吹き返す方がけっこういらっしゃいます。

誰もが意欲の湧く仕事に関われるように

小室:あとは、どんなに仕事をしようとしても、肝心な情報が共有されていない職場もけっこうあります。時間外労働ができるタイプの人が、自分の袖机に「秘伝のたれ」みたいな資料を入れていて、その情報がないと一番重要な仕事はできない、といった状態です。

そういう情報抱え込み型の人は、膨大な仕事量をこなしていて、いつも評価されます。情報を共有されていない方たちは、雑用を投げつけられてモチベーションの湧かない仕事しか振られていないケースも多いです。

——なるほど。「言われたことしかしない」と言われるような人は、そもそも意欲の湧かない仕事しか任されないために、受け身な仕事の仕方になってしまっているケースもありそうですね。

小室:そこで重要なのが、仕事の情報をちゃんとみんなが見られるクラウドの中に共有されているかどうかです。時間外労働ができる人の情報抱え込み型の仕事のやりかたを変えてもらい、情報をクラウドにアップして共有してもらうと、短時間で働いていたり、週3勤務などの多様な勤務形態の人もおもしろい仕事ができるようになります。今は、残業ができる人にはおもしろい仕事、残業ができない人には切れ端の仕事しか渡されない、という状態になっていることが多いです。

よく「この企業を担当するには休日出勤もゴルフもできなきゃいけない」みたいなのがありますよね。こういう一流クライアントを担当する時は、これとこれとこれもできなきゃいけない、というセットで1つの仕事みたいに、仕事のサイズがすごく大きくなってしまっています。

これを3分割して、どれか1個ずつでも担当できるかたちにして、先発・中継ぎ・抑えみたいにみんなでボールを回していく。パス回しで仕事をするようにすると、誰もがこの一流クライアントの、「やりたい!」と思えるような意欲が湧く仕事を担当できます。

クライアント側にしてみたら、ちゃんと情報共有していれば複数担当者がいても別に困らないので、今まで「働かない」と思われていた人たちが意欲を高めて仕事ができる状態になってくるかなと思います。

「休むこと」から始める働き方改革

——ありがとうございます。ここからは、残業させずにチームで成果を出すための具体的な策をおうかがいします。まずマネージャーがすぐに着手できるような実践策をご紹介いただけますでしょうか。

小室:まず、管理職自身が休みを取ることです。365日休まないつもりで仕事をしていると、情報を属人化させてしまい、自分にしかできない仕事があるから休めない、となります。

そこで、全員で順番に2週間のまとまった休みを取るというやり方があります。ただ、いきなり誰かが2週間ずつ休み続けると大変なことが起きてしまうので、まずは、「2週間休んだとしたら、自分の仕事で何が火を噴くか」をイメージして、引き継ぎマニュアルを書いてもらいます。

自分の仕事について自分でマニュアルに書くと、相手には意味がわからないものになりがちなので、相手がマニュアルを書きます。自分も誰かが休んだ時の仕事を引き受けるので、誰かのマニュアルを書く。お互いにマニュアルを書きあって、全員のマニュアルが完成したら、2週間ずつ時期が重ならないようにして、順番に休んでいくのです。

そうすると、その職場における属人化していた情報が一度全部吐き出されるので、仕事の見える化・共有化が一気に進みます。たとえコロナのような感染症や、震災が来たとして誰かが2週間休んでも大丈夫、という状態になります。

一度仕事を見える化・共有化できると、子どもが熱を出して早く帰らなければいけない時などに、ラストワンマイルの仕事をお願いできるようになります。常日頃から人にパスを回せるような仕事の仕方の訓練ができるので、残業時間は激減するのに業績は非常に上がります。

管理職を入れずに「現場の残業時間だけ減らせ」という会社

——全員が2週間の休みを取るというのはおもしろい試みですね。一方で今、管理職のワークライフバランスがなかなか守られていない現状があるかと思います。これに対して、管理職本人や人事・経営側ができる対策についておうかがいできますでしょうか。

小室:まず、すごくシンプルなことですが、働き方改革の対象に管理職を入れるということですね。本当に多くの企業が、管理職を入れずに「現場の残業時間だけ減らせ」という指示の仕方をしています。マネジメントの労働時間も一緒に減らしていきましょう、と組織として指示を出していくことが大事です。

じゃあ実際にマネジメントも含めて仕事の量を減らすにはどうしたらいいかというと、私たちは「カエル会議」というやり方をしています。その職場で、なぜ時間外が発生するのかという仕事の課題を全員で出し合っていく会議です。

よくマネジメントはみんなに「何が課題だと思ってるか意見を出して」と、自分は上から決裁する立場になりがちですが、マネジメント自身も、自分が何で今忙殺されているのかを出していくことが重要です。マネジメントがそれを出すと、より上の職位の人の決裁や会議に膨大な時間が奪われている、といったケースが多いことがわかってきます。

これはチームの中だけで話し合うのではなく、組織全体で「○○部長会議」、「○○担当会議」とかをどんどん減らしていかないといけないよね、といった、上のレイヤーの施策が必要になってくることもわかります。必ずマネジメントを含めた施策をやっていくのが大事かなと思います。

優秀な上司がいると若手は育たないことも

——この「カエル会議」によって、長時間労働が改善し成果につながった具体例があれば教えていただけますか?

小室:そうですね。薬局の店長さんなんですが、コンサルに入った当初は「自分は有休を取りたいという気持ちはない。長時間労働も気にならないからコンサルはいらない」とおっしゃっていました。

「若い人のためには働き方を変えたほうがいいと思うので、『カエル会議』はやってもいいですね」と、自分は対象じゃないという感じだったんです。

でも、初回の「カエル会議」で、うちのコンサルタントが「もし有休が取れたら何をしたいか、みんなで夢を描きましょう」というワークをやりました。そしたらもう、出るわ出るわ。「ライブに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」と、メンバーみんながたくさん出し始めたのを見て、店長ははっと気づいたんです。「自分が休まないとみんな有給も取れないんだ」と。

次にマニュアルを書いて、2週間ずつ順番に休む「マニュアル休暇」を始めました。店長はそれまで、薬剤師じゃないと扱えない仕事があることを理由にほとんど休まずに仕事をしていましたが、マニュアルに書き出した時に、薬剤師の資格が必要じゃない仕事まで抱え込んでいたことに気づきました。

人が育ち、幸福度も高まる働き方改革

小室:そして店長の女性は恐る恐る休んでみた。その日私たちが店舗を見に行ったら、Aさんという20代の女性が入っている日でした。「今まで店長がいない日に入ったことがないので、お店の目標数字がいかないんじゃないかと思って、もう緊張で死にそうです」と言っていたんですが、その日は猛暑でお客さんがまったく来ませんでした。

そうしたら彼女は、ポカリスエットを両手に持って「近隣に工事現場があるから、あそこに売りに行ったら売れる!そしたら今日の数字が達成できるかも!」と言って、売りに行ったんです。そしたらすごく売れて、5往復ぐらいしていましたね。私たちも「Aさんにこんな責任感があったとは」とびっくりしました。すばらしい上司がいると、若手はぼやっとしてしまって、案外自主性が育たない。優秀な人が休んだ時ほど部下が育つ、ということがわかりました。

このことがきっかけで、店長の働き方もガラッと変わりました。本当に2週間休めるようになったんです。その後結婚もされて、出産もされました。自身が休むことによって人が育ったり、自分の人生が変わっていくことがあるんだなと実感されたそうです。

人口減の国のシビアな生存戦略

——上司が思いきって休むことで、部下の責任感が芽生えたり、仕事に主体性を持って取り組めるようになる。個人の幸福度が上がるのと同時に、組織に取ってもプラスに働くんですね。

小室:そうですね。あとお伝えしたいのは、長時間労働の業界は業界ごと選ばれなくなっているということです。ずっと労働時間の管理がされてこなかった医療業界では、今、勤務医の7パーセントが日常的に自殺を考えているという本当に深刻な数字が出ています。業界をあげて働き方を変えていく必要がありますよね。今日は個人にフォーカスした話が多かったですが、国の姿勢として働き方を変えていく必要があります。

人口減の国で経済成長していくためには、いかに短い時間で働く人を戦力にしていくかが重要な施策です。ワークライフバランスという言葉のイメージからお花畑な議論だと思われがちですが、人口減の国が生き残っていくためのシビアな戦略なんだというところが一番重要なのかなと思っております。

——もう個人の働き方というところを超えて、どのように全員が働いていけるかを考えていかなければいけない差し迫った状況があるとわかりました。小室さん、ありがとうございました。

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